30秒でタンゴのとりこに!私のピアニスト人生を変えた出会い
「一つの出会いが人生を変える」
出会いとは人との出会いだけではありません。私が実際に体験した人生を変える出会いは「タンゴ」でした。タンゴと出会ったおかげで現在ソロタンゴピアニストとして活動しています。
もしタンゴに出会っていなかったら、きっと私は違う人生を歩んでいたでしょう。この記事では、私がタンゴと出会ってどのように人生が変わったかを紹介します。
目次
ライター
現在はソロタンゴピアニストとして活動中。
タンゴはあまり知られていないジャンルのため、一人でもタンゴ好きを増やそうと奮闘している。
また、コロナを機に働き方について考え始め、好きな場所で働くことを目標に在宅ライターとしての活動も開始。→執筆記事一覧
私をタンゴの世界へ引き込んだ衝撃の一曲
高校生のころ、何気なく見ていたテレビCMで一つの曲が流れました。
その瞬間まるで雷に打たれたかのような強い衝撃が、ズドーンと私の身体を突き抜けたのです。
「なんだこの曲は!?」
今までに聴いたことのない音楽。J-popとクラシックしか聴いたことのない私にとっては驚きでした。興奮状態で調べてみると、私に衝撃を与えた曲の名はアストル・ピアソラ(※1)の「リベルタンゴ(※2)」でした。
今やピアソラの代名詞となったリベルタンゴ。意味は「自由なタンゴ」で、スペイン語のリベルタ(自由)とタンゴを組み合わせたピアソラの造語です。
タンゴって何?というところからのスタートです。
(※1)アストル・ピアソラ
アルゼンチンが生んだ作編曲家兼バンドネオン奏者。時代の先端を行き、独自のスタイルを生み出した。リベルタンゴをはじめ、「ブエノスアイレスの四季」「アディオス・ノニーノ」など名曲は数知れない。
(※2)リベルタンゴ
タンゴによく使われる「3‐3‐2」(ターア【3】、ターア【3】、タア【2】もっとわかりやすく言うと、タタタ【3】、タタタ【3】、タタ【2】)のリズムが続いている。(参考文献:小松亮太著『タンゴの真実』旬報社, 2021)
タンゴを聴くことから始まったタンゴピアニストへの道
まずはピアソラの音楽を片っ端から聴きました。しばらくして古典タンゴ、伝統的なタンゴといわれている曲も聴くようになります。すると、タンゴへの純粋な興味は次第に「私もタンゴを弾いてみたい。いつかタンゴを弾く」という夢に変わっていったのでした。
「タンゴを弾く!」と決意したものの、そもそもタンゴってどうやって弾くの? 楽譜は? など、さまざまな疑問が湧いてきました。
大学でもクラシックを勉強し、ほとんどクラシックしか演奏したことがありません。
タンゴを演奏することは未知の世界だったので、当時は自分で楽しむためだけに自己流で演奏していました。もちろん人前では演奏していません。
周りにはタンゴを知る人も演奏する人もいませんでしたし、誰に話を聞いたらよいのか見当もつきません。このまま諦めなくてはいけないのか……。
突然舞い込んできたチャンス
大学卒業も間近になり、諦めきれずにモヤモヤしていた私の元へタンゴピアニストになるチャンスがやってきました。バンドネオン(※3)・ヴァイオリンのトリオ(3重奏)のピアニストとしてタンゴを勉強しながら演奏できることになったのです。
念願のタンゴピアニストになってからも続く勉強の日々。同じピアノとはいえ、ジャンルが違えば演奏法も異なります。タンゴの奏法を一から学びました。
またクラシックには楽譜がありますが、タンゴにはあってないようなもの。そのため、クラシックでは勉強しない「コード譜」の勉強をしなくてはいけませんでした。
コード譜が読めなければタンゴを演奏できないといってもいいでしょう。最初は覚えるのに苦労しましたが、今ではコード譜のほうがありがたいと思えるようになりました。
きちんと楽譜になっていない理由のひとつは、タンゴにとってアレンジが重要だからです。同じ曲でもさまざまなアレンジで演奏されており、「タンゴはアレンジが命!」ともいわれています。もしタンゴを聴くときは、同じ曲を違うアーティストで聴き比べることがおすすめです。アレンジの醍醐味を味わえるでしょう。
2年間タンゴの基本を叩き込み、タンゴトリオのピアニストを務めたあと、地元に帰ることになった私に次なる壁が立ちはだかります。
(※3)バンドネオン
正方形の蛇腹楽器で左33個、右38個、計71個の音階ボタンが配置されている。
アコーディオンとは親戚のようなもの。
蛇腹を押し引きして演奏するが、音階ボタンの配置がドレミの順番に並んでおらず、バラバラに配列されている。さらに同じボタンでも押したときと引いたときで音が異なり、演奏が難しいため別名「悪魔の楽器」とも呼ばれる。
ドイツ人のハインリヒ・バンドが発明し、移民たちによってアルゼンチンに持ち込まれた。音色がタンゴにピッタリということから今ではタンゴに欠かせない楽器となっている。
第2の壁。Uターンをきっかけにソロタンゴピアニストへ
タンゴは通常オルケスタ(オーケストラ)やキンテート(5重奏)など、複数の楽器編成で演奏されます。
地元に帰ってきたものの、バンドネオン奏者もタンゴヴァイオリニストもいません。
しかしタンゴをやめる選択肢はありませんでした。そこでひらめいたのがピアノソロでタンゴを弾くということです。早速ピアノソロ用にアレンジし、ピアノソロでタンゴを弾き始めました。現在、「一人でもタンゴ好きを増やす」をモットーにタンゴソロピアニストとして活動しており、2~3か月に1回の頻度で弘前市百石町展示館(青森県)でコンサートをしています。▶︎ 百石町展示館で開かれる催し物のスケジュールはこちら
演奏活動の傍ら、文章でもタンゴの魅力を広めたいという思いから、オンラインアウトソーシング(※4)「HELP YOU」で執筆活動中です。音楽の分野に限定せず、さまざまなジャンルの執筆に挑戦することで、日々ライティングスキルを磨いています。すき間時間を使ってコツコツ書くことができるので、もちろん演奏活動に影響はありません。
今後も、あらゆるアプローチ方法を模索し、「タンゴ好きを増やす」というライフワークに取り組んでいきます。
(※4)オンラインアウトソーシングとは在宅でインターネットを活用し、業務サポートを行うサービス
まとめ
もしタンゴに出会っていなかったらピアノはやめていないにしても、今のように演奏を楽しめていたかどうかはわかりません。タンゴとの出会いに感謝しつつ、これから先の人生もタンゴを弾きながら生きていきます。
みなさんもぜひ、何気ない日常にアンテナを立ててみてください。すぐそばに人生を変える出会いが待っているかもしれません。
アイキャッチデザイン:今泉香織
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