フリーランスビギナー講座【初めての確定申告 直前準備編】

フリーランスや個人事業主になったものの、確定申告のやり方がわからなくて不安な人は多いと思います。何から手を付けていいのかわからない初心者向けに、確定申告の流れや、先に準備しておいた方がいいことをわかりやすくご説明します。
必要な書類をしっかりそろえて、集計などをすませておけば、後はその数字を申告書に入れていくだけです。事前の準備を万全にして、スムーズに確定申告を終わらせましょう。
※本コラムは、2023年12月時点の情報をもとに作成しています。

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ライター

fumico
会計事務所を退職後HELP YOUにジョイン。経理とライティングのエキスパートになりたいと日々勉強中。一人娘はすでに独立しており、夫婦二人暮らし。社会にもまれながら頑張る娘の姿に刺激を受け、「お母さんも負けてられへん!」と意気込む滋賀のアラフィフ。→執筆記事一覧

そもそも確定申告ってなに?


確定申告とは、1年間の所得から税金の額を計算して自分で申告する手続きです。1年間とは1月1日から12月31日までの期間を指します。

申告期間は翌年の2月16日から3月15日までの間です。この期間に納付もしなければなりません。※事前に登録すれば預貯金口座からの引き落としやクレジットカードの利用も可能です。

フリーランスが確定申告するときの流れ

基本の流れは以下の通りです。

  1. 1年間の売上から経費を引いて事業所得を出す
  2. 事業所得から個人に関わる控除の額を差し引いて課税所得を出す
  3. 課税所得から所得税の額を計算する
  4. 所得税の額から税額控除分を差し引く
  5. 納付する税の額を確定する

よくわからない言葉も出てきたかもしれません。言葉の意味も説明しながら、ひとつひとつの流れを詳しく解説していきます。

1年間の売上から経費を引いて事業所得を出す

所得とは売上から経費を引いた額のことです。所得にはいくつか種類があり、フリーランスの在宅ワークは事業所得になります。1年間の売上から経費を引いて、自分の事業所得がいくらになるのか計算しましょう。

ところで、どのようなものが経費と認められるのでしょうか。例えば、仕事に使うパソコンやプリンタの購入費、印刷するためのインク代やコピー用紙代などは経費になります。そのほか、仕事の打ち合わせの際の飲食代やそこまでの交通費も経費として計上できます。

事業所得から個人に関わる控除の額を差し引いて課税所得を出す

控除とは「ある金額から、一定金額を差し引くこと」です。

事業所得を出したら、次は基礎控除や扶養控除、生命保険料控除など、個人に関わる控除(所得控除)を差し引きます。所得控除を差し引いて出てきた額が課税所得と呼ばれ、この額が課税の対象になります。

課税所得から所得税の額を計算する

課税所得に税率をかけて、所得税を計算します。

所得税には、一定金額を超過した部分の税率が高くなる「超過累進税率」が採用されています。課税所得が195万円以下であれば、所得税率5%です。195万円を超えると、195万円分には税率5%、195万円超330万円以下の部分には税率10%が適用されるといった具合です。所得税率は、課税所得額にあわせて5%から45%までの7段階に区分されています。

所得税の額から税額控除分を差し引く

所得税を計算した後、さらに住宅ローン控除などを差し引くことができます。所得税の税額から直接差し引くので税額控除と呼ばれます。

納付する税の額を確定する

税額控除した後の金額に、2037年12月31日までは2.1%分を上乗せします(東日本大震災の復興財源に充てるための復興税)。これでやっと税額が確定します。

なんだか、ややこしいですね。でも国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えばそれほど難しくはありません。「確定申告書等作成コーナー」は、イエス・ノー形式の質問に答えながら、聞かれた数字を入力していくと最後には確定申告書を完成してくれる仕様になっています。その難易度は、ご自身の状況と、どのような種類の数字を入れるのか(扶養家族はいるのか、医療費控除はあるのか、ふるさと納税はしているのか、など)で違ってきます。

確定申告書を作成するときは、「自分の状況とどのような種類の数字を入れるのか」を把握しておくことが重要です。それを、ここから確認していきましょう。

自分の状況を整理する

具体的に計算していく前に、まずは自分についての状況を整理しましょう。

そもそも確定申告する必要はある?

