「フリーランスと10年歩んだ社長が語るAI時代にも変わらない価値」ニット代表・秋沢崇夫インタビュー くらしと仕事

「フリーランスと10年歩んだ社長が語るAI時代にも変わらない価値」ニット代表・秋沢崇夫インタビュー

オンラインアウトソーシングサービス(※1)「HELP YOU」を運営する株式会社ニットは、このたび創業10期目を迎えました。
この10年で、HELP YOUを取りまく環境は激変しています。リモートワークが当たり前に行われるようになり、またここ数年で急激に進化してきたAIも、業務を行う上で不可欠なものとなりつつあります。
こうした中で、フルリモートのスタッフを600人抱える株式会社ニット代表取締役社長・秋沢崇夫が見つめるものは、「働く人とクライアント両方が幸せになる価値提供」。
これからの時代において、フリーランスがリモートワークで働く上で考えるべきポイントが、秋沢の言葉から見つかるかもしれません。

(※1) オンラインアウトソーシングとは在宅でインターネットを活用し、業務サポートを行うサービス。


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ライター

山本桂子
栃木県出身。大学院修了後、アート系の雑誌・書籍編集者、雑誌編集長として出版社に20年勤務。その後、フリーランス編集者を経てIT業界に転職。現在はフリーランスの編集者、Webディレクター、メルマガコンサル、アート・デザインディレクターとしてメディア戦略を考える日々。→執筆記事一覧

10年の歩みを振り返って

インタビューイ 株式会社ニット 代表取締役社長 秋沢崇夫
秋沢崇夫
青山学院大学卒業後、株式会社ガイアックスにて約10年間、インターネット広告、システム構築、ソーシャル・マーケティング事業に従事。24歳で事業部長。退社後、海外でテレワークを経験し、「自分にとって生産性の高い場所で、好きな時間に働く」というスタイルに大きな可能性を見出し、オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を立ち上げる。

── 株式会社ニットとHELP YOUが歩んできた道のりを振り返って、思うところをお聞かせください。

10年前にHELP YOUでオンラインアウトソーシングサービスを始めた頃は、リモートワークの可能性を検証する実験的な意味合いもありました。そこからさまざまな紆余曲折を経ながらも、組織として生き残る力を養い、今やHELP YOUは累計約1,000社ものクライアント業務を支える事業へと成長しています。
それに伴い、引き受ける業務の幅も広がってきました。単なる「業務のお手伝い」から「クライアントの事業を丸ごと、一気通貫で伴走するパートナー」となるまでに、我々の立ち位置も変化してきています。

また、この10年での大きな外部環境の変化といえば、「コロナ禍」「競合他社の増加」「AI」の3つが挙げられます。これらをきっかけに、HELP YOUは社内の業態やサービス内容を大きく変化させていきました。

── 具体的にはどのような変化だったのでしょうか?

まず「コロナ禍」ですが、当時は出社自粛などで一気にリモートワークという形態が社会に広がり、「在宅でも仕事ができる」とみなの意識が変わりました。そのためHELP YOUのサービスも内外に理解されやすくなり、リモートワークでのオンラインアウトソーシングという事業への追い風にもなりました。
またHELP YOUに応募してくるメンバーも増え、クライアントのニーズも取り入れてHELP YOU内部の組織形態や業務の仕組みも変えていったのです。

しかしそれと同時に、同じサービスへの参入のハードルも下がり、競合他社が増加してきました。競争が激化すると低価格を売りとして打ち出す競合も多くなり、クライアント企業もそういったところを選ぶケースが目立つようになりました。
そんな中、HELP YOUでは創業時から「メンバーの採用・育成・評価」に力を入れてきたため、業務の品質を維持することにつながり、クライアントの安心感と業務の価値向上に結びつきました。

AI時代におけるHELP YOUの強み

── ここ数年で「AIの台頭」が目立ってきました。AIツールを使った業務の効率化、自動化などで、クライアント企業がこれまでHELP YOUに依頼をしていた「外に出せる業務」を、AIに任せるケースも散見されます。

HELP YOUでこれまで請け負ってきた案件の業務内容に、AIは当然入り込んできています。
単純なルーチン作業は自動化されてしまい、わざわざ外注するような手順を踏まなくなってきました。これまで以上に、クライアントに対してHELP YOUに依頼をする価値を打ち出していくことが求められます。

── 競合他社も多数存在する中、「HELP YOU」ならではの強みは、どういうものだと思いますか?

