インナーブランディング葛藤記06 くらしと仕事

インナーブランディング葛藤記#06
-居心地の悪い場所を作る大切さ-

皆さん、はじめまして!株式会社ニットの西出です。インナーブランディング葛藤記では、2021年7月より組織活性・インナーブランディングを担当することになった西出が、日々仕事を進めていく中での葛藤を連載コラム形式で書いていく企画。インナーブランディングを知らない・全く異なる業務をされている方でも、自分の仕事を内省できるきっかけ記事になればと思います。

第六回目は『居心地の悪い場所を作る大切さ』。今回以降は不定期での発信にはなりますが、日々組織運営をしていく中で押さえておきたいと思うポイントが出た際、くらしと仕事で発信できればと思います。組織活性では、いかに働くメンバーがパフォーマンスを発揮できる状態を作れるかが仕事なのに、これでは逆行していないか?と聞きたくなるかもしれません。ただ非常に重要な観点かと思うので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

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ライター

西出裕貴
株式会社ニットにてインナーブランディングを担当。幸福度診断を活用した組織活性や企業理念・ビジョン・バリューの浸透と体現に取り組む。また月額定住サービスADDressを活用しながら多拠点生活中。パラレルキャリアでも活動し、各種フェスやイベントのコンサルや立ち上げ・運営の他、街づくり案件に従事。→執筆記事一覧

きっかけはシェアハウスのオーナーの言葉だった

とある日の夜、8月から1ヶ月半ほどお世話になっている長野県塩尻市のシェアハウスオーナーがこう言った。「僕はシェアハウスを運営していく中で、いかにシェアメイトにとって居心地の悪い場所を作れるかしか考えていないんだよね」

シェアハウスのオーナーからすれば、シェアメイトがいかに自分のシェアハウスに居続けてくれるかが大事なはずだ。入れ替わりや退去者が多いと、シェアハウスの運営や収益が不安定となり、シェアメイトの確保も労力がかかる。

一方でこの言葉をもとに組織づくりにおいて考えてみると、納得できる部分が非常に多くある。そこでこの記事を書くことにした。

居心地の悪い場所とは?

スライド1必要なストレスがかかる場所 くらしと仕事

組織に所属するメンバーにとって、居心地の悪い場所とはどういったものを想像するか?「ありのままでいられない場所」「やりたいことにチャレンジできない場所」など、さまざまな場所が思い浮かぶかもしれない。

ただ、ここでお伝えしたい「居心地の悪い場所」とは、「必要なストレスがかかる場所」を指す。この必要なストレスとはどういったものを指すのだろう?

必要なストレスとは「異質な存在」「変化」

スライド2組織にとって必要な2つのストレス くらしと仕事

「異質な存在」「変化」の2つが必要なストレスとなる。人間をはじめ生物は長い年月をかけて常に進化をしている。この進化の目的は何か?答えは変化する環境に適応して生存できるようにするためである。裏を返せば、環境の変化がなければ進化を必要としない。

常に「安定」している状態こそが生物にとっては居心地の良い状態と言えるだろう。進化するには安定するよりも労力や負荷が伴う。できる限り安定できるように生きていくことを本能的に求めている。

そして、マズローの5段階欲求に沿って考えた場合に、集団に所属したり、仲間を求めようとする社会的欲求を満たすのであれば、同質性を求める傾向もある。自分と似た考えや価値観をもつ人であれば、所属を脅かされることも少ないからだ。

ではなぜ逆行を行く「異質な存在」「変化」をもつ居心地の悪い場所が必要なのか?

居心地の良い場所には「衰退」が待っている

スライド3居心地の良い場所だけは組織が衰退することに・・・ くらしと仕事

答えはシンプルで、環境は常に変化しており、働くメンバーや組織が環境変化に応じて絶えず変わっていくことが求められるからだ。

仮に居心地の良い場所しか持たない組織は、どういった変遷をたどるか見ていく。前段でも述べた通り、安心安全が確保される居心地の良い組織を作るとなると、組織は似た価値観や考えをもつ同質性のあるメンバーだけで構成しようとする。最初は自分と似た存在であるからこそ、自身の存在が受け入れられやすくなり、組織に対する帰属意識も高まる。

一方で、自分とは異なる異質な存在に対しては、アレルギー反応が表れる。つまり、変化や異質な存在を「悪」と捉える傾向が強くなる。しかし、異質な存在は、組織全体では見えていない課題を指摘したり、世の中の新しい考えを提案する者が多い。

そして世の中が刻々と変化していくにつれて、組織を取り巻く環境と組織の形態・思想にギャップが生じてくる。しかし、そのギャップに気づくことができず、組織自体が変化に適応できなくなり、やがて衰退していく流れとなる。

そのため、組織が変化する環境に適応していくためには、「異質な存在」「変化」に順応する状態が求められる。

これは水の循環にも似ている。バケツに入っている水を数日間放置すると、水の中に含まれている細菌や微生物が増殖して腐敗していく。一方で川の水のように、常に流れを起こし、新しい水を入れる状態を作ることで、細菌や微生物の増殖を押さえ、腐敗を防ぐことができる。

組織が腐敗しないためにできることは?

スライド4活きた組織を存続させるために出来る事 くらしと仕事

組織が腐敗せずに活きた組織であり続けるにはどうしたらよいか。人や思想・文化の変化を起こしつつ、新陳代謝を高めることがポイントだ。「来る者拒まず、去る者を追わず」を生み出し、常に新しい人が入ってくる状態である。

そして、変化や異質な存在が馴染む施策を取り入れていく。外部の有識者との交流や新しいメンバーを受け入れるイベントや制度を取り入れたり、資格支援や留学制度の導入。また、新規事業のコンテストなど新しい思想や考えを組織が積極的に享受することを許容する制度を取り入れることもひとつだ。

いかにして、意図せずとも新しい人や文化・考えが組織に入ってくる流れや仕組みを構築し、そして許容される状態を作りあげるか。これこそが組織活性を担うポジションとして求められる重要な仕事のひとつと言えるだろう。

インナーブランディング葛藤記#01– 自分の役目って何だろう?-

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インナーブランディング葛藤記#05-組織活性のしくじり3選!

まとめ

組織活性とは本来、所属する組織メンバーにとって居心地の良い状態を形成し、組織に対する帰属意識を高めて活性化させることが求められます。一方、活きた組織を存続させるには、変化が絶えずあり、異質な存在を受け入れる状態を作っていく必要もあります。この相反する2つの居場所をうまく共存させていくことが組織活性において求められる重要な要素かもしれません。

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