子育て世代が地方移住で成功するには?「失敗しない移住」の3つのポイント

自分や家族が望む暮らしを求めて移住を決意する時に、どこへ行って何をするのか、決めるべきことはたくさんあります。自分や家族の生活がかかっていることですから、移住先で楽しく暮らすためにも、事前に準備を進めておくことが大切。実際にご家族で地元に近い鳥取へ移住した吉井秀三さんに、どうやって準備をしたのか詳しくお聞きし、3つのポイントにまとめました。

ライター

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

移住のために退職。会社に伝える時期は仕事のタイミングで考える

 

会社を辞めて移住するなら、退職のタイミングはいつ?

移住のために会社を退職しなくてはいけない、そうなると会社側は後任者を採用したり、仕事の引き継ぎが必要になったり……。これまで自分が仕事上果たしていた役割が空席になるのですから、どうしても周囲に影響を及ぼすことは避けられません。仕事自体に問題があって辞めるのではなく、自分の生き方を考えて移住するための退職。できれば円満退社をして、お世話になった方たちとのつながりは断ち切りたくないと思いますよね。

例えば、大きなプロジェクトを終えた時期や、チーム編成の変更などで自分の担当が変わるタイミングなど、比較的「今なら周りにあまり迷惑がかからないだろう」という辞めどきがあるはず。吉井さんの場合は、体調不良で大きなプロジェクトから別のプロジェクトの責任者に異動、新しく担当したプロジェクトの進捗も把握できたところで「この時期なら多分自分が抜けても影響を最小限に抑えられるはず」という時期が予測できたそうです。

具体的なスケジュールとしては、吉井さんが移住を決意したのが実行する約1年前。退職の意思を会社に伝えたのは、退職する半年前だったそうです。退職後半年ほどは、パートナーの出産があったため、東京にいたままフリーランスで仕事をしていたのだそう。

一方で、会社を辞めるということは複雑な事情が絡み合って、なかなか「今なら」という時期が分かりにくいことも。できれば早く辞めたい、辞めどきを見計らっていたらいつまでも辞められそうにない、そういった事情の人であれば、自分のタイミングで退職を進めても仕方がないかもしれません。

 

会社から引き止められそうな時は?

会社の上司や同僚に慰留されて気持ちがぐらつくとしたら、それは自分にとっても周囲にとっても良いことではありません。会社に退職を言い出すまでに、移住に向けて生活面・仕事面で調整を始めていることでしょう。本人の気持ちが揺れるようでは、その後話が二転三転して「振り回された」とそれこそ周りに迷惑がかかってしまうと思いませんか?悩む余地がある間は、会社には退職を伝えないのがベストです。

また、単身ではなく家族で移住する場合は、会社で退職の話を進める前に、家庭内でよく話し合って意思決定をしておきましょう。
「移住することに決めました」と強い意思を持って上司に話すことができれば、会社でも「移住は決定事項なんだな」と理解してもらうことができます。

吉井さんは上司に順番に話をしていったそうですが、同僚たちへは個別に話をせず先に文書の形で意志を伝えたそうです。退社・移住に対して、中には快く送り出してくれない人もいるかもしれません。話し合いが平行線になってお互いに消耗してしまいそうなら、自分の考えを発信することで解決につなげましょう。

 

二拠点生活でお試し移住する方法は?

移住体験者の中には、「週末移住」をして移住先と東京を行き来し、徐々に移住生活に慣らしていったという人も。さらに、生活も仕事も100%移住先に移してしまわないで、その時々で行き来をする「二拠点生活」のスタイルを継続している人もいます。

週末移住にしても二拠点生活にしても、移動時間と体力、お金などいろいろな面でリソースがかかってしまいます。また、吉井さんのケースのように仕事が忙しい人だと、仕事の場である東京に引っ張られてしまう心配もあります。そういったことを考えると、二拠点生活でメリットを得られる人は限定されてきそうです。

自分の仕事がフルリモートワーク可能な業種である、あるいは移住後に起業を考えているという人には、お試し移住や二拠点生活からスタートするのも良いかもしれません。

 

移住後にどんな生活をするか?具体的にイメージしておく

移住によって生活環境をがらりと変えてしまうのですから、事前準備にはやはり時間をかけて「こんなはずじゃなかった」という失敗をなくしましょう。そのためには、移住することで自分がどんな生活をしたいのか?移住先でできることは?よく調べて考えておくことをおすすめします。

