インナーブランディング葛藤記#05
-組織活性のしくじり3選!-
皆さん、はじめまして!株式会社ニットの西出です。インナーブランディング葛藤記では、2021年7月より組織活性・インナーブランディングを担当することになった西出が、日々仕事を進めていく中での葛藤を連載コラム形式で書いていく企画。インナーブランディングを知らない・全く異なる業務をされている方でも、自分の仕事を内省できるきっかけ記事になればと思います。
第五回目は『組織活性のしくじり3選!』。今月でいったん一区切りとなるインナーブランディング葛藤記。第四回までの内容は、「〇〇した方がよい」「〇〇と考えている」といった意見を中心に書きました。ただ、なにも順風満帆に進んだわけはなく、日々たくさんの失敗と社内の視点調整を行っています。今回は組織活性の中で担当者はもちろん、組織全体でよくある「しくじり」を3点選びました。
今回の「しくじり」はどれも組織運営をしていれば多発する悩みであり、日々の暮らしでも起こりうることです。何も包み隠さず書きましたので、少しでも誰かの参考になれば幸いです。
●HELP YOUとは?
HELP YOUは株式会社ニットが提供するオンラインアウトソーシングサービスです。2015年にサービスの提供を開始して以降、フルリモートでの運営を貫いています。現在、33の国や地域でくらす約400名のフリーランスが、HELP YOU事業を支えるメンバーとしてリモートで活躍中です。
https://help-you.me/
目次
ライター
しくじりとは?
「しくじり」と聞くとテレビ番組の「しくじり先生 俺みたいになるな!!」が思い浮かぶ人も多いはず。過去に大きな失敗を体験した方を講師として迎え、「自分のような人間を増やすまい!」と熱意をもってしくじった経験を話す番組だ。また、辞書で調べてみても「しくじり」は「失敗」を意味する。
私自身、株式会社ニットの他、関係人口によるコミュニティやオンラインコミュニティなどさまざまな形態の組織運営に携わる中で、実際に悩んだ「しくじり」を3つ選択。そして単に「しくじり」を話すだけではなく、実際にどう対処しているのか、今日は対処法まで触れていきたいと思う。
しくじり①:「盛り上がっている」の幻想
まず1つ目のしくじりは、「盛り上がっている」幻想を追い求めることだ。特にオンラインのコミュニティや組織運営をする際に陥りやすいしくじりになる。
そもそも「盛り上がっている」が主観的なものであるため、「盛り上がっている状態」を定義する必要がある。しかし、大方の方は活発にやり取りをしている状態で、組織内でイベントをしても、参加人数が組織の大半が参加している状態と捉えているだろう。
つまり、組織やコミュニティに所属している人数の多くがアクティブな行動やアクションをとるに越したことがないと捉えている状況だ。しかしこの状態の組織は異常な状態と認識したほうがよい。
参考サイト:https://osiro.it/news/9861
コミュニティに関するもので「1%の法則」というものがある。これは、所属するコミュニティメンバーのうち、どのくらいの人がアクションを起こし、どのくらいの人が閲覧だけなのかを示す研究報告をもとにして、「1%ルール」(Arthur, 2006)、もしくは「90-9-1の原則」(Nielsen, 2006)と呼ばれている。
上記2つは2000年代に発表されているが、インターネットやSNSが普及している2017年でも同様の研究結果(澁谷, 2017)が報告されている。
より具体的に見ていこう。たとえば100人の組織があったとする。コミュニティ内にあるほぼ全てのコンテンツを生み出すのは、全体の1%で1人。そしてコミュニティ内でコンテンツに反応したり、メンバー間でコミュニケーションをとるのは、9人(全体の9%)。残り90人はロム専と言われる属性で、見る・聞くのみでアクションをとらない人となる。
また見るだけの人でも、現在の関わり方に満足しているケースも十分にある。そのため「盛り上がる=イベントに参加・立ち上げる」と一括りに捉えることは危険だ。
では、どのように対処していくべきか。まずこの数字は一般値として言えるものであり、組織やコミュニティの状態によって割合は変わるものの、発信者が100人中90人など、大幅な増加は現実的ではない。
従って、90%の存在があることを意識しながらも、1%や9%の方を少しでも良いので、いかに割合を増やしていくかに視点を置く。すると見えてくる施策も変わるだろう。理想は9%の人を1%に運ぶ。もしくは90%の人から1%の人を発掘するアプローチだ。
「90%の方が反応するにはどうしたら良いか?」よりも、「イベントを企画する人を1人増やすには何をすべきか?」。ここでもスモールスタートで考えると良いかもしれない。そして一般値を基準値と置いて設計することがオススメだ。
引用文献:
・Arthur, C.(2006),“What is the 1% rule?”The Guardian, July 20, 2006.
・Nielsen, J.(2006),
“The 90-9-1 rule for par ticipation inequality in social media and online communities,”Nielsen Norman Group, October 9, 2006.
・澁谷 覚(2017),『知らない他者とのコミュニケーション』, Japan Marketing Academy.
しくじり②:数字にとらわれない
2つ目のしくじりは、「数字にとらわれない」ことだ。仕事や成果の観点だと、客観的に成果を把握できるよう数字に重点を置くことがオーソドックスな方法だと思う。しかし忘れてはいけないことは、数字は見方を変えれば、正解にも不正解にもなるということだ。
日常生活だと、体重がわかりやすい。例えば「60kg」について、身長180cmの方と150cmの方では、この数字の捉え方は当然異なる。また180cmの方でも、サッカー選手なのか、マラソン選手なのかでもこの数字をどう捉えるかは大きく異なる。
組織においても、組織活性の指標で組織メンバーのイベント参加人数を指標に置くこともあるが、単にイベントに参加している人数が多いから組織活性しているとは言えない。メンバーは強制参加かもしれないし、メンバーの帰属意識は高いが今回のイベントの企画や日時が、組織メンバーに合っていないことで参加が少ないともとれるからだ。
ではどのように対処すれば良いか。答えとしては、理想や目的を明確にすることが望ましい。どういった組織が理想なのか。そして、この数字を置く目的は何を図りたいからなのか。特に理想に関しては具体的な行動まで落とし込むと良い。
一方で数字を一切みるなと言っているわけではない。数字はあくまで参考指標としてとっておき、組織の状態を定点で計測するもの。何かいつもと違う数字が出てきた際に現場で何が起こっているか、追いかける基準として捉えた方が良いだろう。
なお組織活性の指標は、アクション数やアクション内容など、組織内で起こった事象を指標とすると、組織活性と実態にズレが生じにくい。
しくじり③:施策は全てやろうとしない
最後に3つ目のしくじりは、手当たり次第、全ての施策をやろうとしないことだ。これは「USJ」V字回復の仕掛け人である森岡氏も話している通り、全ての課題に着手すると到底時間や工数が足りないことから、抱える課題全てを一発で解決する重心を探すことを意味する。つまり、問題の根っこを掴みにいき改善することだ。
特に組織活性は、以前にも触れた通り正解のない仕事である。どの方法が課題を解消するきっかけになるかは誰も分からないからこそ、手当たり次第、思いつく事は全てチャレンジしようとするが、時間・お金・人手はどれも有限である。
具体的な対処法は、まず組織の理想を掲げてみて、現状とのギャップを書き出す。そして何故そのギャップが起こっているのか、何を解消すればギャップが埋まるのかを深掘っていき、各ギャップとの共通点を探る。そこに重心が現れる。後は、課題の根っこに対して実現可能性が一番高い施策をやってみて、効果を検証する方法がオススメだ。
まとめ
Link