オンラインで実現する新たな学びの場 海外を知ることで広がる生き方の選択
令和3年6月7日〜8日の2日間にかけて、株式会社ニット(以下、「ニット」)は熊本県のルーテル学院高等学校との合同企画「オンライン国際交流授業」を実施しました。授業には700名以上の生徒が参加し、東京・熊本・コートジボワール・ベリーズがオンラインで繋がりました。この記事では、授業の様子をレポートします。
目次
ライター
ニットの願いー国際的な広い視野を持つ機会を高校生に
今回、国際交流授業を開催するきっかけになったのは、ルーテル学院の先生がインドネシアと宮城県富谷市の子どもたちによるオンライン国際交流授業の記事を見かけたことだったそう。
ルーテル学院には海外へ関心の高い生徒が多く、学校は彼らが国際的な視野を広げるサポートをしたいと考えています。こうした学校の願いとニットのビジョンが重なり、総合的な探究の時間の一環として今回の交流授業は実現しました。
ニットは創業以来、フルリモートワークを前提として成り立っており、2021年6月現在、在籍メンバーは日本各地、世界33か国に400名以上います。各メンバーが離れた場所で暮らしながらも、チームとして仕事をしているのがニットです。
今回、国際交流授業でコートジボワールとベリーズを紹介してくれたのは、リモートワーカーとしてニットで活躍する2人のメンバー。
コートジボワールからは、ディレクターとして働きながら世界各国でボランティア活動をする田崎起子さん。ベリーズからは、スタッフとして活躍する現地在住の大竹由華さんがそれぞれの国を紹介しました。
授業の冒頭では、ニットで広報を務める小澤美佳さんから、ニットの事業内容やワークスタイルなどについて説明があり、働く場所や時間を自由に選べるというニットの働き方に関心をもって話を聞く高校生の姿がありました。
小澤さんは「今回の授業が皆さんにとって世界を見るきっかけになると嬉しいです」と授業にかける思いを語りました。
コートジボワールとはどんな国?教育制度と高校生の実情
授業で最初に取り上げられたのは、西アフリカに位置するコートジボワール。日本との時差は9時間のため、ビデオでの紹介となりました。
赤道に近いので、高温多湿という気候帯です。かつてフランス領だったことから公用語はフランス語が使われています。
続いて、教育制度について説明がありました。
コートジボワールでは4割以上の子どもが高校に通えない現実があります。
小澤さんは教育制度について違いを説明しながら、現地では日本のように中学校や高校、大学に行くのが当たり前ではなく、多くの子どもが教育を受けられない実情を知って、視野を広げてほしいというメッセージを伝えました。
続いて、田崎さんが現地の学校へ訪問した際に撮影されたコートジボワールの高校生へのインタビュー動画。
落第制度や飛び級があるので、高校にはさまざまな年齢層の人が通っています。
ここで、田崎さんが現地の高校生にルーテル学院からの質問を投げかけます。
コートジボワールのいいところや自慢できるところとして、音楽やダンスが盛んであることや、さまざまな国籍を持つ人や民族が互いを受け入れながら共存している国であることを教えてくれました。
続いて「日本の文化について知っていますか?」に対して、高校生は「日本のアニメや漫画、ゲームは私たちの国でもとても有名ですよ」との答えが。
コートジボワールの子どもにも日本の文化が伝わっているのは嬉しいですね。放課後の過ごし方は、スポーツや勉強など日本の高校生と似ているようです。
また、「コートジボワールで改善が期待されるところは何ですか?」という質問には、「学校や職場に行くための交通環境の整備です」との回答。全ての子どもに教育が浸透することの難しさがインタビューからもわかります。
次に映し出された動画のタイトルは「~アナザーストーリー~学校にいけない子どもたち」。現地で働く子どもからのメッセージが送られました。
田崎さんはコートジボワールで出会った子どもや現地に住む人々の笑顔に惹かれ、現地に渡ることを決めたそうです。現在は世界各国でボランティア活動をしながら、フルリモートで働いています。アフリカでHIV孤児の総合施設をつくるという夢の実現に向けて働き方を選択し、進み続ける田崎さんから、高校生へのメッセージが送られました。
「コートジボワールには『今』を生き抜くのに精一杯な子どももたくさんいます。しかし、彼らは自分が置かれた環境を憂いたり下を向いたりすることなく、毎日に希望の光を見出しながら笑顔で生活しています。私は、そんな彼らの力強い生き方に惹かれました。大事なのは、どんな環境で生まれたかではなく、『今』を受け入れ、自分がどう考え、どう生きるか。コートジボワールの子どもから、そのことを学びました。
皆さんが、海外で暮らす同世代の子どもから何かを学びとり、今後、人生を選択するうえでの参考にしてもらえたら嬉しいです。そしてこの授業が、お互いの国や文化に関心をもち、国際的な視野を広げるきっかけになればと思います。皆さんなりに、国籍や人種などの『違い』に関わらず、お互いを尊重し合うことについて考えてもらえたら嬉しいです。互いを大切にする、平和な時代が築けることを願っています。」
コートジボワールに暮らす現地の子どもや田崎さんのメッセージを受けたルーテル学院の高校生たち。授業後のアンケートでは「コートジボワールの子どもから受けた『私は決してあきらめないで頑張っていく』というメッセージを胸に刻んで頑張っていきたい」という感想がありました。
高校生一人ひとりが国の実情を知り、考えを深めている様子が伺えました。
ベリーズとは?多種多様な文化が共生する国
次に繋がったのはスタッフの大竹さんが住むベリーズ。アメリカ大陸の中央に位置する、一年中暖かい亜熱帯気候の国です。
ここで「ベリーズを知ろう!」をテーマにクイズが出題。
ベリーズという響きから、ブルーベリーやベリーと似ていて果物を連想させますね。
気になる正解は……?