今いる場所ではできない生活をしたいから、移住するのです。「自然豊かな土地で子育てをしたい」「休日はアウトドアや家庭菜園を楽しみたい」「家族といる時間を有意義に過ごしたい」…いろいろな「やってみたい」が浮かんでくるのではないでしょうか。

 

移住先のベストな場所の見つけ方は?家族全員の都合を考える

※畑仕事をする吉井さん

Uターンの場合は、実家から遠からず近からずがおすすめ

これまでまったく縁のなかった新天地に移住する人もいれば、UターンやJターンをする人も多いのではないでしょうか。

吉井さんの場合も鳥取県へのUターンではありますが、自分の実家とは別の地域に引っ越したので、厳密には違います。移住先の候補地を考えた時に、まずお互いの地元の鳥取か兵庫、さらにその2カ所からアクセスの良い岡山を含めた3カ所で家を探していたそうです。地元の人とのネットワークを広げていくうちに移住支援施設を紹介してもらい、現在住んでいる賃貸の一軒家の情報も教えてもらったのだとか。

最初は自分の実家でしばらく生活することも考えていたところ、第一子を出産したばかりのパートナーに義理の親との生活はハードルが高いと感じて止めたそうです。子育て世代の移住は、実家と近い方が何かと手助けしてもらえて良い面もありますが、あまりに近すぎると気を遣う場面も出てきてしまいます。「地元に帰ってくるなら」と言われて二世帯住宅同居を親から迫られた、なんていう話も。最初から親の面倒を見るつもりでのUターン以外は、実家と程よい距離感を保つと良いでしょう。

 

家族での移住は、決して独断で決めないこと

一家で引っ越すとなると自分の仕事のことだけではなく、パートナーの新しいコミュニティや子どもの教育環境など、それぞれの立場で考えなくてはいけないことが出てきます。

地域の学校まで相当距離があるとか、妻の立場で見るとその地域で暮らしづらい点があるかもしれません。ここで独断で推し進めてしまうと、何か問題が起きて家族の仲が悪くなる……という本末転倒な事態になりかねません。決して夫だけ、妻だけの一存で決めてしまうことなく、家族で話し合って移住先を決めるようにしましょう。

 

その土地に移住者がいるかどうかで選ぶ

吉井さんが今住んでいる地域への移住が正解だったと思っているメリットのひとつに、「移住者が比較的多いエリア」だったことがあるそうです。すでに移住者の先駆者が数家族いるので、新しいコミュニティが作りやすい雰囲気なのだとか。

また、土地自体が数十年前に別荘地として開発されたエリアなので、住民はみんな移住者のようなもの。確かに、「先祖代々この土地に住み続けている住民ばかり」という古い集落に入っていくのは、打ち解けるのが難しそうです。

土地選びで迷った時は、そこに「移住者がいるかどうか」を調べてみましょう。

 

 

移住前にキーマンとのつながりを。イベントへの積極参加でコミュニティ作り

※キャンプファイヤーイベントに参加する吉井さん

地元のキーマンとなる人を見つけると、情報も人のつながりもスムーズに

積極的に移住者を迎え入れている土地には、移住支援の活動をしている団体や人物がいるものです。自治体での支援施策やウェブの情報だけではなく、支援をしている民間の人と知り合ってコンタクトを取った方がフラットで有益な情報を受け取ることができます。SNSで地名などをキーワードに探すと、たどりつくことができると思います。

そういうキーマンとのつながりができれば、住む場所や仕事などについてのヒントも得ることができます。

 

どんどん遊びに出て行こう!夫婦でもひとりでも参加できるイベントで自然とコミュニティが

移住後は、地域で開催されるイベントを調べて、面白そうだと思うものにはどんどん参加していきましょう。吉井さんは味噌づくりや水耕栽培、地域のお祭りを通して人間関係が広がっていったそう。また、子どもがいる家庭であれば、学校や園のママ友コミュニティもできていきます。

パートナーと一緒に家族で参加できるイベントも良いですが、やはり自分の友だちもほしいですよね。趣味や興味があることをきっかけに、ひとりでもイベントに足を運んでみましょう。

まとめ

地域のキーマンとなる人と移住前に知り合い、情報をもらって地元に近い鳥取県内に移住を決めた吉井さん。退職の際には携わっていたプロジェクトのスケジュールを考慮、周囲への影響ができる限り小さくて済むタイミングを計ったそうです。

移住先選び、新しいコミュニティ作りもイベントや地域活動で楽しみながら広げていったとのこと。「移住したら、こんな生活がしたい」というイメージを明確にしながら準備を進めていくことが、大きなライフイベント「移住」を成功させるカギになるようです。