知人に勧めたい職場をつくる鍵は「多様性」? 第3回、幸福度診断レポート

「会社、辞めたい……」。こう思った経験がある方は決して少なくないでしょう。職場の人間関係や、激務、薄給など、理由はさまざまですが、働くことを通じて「幸せ」を実現できていない、という気持ちが根底にあるのではないでしょうか。

従業員が「幸せ」を実現できているかを知ることは、企業が優秀な人材を確保するうえで重要なファクターです。そこで「『働く』を通じて、みんなを幸せに」を企業理念に掲げる株式会社ニットでは、社内のメンバーに向けた「幸福度診断」を定期的に行っています。

第3回の診断結果は前回と比べてどう異なるのか見ていきましょう。

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ライター

三代知香
飛騨在住のフリー編集者。会社員時代はIT企業でマーケティングやPM、自社ブログの編集長を経験。メディアの立ち上げ経験を生かし、「くらしと仕事」のアクセス解析や新人育成を通して成果向上に取り組むほか、インタビューライターとして働き方や地方活性化をテーマとした記事を手がける。1児の母。→執筆記事一覧

幸福度診断とは?

幸福度診断(Well-Being-Circle)」とは、幸福学の第一人者である慶應義塾大学の前野隆司教授と株式会社はぴテックが共同で開発した診断方法です。経済学者のロバート・フランクよると「幸せ」は「地位財(長続きしない幸せ)」と「非地位財(長続きする幸せ)」に分類でき、同診断ではこの2つの幸せを細分化した11のカテゴリを軸に「幸福度」を計測します。

出典:前野隆司、PRESIDENT 2016年9月12日号「ビンボーでも幸せな人は、なぜ幸せなのか
幸福度診断における11のカテゴリ
  • Well-Being
  • やってみよう力
  • ありがとう力
  • なんとかなる力
  • ありのまま力
  • Big-Five性格傾向
  • 健康力
  • ストレスの低さ
  • 社会の幸せ力
  • 職場の幸せ力
  • 地位材
出典:株式会社はぴテック「幸福度診断 Well-Being Circle

第2回幸福度診断のサマリ

▼ 第2回の診断結果はこちら

企業として働く人の「幸せ」にどう向き合うか? 第2回、幸福度診断の結果と改善への取り組み

2021年12月に実施した第2回の幸福度診断では、ほぼ全ての項目で第1回の結果を上回りました。特に、第1回で一般平均を上回っているものの他項目と比べると数値が低かった「ポジティブ感情」や「ストレスの低さ」が改善されたのは大きな進歩であったといえます。

また、第1回でも特に一般平均を大きく上回った「職場のオススメ度」は、第2回でさらに数値を伸ばしました。第3回でさらなる上昇が見られるのか注目です。

ニットでは、幸福度の計測と同時に、社内のメンバーがどの程度バリューを体現できているかを調査しています。

ニットを支える5つのバリュー
  • 当事者意識で行動しよう
  • 多様性を受け入れ、活かそう
  • いいやつであろう
  • 現象を数字で語り、前向きな価値を生み出そう
  • 継続的に成果を出そう

第2回では、この中でも「当事者意識で行動しよう」を実現できていると答えた人の割合が増えました。「自身の体現度」「他メンバーの体現度」に分けて質問したところ、第1回では後者と比べると前者が低い、つまり自己評価が低い傾向に。しかし、前に挙げた「ポジティブ感情」の数値改善の影響か、第2回では上昇傾向が見られました。

ここまでが第2回のおさらいです。では、第3回ではどのような診断結果が出たのか、第2回からの「変化」に注目してご紹介します。

継続して一般平均を大きく上回る結果に

2022年5月から6月にかけて第3回の幸福度診断を実施。回答数は252名でした。

第1回・2回から引き続き、全ての項目で一般平均を上回っているものの、前回と比較すると若干伸び悩む結果に。前で紹介した11のカテゴリを細分化した34の項目のうち、23の項目で第2回を下回りました。

第2回で上昇傾向が見られた「ポジティブ感情」や「ストレスの低さ」については、第1回の数値を上回っているものの、その後伸び悩み、第2回より少し低い位置で踏みとどまる結果でした。詳細な数値は以下の通りです。

ポジティブ感情
  • 第1回:54.54
  • 第2回:62.25
  • 第3回:61.40
  • 第3回の一般平均との差分:+8.50
ストレスの低さ
  • 第1回:53.94
  • 第2回:60.86
  • 第3回:57.68
  • 第3回の一般平均との差分:+4.34

