インナーブランディング葛藤記#04
-組織は「性善説」と「性悪説」のどちらで捉えるか?-
皆さん、はじめまして!株式会社ニットの西出です。インナーブランディング葛藤記では、2021年7月より組織活性・インナーブランディングを担当することになった西出が、日々仕事を進めていく中での葛藤を連載コラム形式で書いていく企画。インナーブランディングを知らない・全く異なる業務をされている方でも、自分の仕事を内省できるきっかけ記事になればと思います。
第四回目は『組織は「性善説」と「性悪説」のどちらで捉えるか?』。第三回までの内容は、まずは相手目線に立って、組織全体の意義や目指す方向を表すパーパス・ビジョンを決定する。そして、スモールスタートで進めていくことがインナーブランディングや組織活性によいのでは?と話してきました。
しかし、いざ施策をスモールスタートで実施して、全体を巻き込みながら進められるようになってくると、今度は組織と向き合うスタンスの取り方が問われます。さまざまな価値観を持つ人が集まるため、熱量も所属目的もバラバラだからです。
そして、このスタンスの取り方は組織や会社だけでなく、1対1の個人においても言えることです。では、どのように向き合えば良いのでしょうか?
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目次
ライター
性善説と性悪説、どちらが正解?
性善説・性悪説とは?
誰かと物事を推進したい時、あるいは何か対立や課題が生じた際、「相手をどう捉えるか」は、皆が日々悩んでいることだと思う。これは組織運営だけでなく、職場や友人関係、家族でも当てはまるだろう。
相手に対して「善人だと信用して接する」場合と、反対に「悪人だとして疑って接する」場合がある。孟子や荀子が唱えた本来の意味と異なるが、現代の世間一般では、前者を「性善説に基づく考え方」。後者を「性悪説に基づく考え方」と捉えることが多いと思う。
両方の視点で捉えることが大事
では、どちらの視点に立つと良いか?私自身の意見を述べると、片方だけではなく、両方の視点に立って観ることが望ましいと考えている。なぜなら「人は善人と悪人の両方の要素をもつ存在」だからだ。
少し踏み込んで話すと、インナーブランディング葛藤記#03でも述べたように、善悪は所属する社会や環境・時代によって定まり、時間や場所、組織、あるいは判断する相手によって変わる。本人が正しいこと・良いことをやっていると自覚していても、社会から観たら悪と捉えられる場面もある。
どのスタンスでいることが良いのか?
上記を踏まえ、日常生活で人と接する場面でも言えることだが、特に組織運営や文化を推進する立場の方、そしてコミュニティマネージャーや管理職など組織を統括する立場の方に、求められるものが3点ある。
それは、①中立であること②気づきを与えること③完璧を強要しないこと
ポイント①:中立であること
組織の運営や文化を推進する、あるいは組織を統括するとなった際の重要な役割は「創りたい世界観に向かって組織メンバー自らが活動する」状態を形成すること。トップダウンや決まり事でメンバーを縛ることも出来るが、中長期で考えると、組織の自発性を損ない、受動的な組織となる。そのため、いかに組織メンバーに「腹落ち」をして自分から1歩進める環境を作れるかが重要になる。
自分と対立する意見に耳を傾けることは至難の業。仮に賛同したい意見であっても、反対意見を持つ者と話す際に、組織の方向を揃える事が非常に難しくなる。そこでポイントになることが「中立」だ。どちらにも傾かない存在がいると、はじめて客観的な話し合いが出来る環境となる。
しかし、人間なのでどれだけ意識していても色眼鏡で観てしまったり、話し上手の方の意見を聞くと、揺らいでしまう。そのため、自分自身が偏っていないかを常に確認することが大切だ。1日寝かしてみるのも有効な方法だろう。そして上がってきた意見に対して「何故その意見となったのか、プロセスを見つけにいくこと」を意識した方が良い。
一方で、当事者が複数いるなら、それぞれの声を直接聞くことも大事だ。オンライン・オフラインどちらでも言えることだが、単にヒアリングをすれば良いのではない。相手から本音が聞けるための最大限の配慮を行う。
たとえば、上司や先輩が複数いる中で自分の意見を言うことは難しいだろう。その場合は、話し手自身がリラックス出来る場所を選んだり、的確な質問や傾聴をすることが鍵となる。
中立であるなら賛同までする必要はない。相手の視点に立って理解をすることに留めることも大切な観点だ。
ポイント②:気づきを与えること
次に、ポイント①でも述べたように「なぜその意見となったのか、プロセスを見つける」ことが大切となる。その理由は、ポイント②の「気づきを与えること」に欠かせないからだ。この気づきは、相手の思考回路を別の意見や視点に向けさせるキッカケを与える。
「気づきを与える」過程で最初にとるアプローチは、その人の意見が生まれたプロセスに「if・・(もしも〇〇だったら、)」を問いかけてみることだ。
たとえば、チャットでの仕事依頼のシーンで考えてみる。この依頼が非常にシンプルな書き方だったとしよう。依頼を受けるBさんの視点では、素っ気ない印象をもつ。というのも、Bさんが誰かに仕事を依頼する際、その相手と楽しく仕事できるように「あなただからこそ仕事をお願いしたい!」旨も記しているからだ。
一方、依頼したAさんは、文章量が多いと読むのにストレスになるだろうと、受け手の視点に立って、あえて文章をシンプルにしたという状況がある。
このような事象は日常茶飯事だと思う。Bさんの場合なら「もし、AさんがBさんをシンプルな内容を好む人と思っていて、今回のメッセージ対応を選択していたらどう?」と、問いかけると視点が変わる。
コーチングの形式に近いが、いかに本人に内省する機会を与えて、視点や認識を広げていくきっかけを作るかが大切だ。
ポイント③:完璧を強要しないこと
人が何かに対して怒りや失望をする要因は、自分自身の期待にギャップが生じることにある。特に陥りがちなものとして「完璧を求めすぎること」だ。理想の姿を追求することや目指すことは間違いではない。ただし完璧を強要することをやめる。
もちろん個人の視点によって、当事者がよりパフォーマンスを発揮できる方法を選択することになるが、組織全体という枠組みで観るなら、理想像とのギャップに目を向けるのではなく、過去からのポジティブな変化を楽しむ視点の方が全体のパフォーマンスが上がる。変化に対して良い面で捉えて、組織に関わる人とシェアすることで、次の1歩に進みやすくなる。より自発的に、そして積極的に理想像に近づく流れが生まれやすい。
まとめ
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