やっぱり、この仕事が好き。「やりたい」を実現するフリーデザイナーへの道のり

HELP YOUで活躍するフリーランスデザイナーの三輪志信さん。もともとデザイナーとして企業に勤めていましたが、精神面での不調をきっかけに自らの働き方を見つめ直し、選んだのが在宅フリーランスの仕事でした。デザイナーとして独立するために、どのような道を歩んできたのか。また、サブカルチャーを愛する一人の人間として、今後どこを目指すのかを聞きました。
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ライター

三代知香
飛騨在住のフリー編集者。会社員時代はIT企業でマーケティングやPM、自社ブログの編集長を経験。メディアの立ち上げ経験を生かし、「くらしと仕事」のアクセス解析や新人育成を通して成果向上に取り組むほか、インタビューライターとして働き方や地方活性化をテーマとした記事を手がける。1児の母。→執筆記事一覧

転職を繰り返すなかでデザインスキルを習得

現在のお仕事内容についてお聞かせください。

三輪志信さん HELP YOUで活躍するフリーランスデザイナー。芸術系の学校でデザインやアートを学び、卒業後は人材会社で広告制作アシスタントのアルバイトを行う。その後、音楽レーベルでCD・DVDにまつわる制作物のデザインやディレクションなどを経験し、妊娠・出産を経てフリーランスの道へ。HELP YOUには2017年7月にジョイン。サブカルチャー系のイラストが得意。最近の趣味は山登り。

 

Web・紙媒体問わず幅広い領域のデザインをしています。具体的には、パンフレットの誌面デザイン制作や、イラストアイコンの制作などです。これまでには、47都道府県ごとに特産品や名所をアイコン化する仕事もありましたね。例えば、鳥取県のアイコンには砂丘を表現するためにラクダのイラストを入れました。

フリーランスになる以前は、どのようなお仕事をしていたのでしょう?

芸術系の学校に在学中から、音楽関係の飲食店でアルバイトをしていました。現代アートに興味がある一方で、音楽もすごく好きだったんです。

ジャズのディナーショーを行っているお店で。卒業後もしばらくそこで働き、社会人になったことを機に広報の仕事もやらないかとお店から打診されていたのですが、アルバイトの帰り道、事件に巻き込まれたことが原因で精神的に参ってしまいました。

働いていた飲食店は夜営業だったのですが、その出来事をきっかけに昼の仕事を探し、卒業後は人材系の会社で広告制作のアシスタントをすることに。しばらく経つと支店から本店へ異動になり、その時に広告デザインについてきちんと学びました。

次第にまた音楽関係の仕事に携わりたいと思うようになり、副業としてインディーズのレーベルで働き始めました。当時の勤め先が副業を推奨する社風だったことも背景にあります。そこでの仕事にやりがいを感じ、副業から本業へシフト。デザインの枠を越えて、CDリリースに関わる業務全般を行いました。流通会社が店舗に行けない時は、CDを40〜50枚抱えて渋谷の街を自転車で走ったこともありましたね(笑)。

無理をしたせいか体調を崩してしまい、退職後しばらく休んでから派遣でCD・DVDの制作会社に入りました。デザインがメインの仕事で、確か半年ほどで契約社員にしてもらえたと記憶しています。そこでは大手テレビ局の長寿番組でDVDを出す際の制作デザインを担当したこともありました。

友人との仕事をきっかけにフリーデザイナーへ

デザイナーとして忙しい毎日を送っていたのですね。フリーランスになったきっかけは何だったのですか?

