旅先でも仕事をするワーケーションって嬉しいの?
旅先でも仕事をするワーケーションのメリットや課題について解説します。
「ワーケーション」という言葉を知っていますか?今年7月、日本航空(JAL)が導入を発表して注目を集めた、「旅先で仕事をする」という新しいワークスタイルです。「え、旅行中も仕事しなきゃいけないの!?」と思う方もいるかもしれませんが、実は結構メリットがあり、JALという大企業がチャレンジしたことで、日本でも広がっていく可能性があります。
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ライター
ワーケーションとは? アメリカでは2年前にニュースに
「ワーケーション(Workcation)」は、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、会社が社員に対して休暇中でも一時的にリモートで仕事をすることを認める(勤務時間にカウントする)制度、あるいは旅を楽しみながら仕事もするようなスタイルを指します。
日本ではJALが今年の7?8月にワーケーションに取り組むことを発表して注目が集まりましたが、アメリカでは2015年6月の時点で「ウォール・ストリート・ジャーナル」が、アメリカの一部の企業の社員がワーケーションを始めていることを伝えています。(参考:あなたもいかが?米で増える「ワーケーション」 )
また、バケーション中でも仕事をする人が増えているためか、それまでは「仕事を忘れる場所」と考えられていたようなリゾート地にも、素敵なコワーキングスペースができています。
例えば熱帯雨林の中に高級ホテルが点在するバリ島のウブドには、「HUBUD」というコワーキングスペースがあり、旅行者達がリラックスしながら仕事をしたり互いに情報交換したりしているのです。以下はHUBUDのInstagramより。いかにも熱帯雨林らしいインテリアや、仕事している横に小さい猿がいる図など、面白いですね!
ワーケーションのメリット
ワーケーションという働き方を取り入れる動きがあるのは、何故なのでしょう?JALの場合はその狙いを、以下のように述べています。
休暇先(旅先)で仕事をするという新たな働き方により、早朝や夕方以降の時間を社員が自由に過ごすことで、業務への活力につなげることが狙いです。
JALは、テレワークを推進し、働き方改革を進めます
これだけだと、「早朝や夕方以降の時間」だけでなく、「普通に1日中フリーな休暇の方がいいな……」と思ってしまいますが、ポイントは以下の部分でしょう。
また、ワーケーションにより、旅行の機会を増やし、家族と過ごす時間が増えることが期待されます。
JALは、テレワークを推進し、働き方改革を進めます
例えば、「今年は夏に1週間の休みを取って海外旅行に行こう!」と家族や友人と決めていたとします。でも、予定していた1週間の真ん中にどうしても外せない重要な会議が入ってしまった!
――そんなとき、従来なら泣く泣く予定をキャンセルするか、家族や友人に予定を変えてもらったり飛行機や宿泊先の予約をし直したりしなければいけなかったところ、ワーケーションができれば、予定通り旅行に出かけ、会議のある時だけビデオ会議で参加すれば良いのです。
特に日本人は仕事に対する責任感が強いので、「旅行行きたいな。でもあの案件があるから、1週間もいなくなるわけにはいかないよな……」などと考え、計画を立てる前から諦めてしまっているケースも多いのではないでしょうか。「仕事か休暇か」と完全にオンオフを切り替える発想を捨てれば、もっと気軽に長期休暇を取れるようになるかもしれません。つまり、最近国が力を入れている。有休取得率の向上を目指した「休み方改革」にもつながるわけです。
私もワーケーションしてみました!
私は会社員ではなくフリーランスですが、今年のゴールデンウィークにワーケーションらしきことをしてみました。
徳島県の海辺にある美波町を訪れ、家族で過ごしたのですが、その間に毎週定例でやっているミーティングにオンラインで参加したり、ライターさんの原稿のチェックをしたりと、ちょこっと仕事もしたのです。宿泊したのは、「戎邸」という築80年の古民家をリノベーションしたサテライトオフィス体験施設。和室や台所やお風呂という生活の場と、仕事用のデスクやミーティングスペースが併存する、まさにワーケーションにピッタリの場でした。
狭いビジネスホテルなんかで子どもも一緒だと、とても落ち着いて仕事ができませんが、戎邸は縁側とその先にちょっとした庭もあって、子どもも伸び伸びと遊んでいました。ただ、流石に長時間ほうっておくと、「一緒に遊んで?」とまとわりついてくるので、1人でできる仕事は少し早起きしてやったり、ミーティングの間は夫に子どもを連れ出してもらったりして乗り切りました。
ワーケーションの普及に必要なこと
自分の体験も踏まえ、今後ワーケーションが広まるにはどんなことが必要か、考えてみました。
休んでリフレッシュすることの重要性の認識
ワーケーションを取り入れた結果、休暇中もずっとPCの前から離れられないようでは、本末転倒です。会社も社員も、休むことの重要性と「ワーケーションは休みを取りやすくするためのもの」という目的をきちんと認識し、ワーケーションではいつどのくらいの仕事をするのかを事前に合意する、といった運用ルールも必要でしょう。
テレワークやフレックスタイムの実現
すでにテレワーク(リモートワーク)やフレックスタイム制(あるいは時間単位や半日単位で取れる有給休暇制度)などがあり、時間や場所にとらわれずに働くスタイルが浸透している会社であれば、すぐにでもワーケーションは実現可能です。
わざわざ「ワーケーション」なんて言わなくても、「来週は実家に帰省するので、定例ミーティングの日はリモートで参加し、その日の午後は半日有給取りますね」といった調整が当たり前にできるようになるのが理想ではないかな、と思います。
ワーケーション向きの施設やサービス
最近はパソコンとネットがあればできる仕事が増えてはいますが、滞在先によってはネット環境が不安定な場所もあります。また、ビデオ会議をするにしても、ひとりで作業するにしても、あまりに狭い場所や混雑した場所では、効率の面でも情報セキュリティの観点からもよくありません。
先に紹介したHUBUDや戎邸のような、仕事ができる環境を提供してくれる施設が各地にできるといいですね。また、子連れでの旅行の場合、滞在先で利用できる一時保育やベビーシッターのサービスがあると、集中して仕事ができます。ワーケーションの普及によって、そういった環境が充実するといいな、と期待しています。
仕事の仕方に対する固定観念の打破と自律性
何よりも大事なのは、「オフィスに行ってやるのが仕事」といった今までのワークスタイルに対する固定観念から自由になることでしょう。そして、「この場所で、この時間帯に働いてくださいね」という指示のない状態で、自分で仕事の仕方を決め、オンとオフを切り替えながら過ごす、そういう自律的な働き方ができる人が増えると、ワーケーション実践者は自然に増えていくのではないでしょうか。
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