地方移住で地域と向き合いながら自分らしく暮らすコツ【鳥取移住体験談・後編】

地方移住で地域と向き合いながら自分らしく暮らすコツ【鳥取移住体験談・後編】

自分らしく理想の暮らしを送りたい。
そんな夢を描き、地方への移住を目指す方も多いのではないでしょうか。

しかし、「ここで本当に理想の暮らしを実現できるのだろうか?」と不安に感じることもあるかもしれません。

2017年に鳥取県鹿野町へ移住した吉井秀三さんは、さまざまな試行錯誤を重ねながら、7年間移住先での生活を続けています。
今回は、そんな吉井さんに、地域と向き合いながら自分らしく暮らすコツについて伺いました。

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インタビュイー

吉井秀三さん
結婚を機に前職を退職して地方移住を始め、2017年にHELP YOUへジョイン。現在は管理部で、社内のリスク管理や業務システムの改善やセキュリティ向上に向けた取り組みを推進している。
パラレルワーカーとして地域貢献活動も行っており、空き家の活用イベントや鳥取のAI活用の講師としても活躍中。

ライター

岩下直人
千葉県船橋市出身。新卒でスポーツ用品メーカーに就職後、研究員として10年間勤務。退職と同時に家族4人で北海道下川町へ移住。役場職員として勤務していたが、子供と過ごす時間を増やしたいとの思いから再び退職し、HELP YOUにジョイン。現在はフリーランスのWEBライターとして活動しながら、さまざまな業務代行を請け負っている。→執筆記事一覧

趣味で使い始めたChatGPTで地域貢献

鳥取県で開催されたAI活用セミナー。さまざまな企業・団体の担当者が熱心に耳を傾けている。

──最近、新たな取り組みとして地域向けにAIの活用研修を開いているそうですね。その理由を聞かせてください。

ChatGPTがサービスとして出始めた頃から、個人的な興味で使い始めていました。当初は、まだ周囲で利用している人がほとんどおらず、特に私が住んでいる地方では、その活用事例をあまり見かけませんでした。大手企業やIT関連の企業は少しずつ取り入れているものの、地域に密着した企業では、まだ導入が進んでいないことに気付いたんです。

その状況を目の当たりにして、このままでは地方が技術的に取り残されてしまうのではないか、と不安になりました。しかし、一方で、もし多くの人がこの技術を活用できるようになれば、地域の企業や団体の力になるのではないかとも思うようになりました。

そこで、県内に住む知人に相談し、県主催のセミナーでChatGPTの活用について紹介させてもらったんです。驚いたことに、その後さまざまな企業や団体からも声がかかるようになり、技術の普及に貢献できる場が広がっていきました。

趣味で始めたことが、少しずつ地域の役に立っていると感じると、とてもやりがいを感じます。

──今は企業や団体向けの研修が多いのでしょうか?

はい。今年は、商工会や商工会議所、さらには鳥取県が主催するリモートワーカー育成プログラムで、研修を行う機会がありました。また、夏頃には中学生向けのプロジェクトとして、AIを使って「未来の学校」を考える取り組みも企画しました。

これからの世代にとって、AIを活用することは当たり前になっていくと思います。ただ、地方では、AIを活用している職業が身近ではないので、自分で積極的に情報を取りに行く必要があります。

私自身、少しでもそのギャップを埋めたいという思いでAIを活用しています。そういった経験を子どもたちにも伝え、AIを自然に使いこなせるようになってもらえたらと願っています。

理想は「土地に縛られない」暮らし

自宅をリノベーションしていた時の一枚。この時の経験が、多拠点生活の可能性を考えるきっかけになった。

──移住生活を続けていくうえで、普段から心がけていることはありますか?

趣味や仕事を通じて、オンラインコミュニティで地域外の人とも積極的に交流するようにしています。そうすることで、視野が狭くならないよう心がけています。

最近では、もう一つ拠点を持つことも考え始めました。同じ場所でこれまで通りの暮らしを続けようと思うと、人間関係も固定化され、自分にとって最適な選択肢もだいたい決まってくると思います。

でも、他にも拠点があれば、新たな価値観にも触れることができますし、選択肢の幅を広げられるかもしれません。

「今住んでいる場所が本当に自分にとって最適なのか?」と考えることで、その土地に執着することなく、本当に自分らしい暮らしを追求することができる。そんな風に考えられるようになりました。

──なぜ、そう考えるようになったのでしょうか?

