駐在妻・転勤妻に共通する「キャリア問題」 解決する仕事とは?

「駐妻」とか「駐在妻」という言葉をご存じでしょうか。海外駐在勤務になった夫についていき、現地で生活を送る妻のことです。夫の海外赴任が決まったとき、妻は「海外駐在に帯同するか、日本に残るか」という難しい選択肢を迫られます。転勤先についていくか、夫に単身赴任してもらうか――という悩みは、海外転勤に限らず多くの転勤妻(転妻)が毎回直面する悩みです。

ライター

佐々木康弘
札幌市出身、函館市在住。大手旅行情報誌やニュースサイト、就活サイトなど多数の媒体と契約するフリーランスライター。店舗・商品・人物の取材記事やニュース・芸能記事作成、広告ライティングや企業紹介など幅広いジャンルで年間100万字以上を執筆するほか、校閲も行う。「HELP YOU」ではプロフェッショナルライターとして活動。

あこがれの駐在妻にはこんな落とし穴が!

 

海外勤務となった夫に帯同する駐在妻(駐妻)の大半は、会社を退職せざるを得ません。そのため、自身のキャリアについて悩む駐在妻が多いといわれます。同様に多くの転勤妻(転妻)からも、「夫の転勤にともなって数年で引っ越しを繰り返すのでキャリアが継続しない」との声が聞かれます。そこでこの記事では、駐在妻(駐妻)が現地で仕事をするのが難しい理由と、駐在妻・転勤妻が共通して抱えるキャリア問題の解決策になるかもしれない新しい働き方・仕事のしかたをご紹介します。

 

マレーシア、シンガポール、タイなど、海外旅行でも人気のリゾート地は、駐在妻が多い地域としても知られています。夫の海外駐在勤務が決まった時、温暖な南国での暮らしを夢見て帯同を決断した妻もいることでしょう。南国に限らず、期間限定とはいえ海外に在住できることにステータスを感じる人も少なくないのではないでしょうか。

 

ところが、実際に海外で駐在妻として暮らしているうちに、当然のことながら不便や不満が生じてきます。その中でも大きいのが「働きたいのに働けない問題」。夫の赴任先に居を構えて少し落ち着いたところで「そろそろ働きたいな」と思っても、いくつもの高い壁が立ちはだかり、思うように働けない場合が少なくありません。

 

冒頭で述べた通り、もともと専業主婦だった人を除けば、駐在妻のほとんどはそれまで勤めていた会社を退職して夫に帯同しています。その時点でも夫のために仕事を辞めるという決断を強いられたのに、夫の赴任先でも仕事の問題に悩まされてしまう――。駐在妻の多くが口をそろえて指摘する、「駐在妻の落とし穴」といえます。

 

 

お仕事したい!と思う駐在妻がぶつかる壁

では、現地で働きたい駐在妻の前に立ちはだかる壁とはどんなものでしょうか。ここでは、代表的なものとして5つを挙げます。

 

これまでのキャリアを断念せざるを得ない

駐在妻経験者を対象として行ったある調査によれば、海外帯同のために仕事を辞めなければならなかった人は全体の7割。残りの3割はもともと働いていなかったため、仕事をしている女性が海外駐在となった夫に帯同する場合、ほぼ100%の割合で仕事を辞めていることがわかります。

 

駐在妻を含む転勤妻全般に共通することですが、数年で移転を繰り返す以上、ひとつの会社に長く務めることは難しく、キャリア形成が難しいのが現実です。駐在妻の場合、事情はもっと厳しくなります。転勤妻は、ひとつの会社に長く勤めることこそ難しくても、その気になれば移転するたびに同じ業界や同じ職種で経験を積み、キャリアを継続させていくことも不可能ではありません。これに対して駐在妻は、後述する様々な理由により、これまで積んできたキャリアを現地で継続させることができず、結果として働き手としてのキャリアがぷつりと途絶えてしまう場合が多いのです。

 

前述の調査によれば、帰国した元駐在妻のうち再び仕事に就いた人は4割弱にとどまります。海外赴任帯同前に仕事をしていた人は7割いたわけですから、残りの3割は日本に戻ってきても仕事に復帰できなかったことを意味します。キャリアが途切れたことが少なからず影響しているといえるでしょう。

 

国家公務員や一部の企業では、海外で勤務する配偶者に帯同する人に長期の休暇を認める「配偶者同行休業制度(配偶者帯同休暇制度)」を設け、仕事を辞めなくてもいいように配慮しています。しかしながら、国家公務員ですらこの制度を使って休業できるのは最長3年間。民間企業も最長3年間としているところが多く、せっかく制度があったのに「夫の海外勤務が当初から5年の予定だったので結局仕事を辞めざるを得なかった」という人もいます。

 