個人事業主やフリーランスで働いていても、全員が確定申告しなければならないわけではありません。1年間の所得が48万円以下なら確定申告は不要です。

これは、すべての人に適用される基礎控除というものがあるからです。基礎控除とは所得額が2,400万円以下の人は所得から48万円を控除できるというものです。所得が48万円以下の人は基礎控除分を差し引くと所得が0円になるので、確定申告しなくてもよいのです。

青色申告と白色申告の違いは?

次に申告の種類を確認しましょう。確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。

青色申告するには、事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要です。提出していなければ自動的に白色申告になります。

今年起業した人は、起業から2か月以内に申請書を提出していれば、今年の申告分から青色申告できます。青色申告承認申請書は、一度出せば翌年以降もずっと適用されます。

青色申告をすると「赤字を3年間繰り越すことができる」ので、赤字のときにも申告しておく必要があります。青色申告の人は、所得の額がいくらであっても必ず申告しましょう。

また、青色申告をしていると、青色申告特別控除を受けることができ、所得金額から最大で65万円を差し引くことができます。確定申告の際には、「青色申告している」のチェックを忘れないようにしましょう。

「青色申告」について詳しい解説はコチラ

会社員の副業は雑所得になる可能性あり

先ほども述べたように、フリーランスの在宅ワークは事業所得になります。ただし、会社員の副業は、雑所得となるケースがあるので、注意が必要です。以下の2つが事業所得として認められる際の基準です。

  • 営利目的で継続的に事業を行っていること
  • 記帳、帳簿書類を保存していること

特に、売上が低いと「営利目的で継続的な事業」であると認められない可能性があります。総合的に判断されるので、判断に迷うときは勝手に事業所得か雑所得かを選ばずに、税務署に相談してみましょう。なお、雑所得であれば、青色申告はできないのでご注意ください(青色申告できるのは、事業所得、不動産所得、山林所得)。

消費税の申告は必要?

確定申告では所得税のほかにも納める税金があります。それは消費税です。ただ、消費税を納めるのは、次のどちらかの条件に当てはまる場合です。

  • 前々年の課税売上高が ※1)1,000万円を超えている
  • 前年の1月1日から6月30日の課税売上高が1,000万円を超えている
  • ※1 課税売上高とは、消費税がかかる売上高のこと

この条件に当てはまらなければ免税事業者なので消費税の申告は免除されます。今年開業した人は、前々年や前年の売上が存在しないので、免税事業者になります。

しかし、免税事業者であっても消費税課税事業者選択届出書を提出することで、自らの意志で消費税を納めることができます。2023年10月から開始されたインボイス制度では、インボイスの登録番号を取得するためにこの届出書を提出して課税事業者になった人もいるかもしれません。その場合は消費税の申告が必要になります。

事業の収支を整理する


自分の状況を整理したら、次は収支の額を確認していきましょう。ポイントは次の通りです。

  • 1年間の売上と経費の額をはっきりさせる
  • 年をまたいだ売上と経費に注意する
  • 家計からの支出に注意する

では、その内容を詳しく説明していきます。

1年間の売上と経費の額をはっきりさせる

まず、1年間の売上と経費を整理します。売上にも経費にも、証明できる書類やデータが必要です。報酬明細書や請求書、領収書、レシートなどを保存していますか。なくした場合は再発行してもらってください。

書類を整理したら、次は帳簿付けです。青色申告なら複式簿記の帳簿が必要です。もちろん、白色申告でも帳簿は必要。会計ソフトを使えば自動的に複式簿記の帳簿を作成してくれて、売上から経費を引いた事業所得も簡単に計算できるのでおすすめです。

年をまたいだ売上と経費に注意する

申告の対象になる期間は1月1日から12月31日ですが、年をまたぐ売上と経費には注意が必要です。 

まず、売上について考えましょう。いつ納品(作業完了)したのかがポイントです。1月から12月に納品した仕事に対しての報酬が今年の売上です。12月に納品して1月に入金される報酬は12月の売上になります。

次は経費について考えます。1月から12月の売上に関わる経費が今年の経費という考え方をします。12月までの売上に関わる経費は、支払いが1月でも12月の経費です。1月の売上に関わる経費を先払いで12月に支払った場合は、その経費は翌年1月の経費になるのです。

家計からの支出に注意する

事業に関する経費をまとめるときに、プライベートの支出をまぜてはいけません。個人的なものの購入や、病院への支払い、住民税の支払いなどは事業の経費ではありません。

ただし、例外的に家計からの支払いで経費と認められるものがあります。家事関連費と呼ばれ、家計から支払っていても事業に関わっていれば、按分(割合で分けること)して関わっている分を経費に入れることができるのです。

