国境を越えて学び合う時代へ─2か国合同でオンライン授業を開催【レポート】
リモートワークやオンライン授業が一般化しつつあるいま、距離の壁を越えて世界中の人とつながるチャンスにあふれています。そこで株式会社ニットは、子どもが外の世界に興味を持つきっかけを作りたいという思いから、2021年2月、宮城県富谷市と協同でオンライン異文化交流授業を開催。インドネシアの孤児院でくらす子どもと、宮城県富谷市立あけの平小学校の6年生が参加してくれました。当日の様子をご紹介します。
目次
ライター
インドネシアってどんな国?
当日は、インドネシアのジャカルタ、富谷市、東京都の3か所をつないで授業を開催。東京からは、本イベントの主催者であるニットの小澤美佳が参加しました。
最初は、あけの平小学校の先生から、インドネシアの場所や国旗、食文化などについて紹介がありました。
クイズ形式で、いくつかの選択肢のなかから選んで手を挙げてもらう参加型の授業。小学生の皆さんが正解を目指し、楽しそうに挙手する様子が印象的でした。
リモートなら世界中の人と働ける
続いて講師を務めたのは、ニットの小澤と田崎起子。小澤は66か国を旅した経験があり、今回、小学生の皆さんに少しでも海外の文化に触れてほしいという思いからイベントを企画したそうです。田崎は、ニットが運営するオンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)サービス「HELP YOU」で活躍するインドネシア在住メンバーで、現地でボランティア活動をしながら働いています。田崎の仲介で今回の合同授業が実現しました。
HELP YOUで働くメンバーは、田崎のように世界中の至る所でリモートワークをしています。小澤は「リモートワークなら、旅行をしながらでも仕事ができる。通勤時間がないから、家族との時間も増やせる。一人ひとりが未来を自分で選択できる社会を作りたいという思いから、HELP YOUを運営しています」と話しました。普段からリモートで世界中の仲間とつながる魅力を感じているからこそ、小学生の皆さんにもぜひ同じ体験をしてほしいと思ったそうです。
多種多様な文化が共存するインドネシア
その後は、田崎が動画でインドネシアの様子を紹介。ここでクイズが出題されました。
「インドネシアには雪が降るでしょうか? それとも一年中夏でしょうか?」
小学生の皆さんに手を挙げて回答してもらったところ「一年中夏」と答えた人が多数派でした。
ところが、続いて流れた動画には、雪が降り積もるなかでスキーやソリなどを楽しむ人々が。「不正解?」と思いきや……
そこは、屋内に人工雪が降るスノーパークでした。赤道直下に位置するインドネシアでは、一年中暖かい気候が続きます。インドネシアの人々は雪を目にする機会が少ないため、冬を擬似体験できるスノーパークが大人気なんだとか。小学生の皆さん、大正解ですね!
次に、2問目のクイズです。
「この写真のなかで、インドネシアでくらす人が写っているのはどれでしょうか?」
木が生茂るなか裸で集合している子どもの写真、料理をしている子どもの写真、そして机に向かう学生の写真が映し出されました。
一見、異なる国で撮ったように思えますが、何と3枚全てインドネシアでくらす人の写真でした。
インドネシアでは、さまざまな文化を持つ人々が共生しています。高層ビルが建ち並ぶ街でくらす人もいる一方で、例えばパプア島の奥地では、1枚目の写真に写っていた裸族のような少数民族が、各々の文化を大事にしながらくらしているそうです。人によっては、電気や水道、ガスが通っていない場所で生活しているといいます。
「私たちにとって、電気や水がある生活は当たり前かもしれません。でも、一歩日本の外に出たら、それは必ずしも当たり前ではないんです。生活インフラのない、自然あふれる環境を自ら選んで、幸せにくらしている人も多くいます。さまざまな価値観を知り、自分がどう生きていきたいかを考えるきっかけにしてもらえたらと思います」
さまざまな国でくらした経験を踏まえ、小澤は小学生の皆さんにそう語りかけました。
地域によって人々が信仰する宗教も異なります。インドネシア人口の約87パーセント※1はイスラム教徒ですが、バリ島でくらす人の多くはヒンドゥー教を信仰しています。バリ島のヒンドゥー教には独自の暦があり、年に2回誕生日を祝う慣習があるそうです。
さまざまな文化的・宗教的背景を持つ人々が、互いの価値観を尊重し合いながらくらしている。インドネシアはそんな国なのだと、田崎は説明しました。
※1 外務省(2016)「インドネシア基礎データ」(参照:2021年3月4日)
世界各地で見られる友好の証
オンライン授業では、動画のなかで田崎がジャカルタの街を歩きながら、各所を紹介するシーンもありました。ジャカルタの都市圏人口は東京に次いで世界2位※2。高層ビルや地下鉄など、近代的な風景が映し出されました。
ある地下鉄の入り口には「JICA(国際協力機構)の協力によって完成しました」という旨の案内がありました。「私は127か国を旅してきましたが、そのなかでこうした友好の証を何度も目にしました。日本と世界が仲良く手をつなぎ合っていることを、いつも嬉しく思っています」と田崎。国同士が助け合い、平和にくらすことの大切さを小学生の皆さんに伝えるために、その思いを語りました。
※2 Wendell Cox(2020)「Demographia World Urban Areas & Population Projections」(参照:2020年3月4日)
インドネシアの子どもが語る日常
そして、いよいよ国際交流の時間。インドネシアのティランさんが、コロナ禍における学校の様子や、イスラム教徒の慣習などについて話してくれました。ティランさんは英語が堪能で、日本語もわかるそうです。当日は、小学生の皆さんに向けて田崎が通訳をしながら進めました。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ジャカルタでは基本的に外出は禁止されており、学校ではオンラインで授業が行われています※3。専用のポータルサイトに学習プログラムが組み込まれており、動画を観たり、オンラインで授業を受けたりして、日々勉強しているのだとティランさんは説明しました。解らないところは「What’s up」というチャットツールを使って先生に質問をすることも可能だそうです。
リナさんという学生の方も途中で参加し、イスラム教徒のお祈りについて説明してくれました。イスラム教徒には、1日に5回、敷物の上で神様の方向に向かって祈りを捧げる慣習があります。1回目に実施するのは何と早朝の5時。肌を隠すために毎回着替えて行うそうです。実際の服装でリナさんが実演してくれました。
※3 2021年2月16日時点。
最後は、日本の小学生からインドネシアのお友だちに向けて質問タイム。
「日本のアニメで知っているものってありますか?」
「好きな日本の食べ物は何ですか?」
「インドネシアの学校にはどんな教科がありますか?」
「(お祈りのために)朝早く起きるのは辛くありませんか?」
……などなど、素朴な質問が次々に飛び出していたのが印象的でした。ちなみに、イスラム教徒の子どもは幼い頃から決まった時間にお祈りをする習慣があるため、早起きは全く苦にならないのだとか。素晴らしいことですね。
別れ際には、お互いの国の言葉で「ありがとう」と言って手を振りました。インドネシア語で「ありがとう」は「terima kasih(テリマカシ)」。授業の冒頭では緊張気味だった小学生の顔にも、笑顔が見られました。
まとめ
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