シングルマザーだって輝きながら仕事をしていきたい!「エスママ」起業にこめた思い

日本全国で123万世帯にものぼるという母子家庭。子育てをしながら働くシングルマザーの生活を向上させたい、良いイメージを芽生えさせたい。そんな思いからシングルマザーだけのライターチームを作り、オウンドメディア運営とサービス提供をしている株式会社エスママ代表の竹田扶美可さんと所属ライターの佐藤さんにお話を伺いました。

ライター

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

シングルマザーだけのライティングサービスを起業、見えない偏見をくつがえしたい

※エスママ代表 竹田さん

エスママの事業内容について教えていただけますか?

竹田さん(以下敬称略):

1つは、オウンドメディア「エスママwith」の運営です。シングルマザーの人たちへ向けて有益な情報発信をしており、掲載記事のライティング・編集・運営もすべてシングルマザーのメンバーで行っています。

もう1つは、シングルマザーライターによるライティングサービスの提供です。ディレクター制を採っていまして、チームで執筆・編集までを受注しています。

竹田さんがエスママを起業されたきっかけは? 

竹田:私自身も離婚してシングルマザーになったのですが、生活している中で窮屈さ、息苦しさのようなものを感じることが度々ありました。シングル家庭だと言っただけで、「子どもがかわいそう」と言われてしまったり、「あそこは母子家庭だから……」と噂話をされたりただし、それは社会側だけが問題なのではなく、実は自分の中にもシングルマザーであることに対する恥ずかしさや後ろめたさがあると気づいたんです。

そんな風に社会や自分自身の偏見がある限り、自分の子どもも「母子家庭の子ども」とレッテルを貼られてしまう。「シングルマザーのイメージを変えなきゃ!」と思いました。

離婚はママたちにとって第二の人生のスタートなんだと、もっとポジティブにとらえていきたいと思ったんです。

 

起業されたのはいつ頃ですか?

竹田:法人格の立ち上げは2019年4月1日。構想や準備に1年かけたので、トータルで考えると2年になります

 

起業の準備というのは、具体的に協力してくださる企業や参加メンバー探しですか?

 

竹田:それもありましたが、第一にやったことは実際にシングルマザーの方に話を聞くことでした。私自身の思いはありますが、他のママたちはどう思っているのか分かりません。ですから、いろんな方に紹介してもらってシングルマザーの人に会い、生活上悩んでいること、どんな風に生きていきたいか、子どもとどう関わりを持っていきたいかなどをヒアリングしました。

 

そのヒアリングの結果が今のサービスに活きていますか?

竹田:そうですね。皆さんが望んでいたことのひとつに「お金の問題」がありました。シングルマザーの収入が制限されてしまっている理由のひとつに、決まった時間に決まった場所へ行かないと仕事がでない今の社会のスタイルがあります。これはシングルに限らず、お子さんを持つワーキングマザーの方々にも共通する悩みだと思います。そこをクリアしないと収入アップが見込めない、収入が上がらなければキャリアも途絶えることになる。ですから、在宅であってもある程度の収入が稼げる仕組みを目指そうと思い、それが今に活きています。

転職活動でのセクハラ質問に傷ついた過去。辛い経験も誰かの勇気になれば

次に、宮城県在住というエスママのライターの方にお話を伺っていきたいと思います。佐藤さんは離婚されて11年、現在2人のお子さんと暮らしていらっしゃるそうですが、エスママに参加される前はどういった仕事をされていたのですか?

佐藤さん(以下敬称略):

私は離婚前からパートで働いていたのですけど、離婚前後は子どもが小さかったのでCDレンタルショップのパート勤務から始めて、その後は正社員で事務の仕事をしていました。下の子どもが年長の時に発達障がいが分かり、子どものケアをするために正社員で働くことが難しくなってしまいました。そこから3年スパンで転職する状況が続いて、今は昼間は公的機関の臨時職員を、夜の時間を使ってライターの仕事をしています。

 

昼間の仕事の他に、空いた時間で何かしようと考えてエスママと出会ったのですか?

佐藤:仕事を増やそうと思ったきっかけが、上の子どもの受験です。「中学受験をしたい」と言われて、そのためには塾に通う費用や学費を捻出しなくてはいけないと思いました。最初はコンビニで夜間のアルバイトを、と思ったのですけど、勉強しなくてはいけない当の長男が私を心配して寝ないで待っているんです。

それでは本末転倒なのでどうしようか悩んでいた時、既にwebライターの仕事をしていたいとこが「アンケート回答からやってみたら?」と大手クラウドソーシングサービスを勧めてくれました。簡単なライティングやアンケートを請け負っていましたが、もっと他にも自分にできる仕事はないかなと探していた時にエスママの募集を見つけて、今に至ります。

 

他のクラウドソーシングサービスでのライターも続けているのですか?

