地方移住実践者が目指す「地方xリモートワーク」の未来

リモートワーク環境を構築し、地方で暮らしてみたいと思う人たちのサポートをしたい。

東京の大学へ進学後東京で就職し、20年以上会社員生活を送っていた吉井秀三さんは、2017年に地元である鳥取県へ移住しました。現在は、HELPYOUのパートナーとして、鳥取県鹿野町を拠点に、リモートワークを実践しています。東京での会社員生活を経て、フリーランスに転身し、その後田舎暮らしを求めて鳥取に移住した“地方移住実践者”のリモートワーカー、吉井さんの移住先でのライフスタイルについてインタビューしました。

東京での会社員生活を経てフリーランスに転身  家族と共に鳥取での移住生活をスタート

これまでの吉井さんの経歴について教えてください。

前職は、大学卒業後東京のIT・ネット関連の会社に就職し、20年程会社員として働いていました。 創業から入って、SNS関連のサービス企画や、新規事業の立ち上げの仕事が多かったです。途中から、M&Aや、子会社のマネジメントなどへも仕事の幅を広げることになり、 会社員時代の最後の仕事は、グループの拠点を移すため、永田町に6F建てのワーキングスペースの立ち上げを行って退職しました。(2017年6月)

前職を退社後、約1年前からフリーランスになって、昨年10月からは地元の鳥取に移住しました。現在は、東京の会社から、リモートで可能な仕事を中心として仕事を頂いてます。

一番の移住のきっかけは?

30歳過ぎた頃に、仕事が結構厳しい状況になっていたのと、プライベートもあまりうまくいってなくて、体調を崩して、しばらく仕事を休むことになりました。それまでは、仕事中心で、特に趣味はなくて、お酒を飲むくらいで、料理も外食ばかりでした。 そこで、休んでいる間、色々気分を変えてみようと、シェアハウスで過ごしたことが大きかったと思います。70人くらいで住めるシェアハウスでしたが、いろんな職種の人がいて、 家で仕事している人も結構いて、いろんな働き方で生きていけそうな気がしたんです。また、当時、福島の方で米作りの体験ができる機会があって、一度参加してみたら、それが結構面白くて、何回かいっているうちに、地方での暮らしがしたくなってきたんですね。 東京にあるものは、結構田舎にもある。その一方で、地方には、田舎でしか体験できないコンテンツが沢山あるように感じてしまったんです。それから、仕事の面でも、青森で拠点を立ち上げる仕事をしたり、フィリピンで1ヶ月くらい仕事をするタイミングがあったんですが、その時に、リモートでも仕事が回るというのは感じてはいました。この時も、今の世の中、結構、欲しいものはどこでも手に入るし、東京以外でも生活できそうだなと思って。そこで、いつか地方で生活してみたいという気持ちが強くなっていったんですが、それがいつかって、いつだろうと結構考えることが日々多くなり、仕事のタイミングがよいところを見つけて退職することにしました。今思うと、移住のきっかけっていうピンポイントの出来事は一つではなく、生活していく上でいろんな出来事が積み重なって、今に至るのかもしれません。

Myリモートライフスタイル @鳥取  地方で実現させたワークライフバランスとそのコツとは?

 