HELP YOUの大きな価値の部分は、「メンバーの育成や評価、チームでの助け合い」だと思うのですが、それをクライアント企業に対して価値として打ち出すのはとても難しい。これは社内向けの価値の部分であり、他にはない強みであっても、クライアントにとって社内事情は関係のないことだからです。

では、競合他社との取り組みの違いを外向けにどう示していくかといえば、「HELP YOUに業務を依頼した場合」の価値の部分です。HELP YOUでは、案件ごとにチームを作ってワークシェアリングで業務を推進していくため、それぞれ得意分野があるメンバーをチーム内に揃え、人数を増やしていくことで、大きな事業を丸ごと任せていただくことも可能になります。

請け負った業務を細かく仕分け・整理し、どのように進めるかというワークフローを一覧にすると、「ここはAIで自動化できる」「ここは人の手でしっかりチェックする」といった部分が見えてきます。業務を効率化しつつ、人のチェックによって品質を上げることができるのです。
こうした「AIと人のハイブリッド」で業務を進めていくことが、今後のHELP YOUでの大きな売りのポイントになってくるのではないかと考えています。

それぞれの業務で得た「ベストな仕事の流れ」の知見をライブラリー化すれば、新たに請け負う案件も、知見の活用で効率化させながら業務品質を上げていけます。
今後は、事業全体を見通した上で効率化のポイントを探り、仕事の流れを作れるメンバーが重要になってくるでしょう。そのような人材を「HELP YOU Academy」(※2)の講座で育てようと考えています。

── 現在、HELP YOUのメンバー向けに開催されている「HELP YOU Academy」の講座群は、資料作成やライティング、AI知識といったスキルを磨くことが中心です。ここのところ「業務効率化」「AI活用」といった講座が増えてきた印象ですが、特にAIを使って業務に活かす講座が目立ちますね。

もともと「HELP YOU Academy」は、メンバーの市場価値を高めるために始めた取り組みです。これまでは、ライティングや資料作成といった「業務単体で完結するような内容」の講座が中心でしたが、最近では「経理・労務」のような専門性のあるものや、「Canva」「SNS」などの講座もスタートしました。これらは、クライアントからの業務依頼が増えてきた内容に合わせて、対応できる人材を育てるため、開発された講座内容です。

また、過去にHELP YOUで受注した大量の業務を、AIツールによって自動化・効率化したノウハウは、既にライブラリー化されています。これを元にすれば「業務を効率化するために必要なAIに関する知識」といった講座の開発に繋がります。
つまり、業務で得たAIに関する知識や最新情報を「HELP YOU Academy」で体系化し、メンバーに還元する流れができるようになったのです。

メンバーは、「HELP YOU Academy」を受講して得たスキルで、さらに高度な付加価値をつけた業務をクライアントに向けて提供していけるようになります。そうするとクライアントには喜んでいただけますし、それだけの価値提供ができるメンバーは報酬がアップします。メンバーの価値が上がればHELP YOU全体の提供価値が向上するという、良い循環が生み出せたらと思っています。
その循環を作ることが、今後のHELP YOUのサービス品質を証明するポイントとなるのではないかと思います。

(※2) HELP YOU Academy:キャリアアップを目的とした社内プログラム。身につけた知識・スキルをHELP YOUの仕事に活かすことを目的とした学びの場です。経理・AI・ライティングなど、さまざまな分野の学習コンテンツ(eラーニング)が開講しています。

フリーランスがHELP YOUで働くメリット

── 今後もフリーランスとして働いていくには、自分自身のスキルアップや意識の変革が必要になってきますね。

フリーランスは常にスキルを磨き、最新トレンドも学び続けていくことが重要だと思うのです。ただ、在宅でひとりで仕事をしていると、孤独を感じてしまいますし、クライアントの業界に関する最新情報や、AIなどの知識、ツールのトレンドといった情報が入りにくくなってしまいます。

しかしHELP YOUでは基本的に、案件に対して複数人のチームを編成し、コミュニケーションを取りながらチームメンバーで業務を進めていくため、孤独感をあまり感じず仕事に従事できるでしょう。
また、HELP YOUに所属すれば、メンバーとの情報交換や「HELP YOU Academy」の受講を通じて、スキルアップも可能です。HELP YOUで働くことで得られる価値を感じてくれたら、フリーランスとしてのご自身の成長にもつながるのではないかと思います。

── HELP YOUではひとつの業界だけでなく、さまざまな業界の情報も入ってきますし、多様なメンバーの価値観に触れることができますよね。

現在HELP YOUでは、複数のメンバーがチームを組んで案件業務を担当する「チーム制」がメインです。チーム制では、メンバー同士がワークシェアリングでカバーし合ったり、業務上の知識や経験を共有したり、交代で休みを取れるといったメリットがあります。

