本当に自分でも働けるの?地方学生がリモートワークでインターン、その中で感じたもの

現在働き方が多様になり、リモートワークで働く人が増えています。興味があるけれど「自分でもリモートワークはできる?」と不安な方もいるかもしれません。そこで株式会社ニットで、リモートでのインターンをしている神戸大学4年生の松山功佑さんにリモートワークの実態について話を聞いてみました。

ライター

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

リモートインターンに挑戦!東京の受け入れ企業と出会うまで

松山さんは、リモートインターンの受け入れ企業であるニットをどういう経緯で見つけましたか?

就職活動をしている中で、「オンライン就活」というサービスを見つけて。そのサービスではオンラインで企業説明会に参加できるのですが、そこにニットも参加していました。「リモートでもインターンができるよ」という話だったので、ぜひやってみたいと思ったのがきっかけです。

ニットでインターンをする以前は、どんなことをしていたのですか?

私は、学生団体に所属していました。3年生に進級するタイミングで、団体のリーダーに近いポジションになったので注力しようと休学しました。昨年大学に戻り、学業のかたわら就職活動も始めました。

他に、関西の会社でのインターンも経験しています。1年生の時はアスリートを対象にしたスポーツ系人材会社の大阪支部で働きました。そこでは学生ユーザー獲得のためのビラ配りやデザインの考案をやりました。

それから、昨年の春から半年ほど採用関連の会社でインターンをして企画のお手伝いをしました。学生の立場からどういう訴求をしたらいいか考えたり、サイトの構成の見やすさなどをリサーチしてサンプルを取ったり。インタビューの文字起こしもやりました。

学業との両立は、どのようにしていましたか?

1年生の時のインターンでは、大阪支社まで行くのに大体1時間近く通勤にかかりました。極力インターンの仕事を優先したくて、授業とのバランスを図りながら通っていましたが結構大変でしたね。学生団体の活動もありましたし、自分で納得がいくほどの時間をインターンに注ぐことはできませんでした。

そこまで苦労して、働くことに興味があったのはなぜですか?

学生団体の先輩方の中でインターンをしている人は、バイタリティがあって輝いて見えました。ですから、自分もインターンを通して人間的に成長したい思いがあったんです。

ですが、実際に体験してみて、学生の立場ではやりがいを感じる仕事を任せてもらうのは難しいのだなと思いました。それから、働く時間のミスマッチも感じましたインターンをした会社では社員の働き方を大事にしていて、就業時間が9時~18時。普段授業がある時にその時間帯では、なかなか調整できません。週に10時間働けるかどうかでした。

オンライン開催イベントを企画。働きたい会社で、やりたいことを任せてもらえる経験

ニットを選んでインターンを始めたのは、リモートでできるインターン先を探していたのですか?

就職内定が決まった会社のインターンをリモートでしている先輩がいたので、「リモートインターン」自体は知っていました。でも、以前ネットで探した時にあまり募集企業が見つけられなくて。リモートインターンにフォーカスして探そうとすると、探し方が難しい印象でした。

ニットでインターンを始めたのは、リモートインターンができることにこだわったというより「働いてみたい東京の会社がリモートでもインターンを受け入れていたから」です。

この会社で働いてみたいと思った最大の理由は?

これまでのインターンでは、自分が働きたいと思う仕事に携われていなかった。働きにくさを感じていました。根本的に地方にいると東京よりはインターンの募集が少なく、授業と両立しながら継続していく難しさもあります。自分がそういう課題意識を感じていたので、他にも困っている学生がいるのではないかと思いました。

リモートワークでオフィス業務ができて、好きな場所で働けるという形で、ニットの提供するサービスは私が感じた課題を解決しています。サービスの中でメンバー同士のつながりがあり、チームになっているところにも惹かれました。

ニットでのインターンでは、どういうことをしているのですか?

広報の部署に入って、ウェブメディアに対して取材依頼や対応をしたり、イベントを企画・開催したりしました。イベントというのは、オンラインで開催する「リモートのインターンシップに関して語る会」です。

そのイベントは、どういう内容だったのですか?

今は新型コロナウイルスの影響で学生の就活がどうなるのかという懸念があります。活動自体が停滞していたり、説明会はオンライン開催になる企業が出てきたり……。企業がリモートワークをどんどん導入する方向に世の中が動いていまから、インターンがリモートでの実施になるかもしれない、その方が学生にとってもキャリアを積む上で良いのではないかという捉え方もあります。それで、学生の方や企業の人事担当の方、大学関係者の方に集まっていただいて語るオンライン座談会を開きました。

イベントの準備もリモートで行ったのですか?

今回は全部リモートでした。集客はTwitterと、Peatixというイベント用サイトで行いました。当日はビデオチャットアプリのZoomを使いました。社員も合わせて計17名がオンライン上に集まってくれて。少人数ずつのグループに分かれて話すブレイクアウト機能を使い、6人程度のグループに分かれて話し合ってもらいました。

座談会ではどんな発見がありましたか?