高い数値を保ち続け、さらに上を目指すことの難しさを改めて認識した診断結果でした。

在宅ワークでも地域との関わりを持つ人が多い

一方で、数値が上昇した項目もあります。それが「まじめ力」と「信頼関係のある地域」です。

まじめ力
  • 第1回:68.16
  • 第2回:67.11
  • 第3回:68.56
  • 第3回の一般平均との差分:+6.47ポイント
信頼関係のある地域
  • 第1回:69.18
  • 第2回:69.00
  • 第3回:71.25
  • 第3回の一般平均との差分:+8.19ポイント

注目したいのは「信頼関係のある地域」が一般平均を大きく上回っていること。この項目は、自身がくらす地域で良好な人間関係を築けているかを問うものです。

私たちニットは、2015年の創業以来フルリモートを前提とした柔軟な働き方を実践しています。勤務地は問わないため、世界各国・全国各地からメンバーが集まり、現在は約400名がリモートワークで活躍中です。

シェアオフィスを活用しているメンバーもいますが、多くは在宅で働いています。在宅ワークというと、一日中家にこもりきりでパソコンに向かっているイメージで、地域との交流は一見少なそうです。

しかし、今回の診断結果から、ニットのメンバーは同じ地域でくらす人々とのつながりを大切にしながら生活していることがわかりました。これは、ワークライフバランスをとりながら職場外の人間関係も大切にできる「余白」があることの表れだといえるでしょう。

また、地元に居続けながら、あるいはUターンして働くメンバーもいるため、むかしから続く人間関係のなかでくらしていることも理由として考えられます。

まじめ力」は勤勉に物事に取り組む力を問う項目で、要素の一つとして挙げられるのが「自己管理能力」です。上述のように、メンバー全員がフルリモート勤務のため、一人ひとりに高い自己管理能力が求められます。まず、選考の段階でそのような能力を持つメンバーが残ったといえるでしょう。

加えて、オンラインアウトソーシング事業を展開するニットでは、一つの案件ごとにチーム体制で業務にあたっています。「家で一人で仕事をしていると、つい気がそがれてしまう」という人も、チームに支えられて集中力を保つことができているのではないでしょうか。

「職場オススメ度」は微増、高数値をキープ

第3回幸福度診断の結果について、最後に「職場の幸せ力」カテゴリに触れておきましょう。このカテゴリでは、以下の4項目を軸に幸福度を計測します。

  • 安心安全な風土
  • 信頼関係のある職場(の雰囲気)
  • チャレンジの(を)推奨(する雰囲気)
  • 職場オススメ度

ニットでは、第1回の計測時より「職場の幸せ力」の数値が一般のカテゴリ平均を大きく上回っており、第3回では+13.26ポイントという結果に。中でも「職場オススメ度」については、第2回からさらに+0.52ポイント数値を伸ばしました。

全体の診断結果を受け、高い数値を保ち続けることの難しさを改めて認識したからこそ、今後も「知り合いに勧めたい」と思える職場環境をメンバーと共につくっていきます。

多様性を受け入れる社風が「幸福度」に影響か

幸福度診断の結果に加え、ニットが掲げるバリューの体現度についても触れておきましょう。ニットのバリューは「『働く』を通じて、みんなを幸せに」という企業理念と紐付いており、幸福度と相関関係があるためです。

前で紹介した5つのバリューごとに「自分自身」と「他者」についてそれぞれ評価する形で体現度を計測しました。

5つのバリューの中でも「多様性を受け入れ、活かそう」については「自分自身」と「他者」、いずれに対する評価も高く、第2回から上昇傾向に。特に「他者」に対して「体現できている」「どちらかというと体現できている」と答えた人の割合は第2回の96.1%から98.8%に増えました。

これは、言い換えると「自身が持つ性質を、他のメンバーが受け入れてくれている」と感じる人が多いことの表れであるといえます。

フルリモートワークを実践する会社だからこそ、ニットにはさまざまなバックグラウンドを持つメンバーがいます。転勤族のパートナーを持つ人、子育てや介護をしながら働く人、世界中でボランティアをする人など、さまざまです。

そして、その多様性はメンバーの増加とともに広がっています。最近の例を挙げると、パートナーの仕事の都合で長年勤めた会社を辞め、ケニアに移住した男性メンバーがジョインし、未経験からライティングを始めて現在は主力メンバーとして活躍中です。

会社を退職し、ケニアで主夫に。今伝えたい「踏み出す勇気」

多様性を受け入れる社風が、幸福度診断でいう「職場の幸せ力」にもつながると考えられるため、引き続きこの価値観を大切にしていきます。

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まとめ

前回の診断では、ほぼ全ての項目において上昇傾向が見られましたが、第3回では伸び悩んだ項目も少なくありませんでした。一方で「職場の幸せ力」カテゴリでは第1回から安定して高い数値が出ており、その背景には「多様性を受け入れる風土」があるとわかりました。「今できていること」と「これからできること」をしっかり認識したうえで、ニットはメンバーと共に幸せの実現へと向かっていきます。

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