移住先の鳥取でのライフスタイルについて教えてください。

今住んでいる鳥取県鹿野町は、実家から車で30分程の田舎町なんですが、ここへはNPO法人 いんしゅう鹿野まちづくり協議会の移住制度を利用して、移住しました。今まで体験移住施設に9ヶ月程いて、これから築30年で数年空き家だった家に引っ越しをします。鳥取では、低コストで庭付き一軒家に暮らすことができます。 東京では、大崎(品川)で1DKで、15万円していましたが、今は3分の1以下で暮らすことができるようになっています。鳥取は、食材が豊富なので、特に魚の種類が多いのと、東京に比べて、価格もかなり安いので色々な料理にチャレンジすることができます。地元のスーパーでは、ハマチが、1匹300-400円ぐらいで、柵で200円とか、たけのこも150-200円程度で手に入るんです。料理は結構好きなので、外食ではなくほぼ自炊しています。こちらに移住する前に、長男が生まれて今月ちょうど1歳の誕生日を迎えます。子供ができて、半年ぐらい東京にいましたが、家の中にいるときは、子供の鳴き声で、隣の部屋の人とかに迷惑をかけてないか、申し訳ない気持ちでいることが多かったのですが、そういうのはなくなりましたね。東京ではベビーカーで移動するとき、特に電車移動とか苦労してましたが、車でどこでもいけるのと、色々なものを持って移動することができます。仕事に関しては、東京の仕事はHELP YOUの仕事をはじめ、東京でやっていた仕事を引き続き、フリーランスとしてやっていますが、鳥取に移住してからは、地元鳥取の仕事をいくつか頂いてます。これまで会社員時代に経験した業務内容だったり、スキルが活かせる仕事を中心に、事業開発支援の仕事が多いので、新規事業や、新規販路を見つけるような業務内容が多いですが、特に、鳥取では、新しい飲食店や、マッサージ店がオープンするときの企画や集客支援や、空き家をリノベーションした多目的空間の支援や、最近は地域のイベントのPR支援などしています。

東京で働くことと、地方で働くこと(今の働き方=リモートワーク)の一番の大きな違いは何だと思いますか?

そうですね。東京で働くことと、こちらで働くことの一番の違いは、地方では仕事や仕事に関連する活動の一部に制限が生じることですね。例えば、地方では、東京に比べてクライアント企業を訪問して、その場で対面で商談したり、写真撮影が必要なインタビューを受けたり、また、クライアントやパートナーとのランチや飲み会に参加しようとしても。なかなか難しいことが多く、地方ということで “場所に制限がある”と感じています。これはどうしても解消できない地方でリモートワークをする上でのデメリットでもあります。やはり、東京は大都市でいろんな人がいて、必要に感じれば、いつでもどこでも即座に対面で人と会って、打ち合わせをしたり、話をすることができますが、地方ではその制限やタイムラグがあるので、できるだけオンラインで解決できる方法を考えていかないといけないと思います。こちらに移住してからは、オンライン商談・インタビューや、Web飲み会(オンラインで雑談)、オンラインセミナーや勉強会に参加など といったことをするようになりました。

地方でリモートワークを実現させるために必要なこと、コツは何だと思いますか?

仕事やプライベートに関わらず、何よりも、情報収集や、情報発信の時間は重要だと思います。移住して以来、地方にいるからと言って、東京との情報の差が出ないように、SNSや、ニュースを見たりする時間は増やして、情報収集するようにしています。また、移住先では自分と同じように、東京のでフリーランスで活動している方々や、東京から頻繁に地方に来る人たちとの情報交換などを大事にしています。移住する前は、あまりSNSなどで情報発信してなかったのですが、情報発信を気軽に少しでもできるように1年前にtwitterを再開しました。SNSを介してリモートワークで仕事をしている人や、リモートワーク中心の小規模の経営者とスムーズに繋がりやすいので、twitterはとても効果的なコミュニケーションツールの一つだと感じています。

移住先で目指すこれからのキャリアゴールとリモートワークの未来  どこでも仕事ができる環境を構築し、地方で暮らしてみたいと思う人たちのサポートをしたい

今、移住先の鳥取で、実現させたいことはありますか?