③の湿地帯でした。ベリーズは国土の7割が湿地帯なので、それが国名にもなっているんですね。
続いては使用言語について紹介がありました。
ベリーズの公用語は英語ですが、他にも多岐にわたる言語が使われています。例えばマヤ語やクレオール語などもベリーズで使われる言語です。
さまざまな人種が暮らしているのもベリーズの特徴。本国に暮らす人種の約52%はメスティーソ(スペイン×マヤ)、クレオールが約24%、マヤが10%、その他にもガリフナと呼ばれるアフリカとカリブ海諸国の民族などが暮らしています。
ベリーズの教育制度についてはどうなのでしょう?
ベリーズでは、義務教育である小学校に8年間、進学を希望する場合には高等学校に4年間通います。しかし、家族を手伝うために学校へ行けない子どもや、制服や教科書を購入できない現実もあると大竹さんは説明しました。
もし、高度な教育を受けたい場合には、奨学金が必須だそうです。奨学金を獲得するには、学力テストで全国の上位に入るという狭き門をくぐらなければなりません。目標に向けて勉強するベリーズの子どもたちの様子も伝わってきました。
ここで、大竹さんから英語を使ったコミュニケーションについて高校生たちにメッセージが送られました。
「私も以前は、英語を話すことに対して『恥ずかしい』『間違えたらどうしよう』という気持ちがありました。でも、移住し現地で生活する中で、完璧な英語ではなくても、相手に伝えたいという気持ちや、コミュニケーションをとりたいという気持ちが一番大切なのだと気が付きました。だから、英語を話すことへの怖さや恥ずかしい気持ちを取っ払って、勇気を出して英語を話してみてほしいと思います。世界がぐんと広がるはずです。一緒に頑張りましょう!」
現地の高校生とオンラインで交流してみよう!
最後は、ルーテル学院の高校生からベリーズの子どもへ向けた質問コーナーです。学校の制服姿でベリーズの高校生2人が登場してくれました。2人からは「ルーテル学院の制服も可愛い! 着たい」というコメントもあって場が和む場面も。
ルーテル学院の生徒からは1つの質問に対し、2か国語(日本語と英語)を使って、ベリーズの高校生へ質問が投げかけられました。
実際に出た質問の一部を紹介します。
・ベリーズで人気の職業はなんですか?
・ベリーズの子どもたちの間で何が流行っていますか?
・生活の一番の楽しみはなんですか?
・ベリーズ特有の、または伝統的な学校行事はありますか?
現地の高校生がどんな生活をしているのか?について興味をもってるようでした。
最後に、司会進行を務めた広報・小澤さんから高校生に向けたメッセージで授業は終わりました。
「日本にいると当たり前に思うことはたくさんあります。でも、今回の国際交流授業のようにオンラインで現地と繋がり、その国の実情を見たり、聞いたりすることで、場所の制限を受けずに世界を知るチャンスがあるということを知ってほしいと思います。そして、今回の授業を通してさまざまな国や文化を知り、今後皆さんが自分らしい人生を選んでいく際のお手伝いができると嬉しいです。」
国際交流授業に参加した高校生が感じ、考えたこと
国際交流授業を通して、一人ひとりの生徒が思い思いに考えを巡らせているのが伝わってきました。
ここで高校生から寄せられた感想の一部を紹介します。
「同じ年代でも学校に行けない人がいるなかで、私たちは毎日教育を受けることができる。この環境に感謝したいなと思いました。」
「ベリーズにはさまざまな人種の方がいて、お互いを理解しながら平和に過ごしていると聞きました。日本では『違う』という理由で揉め合う人がいるのはどうなのかなと思います。少しずつ学んでいかなければいけないと感じました。」
「リモートワークをしてる方の話を聞いて、たくさんの仕事の仕方があるんだなと思いました。」
2つの国の現状を知り、自分たちが住んでいる「日本」を振り返る人やリモートワークという働き方の選択肢を知った人がいました。
まとめ
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