事前準備がカギ!活発な議論を生み出すファシリテーションの力
「会議が散らかって終わってしまった」
「ただ参加するだけで意味を感じられなかった」
――このような経験をした方も、多いのではないでしょうか。
そんなときに有効なのが、ファシリテーションです。
場を整え、誰もが安心して発言できる空気をつくり、合意形成へと導く。それがファシリテーターに求められる力です。
今回、オンラインアウトソーシング「HELP YOU」(※1)で、議事録作成と並行し会議の進行役を長く務めてこられた清水由美子さんにインタビュー。
これまでの歩みを通して見えてきた伝えることの大切さと、活発な議論を生み出すヒントを探ります。
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目次
インタビュイー
ライター
サムネイル制作者:今泉香織 (制作アイキャッチ一覧)
司会のプロから学んだ「伝わる」言葉選び

何でも挑戦することで見えてきた、自分の得意
──いつからファシリテーションを「得意」だと捉えるようになったのでしょうか?
学内で開催される勉強会などで司会を経験したり、その後も仕事で研修講師を経験したりするうちに、周りから「話し方がとても分かりやすく、聞きやすかった」と言われるようになりました。
また、人前で話す際も緊張しないことや、どうすれば相手にうまく伝えられるかを考えるのが好きなこともあり、次第に「人より得意かもしれない」と感じるようになったんです。
──司会は苦手意識を持つ方も多いと思いますが、抵抗はなかったのでしょうか?
特にありませんでした。20代のころは「努力すれば何でもできる」と考えていたので、与えられる機会には積極的にチャレンジするよう心がけていました。
勉強会の司会も指名されて始めましたが、抵抗なくすんなり受け入れられました。
オンラインこそ気を付けたい、言葉選び
──HELP YOUでも、当初からファシリテーションの業務を担当されていたそうですね。
入会した当時、自信を持って応募できた案件が、オンラインファシリテーション業務でした。
特別なきっかけがあったわけではなく、たまたま見つけた案件に応募しただけでしたが、振り返ってみると本当に学びの多い業務だったと感じます。
案件を担当し始めた当初、メンバーの中に事務所にも所属するようなプロの司会者がいました。
結婚式で司会を務めるほどの実力を持っている方で、この案件を通して色々なことを教わりました。
その中でも印象的だったのが、「難しい言葉は使わない」ということです。
難しい言葉は、聞き手によって伝わり方に差が出てしまいます。
例えば「顧客」と言ったつもりが「お客」と受け取られ、言葉遣いを注意されることもあるのだそうです。
そのため「参加者全員が理解できるよう、シンプルな言葉で説明するのがファシリテーターの役割」だと教わりました。
これは一例ですが、ファシリテーションを業務として担当するのは初めてだった私にとって、強く心に残る学びでした。
会議を成功に導く鍵は「事前準備」にあり

