プレミアムフライデー取得率があがらない原因は? -制度導入後の振り返りから見えてきた課題-
金曜日に仕事を早めに切り上げ、働き方改革や消費の拡大につなげようという目的がありましたが、その恩恵を受けた人はわずかとなっています。経済産業省は今後も取り組みを継続する構えですが、プレミアムフライデーを定着させるにはどのような課題があるのでしょうか。2018年のプレミアムフライデーの結果や課題をまとめました。
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ライター
プレミアムフライデーの取り組みや内容は認知されている。
施行から1年半を経過した「プレミアムフライデー」、はたしてこの間でどのくらい認知されたのでしょうか。(参照:「インテージ」調べ https://www.intage.co.jp/gallery/premium-friday/)
実施から1年の状況をまとめた市場調査会社インテージの調査では、プレミアムフライデーを「知っている(内容まで知っている+聞いたことはある)」人の割合は97.0%で、ほぼ100%に迫る勢いです。1年前の調査からもポイントは大幅に増加しており、「プレミアムフライデー」の取り組みや内容は、ビジネスワーカーに認知され、浸透していることがわかります。
制度自体は認知されつつも、実際の現場では浸透していないのが現状。
では、実際の現場での取り組みはどうなのでしょうか。過去からのプレミアムフライデー取得率推移を見てみると、ビジネスワーカーのうち、金曜日出勤かつ1日7時間以上勤務している人を対象に、プレミアムフライデーの実施状況を聞いてみると、「奨励・実施している」と回答したのは11.0%でした。
1年前の調査では、プレミアムフライデーの初回が勤務先で「奨励された」または「実施された」と回答した人の合計が10.5%だったので、当時から実施状況は伸びておらず、制度自体は認知されつつも、実際にプレミアムフライデーが浸透していない様子が浮き彫りになりました。
実際にプレミアムフライデーに早帰りをした人はどのくらいいたのでしょうか。「プレミアムフライデーに早く帰ることができたか」を聞いてみると、「1回以上早帰りをした」人の割合は8.3%で、9割以上の人は「1回も早帰りをしなかった」ことが明らかになりました。
プレミアムフライデー初回に「早く帰った」と回答した人の割合は3.7%で、早帰りを経験した人の割合はこの1年間で増加したものの、実際にプレミアムフライデーを満喫で来ている人はまだごく一部のようです。
プレミアムフライデー取得率があがらない原因は?
経済産業省の鳴り物入りで実施されたプレミアムフライデー。なぜ企業に浸透しないのでしょうか。
多くの企業で月末は忙しい。
プレミアムフライデーは2月にスタートし、翌月が年度末に重なったこともあり、「月末は忙しい」「曜日を変えるべきだ」などと、はじめから疑問を持つ意見も多くありました。
経団連の榊原会長も昨年9月11日の記者会見で「企業にとって月末は忙しい時期だ。『月初めにしてほしい』という声は強く、見直すとすればそのあたりになる」と発言するなど、現実的に導入が難しい日を選んでしまったことにより、プレミアムフライデーの導入に否定的な企業も多くあります。
完全週休2日制の企業が少ない
平成29年就労条件総合調査によると、「何らかの週休2日制」を採用している企業割合は 87.2%となっていますが、「完全週休2日制」を採用している企業割合は 46.9%にとどまります。プレミアムフライデーを導入しても、そもそもその恩恵を受けられる人というのはビジネスワーカーの一部なのです。
非正規雇用からは導入に否定的な意見も。
プレミアムフライデーに勤めている非正規雇用者は、早上がりの分給料が減ることになってしまいます。非正規雇用者を雇用している企業がプレミアムフライデーを導入した場合、非正規雇用者にとっては、給料が下がるマイナスの取り組みであり、正規雇用者にとっては、プレミアムフライデーを導入する場合非正規雇用者と正規雇用者の扱いをどのようにすべきか悩ましい取り組みとなってしまいます。
マネジメントがなく現場任せの対応
プレミアムフライデーが導入されても、業務量がすえおきのままという企業がほとんどです。「仕事の量は変わらないのに時間だけ減らせというのは理屈に合わない」という意見が多く上がりました。業務効率は上がっていないために業務時間削減のしわ寄せが来ている「名ばかり」の改革となっている企業も少なくないようです。
経産省の新しい動き
プレミアムフライデー推進協議会はホームページで、金曜午後からの「2.5日旅」や「午後ブラショッピング」「夕飲み」「アフター3エンタメ」、家族そろっての「午後パー」などを提案し、企業の取り組みやキャンペーンを紹介しています。
さらに、「プレミアムフライデーを別の曜日への変更を推奨すると同時に、月曜日の午前休を『シャイニングマンデー』と呼ぶことも検討」するとの報道もあります。経団連の担当者は「消費行動を変えるきっかけになればいい。クールビズも初めは、ネクタイを外すのに抵抗があったり、定着に時間がかかった」と話しています。
プレミアムフライデーとともに、個人所得の“盛り上がり”も期待されますが、課題も多くプレミアムフライデーの定着まではまだまだ時間がかかりそうです。
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