当時、夫がフリーランスとして働く姿を近くで見ていたことがきっかけです。

仕事自体は楽しかったのですが、ある時、勤務先のオフィスが移転になりました。暗い坂の上で。偶然にも、学生時代に巻き込まれた事件を彷彿させるような場所だったんです。精神的に通勤が難しくなり、ついにはドクターストップがかかりました。

休業していた2年間は、夫が在宅ワークをしながらそばで支えてくれて。「もしかしたら、自分にはこういう働き方が合っているのかもしれない」と漠然ながら思っていたんです。

そうこうしているうちに子どもを妊娠・出産し、「そろそろ働かないと」と思っていたタイミングで、友人からデザインの仕事をやらないかと声がかかりました。イタリアのナポリで修行を積んだピザ職人で、軽井沢に自分のお店を出すので装飾品やロゴのデザインを頼みたいとのことでした。

三輪さんのご友人が経営する本格ピザのお店「アフェネステッラ」のオフィシャルサイトより。写真に写っているロゴやランチョンマットなどのデザインを手がけたそう。

 

その時に改めて、自分はデザインの仕事が好きなのだと実感し、フリーランスへの転向を決意しました。

ご友人とのご縁から手がけた仕事が、フリーランスになる決意を後押ししてくれたのですね。

もともと、一つの会社で働き続けることに違和感があったのもフリーランスという働き方を選んだ理由です。会社勤めだと、特定の業務領域における経験を積むことはできますが、全く別の領域に触れる機会ってなかなかないですよね。例えば、CD・DVDに関わるデザイン制作をしている人が、Webデザインに携わることは少ないでしょう。もっと幅広い仕事を経験し、自分の可能性を広げたいと思いました。

おそらく、音楽レーベル時代の同僚に複業をしている人が多かったことも影響しています。デザイナーをやりながらCD制作を行っていたり、医者として働く傍らミュージシャンをやっていたり。そういう方々の存在も私の中でモデルケースになっています。

フリーデザイナーに必要なのは相手を深掘りする力

三輪さんがイラスト制作を担当した、ファイオン株式会社様のWebサイトトップ。

HELP YOUには2017年7月にジョインされたのですよね。どのようなきっかけだったのでしょう?

「ママワークス」という在宅求人を多数掲載しているサイトで見つけました。

HELP YOUでは、フリーランスとして必要な多くのことを学んでいます。実際に業務を行うスタッフとお客様との間にディレクターがいて、案件の進行管理などを担当してくださっています。コミュニケーション能力が高い方が多く、テキスト文面一つとっても、簡潔でわかりやすい文章の中に人間らしい温かみがあるんです。

フリーランスにとって重要なのは、業務スキルはもちろんのこと、コミュニケーションスキルです。相手に対する気遣いなどをディレクターの皆さまから日々学ばせてもらっています

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HELP YOU以外だと、展示会の運営会社で制作物のデザインをしていました。エントランスに設置するパネルの制作や、ステージ背景に使用するグラフィックデザインなどです。サッカーチームのファン感謝デーで使うロゴの制作をしたこともありましたね。大変でしたがその分やりがいも大きかったです。

フリーランスになって大変だったことは何ですか?

お客様がどんなデザインを求めているかを探るのが大変だと感じました。例えば、「可愛いデザイン」とひと言でいっても、お客様が思う「可愛い」と私が思う「可愛い」は異なりますよね。自分自身の固定観念にとらわれず、お客様のいう「可愛い」が何を意味するのかきちんと引き出すことを大切にしています。

デザイナーと仕事をすることに慣れていないお客様と接する時はなおさらです。制作に着手する前段階で、できるだけお客様の趣味嗜好を深堀りする姿勢が求められます。相対する人をきちんと「見る」大切さはフリーランスになってから学んだことの一つです。

会社勤めの頃は、このような大変さを感じるシーンは少なかったように思います。組織立って動いていたこともあり、私の元へ依頼がくる段階ではデザインの方向性が明確になっていたからです。それに、悩んだ時には社内の誰かしらが助けてくれました。

フリーランスの場合は、自分で情報をとりにいかないと完成に近づくことすらできません。自力で解決しなければならない大変さはありますが、その分お客様の期待に応えられた時のやりがいは大きいですね。

フリーデザイナーとして仕事を軌道に乗せるには

フリーランスになってすぐは思うように仕事をとれず悩んでいる人もいるかと思います。仕事を増やすために工夫したことは何ですか?