Twitterで集客をしたのですけど、アクティブな学生さんが集まってくれた印象がありました。地方の学生団体の活動をしている人、賃貸の空き家をリノベーションして宿にしている人、クラウドファンディングでお金を集めて自分のやりたいことを実現した人……。そういう人たちの参加を受けて、まだまだ優秀な学生がインターンをしたい気持ちに対して機会が足りていないのではと思いました。

逆に、情報感度が高いとかやる気がある学生はリモートインターンで機会をつかみとっていけるかもしれない。そうじゃない人は、最終的に経験量が少ないまま就活を迎えてしまう。今までは地域格差だけだったものが、それ以外の部分でも差が生まれてくるかもしれないね、と企業の方も話していました。

体験してみて分かった難しさ。社員のサポートで乗り越えられた

リモートインターンとしてやってみて、どんな難しさを感じましたか?

コミュニケーションが難しいなと思いました。会社に出勤してインターンをした時は社員の方が横にいるので分からないことが浮かんだ時にすぐ聞くことができます。ですがリモートで同じ状況になったら、チャットで問い合わせつつ他の仕事をするとか、計画性が必要だなと感じました。

今回イベントを企画するにあたって、私が企画したものを社員の方が手伝ってくださる形でした。変更事項が出てきたり、社員さんにお願いしたいことを伝えるのがギリギリになってしまったり……。そういう時間まで見積もっておかないと、すり合わせが難しいことを実感しました。

例えば会社にいて、社員さんが比較的忙しくなさそうなタイミングが分かれば声をかけやすいと思います。リモートの場合、疑問点があった時に「小さなことで時間を邪魔してしまっていいのかな」と抵抗がありました。

なぜ声をかけるのに遠慮してしまったのでしょう?

頭では共有した方がいいのだと思いますが、いざチャットでメッセージを送ろうとすると対面で会話をするよりもハードルが高く感じていました

自分の中できちんと整理できていないものを、相手に伝わるよう文章にまとめなくてはいけない難しさもあります。その文章を考えるのにも時間がかかっていました。

そういう難しさは、どのように解消していきましたか?

社員の方のサポートで解消できました。毎日どんなことをして何を感じたか伝える日報の時間がありました。それから、毎週行われる広報チームの会議で、業務の進捗報告の時間をいただいていたんです。そこでフィードバックを受けることができました。

それから、企画したイベントが終わった後に振り返りの機会を設けてもらいました。自分がやりにくさを感じていたことを話して、「ひとりで抱えず、もっと迷惑をかけるぐらい頑張ってほしい」と社員の方に言っていただいて。その言葉がきっかけで、相手への配慮を大事にしながら、ちょっとしたことを伝える勇気を持つのも大切だとマインドが変わりました。チャットで伝えるのが難しければ、音声・ビデオ通話を使って話すこともできますよね。リモート環境をうまくいかして円滑に情報共有できるよう、工夫していこうと思っています。

地方の学生にも、「やりたい仕事」に出会える機会を

地方の学生はインターンをやりたくても機会が得られず困っている人が多いのでしょうか?

私の周囲では多いです。インターンをしてみたい会社が見つからなかったという人、授業や課外活動との両立を考えると、京都や大阪にある会社で働くのは時間的に無理とあきらめた人……。

地方では、インターンを募集している会社が少ないのですか?

私が以前インターネットで探した時は、神戸は少なくて10社程度しか見つけられませんでした。

「空いた時間でインターンの仕事を」と思っても難しいのでしょうね。

仕事に使える時間が少ないと、企業側も大きな仕事を任せにくいのかなと思います。リモートでインターンができるなら、学生が自由に使える時間で働けるのではないでしょうか。作業自体は夜間にやって、企業の方にフィードバックをもらうのは翌日に、という工夫は必要になると思いますが。

今回、リモートインターンをやってみて良かったことは?

ひとつは、今回リモートのインターンを探して入ったというよりは、素敵だなと思った東京の会社でインターンができたので、その喜びがありました。

もうひとつ、移動時間の問題をクリアして働くことができたことも大きかったです。効率的に時間を使えました。授業や優先順位の高いことを大事にしながら仕事ができるのは、すごくありがたいなと思います。

地方の学生にも、もっとインターンの機会を提供してもらえたらいいと思いますか?

そうですね。東京だったらインターンの機会は1万件ぐらいあっても、大阪だったら千件ぐらい、地方ではおそらく100~200件ぐらいと、数百倍の差があります。イベントを開いた時にTwitterで繋がった人たちは、地方にいるけれどインターンの機会を求めている熱量を感じました。アクティブな学生は課題意識を持って日々活動しているので、それをインターンにいかしたい人もいると思います。そうすれば、企業にとっても学生にとっても良い結果に繋がるのではないでしょうか。

まとめ

神戸にいながら、東京の会社のリモートインターンを経験している松山さん。過去に体験したインターンでは希望通りの仕事ができなかったり、時間のやり繰りが難しかったりとミスマッチがあったそうです。今回は「この会社で働きたい」と思える企業での仕事が叶い、リモートならではのメリット・デメリットの両方を知ることができる貴重な機会になったのではないでしょうか。松山さんのように、リモートを駆使してインターンに挑戦する意欲的な地方の学生が今後増えていくように思いました。

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