参考資料:駐在妻のキャリア(仕事)を考える<海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察より>

 

意外と大きい言葉の壁

夫の赴任先で働くためには、現地の言語でコミュニケーションを取れることがほぼ必須。普段は駐在妻同士で会話することが多く、現地の人と話すとしても買い物やちょっとした用事くらいで済むかもしれませんが、働くとなればそうもいきません。

 

夫は日本語だけでも、あるいは少し英語ができれば仕事ができる職場環境にあるかもしれませんが、駐在妻にそんな恵まれた職場環境は用意されていません。赴任してすぐに現地の言語を使いこなせる人はまずいないので、できる仕事を探すこと自体が非常に困難であるといえます。

 

そうした場合、まずは現地の語学学校に通うなどして語学力を身につける必要があります。現地の日本法人に勤める、現地にいる日本人向けに教室を開くなど、日本語でできる仕事を考えるという方法もありますが、こうした仕事は非常に限られています。

 

夫の企業規定に思わぬワナが

駐在妻が現地で働こうと思ったら、夫の会社の規定で帯同家族の就労が禁止されていた――という例は決して珍しくありません。

 

夫の会社は夫を雇用しているのにすぎず、妻の職業選択の自由を奪う権利はないはずです。しかし現実には、依然としてこうした慣習が横行しています。禁止を明文化まではしていなくても、「駐在妻の就労禁止」が暗黙のルールと化している企業は少なくないようです。

 

これには、妻に「内助の功」を求めてきた日本の文化が関係していると思われます。会社としては、ただでさえ負担の大きい夫の海外勤務を専業主婦として妻に支えてほしいというわけです。

 

これを裏付けるように、ほとんどの企業は家族手当(扶養手当)を国内勤務よりも多く出したり、家族の分まで一時帰国費用を負担したりするなどして、海外駐在員を金銭面で手厚く優遇しています。駐在妻の現地就労が難しいという現実的な側面もあってのことでしょうが、「生活に困らないだけの補助をしているのだから、妻が働く必要はない」というのが多くの企業のスタンスのようです。

 

条件付きで家族の現地就労を認めている企業もありますが、実際に駐在妻が仕事に就いてみると、夫の会社から出ていた手厚い優遇措置が得られなくなり、一時帰国費用を自費で負担しなければならなくなったというケースもあります。現地で健康保険に加入する費用もかさみ、「これなら働かないで家にいたほうがマシ」と感じた駐在妻もいます。現地就労は日本に比べて賃金が安いため、夫の会社から出る優遇措置と天びんにかけると、現地就労すべきかどうか悩ましいところです。

 

帯同ビザでは働けない

海外赴任する夫は就労ビザを、それに帯同する家族は帯同ビザを取得するのが一般的です。ところが、多くの国では就労ビザがなければ現地就労できません。幾つかの条件を満たせば就労ビザがなくても働ける国もありますが、ごくごく限られています。

 

帯同ビザを就労ビザに切り替えること自体は不可能ではありませんが、ほとんどの場合は夫の会社がビザを手配しており、これを切り替えるのは結構大変です。また、数年でいなくなる駐在妻を現地の企業がそこまでして雇うかといわれれば、現地の人を雇うほうが簡単です。

 

納税手続きが面倒

現地企業で働く場合、その国の法律に従って所得税を納税しなければなりません。会社がやってくれればいいのですが、自分で申告・納税する場合は、国や州によって異なるルールを理解するだけでも大変です。さらに、駐在妻が収入を得たことによって夫の所得税にも影響が生じる場合もあります。夫の扶養に入って何も収入を得なければ何も起きないので、あえて働く必要もないと感じる駐在妻もいます。

 

 

 

 

夫の駐在先で仕事をするには

駐在妻ができるお仕事とは?

現地企業に勤める以外の方法として、今までのキャリアや強みを活かして現地で働く方法があります。

 

ある駐在妻は、フリーランスとして日本の企業からウェブデザインの仕事を請け負っています。ウェブデザインプログラミング、アプリ開発などIT関連の仕事は求人が多く、スキルとインターネット環境さえあればどこでもできるため、海外でもできる仕事のひとつです。自分のスキルに合った仕事が見つけやすく、比較的高単価が得られます。長期的な契約となることが多く、高収入につながりやすい仕事です。

 

別の駐在妻は、語学力を生かして翻訳の仕事を請け負っています。外国語で日常会話ができれば十分翻訳できるレベルのものから、論文や専門的な内容まで難易度は様々です。自分の語学レベルに合ったものを選べば、翻訳は他の案件に比べて単価の相場が高く、スキルのある人には人気の高い仕事です。

 

このほか、会計・財務、ライター、データ入力、文字おこしなどの様々な業務が今はクラウドソーシングされており、世界中どこにいてもオンラインで請け負うことができます。

 