フリーランスの場合、自宅を仕事場にしている人も多いと思います。その場合

  • 家賃
  • 固定資産税
  • 電気代

などの一部が事業の経費として認められます。仕事場として使っている部屋の面積や作業時間などをもとに、按分して経費になる金額を計算しましょう。

「経費」について詳しい解説はコチラ

個人の控除を確認する

事業の売上や経費の確認、帳簿付けが終わったら、次は個人の控除を確認します。

個人の控除と言われてもピンと来ないかもしれません。会社員のときの年末調整を思い出してください。配偶者の1年間の年収を報告したり、生命保険料の支払い証明書を提出していたと思います。あれは、個人の控除を計算するために提出していたのです。具体的には以下のような控除があります。

  • 生命保険料や社会保険料などの控除
  • 家族を扶養に入れていると受けられる控除
  • 住宅ローン控除
  • 医療費控除

では、詳しく説明していきます。

生命保険料や社会保険料などの控除

年末調整と同じように、確定申告でも生命保険料や地震保険料について控除を申請できます。また、国民年金保険料、国民健康保険料、個人型のiDeCoの保険料なども控除の対象になります。

家族を扶養に入れていると受けられる控除

扶養している家族がいれば、控除を受けられます。配偶者の場合は配偶者(特別)控除、16歳以上の子どもや両親などの親族の場合は扶養控除になります。

扶養される人の1年間の所得が48万円以下であることが条件です。同居していなくても認められるのですが、仕送りしているなど同一の生計であるという条件があるのでご注意ください。

「扶養」について詳しい解説はコチラ 

住宅ローン控除

住宅ローンやバリアフリーなど特定の改修工事のローンがある人は、一定期間ローン控除を受けられます。銀行から送付される借入金の年末残高証明書が必要になるので準備しましょう。

医療費控除

医療費が多くかかった人は医療費控除を受けられます。これは年末調整にはなかった控除です。確定申告でしか申請できません。

対象になるのは、1年間にかかった医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超えた人です。この医療費は個人だけではなく、同一生計の家族の分を合算できます。
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(参照2023-12-31)

そのほか気をつけること

ふるさと納税に注意

ワンストップ特例があることを知っている人は多いと思います。ふるさと納税した自治体が5つまでなら、各自治体に指定の書類を送れば、確定申告しなくても、ふるさと納税の寄付金控除を受けられる制度です。

しかし、確定申告をすると、ワンストップ特例をしていても全て無効になってしまいます。ふるさと納税先がいくつでも関係なく、寄付をしたすべての自治体について、必ず確定申告で寄附金控除額を申請してください。

源泉徴収票の申告を忘れずに

その年に退職した人や在職中の人は手元に源泉徴収票があると思います。確定申告では、その源泉徴収票の内容を申告する必要があります。

特に在職中の人は、年末調整が済んでいるのだから必要ないと思われるかもしれませんが、給与の所得と事業の所得を合わせることで正しい税額を計算しなおす必要があるのです。

在職中の人は年末調整で生命保険料などの控除の申請をしていると思います。その場合、年末調整で申請した内容を改めて申請するのではなく、源泉徴収票の内容を転記すれば大丈夫です。退職した人は年末調整をしていないので、源泉徴収票の内容を転記するとともに、生命保険料などの個人の控除を自分で申告しましょう。

確定申告書の作成

事業の収支、個人の控除について書類がそろったら、いよいよ確定申告書の作成です。手書きするよりも国税庁HPの確定申告書等作成コーナーから入力する方が簡単です。そのまま電子申告することもできますし、画面上で入力したものを印刷して郵送することも可能です。また、会計ソフトから確定申告することもできます。

ここまで記事をしっかり読んで準備すれば、もう大丈夫。あとは自信を持って今まで確認してきた数字を入力していきましょう。

まとめ

確定申告をスムーズに進めるためには、まず先に請求書や領収書、控除を受けるために必要な書類などをまとめておくことが大切です。全体の流れを理解し、足りない書類があれば再発行してもらうなどしておきましょう。初めての確定申告は不安も大きいと思いますが、国税庁の確定申告書等作成コーナーは初心者向けにわかりやすく構成されているので、準備さえしておけば入力は難しくありません。準備の時点でわからないことが出てきたら、確定申告前に電話で税務署に問い合わせすることもできますし、申告期間中は確定申告相談会も開催されます。わからないことは自力でインターネットや書籍などで調べてみて、心配な時は気軽に税理士に相談してみましょう。

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