2つあります。1つは、自分ができることを然るべき相手に向けて発信することです。例えば、私が仕事でイラストを書いているとママ友に話したところ、その人が手がける絵本の作画を担当することができました。

 

全方位に向けて発信するというより、「何か新しいことを始めようとたくらんでいそうな人」に話すのがポイントです。常にアンテナを張りながら人と交流することを大切にしています。

もう1つは、一度のチャンスをものにすることです。どの制作現場においても人手が足りない瞬間はあります。そこでヘルプ要員として声をかけてもらった時に、いかに良い仕事をするかが重要です。与えられた期間内にクオリティの高い成果物を出せば、次も声をかけてもらえる可能性が高まります。必要な時にきちんと仕事をしてくれるフリーランスは重宝されるため、自然と仕事は増えていくのではないでしょうか。

フリーランスの場合、なかなか単価が上がらないことも悩みどころですよね。単価を上げるために工夫すべきポイントはありますか?

そのデザインを作るのに何時間かかるか工数を見積もったうえで、自分なりの時間単価を決めて交渉することです。依頼内容に応じて時間単価は変動するでしょう。例えば、高いスキルが求められる案件なら時給3,000円、簡単な作業なら時給1,000円などです。自分の中で決めた時給に想定制作時間を掛けて1案件あたりの単価を算出しています。

交渉の際には「なぜ高いスキルが求められるのか」「なぜ制作にこれだけの時間がかかるのか」、その根拠を丁寧に説明することが重要です。同時に、希望する金額で納得してもらえなかった時のために自分の中で最低単価も決めておくと良いでしょう。それすらを下回ってしまう場合は、仕事を辞退する判断も必要かと思います。

在宅フリーランスだから叶えられる地方移住の夢

最後に、今後やりたいことをお聞かせください。

現在は東京に住んでいますが、埼玉県飯能市へ移住して、いつかはお店を開く予定です。来春の引っ越しに向けて、今家をDIYしているところなんですよ。仕事の合間を縫って引っ越し準備ができるのもフリーランスという働き方の良いところですね。

長いこと東京でくらしていますが、前々から都会での生活スタイルが自分には合っていないような気がしていたんです。私にとっては、人も、物も、多すぎるんですよね。

物理的に人と人との距離が近いわりには、互いのことを全く知らない状況にも違和感があります。もちろん、それが良いと感じる人もいますよね。でも、私の場合は自分の手に余らない数の人と、互いの顔が見える関係を築きながらくらしていくのが理想です。

どんなお店を出すかは構想段階ですが、子どもたちが音楽をはじめとしたサブカルチャーに触れられる場をつくりたいと思っています。自分自身がサブカルチャーから影響を受けながら生きてきたことが、その考えに至った理由として大きいですね。

音楽関係の飲食店というと、どうしても大人向けで夜のイメージがありますよね。でも、音楽って本来、子どもから大人まで幅広い世代が触れられるべきものではないでしょうか。

飯能には、アーティストや作家さんなども多くいらっしゃいます。焼き物やアイアン工芸品を手がける人など多種多様です。

そうした地域の人たちと交流をしながら、少しずつ夢を形にしていきたいと思います。お店という空間を通して、子どもたちが自分のくらす地域を誇りに思えたら素敵ですね。

家族と過ごす「時間」の価値を実感 地方会社員からフルリモートのフリーランスに転身

まとめ

もともとデザイナーとしての経験は豊富な三輪さんでしたが、会社勤めとフリーランスとでは仕事の進め方が異なり苦労することもあったようです。フリーランスデザイナーに求められるのは、お客様の漠然としたイメージを具体化する「深掘り力」。きちんと依頼相手に向き合うことで「次もこの人にお願いしたい」と思ってもらえる成果物が出せるのですね。仕事を増やすコツや、単価交渉のポイントについても解説してくれたので、これからフリーランスデザイナーを目指す方はぜひ参考にしてみてください。

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