現在、HELP YOUでは、オンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)を活用した新しいサービスの企画、提案や事業開発を行っています。 HELP YOUのオンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)の約4割は地方在住ですが、今は地方にいても東京にいるのと変わらず、リモートで仕事ができますし、企業としても地方の優秀な人材を活用できるというメリットがあると思います。今、HELP YOUのサービスを利用してくださっているクライアントや企業は、ほとんどが現在急成長している業界や企業で、新しい技術や働き方などを取り組みが早い会社です。 リモートでの仕事にすでに慣れているか、もしくは今後チャレンジしようとしている意識が高いので、プロジェクトに関わっているだけでも多くの学びがあります。実際に、私自身、地方に移住してみて、東京と鳥取間でリモートワークで働き出してみて、リモートワークの可能性と必要性をさらに感じるようになりました。今の労働環境を見ると、転職の有効求人倍率で、特にIT関連で、関東の人がかなり少なく、 中小企業の離職率とかかなり激しい状態です。今後、企業が労働市場で戦っていくために、 リモートワークや、地方の人材などを求めてるケースがかなり増えていくと思います。 リモートワークのノウハウを蓄積し、リモートワークを活用してアウトプットが出したいと考える会社を増やしてければと思っています。また、働く人材側としては、東京にいる方で、仕事や支援があれが4割ぐらいの方が地方へ移住したいと思っでいるようですが、 リモートワークでどこでも仕事ができる環境を増やして、地方で暮らしてみたいと思う人たちのサポートができればと考えるようになりました。リモートワークができる環境が整えば、働く人材にとって、全国の移住先の選択肢は増えるので、それぞれの希望に合わせた形でおすすめの移住先など紹介できればと思っています。今までは、1:1で話をしたり、1:nで情報発信するだけでしたが、一斉に沢山の人の相談に答えることができるような自動カウンセリングの仕組みと、個別にサポートできる仕組みを、取り入れられないか考えています。今は、プロトタイプを作っていて、既にリモートワークをしている人中心に検証して、 データを増やしていっているのですが、データが増えたらAIを入れて精度を上げていきたいです。それには、リモートワークをベースとしたプロジェェクトを推進していくファシリテーションや、マネジメント能力の向上などが必要になってくると思います。

移住先で見つけた“自分らしい生き方”を実現するために今実践していること

仕事以外のプライベートで、これからやりたいことはありますか?

東京にいた時には、出窓でペットボトルを使って水耕栽培をしていたのですが、少し広い場所でやりたくて、地方に来たかったというのもあります。遊休施設の温室を使えることになったので、現在チャレンジ中です。15年ぐらい放置されていたようで、清掃するだけでもかなりの時間がかかりました。最近少しサイズが大きいプールを移動させたので、9月頃までにろ過システムの設計と工事をして、それから栽培開始予定です。また移住先は、移住者が多い地域なので、移住者を中心に色々なイベントに誘ってもらっています。3月は味噌作りをして、5月は野草をとって食べて、6月は梅仕事。梅シロップや梅酒が作れます。これから紫蘇や辣韮を漬けたりするイベントがあります。以前住んでいた東京でも、たまにみんなで食べ物を作ったり、食べ物をテーマにした20人-80人位のイベントを開いていました。鳥取でも半年前に一度イベントを開催する機会があって、40人ぐらい集まりました。飲食店の空いている時間などを活用して何かしていくとか、水耕栽培で食べ物を栽培したり、地元の食材などを活用して観光客向けに体験プログラムなどを作ったりできればと思っています。特に鳥取はカレー好きが多く、カレーの消費量が有名なんですが、鳥取で作られたスパイスのカレーなどはないので、スパイスを作ったり、鳥取で作られているスパイスを集めてカレー作りの体験とか、企画してみたいですね。

編集後記

地方でのリモートワークを実践することを通して、ワークライフバランスを実現させている吉井さんだからこそ提案できるリモートワークの可能性。それは、吉井さん自身が会社員時代に経験した仕事や、そこで培ったスキル・人脈が基になっています。仕事以外でも趣味の水耕栽培や、移住先でのイベントを企画したり、今後は家族で移住先での生活を楽しみながら、自分に合った働き方で働く理想的な”リモートワーカー”のロールモデルになっていく日もそう遠くはないかもしれません。

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