働く人の「幸せ」が企業の成長につながる。幸福度向上のために組織ができることとは?

2021年12月、株式会社ニットで2日間にわたる大規模なオンライン忘年会「MEET UP 2021」を開催。イベントコンテンツの一つとして「『働く』を通じて、みんなを幸せに」という企業理念をテーマとした対談を行いました。このコンテンツはニットのメンバー400名を対象とした「幸福度診断」のアンケート結果を元にしています。ニットが企業理念を体現するために、どのように働く人の「幸せ」に向き合っているのかをご紹介します。
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ライター

三代知香
飛騨在住のフリー編集者。会社員時代はIT企業でマーケティングやPM、自社ブログの編集長を経験。メディアの立ち上げ経験を生かし、「くらしと仕事」のアクセス解析や新人育成を通して成果向上に取り組むほか、インタビューライターとして働き方や地方活性化をテーマとした記事を手がける。1児の母。→執筆記事一覧

「働く」を通じて、みんなを幸せに

2021年に新しく定めたニットの企業理念です。「働く」とはお金を稼ぐ手段であると同時に、自己実現の方法だと私たちは考えています。ニットに関わる全ての人に「働く」ことを通じて人生をより豊かにしてほしい。そのような思いで事業を運営しています。

ビジネスの意思決定や社内制度の策定においても、この企業理念をベースに考えています。ニット社内では、自分が理想とする働き方・生き方を追求してほしい、という思いから2015年の創業以来メンバー全員がフルリモートで勤務。「未来を自分で選択できる社会をつくる」というビジョンの体現を目指しています。

しかし、リモートワークはあくまでも手段。柔軟な働き方ができるからといって必ずしもメンバー全員が「幸せに」働けているとは限りません。そこで、2021年より「幸福度診断(Well-Being-Circle)」の実施をスタート。組織としてのあり方を模索するとともに、メンバー一人ひとりが主体的に「幸せ」を追求できているか、定期的に振り返りを行うことが狙いです。

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従業員の「幸せ」は組織に良い影響をもたらす

イベントコンテンツの冒頭では、そもそも幸せとは何か、幸せを追求することでどんな効果があるのかを司会の西出裕貴が説明しました。

「幸せ(Happiness)」は世界最先端の企業でも注目されている考え方です。働く人が幸せだと、個人だけではなく組織にとってもメリットがあります。アメリカ・イリノイ大学名誉教授のエド・ディーナー博士の研究によると、「幸せ」が個人や組織にもたらす効果として「創造性=3倍」「生産性=31パーセント増」「売上=37パーセント増」が期待できるといいます。これにともない欠勤率や離職率が低下することも組織にとってのメリットです。(出典:東洋経済「仕事の生産性にまで影響する「幸福」の正体」)

では、「幸せ」とは具体的に何を指すのでしょうか。「幸せ」の種類は大きく2つあります。「地位財(長続きしない幸せ)」と「非地位財(長続きする幸せ)」です。前者は「お金」「モノ」「社会的地位」により形成される一方で、後者は「心身の健康」「幸せな心」「所属の環境」により形づくられています。

ニットでは特に前者の「非地位財」に注目し、働く人が継続的に「幸せ」を感じることができる組織づくりを目指しています。

ニットでは「職場オススメ度」が最も高い結果に

「幸せ」という抽象的な概念を定量的に測るためにニットが活用したのが「幸福度診断」です。幸福学の第一人者である前野隆司教授と株式会社はぴテックが共同で開発した診断方法で、前述した「地位財」と「非地位財」を測ることで個人の「幸せ」度合いを可視化できます。

では、実際に2021年9〜10月にニット社内で実施した診断の結果を見ていきましょう。

まず、全体の傾向としてニットメンバーの幸福度は一般平均より大きく上回ることがわかりました。他社と比較しても幸福度が高い傾向にあり、同診断を実施した企業の中で上位30パーセントに位置します。

診断項目別に見ても全て一般平均を上回り、特に「職場の幸せ力」カテゴリが総じて高い結果でした。「職場オススメ度」が一般平均との差が最も大きく+13.50ポイント、次いで「チャレンジの推奨」が+12.17ポイント。「安全安心な風土」「信頼関係のある職場」も共に+9ポイントを超えました。

ニットではコミュニティ活動や社内イベントを通じたメンバー間の信頼関係構築を大切にしているため、それにより生まれた心理的安全性がこのような結果につながった理由の一つだと考えられます

また、「ありがとう力」カテゴリにおいては「感謝力」が+11.67ポイントでした。ニットでは会社のバリューを実現したメンバーに対して感謝の言葉と共にポイントを贈る「グッドポイント」制度を取り入れています。フルリモートで互いの顔が見えない状態で働いているからこそ「ありがとう」という気持ちをテキストで伝える習慣があり、そのような社風が今回の結果に反映されたのではないでしょうか。