空き家のリノベーションを経験したことが、私にとって大きな転機になりました。

リーズナブルに空き家を手に入れて、セルフリノベーションをしたことで、「もう一軒や二軒なら、自分でもできるかも」と自信がついたんです。

「ここは一つの拠点として、また別の場所にも拠点を持つのもありだな」と、少し柔軟に考えられるようになってきました。

──拠点を増やすことで、どのようなくらしを実現していきたいですか?

これからはもっと地域外の人たちとの交流を増やしていきたいと思っています。

これまではコロナの影響もあってなかなか出かけることができませんでしたが、息子も小学生になったので、最近は旅行に出かける機会が増えました。旅行では、ADDress(*1)を活用して、さまざまな地域の人たちと交流するようにしています。

*1 ADDress: 月額料金で全国の宿泊施設に住み放題の多拠点コミュニティサービス

自分たちの地域の良さを再確認できるだけでなく、他の地域の魅力にも気づけるので、とても刺激的です。いろいろな場所を訪れたり、そこで出会う人たちとの交流を通じて、視野が広がるのも楽しいですね。

また、ADDressを使うと、家を購入せずに一定期間その地域に滞在できるのも魅力です。そういった柔軟な暮らし方ができるといいな、と考えています。

さらに、徳島にはデュアルスクール(*2)がありますが、教育委員会に確認したところ、これまで鳥取からこの制度を使った方はいないそうです。もし機会があって、私たちがこの制度を活用できれば、「仕事で家を空けたいけれど、子どもの学校があるから難しい」といった悩みを少しでも解消できるかもしれないと感じています。

*2 デュアルスクール:都市圏の小中学生が、住民票を異動させることなく地方の公立小中学校で学べる制度

33都府県90拠点に滞在、アドレスホッパーが選択する理想のくらし

自分なりの目標が生み出す、自然な交流

地域の方と一緒に作る梅シロップ。わからないことは「人に聞く」。交流を生み出すのは、そんなシンプルな発想なのかもしれない。

──移住先でゼロから人間関係を構築していくのは難しくありませんか? 吉井さんはどのようにコミュニケーションを取っていったのでしょうか?

私自身、誰かとコミュニケーションを取るときは、自分なりに目的を持って接するようにしています。例えば、空き家を探しているときや、畑のことで知りたいことがあるときなどです。

地域に具体的な課題があると、それをきっかけに話すことで、自然とコミュニティが広がっていきました。そんなふうに、少しずつつながりが増えて、今の生活ができています。

──移住して間もない人は、積極的にコミュニティに入るべきか悩むことも多いと思います。吉井さんご自身はいかがでしたか?

私は、お酒を飲まないので、お酒の場でコミュニティを広げる機会が少ないのですが、私たち家族は子育て関連のイベントを通じて、少しずつつながりを増やしていきました。最初は軽い挨拶程度でも、お互いに子育てという共通の関心があるので、困ったときには気軽に連絡できる関係ができて、安心感があります。

新しいメンバーを温かく迎え入れ、さりげなくサポートしてくれるコミュニティも多いですよ。

私の場合も、お酒を飲まないことや子育て中であることを理解してくれる人が多かったので、自分に合ったペースで無理せず付き合うことができました。もしかしたら、知らないところで気を遣っていただいているのかもしれませんが(笑)。

──何でもかんでも、むやみやたらに付き合う必要はないと。

そうですね。まずは、自分が何を求めているのか、やりたいことや大切にしたいことにしっかり向き合うことが大事だと思います。私も最初は、子育てや仕事、そして目の前の課題に追われていて、コミュニティに入ることをあまり意識していませんでした。

でも、自分が必要としていることや、やりたいことに対して解決策を持っている人や、それを必要としてくれる人と自然につながるんですよね。例えば、「畑を借りたいんだけど、誰か貸してくれる人いないかな?」というような感じです。

最近のことですが「リノベーションのワークショップを開きたい」と周りに話してみたんです。すると、すぐに自治会や県、市の方々とワークショップに関するミーティングを開くことになり、話がどんどん広がっていきました。

また、鹿野町は車で2時間あれば大阪にも行ける距離なので、地域外のイベントにも気軽に参加できます。そこで出会った方たちとはSNSでつながっていて、いろんな情報やアイデアを共有できるのもありがたいですね。

──本当に、さまざまなところへ精力的に顔を出していらっしゃるんですね。逆に吉井さんが、周りから声をかけてもらうことはありますか?