ピアノ教室やリフレクソロジーサロンなど、自分の持つ資格や特技などを活かして現地の日本人コミュニティを相手に起業する人もいますが、これは顧客が限られているのが難点です。日本でビジネスパーソンとしてバリバリ働いていた駐在妻なら、その経験を活かした仕事をインターネットを通して続けることができないか、探してみると良いでしょう。

 

駐在妻の仕事の見つけ方

そもそも、海外帯同するからといって本当に会社を辞めなければならないのでしょうか。確かに大半の企業はそうかもしれませんが、IT系の企業やベンチャー系の企業、社員数が比較的少ない企業などでは、インターネットを通して現地で働く「リモートワーク」が許される可能性もあります。特に日本では人手不足が続いており、優れた人材が去っていくのは会社にとっても大きな損失です。ダメもとで、リモートワークの可否を打診してみましょう。

 

もしリモートワークが認められたなら、どのように働くかを事前に会社側としっかり打ち合わせておかなければなりません。ある転勤妻は、現地でどの程度仕事のための時間を取れるのが事前に予想できなかったため、リモートワーク期間中は給料を時給計算とすることで会社と合意しました。業務に際してはオンライン上でスケジュールやタスクなどを共有できるグループウェアとテレビ電話を多用し、遠隔地にいてもオフィスにいるかのように一体感を持って仕事ができたといいます。

 

やむを得ず勤めている会社を退職して海外赴任する夫についていく場合も、頼りになるのは「リモートワーク」です。前項でもふれた通り、今は多種多様な仕事がクラウドソーシングされており、日本の企業が発注した仕事を海外にいる駐在妻が受注する構図は、もはや珍しいものではありません。駐在妻の多くはキャリアがあり、ビジネススキルを積んできていることから、仕事を発注する企業側にとっても魅力的な人材となっています。

 

駐在妻が働くために役立つスキル・資格とは?

オンラインで仕事を発注する場合、企業側が大きな判断材料とするのは「実績」です。誰に仕事を依頼するかを文字のやり取りだけで判断することも多く、純粋に「仕事ができそうかどうか」が選考基準となるからです。

 

とはいえ、守秘義務などの関係で具体的な実績を公開できない場合も少なくありません。そこで大きな武器になるのが「スキル」や「資格」です。スキルや資格を公開しておけば、より仕事を受注しやすくなることでしょう。

 

汎用性があるのは、マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)。ワードやエクセルなど、仕事をする上で必須であるofficeソフトの利用スキルが証明できる国際資格です。認知度も高く、これを持っているだけで他のワーカーから頭ひとつ抜けると言っても過言ではありません。

 

秘書検定も、企業に好まれるスキル。「秘書検定に受かったのだからビジネスマナーがしっかりした人に違いない」と信頼されやすくなる効果があります。日商簿記検定やビジネス会計検定など、会計関連の資格も役立ちます。前述の通り、近年は会計・財務もクラウドソーシングされており、これらの資格を持っている人は重宝されます。

 

急速な国際化に伴い、英語の読み書きや会話ができる人材の需要も増しています。TOEICや英検など、英語の知識・スキルを測る検定も仕事をするうえで役立つことでしょう。IT分野で仕事を続けていきたい人には、基本情報技術者やITパスポートがお勧めです。

 

リモートワークが探せるクラウドソーシング登録サイト一覧

 

総合型クラウドソーシングプラットフォーム

HELP YOU

一案件ごとに自分で受注する手間がない、長期継続型オンラインアシスタントサービス。登録してからの研修期間中に慣らしながら業務を進め、自分のスキルに合った仕事を選択していくことができます。チームで仕事を進めるのでクライアントとの交渉を自分で行う必要がなく、業務の進め方についてメンバーからサポートやアドバイスも得られます。

 

運営会社:株式会社ニット

 

Lancers

2008年設立の老舗クラウドソーシングプラットフォーム。アンケートへの回答やデータ入力などの誰でも挑戦できるような仕事から、ハイスキルが要求されるクリエイティブ案件まで幅広く探すことができます。

 

運営会社:ランサーズ株式会社

 

CrowdWorks

クラウドソーシング初心者向けプラットフォーム。受注の際の前払い制や独自のタイムカードシステム導入など、スムーズな取引のための工夫がされています。プロ向けの仕事から、スキル不要の仕事まで一通り揃っています。

 

運営会社:株式会社クラウドワークス

 

業種特化型クラウドソーシングプラットフォーム

 

techtree

エンジニア集団が手掛けるIT系フリーランス向けサービス。

 

運営会社:株式会社レイハウオリ

 

kakutoku

営業代行会社やフリーランス営業職のマッチングを専門にした業営業特化型のフリーランスプラットフォーム。

 

