ストレス低下でやる気アップ!時間と場所を自由にしたインテージグループの働き方改革

フルフレックス、リモートワークOKにして見えてきた効果

マーケティングリサーチの最大手インテージグループは、今年度から働き方改革に力を入れています。まずはインテージホールディングスの社員を対象に、7時から22時の間なら仕事の時間を自由に設定できるフルフレックスタイム制度と、対象者や回数に制限のないリモートワーク制度を導入しました。働く時間と場所が自由になると、どんな効果があるのか、同社で行ったアンケート結果から探ってみたいと思います。

ライター

やつづか えり
『くらしと仕事』初代編集長です(〜2018年3月)。コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』を運営中。『平成27年版情報通信白書』や各種Webメディアにて働き方、ICT、子育てなどをテーマとしたインタビューを執筆しています。2013年に第一子を出産。

時間の余裕が精神的余裕につながった

この4月から、インテージホールディングスの全社員50名ほどが、新しい働き方をすることが可能になりました。最初の1ヶ月を振り返るアンケートによれば、以下の通り、約半数の社員が働き方を変えたとのことです。

  • フルフレックス制度を活用した働き方を実施した社員:約45%
  • リモートワーク制度を活用した働き方を実施した社員:約55%

また、この取り組みによって「自分自身の働き方(プライベート含む)にポジティブな変化があった」と回答した社員は6割を超えました。具体的な変化やその理由としては、以下のような声が挙がっています(以下の文章は、フリーアンサーの内容を参考に筆者が作成)。

  • 在宅で仕事ができるので、移動時間が省けてストレスや疲れが減った。
  • 通勤がないと、始業時間を早くでき、朝に集中して仕事ができた。
  • 家庭の事情と仕事の調整がしやすくなった。
  • 時間的に縛られないと、精神的にも余裕ができた。

「これまで午前半休を取って通院した際は、混雑していると昼までに終わるかが心配だった。フルフレックスで時間の縛りがなくなったので、気が楽になった」という感想もありました。確かに、「病院が混んでいて会社に出社できるのが14時になってしまった!」といったとき、それが遅刻と捉えられるか、遅めの始業(その日の終業時間や他の日の勤務時間を調整すればOK)と捉えられるかで、精神的負担は大きく異なりますよね。通院の例は直接仕事と関係ないのでは?と思われるかもしれませんが、人間というのは何か気になっていることがあると仕事のパフォーマンスが落ちてしまうということが、研究の結果からも分かっています。なるべく気がかりやストレスのない状態で仕事に臨めるようにするというのは、仕事で成果を上げるためにも良いことなのです。

自由だからこそ、モチベーションが上がる

社員のストレスが減った、それだけでも素晴らしいことですが、会社として取り組むからには、もう一歩踏み込んだ狙いがあります。インテージグループで働き方改革のリーダーを務める松尾重義さん(インテージホールディングス人事戦略統括グループ シニアマネージャー)は、その狙いを「社員ひとりひとりのプロフェッショナリティを高めること」だといいます。つまり、働く時間や場所を選べるようにすることで、 より良く成果を出せる方法を社員自身が考え、どんどん力を出していくことを期待しているのです。

アンケートの結果からは、この点についても効果が出つつあることがうかがえます。例えば、4月以降の変化について「会社に来ていれば仕事しているとみなされるという雰囲気がなくなり、タイムマネジメントや現在抱えている業務の効率化を、より考えるようになった」「チームの力を最大限発揮できるように、各々が考えるようになった」といった意見が挙がっています。なぜ働き方を変えるのか?という会社の意図が、現場の社員にもよく伝わっているからこそ、このような意識が芽生えているのでしょう

様々なライフスタイル、ライフステージにいる人が力を発揮できるように

インテージホールディングスの取締役で、働き方改革推進担当 仁司与志矢さんは、育児や介護、そしてそれ以外のことも含め、社員が抱える様々な事情を犠牲にしない働き方を可能にしたいと考えています。「ひとりひとり、違うライフスタイルやライフステージにいるのに、あるルールに無理やり合わせなければならないとなると、犠牲にするものが色々あると思うんです。育児や介護が犠牲になるというのは分かりやすいですけど、プライベートの趣味なんかは、なかなか語られませんよね。これまでは、仕事なんだから、多少の犠牲は当たり前というのが、普通だったかもしれません。でも、そうでない働き方が、必ずあると考えています」

働き方の自由度が増えることによるストレスの軽減についても、仁司さんは実体験を踏まえて重要性を語りました。「以前、子育てしながら時短勤務をしているけれど、早く帰るときに皆さんの視線が冷たく感じるという女性がいました。彼女は社内で最も成果を出している人のひとりでしたから、『もっと自信を持ちなさい』と言ったのですが、やっぱり後ろめたさを感じると。例えばリモートワークができて、早く帰るんじゃなくて働く場所を変えるということであれば、そんな気遣いからも解放されるのではないかと思うんです」この女性の気持ち、働くお母さんならよく分かりますよね。働き方が自由になり、「みんなと一緒に会社にいないと悪い……」という後ろめたさから解放されれば、ワーキングマザーはもっと伸び伸びと力を発揮できるのではないでしょうか。働き方を縛るルールを減らし、より成果が出せることを目指す同社の改革の行方に、注目したいと思います。

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