AI活用の研修がきっかけで、「Canvaの使い方講座」や「リモートワークでのプロジェクト管理方法」など、私の得意分野やこれまでの経歴に関連した研修を開いてほしいという声をいただくようになりました。

何か一つのテーマで活動の場が広がると、地方では人手が少ないため「他にも何かお願いできるかも」と思ってもらえるのかもしれませんね。

興味関心で広がる、地域との新たな関わり

息子さんがAIを使って作り出した画像。子どもは新しいものでもすぐに適応し、あっという間に使いこなしていく。

──最後に、今後についてお聞かせください。はじめに、ご自身のお仕事についてはいかがでしょうか。

今、AIを活用した取り組みがどんどん広がっていて、私もとても面白く感じています。そんな中で、子ども向けの企画にも関わっていけたらいいなと思っています。

AIが当たり前になりつつある現代でも、AIについて学び活用する機会がまだ少ないと感じています。そこで今考えているのは、AIの活用により、新たな体験の場を提供することです。

AIを使えば、ゲームや漫画、音楽、アニメなどさまざまなものを作ることができます。何かやってみたい、作ってみたいという創作意欲をさらに膨らませられるのではないかと考えています。

小学1年生の息子も少しずつAIを使い始めていて、自由研究にはAIを活用しました。まだ漢字やアルファベットを習っていないので、音声でAIを操作しています。息子の疑問には、大人でも答えるのが難しいものもあり、WEB検索でもなかなか見つからないことがあるのですが、AIが簡単に答えてくれるので驚いています。これからは、AIがサポートしてくれることで、物事を考えるプロセスも少しずつ変わっていくのではないかと感じています。

学校教育ではまだAIについて学べる機会が少ないし、プログラミング教育や1人1台のタブレット配布にも時間を要したので、もしかしたら今の子どもたちが大人になる頃にようやくAI教育が本格化するのかもしれませんね。それまでの間に、今の子どもたちに少しでもできることがあればと思っています。

──自分の経験ややりたいことが、お子さんの学びに直接役立つと嬉しいですね。お子さんとはどのように過ごしていますか?

夏休みの工作で取り組んだ「リアルマインクラフト」の制作風景。一つひとつの材料を自分で準備し、丁寧に色付けをしていく。その過程も、楽しみを生み出している。

毎日家にいるので、特に夏休みは息子と過ごす時間が長かったです。今年の夏休みの工作は、一緒に「リアルマインクラフト(*3)」をやってみました。

*3 マインクラフト:ブロックを使って自由に世界を作り、冒険するゲーム。冒険や建築を楽しむだけでなく、プログラミング教育にも活用され、論理的思考や創造力を育むことができると言われている。

DIYで余った木材を細かく切って、街やアイテムを作るというものです。学校でも作品の評判が良く、何より息子自身が楽しんで作っていたので、見ていてとても嬉しかったです。これをもっと大きな規模でやってみたら、さらに面白くなるんじゃないかと思っています。

今後はパーツの数を増やしたり、材料や塗料の種類を増やして、バリエーションを広げていきたいですね。作品としてのクオリティも高めていきたいですが、それと同時に、周りの人にもこの体験をシェアできる機会にしたいと考えています。

今回の作品を通じて、多くの人がクラフトに興味を持ってくれていることに気付きました。そこで、「やってみたい」と思っている人と一緒に製作を分担して、みんなで作り上げる体験を提供できたらと思っています。そして、できれば息子自身が主体となって取り組んでくれたらいいな、と。小学生のうちに、企画の経験を積ませたかったので、これが良い機会になると感じています。

今年のHELP YOUマルシェ(*4)でも展示するので、ぜひ見てくださいね。

*4 HELP YOUマルシェ: HELP YOU外の仕事や趣味の取り組みなどを披露できる社内マルシェ。HELP YOUでは、マルチに活躍しているメンバーが多い。

前編はこちら▼

地方移住成功のヒント! 地域とつながる空き家活用【鳥取移住体験談・前編】

まとめ

吉井さんの地域と向き合いながら自分らしく暮らすコツは、自分の経験や得意分野を活かして、地域貢献することでした。

自分の興味関心のある分野で「地域のために何ができるか?」を考えて行動していると、そこには自然と交流が生まれます。

そのようにして、移住先で充実した暮らしを実現している吉井さんですが、常に視野を広げる努力をし、現在も自分の理想の暮らしを追求しているといいます。

あなたの理想の暮らしを実現できる場所はどこでしょうか?
ここだ!という場所を見つけたら、ぜひ移住への一歩を踏み出してみてください!

その一歩はきっと、あなたの人生を豊かにしてくれるはずです。

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