運営会社:カクトク株式会社

 

99designs

デザイナーとクライアントをつなぐためのデザイン系フリーランスに特化したフリーランサープラットフォーム。

 

運営会社:99designs

 

TALENT

ライティング業務に特化したクラウドソーシングプラットフォーム。

 

運営会社:株式会社フルスピード

 

プロジェクト参加型クラウドソーシングプラットフォーム

 

TEAMKIT

フリーランスが自身で立ち上げたプロジェクトチームのメンバーを募集したり、自身が他のプロジェクトに参加できたりするプロジェクトシェアプラットフォーム。

 

運営会社:株式会社Lbose

 

Teamlancer

フリーランスやパラレルワーカーのためのチーム支援プラットフォーム。 タイムラインでチームの状況をPRでき、メンバー募集や仕事依の受注ができる。

 

運営会社:エンファクトリー

 

 

初心者向けクラウドソーシングプラットフォーム

 

ママワークス

主に主婦のフリーランスを対象とした求人サイト。スキマ時間を有効に活用しながら、働く「時間」と「場所」を自由に選べる求人を多数掲載。

 

運営会社:株式会社アイドマ・ホールディングス

 

shufti (シュフティ)

スマ―トフォンで完結できる仕事や、PCがあれば誰でもスタートができる事務作業などフリーランス初心者も比較的仕事を始めやすいマッチングサイト。

 

運営会社:株式会社うるる

 

Bizseek

アンケートやライティングなどすぐできる簡単なものから、買い物代行や軽作業、バナー作成など幅広いフリーランスの仕事があります。

 

運営会社:株式会社アイランド

 

ココナラ

自分のスキルや知識を商品として1回500円のワンコインで出品できるクラウドソーシングサービス。

 

運営会社:ココナラ

 

このほかにもリモートワークできる仕事が探せるプラットフォームサービスがいろいろ登場しているので、自分のニーズに適したものを探してみましょう。

 

 

駐在妻のリアルライフ

 

長期継続型オンライン秘書サービス「HELP YOU」には、海外に在住する駐在妻が何人も在籍しています。

 

栗本梓さんの場合

総合商社で薬品の輸出入の営業をしていた栗本さんは、結婚後すぐにクウェートへ赴任した夫の後を追って、約半年後に自身も現地へ。現地でもできることはないかと調べていた中でHELP YOUを知り、面接を経て採用されました。HELP YOUではSNS分析のレポート作成やパワーポイントの資料作成、Instagramの写真投稿・文章作成の代行、メールマガジンの配信など、10社ほどの業務を担当しています。

 

栗本さんの生活スケジュールは、朝に3時間ほど仕事をして10時~13時頃までは家事や買い物・ランチ。それが終わったら再び2時間ほど仕事をするというもの。現地に来た当初は何もしなくていいことが苦痛だったといいますが、今は「もう一度海外に行ったとしても、HELP YOUでキャリアを継続できることが分かったので、ありがたいと思っています」と語っています。

 

宇治川紗由里さんの場合

現在はイスラエルに住む宇治川さんも駐在妻。夫の仕事上、一カ所に長く定住せず海外を転々とする生活を送っています。海外生活当初は現地で仕事を探したものの見つからず、仕事が見つかったとしても、数年で別の国に移住することが分かっていたので、「土地に縛られない仕事ができれば」とリモートワークを探し、HELP YOUに出会いました。

 

せっかく海外に住んでいるので、現地の人と触れ合う時間や、言語を学ぶ時間も取りたいと考えていた宇治川さん。「HELP YOUの仕事は自分で働く時間を決められるので、海外に住んでいるからこそ出来ることを100%やって、仕事もする。そういう生活ができます」と話します。

 

HELP YOUで最初に担当したのは、クライアントの商談の議事録作成と、それに基づく提案書の作成。その後様々なクライアントの業務を担当して能力を発揮し、日本に帰国してからHELP YOUの採用担当に抜擢されました。ところがその後、再び夫の転勤にともなって海外へ。当初は「夫と別居するか人事を降りるか」の二択しかないと思ったものの、「海外に住んでいたら、本当に人事業務はできないのか?」と思い直し、社長と交渉。その結果採用担当を続けられることとなり、現在はHELP YOUに応募する日本人の求職者と海外からウェブ面談をしています。

まとめ

駐在妻・転勤妻には、「移転するたびにキャリアが途絶えてしまう」「夫の赴任先で思うように仕事が見つからない」といった共通の悩みがありました。しかしながら、クラウドソーシングを活用してリモートワークをすることで、どこにいても仕事ができ、キャリアも継続できる時代が来ています。駐在妻・転勤妻の働き方のひとつとして、考慮してみてはいかがでしょうか。