親子で学ぶ性教育|現役医師に聞く「生理について知る10のこと」
子どもへの性教育について考えたことはありますか? 必要なことだとはわかっていても、わが子を前にすると何をどう伝えればいいのか悩んでしまいますよね。
株式会社ニットでは、2023年1月5日に生理(月経)への理解を深めることを目的とした親子向けオンラインセミナー「生理について知る10のこと」を開催。講師の佐賀リハビリテーション病院 吉原 麻里副理事長から、「生理」を軸に妊娠の経過や避妊についてまで、専門知識をもとにお話いただきました。
今回はそのセミナーの内容を紹介しながら「わが子への性教育」について具体的なヒントをお伝えいたします。
目次
ライター
働くママのニーズを形にした親子生理セミナー
オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を運営する株式会社ニットは、2015年にフルリモートを前提として創業しました。現在、日本全国・世界35か国から約500人がオンラインで働いています。メンバーの9割は女性で、なんと半数以上が子育て中。時間や場所にとらわれず柔軟に働くことができるフルリモートという特性を活かし、多くのママ達が仕事と子育てを両立し活躍しています。これだけ働くママがいれば、生理にまつわる身体の不調に悩んでいるメンバーや、子どもへの性教育を課題と考えているメンバーも多数。そこで、冬休みの期間を利用して親子で学べる生理セミナーが企画されました。ニットでは、以前から組織内のメンバーを講師に据え、さまざまな親子向けオンラインイベントを開催してきましたが、「性」について扱うには確かな専門知識が必要です。そのため、今回は現役医師を講師にお招きしました。
講師としてお話しいただいた、佐賀リハビリテーション病院 副理事長 吉原麻里先生は、女の子3人と男の子1人を育てる4児の母。セミナーでは、医師としてだけでなく、親としての視点からも、初経を迎える年齢の子に伝えておきたい内容を盛り込んでいただきました。
ここからは、今回のセミナーで語られた10の内容について、順番にご紹介します。
学校教育だけでは不十分? 家庭で性教育をする意義
①「生理について知ること」はどんな意味があるの?
初めて生理を迎える子どもに対して、生理の症状とその対処法を教えていれば十分と言えるでしょうか。生理が始まるのは、女の子が赤ちゃんを作る準備ができるくらいに成長したという証、つまり妊娠が可能になったということです。妊娠する力をもっていながら、妊娠について無知であることはとても危険なこと。「知らないうちに妊娠していたということがないように、もしかしたら自分も赤ちゃんができるかもしれない、と考えて知識を身につけておきましょう」と吉原先生は話します。自分の心とからだを守るためにも、経血として現れる生理だけではなく、新しい命を宿すしくみとしての生理を知ることが大切です。
②現在の学校教育では何を教えるの?
では、生理が始まる頃の子ども達は、学校教育の場で妊娠について教えてもらう機会はあるのでしょうか。実は、現在の学習指導要領には性に関する「はどめ規定」があり、小・中学校では、受精の前提となる性交については扱わないことになっているそう。子どもたちがインターネットで簡単に性の情報にたどり着ける現代。誤った知識や偏った先入観を持ってしまう前に、家庭で正しい知識を教える機会を持つ必要があるのです。
生理の基礎知識をイラストを交えて解説
③生理って何が起こるの?/④生理(月経)ってなぜ起きるの?
セミナーでは、生理が何歳頃から始まり何歳頃まで続くのか、どこから経血が出てくるのか、生理のとき子宮ではどのようなことが起こっているのかなど、生理を迎える前の子どもにもイメージしやすいようにイラストを交えながら基礎知識を学びました。
⑤生理が起きたらどうしたらよい?
生理用品については、ナプキン、タンポン、月経カップの実物を見せながら使い方を解説。使用済みの生理用品の捨て方や、経血で下着が汚れたときは自分で手洗いすることなど、吉原先生は生理中のエチケットもしっかりと説明します。親としては非常に重要なポイントだったのではないでしょうか。
生理中のさまざまな症状と自分でできる緩和方法
⑥生理にまつわる症状ってなに?/⑦生理を和らげるにはどんな方法があるの?