加えて、「成長意欲」「挑戦力」「おもしろがり力」など、「感謝力」以外の項目が影響し合い、結果として高い数値につながったのではないかと西出は話します。

「そもそも、ニットには成長意欲が高い人が多い。成長するためには、新しいことに挑戦する姿勢が不可欠です。同時に、挑戦にともなう苦難も含め『おもしろい』と思えるかが鍵となります。そのようなパーソナリティを持った人が集まる組織だからこそ、互いの挑戦を応援し合い、結果として感謝の気持ちが生まれているのではないでしょうか」。

一方で、一般平均を上回っているものの差が小さかった項目もあります。「ストレスの低さ」「情緒安定力」「ポジティブ感情」の3項目については一般平均に近い結果でした。組織に対する満足度は高い一方で、個人の「心」の状態については伸びしろがあるようです。各人が孤立しやすいフルリモートという環境において、ここにどう向き合っていくかが今後の課題だと考えられます。

個人の「幸せ」を後押しするバリューの存在

ニット社内では、幸福度診断と合わせて「バリュー・ビジョンの体現度」に関するアンケート調査も実施しました。「『働く』を通じて、みんなを幸せに」を企業理念とするニットにおいて、メンバーの幸福度とバリュー・ビジョンの体現は深く関わっているからです。

ニットのバリュー・ビジョンは以下の通りです。

自分自身と他のメンバー、それぞれがどの程度バリュー・ビジョンを体現できているかを「体現できている」「どちらかというと体現できている」「どちらかというと体現できていない」「体現できていない」の4段階で尋ねたところ、総じて体現できていると答える人が多い傾向にありました。

特徴的なのは、自分よりも他者の方が「体現できている」と答える人が多かったこと。互いの良い部分を見て認め合う文化が表れているといえます。このような傾向も「幸福度診断」において「職場オススメ度」が高かった理由の一つではないかと、西出は説明しました。

幸福度診断の結果を元に企業ができること

このような結果を踏まえ、今後ニットは組織としてどのような対応をしていくべきでしょうか。主に2つの軸を中心に改善していきたいと考えています。

1つは、幸福度との相関が高いかどうかです。「幸福度診断」の中でも「人生満足尺度」や「自己肯定力」、「ストレスの低さ」、「感謝力」、「ポジティブ感情」などは幸福度との相関が高いとされています。

もう1つは、組織の働きかけにより改善が見込めるかどうかです。診断項目の中には、企業側の努力だけでは改善しづらいものもあります。例えば、項目の一つである「信頼関係のある家庭」においてはプライベートな要素も大きく、企業として改善に取り組むのはなかなか難しいでしょう。

一方で「自己肯定力」「感謝力」「実績」「社会的な地位」などの項目においては、組織の働きかけを通じてより高い結果を目指すことができます。一緒に働く仲間からの感謝の言葉に加え、組織内における正当な評価が、これらの項目における結果の向上につながると考えられます。

また、「ストレスの低さ」「ポジティブ感情」などの項目における改善を目指すにあたって、社内メンバーを対象とした講座やグループワークなどの実施は有効な手段の一つです。

ニットの代表取締役社長を務める秋沢崇夫は、第1回幸福度診断の結果をこのように振り返りました。

「ありがたいことに『職場のオススメ度』が高いという結果が出ました。その気持ちに応え続けるためにも、今後は個人のキャリアアップにつながる社内施策やサービスを展開していけたらと考えています。自身の成長を実感することが『自己肯定力』等を形成し、結果的に幸福度を高めることにつながるのではないでしょうか」。

その方法の一つとして、社内における「スキルのシェア」が挙げられます。それぞれが得意なことを仕事に生かすだけではなく、周囲に知見をシェアすることで相乗効果が見込めるからです。

大事なのは主体的に「幸せ」へと向かうこと

では、幸福度を高めていくうえで、個人としてできることは何でしょうか。

ニット社内では幸福度診断の実施は半年に1回ですが、個人的に毎月診断を受けている西出は、結果を元に振り返りを行うことが重要だといいます。「なぜこの項目のポイントは高かったのだろう?」「ポイントが低かった項目を改善するにはどうすれば良いだろう?」と思考を巡らせることが次のステップにつながります。「診断の頻度を半年に1回から月1回に増やすだけでも見えてくる変化はあるので、ぜひ試してみてほしいですね」と西出は話しました。

秋沢は「幸せ」を追求するのはあくまでも個人で、組織はそれを支援する存在なのだと強調します。

「受け身の状態では、本当の意味で個人が『幸せ』になることは難しいでしょう。本人が主体的に理想とする働き方・生き方を追求して初めて、企業側はそれをサポートすることができます。個人が『幸せ』に向かって何か挑戦したいと思った時に支えられる存在でありたいですね」。

▼この記事で紹介した対談の動画

まとめ

働く人の幸福度は組織運営に良い影響を及ぼすことがわかっています。企業が成長していくうえで個人の「幸せ」に向き合うことは一つの鍵といえるでしょう。一方で、個人としては「誰か(企業)に幸せにしてもらう」という姿勢ではなく、自分自身が主体的に実現を目指す必要があります。ニットはあくまでもそれをサポートする存在として個人の「幸せ」を応援していきます。
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