佐藤:はい、続けています。ただ、そちらの方ではなかなか収入が増えません。これまでライティングだけではなく、覆面調査員をしたり受験体験談の電話取材を受けたりしました。

 

個人で案件を探すのは大変だと思いますが、その点エスママに参加していると案件を紹介してもらえる良さがあるのでしょうか?

佐藤:それはありますね。他社のクラウドソーシングサービスだと、自分ができそうなものを探すところから始めなくてはいけません。エスママは竹田さんから「こういう仕事がありますよ」とご連絡をいただき、選ぶことができます。効率良く仕事ができるので、助かっていますね。

 

今仕事をしているバランスとしてはどうですか?もっとこういうことを増やしていきたいということはありますか?

佐藤:もともと企業で経理や総務の仕事をしていて、簿記やパソコンの資格も持っています。ですから、業務委託で経理や簿記の仕事が継続案件であればいいなと思います。在宅であれば子どものサポートもしやすいですし、時間も取りやすいので、例えばライティングの仕事をしながら月2~3万円ぐらいの収入になる経理の仕事があると心に余裕が出るかなと。

 

仕事をしている上で、一番大変だなと思うことは何ですか?

佐藤:子どもが生まれた時から働いてきて思うのは、子どもが小さかったりシングルマザーであったりという条件では、自分の親が近くにいないと就職はとても難しいということ。

 

面接の際には、母子家庭である事は隠さずに伝えていますが、企業によっては、面接で「結婚の予定は?」「子どもを産む予定は?」「今、彼氏はいますか?」などと聞かれました。地方のせいか、そういうセクハラ質問がまだ当たり前にあるんです。どういう神経で聞いているのかなと思います。それなのに、一次選考ではなく最終選考の段階で「あなたは母子家庭なので」と言われ落とされてしまいました。

結果的に短期間などの期間限定での就職になり、職歴が増えていってしまい、書類選考も通りにくくなって……。

 

辛い思いをされたのですね。そういう体験を、ライティングの仕事で書くこともあるのでしょうか?

佐藤:私の場合は体験談ネタにしています。離婚にまつわることも、時々。匿名記事なので私が書いたものだと分からないですが、それでも同じような境遇にある方が読んで役に立っているかもしれないと思うと、うれしいですね。

今後はさらにメンバーを拡大して、シングルマザーの生活向上を応援

竹田さんに質問を戻しますが、シングルマザーのライターさんたちがメンバーとして関わってくれている中で、重視していることは何ですか?

重視しているのは、「任せること」です。エスママで書いてくださっているライターさんは、ほとんどが副業でやってくださっていて、ライターの仕事一本でというのは数名です。

皆さんが本業の他に夜間や休日を使ってライターとして働いてくださっているので、できるだけそれぞれのライフスタイルに添う形で仕事をしてほしいと思っています。

ですから、月に何本納品しないといけないというようなノルマはまったく設けていません。こちらから案件のお声がけをして、受けてくれる方にお願いする形です。仕事をする時間や本数は、すべてご本人にお任せするところを重視しています。

月にこれだけはプラスで働きたいという人、お小遣い程度でという人、それぞれに欲している収入も違うと思うんですね。だからこそ、業務量や時間などに関する決まりは設けないようにしています。

 

所属メンバーの方は全国に散らばっているのですか?

竹田:北は北海道から南は福岡まで、全国各地にお住まいの方が仕事をしてくれています。メンバーは随時募集しており、エスママwithのサイト経由でお問い合わせをいただいている状況です。

基本的にオンラインですべてが完結するので、皆さんがどこに住んでいても、何時に働いてもらっても大丈夫です。

 

エスママとしては今後メンバーを増やし、事業規模を大きくしていきたいという展望を持っていますか?

竹田:そうですね。現在定期的に活動してくれているライターさんが15名、この人数を増やしていきたいと考えています。そうすれば受注できる案件数も増えていきますから。

一方で、在宅でできる業務はライティングだけではないと思っています。他の業務にも広げていけたらいいですね。

私が人材業界出身ということもあり、働くことへの強い思い入れがあります。シングルマザーの方たちは生活のために働かなくては、というのが大前提としてありますが、人は働くことによって生きがいを感じたり、社会の役に立っていると実感できるたりするのではないかと。そういう思いをメンバーの方たちと共有していきたいです。

 

まとめ

シングルマザーが自分らしくいきいきと働いて生きていくためには、今の社会や自分自身の中に潜んでいる偏見を取り除かなくてはいけないと問題意識を持った竹田さん。そして、竹田さんが起業した「エスママ」のライターの一員である佐藤さん。お二人の言葉から自分の仕事への喜びと、それをモチベーションとしてもっと大きく育てていきたいという意気込みを感じました。シングルマザーの人が活躍できる場が広がっていくことを願っています。