生理のときの症状は個人差が大きいもの。まだ生理を経験したことのない子どもも、一般的な症状を知っておくと気持ちの準備ができます。吉原先生は「生理の症状は個人差が強いので、周りの人が頑張っているからと無理に合わせなくて良いし、自分がきつくないからと、きついと言う人をサボっているというような目で見るのはやめましょう」と伝えます。「生理が辛いときは無理せず休んでいいんだ」という認識があると、30年以上も続く生理とのつき合い方も少し楽になるかもしれません。
生理について悩んだらしてほしいこと
⑧生理っていつ止まるの?
10歳前後で初経を迎えてから、50歳頃に閉経を迎えるまで、健康で妊娠していない女性は、毎月生理がくるのが正常です。生理が止まるということは、ホルモンバランスの乱れや、病気などの身体の不調、または妊娠が考えられます。生理がこないときは、慎重に原因を考えましょう。
繰り返しになりますが、生理が始まるということは、妊娠が可能になったということです。「生理が始まると、自分がいつ妊娠してもおかしくないことをしっかり理解して、どうやったら妊娠するのかも知っておきましょう」と吉原先生。望まない妊娠を避けるためにも、学校では教えてくれない「性交」について学んでおく必要性を強調します。
そこで、本セミナーでは、どうやったら妊娠するのか(=性交)、妊娠を望まない場合はどうするのか(=避妊方法)まで踏み込んで話をしました。とくに避妊については、バナナを使ってコンドームの装着方法を実演し、使用後の捨て方まで説明したので、参加したお子さんは戸惑ったかもしれません。しかし「将来お子さん自身とそのパートナーのからだを守るために必要となる知識だから」と吉原先生は避妊の大切さを真剣に語ってくれました。
親子でいきなり性交の話をするのは、なかなか難しいものです。年齢によって理解できる内容も変わってくるでしょう。吉原先生からは「年齢にあわせて、性についての絵本や図書を活用しましょう」とアドバイスがありました。「家の本棚にさりげなく忍ばせておくと読んでくれるかもしれないですよ」とのこと。また、「水着とマスクで隠れる部分(=プライベートゾーン)は大切なところだから、他人に見せたり触らせたりしない、という自衛の意識を、小さい頃から伝えていくこと」を推奨しました。
⑨困った時は誰に相談したら良いの?
まだ生理に慣れていない子は、生理の症状がつらかったり、いつもと違う症状があったりすると不安になることもあると思います。吉原先生は「悩んだときは、親や身近な大人、保健の先生に迷わず相談しましょう」と子どもたちに呼びかけます。また、「そこで解決できないことがあれば、産婦人科を受診しましょう。産婦人科は妊婦だけが行くところではなく、女性が不調を感じたらいつでも行っていいところなんですよ」と補足しました。このことを親子で認識しておくと、産婦人科への通院のハードルが低くなり、歯が痛いから歯科に行くという感覚で足を運べるかもしれません。
⑩生理とはどんな風に付き合ったら良いの?
生理は経血が出るだけでなく、人によってさまざまな症状があるため、自分なりの対処法を模索していく必要があります。その過程で悩むこともきっとあるはず。そんな時は、「一人で抱え込まずに周りに助けを求めましょう」と吉原先生は締めくくります。親としても、子どもが生理と上手につき合っていけるようサポートしながら見守っていきたいですね。
まとめ
日本では、性教育に消極的な風潮があります。しかし、自分の心とからだ、また他者の心とからだを大切にすることを学ぶ重要な手段です。ぜひ今回のセミナーの内容を参考にしながら、ご家庭でも性教育に取り組んでみてください。
アイキャッチデザイン/今泉香織
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