ファシリテーターは会議の道案内役
──清水さんは、過去に「くらしと仕事」でインタビュー記事も執筆していました。インタビューとファシリテーションではどのような違いがありますか?
インタビューには、読者というターゲットが必ず存在します。
そのターゲットに届けたいメッセージを膨らませるために、事前に準備した質問に沿ってインタビューをするものだと考えています。
一方で、ファシリテーションの目的は、特定の誰かにメッセージを届けることではありません。
参加者一人ひとりが話の展開に迷わないよう、前提事項をすり合わせて全員を一つの方向へ導くこと。
それが、ファシリテーションに求められる役割だと捉えています。
司会業をやっている人は「話が上手い」という印象を持たれがちですが、ファシリテーションに必要なのは「どんな場面でもうまく話ができること」ではありません。
大切なのは、「参加者の属性や目的を、事前に伝える」ことだと私は考えています。
会議当日よりも重要!事前準備でやるべきこと
──参加者の属性や目的を事前に伝えるというのは、具体的にどのようなことでしょうか?
会議のテーマにもよりますが、当日の議題を紹介するようなイメージです。これらをあらかじめ伝えることが、ファシリテーターに求められる役割ですし、その事前準備によって当日の進行や発言にもブレが無くなっていくと考えています。
──とはいえ、参加者によっては、きちんと情報を確認できていないなど、準備不足の方もいるかと思います。そのような場合はどうしていますか?
確かに、実際に準備するかどうかは参加者自身の心構えに委ねられています。参加者によっては、忙しくて直前にさらっと確認した程度の人もいるでしょう。
そのような場合にファシリテーターができるのは、会議の場で情報を補完することだと考えています。
そこで会議の冒頭に、いつ、誰が参加した会議で、どのような決定がされたのか、その決定に至るまでのプロセスはどうだったか、などの説明を行うようにしています。
すると大抵の人は話の経緯を思い出し、会議が前へ進んでいくようになります。
大事なのは、参加者が同じ情報を持った状態で会議に臨めるようにすることです。
準備が不十分だと、会議では主催者や一部の理解が進んでいる人だけに発言が集中しがちです。その状態では、たとえ合意が得られても本当の意味での合意形成にはなりません。
特にクライアント対応の場合、私自身が会議の主催者ではないため、事前にできることも限られています。
そこで、当日の会議を少しでも円滑に進めるため、会議の冒頭に改めて具体的な議題を提示しています。
ただし、伝える内容が漠然としていると、会議目的に対する認識のずれが生まれてしまいます。
それを避けるために、誰もが間違いなくイメージできる詳細な説明を心がけています。
会議のルールを決めることが、意味ある対話を生む

ボーイスカウトにて、子どもたちへ説明を行っている様子。何気ない進行一つとっても、ファシリテーションスキルが活きている。
会議以外でも!汎用性の高いファシリテーションスキル
──ご自身のファシリテーションスキルが、「役立った」と感じる場面はありましたか?
仕事ではなくプライベートの話ですが、ボーイスカウトの指導者を担当したことがあります。
ここでも、ファシリテーションスキルが役に立ちました。
ボーイスカウトでは、子どもたちにさまざまなチャレンジをしてもらいます。
時には、危険をともなう活動もあるので、「どのように安全を担保するか」をあらかじめきちんと考えておく必要があります。
そのため、指導者である大人たちには、計画書の作成、現場での説明、ミーティングなど、入念な事前準備が求められます。
特に指導者同士のミーティングでは、「次の活動をどうするか」「いつまでに何を準備するか」といった内容を、限られた時間の中で決めていかなければなりません。
こうした場では、ミーティングの中で話が散らからないように、うまく取りまとめることが重要です。
このような経験を通じて、ファシリテーションスキルの汎用性を実感しました。
すぐに実践できる、実りある会議への第一歩
──これから「ファシリテーションスキルを身に付けたい」と思っている方に、ひと言メッセージをお願いします。
「会議の目的を定める」ということを、常に意識してみてください。
例えば「今日は雑談をしてコミュニケーションを取る」など、どんな内容でも構いません。
目的を明確にすることで、参加者全員が何のために集まっているか理解でき、発言もしやすくなります。
そして、会議のルールを事前に共有し、守ることも重要です。
これまで担当してきたクライアントとの会議でも、「会議を始めるときには目的を共有し、ルールを守ること」を徹底するよう伝え続けてきました。
その結果、参加者は安心して発言でき、議論が散らかることなく意見交換が進むようになったと感じています。
目的を持たずに会議を始めると、議論が散漫になり「この時間何だったの?」となりかねません。会議の目的とルールを参加者内で共有することが、会議を有意義なものにする第一歩だと思います。
まとめ
会議の目的を共有し、参加者全員が安心して発言できる空気をつくることが、合意形成への第一歩だと強調します。
こうした姿勢は会議だけにとどまらず、プライベートを含む多様な場面でも役立つ普遍的なスキルです。
もし「会議が散らかりがち」「意見が出にくい」と感じているなら、まずは次の会議で「目的を明確に伝える」「ルールを共有する」といった小さな実践から始めてみませんか?
それが、意味ある対話を生み出すきっかけにつながるかもしれません。
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