そのほかHELP YOUには、経理のような「ユニット制」もあります。専門性の高いユニット制は、近年ますますクライアントのニーズが高くなってきていますね。
以前の「競合他社の増加」の時期に、安価なサービスにお客様が流れていきましたが、HELP YOUでは価格ではなく品質の良さを掲げたのです。専門的なスキルを持った優秀なメンバーで構成された「ユニット」は、多少価格が高くても「専門性が高く高品質なものを納品してくれる」と、クライアントに大変喜ばれ、たくさんのご支持を得ました。
今後、経理だけでなく、さまざまな職種ごとに専門のユニットを作ることも考えています。そうすると、メンバーの中にも「ユニットに所属したい」という目標が生まれ、ご自身の専門性を磨くモチベーションに結びつくのではないかと思います。

また、HELP YOUには「企業専属スタッフ」というポジションがあります。これは窓口になるディレクターを介さず、メンバーが1人で企業の担当者として依頼業務にあたるという形態です。これはもともとHELP YOUの原点のスタイルなのです。
企業専属スタッフは1人で業務の全てを担当するため、報酬が高めに設定されています。

HELP YOUで自分のライフスタイルや希望に合った働き方が選べるよう、今後も選択肢を増やしていきたいと思っています。

第10期の展望

── 最後に、これから始まる第10期の展望をお聞かせください。

AI時代を迎えて、業務の自動化や効率化はこれからさらに進んでいくと思います。この流れ自体は止まりませんし、我々もそれを前提に事業を組み立てていく必要があります。

そうなると、HELP YOUも「お客様から依頼された業務をしっかり請け負う」だけでは、お渡しできる価値が少しずつ目減りしていきます。これからは、依頼された業務の前後にあるプロセス全体を俯瞰してヒアリングし、「この範囲はまとめてお任せいただいたほうが、全体としてうまく回ります」という提案ができる形態に変わっていかなければなりません。切り出された作業を受け取るのではなく、業務の設計から一緒に考えていく、ということです。

そこで効いてくるのが、我々が業務ごとに積み上げてきた専門性です。経理なら経理、労務なら労務の勘所を分かっているからこそ、どこを自動化し、どこに人の目を入れるべきかを判断できる。単に手を動かすだけでなく「ここまで見てくれるのか」と、高い付加価値を感じていただけるサービスにしていきたいと考えています。

そして、提供する価値の形が変われば、それに合わせてメンバーの報酬体系も変えていく必要があります。特に、専門性を発揮していただく形態では、かけた時間の長さだけでは測りきれない価値が生まれます。効率化のスキルを持つ人が損をせず、専門性や成果が正当に報われる形はどうあるべきか。これは一律に切り替えるものではなく、業務の形態ごとに丁寧に設計していくべきものだと考えています。

── この次の5年後、10年後を見据えての抱負をお願いします。

ここ数年は、AIが業務に関わってきて加速度的に変化をしているため、5年後10年後の情勢や業務の未来予測を立てることが難しくなってきています。
これまで人の手で行われてきた多数の業務がAIに代替され、仕事の常識が覆されたり変化していくことが予想されます。多くの人が、自身の仕事やキャリアについて再考を余儀なくされるのではないでしょうか。
しかし、AIに代替されずに残っていくものもあります。業務の品質を上げることや、長年の積み重ねで生まれた取引先との信頼関係、誠実なコミュニケーション、業務全体を見通す力や、業務における判断力や決断力、表面に現れないニュアンスを汲み取るといったことは、人間にしかできない、価値あるものです。
メンバーひとりひとりが持つ「人間性」や、取引先との「信頼関係」などは、HELP YOUの代えがたい財産だと考えます。 これをずっと大切にしていきたいと思っています。

まとめ

フルリモートの600人ものメンバーを抱え、10年の間HELP YOUの事業を継続してきた秋沢の言葉は、激動の波を乗り越えてきた実感がこもっていました。
HELP YOUに所属することで、メンバー自身の業務に対する意識が変わり、スキルをアップさせれば、クライアントへ提供するものの品質向上につながる。それがクライアントにも喜ばれて更なる大きな仕事に結びつき、メンバー自身の成長にもなる。
そのような良い循環に結びつけていきたいという思いとアイデアに満ちた言葉が印象的でした。
働く私たちも、これからの社会情勢に合わせ、自分のスキルを磨き市場価値を高めていくことが重要ではないでしょうか。

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