いま20代の地方移住が急増中?!~三重県尾鷲市・南伊勢町でのローカルワーク&ライフを事例に~
2019年7月15日、就職活動を支援する「Hellolife(ハローライフ)」にて【YOUは何しに(紀伊)半島へ?】が開催されました。何かと不便だと思われがちな田舎でも活躍する関西人×関東人リアルローカルワーク裏話。20代で転職・移住を決めた関西人と、新卒でパラレルキャリアを築いている関東人のゲストスピーカーから地方移住に関するリアルなお話を伺いました!今回は、ゲスト2名の「地方での働き方・暮らし方」だけでなく、少子高齢化が進む地方の実情や地域おこし協力隊の募集先まで詳しくレポートします。
今回は、ゲスト2名の、「地方での働き方・暮らし方」だけでなく、少子高齢化が進む地方の実情や地域おこし協力隊の募集先まで詳しくレポートします。
ライター
登壇者のプロフィール
浅田克哉さん|三重県尾鷲市梶賀町
株式会社梶賀コーポレーション 副社長、akfocusフリーランスデザイナー
1990年生まれ。大阪市内でデザイナーとして6年間勤務、主に化粧品のパッケージやロゴマークのデザインに携わる。2016年より三重県尾鷲市の地域おこし協力隊に転職し、同市内梶賀町へ移住。地元の商品をデザイン力を活かしてプロデュースし、後に株式会社梶賀コーポレーションの立ち上げに参画。現在は同社副社長のかたわら起業し、akfocusとして梶賀町内のデザインなどを行っている。
伊澤峻希さん|三重県南伊勢町
有限会社友栄水産 漁師、南伊勢町地域おこし協力隊 ライター、OTONAMIE ライター
1996年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部卒業後、インターンシップを経て、2018年より有限会社友栄水産に漁師として就職。その後、南伊勢町地域おこし協力隊に就任し、ライターとして複数の媒体で町内の魅力を内外へ発信している。また、情報や人が行き交う場所づくりのために『BUNKAJIN PROJECT』を立ち上げ、その第一弾としてコワーキングスペースを運営している。
モデレーター:伊東将志さん
三重県尾鷲市出身。地元高校を卒業後、尾鷲商工会議所へ就職。2012年から3年間、尾鷲商工会議所にて日本初となる商工会議所型 長期実践型インターンシップ事業を立ち上げ、新しい経営支援の形を生み出す。また、そのノウハウを各地の少子高齢化が進む地域へ伝えている。「生まれ育った町を元気にする」が暮らしと仕事のテーマ。現在は「夢古道おわせ」を運営する株式会社熊野古道おわせに入社し、支配人を務めている。
「都会に比べて、不便な部分は数多くあります。例えば、交通の便の悪さ・カフェがない・スーパーマーケットもない・・・など。
ですが、田舎にしかない魅力も数多くあります。
尾鷲市の場合、全国的にみても早い段階から、大学生のインターンシップ受け入れなどにチャレンジし、他の少子高齢化社会のモデルとなっている地域です。市内には海洋深層水を使用している温浴施設もあります。また、世界遺産「熊野古道伊勢路」が通り、その豊かな自然と住民の力により、ぶり・甘夏など特産品が多くあります。」
トーク1.「朝は泳いで釣りを楽しみ、夕方から海が見えるデスクで働くのが楽しい」浅田克哉さん(関西人×尾鷲市)
移住前は9時-17時で働くデザイナー。尾鷲市の決め手は具体的な「ミッション!」
尾鷲市・南伊勢町についての紹介があった後、大阪府出身で現在は尾鷲市梶賀町在住の浅田克哉さんが登壇しました。社会人になってからは、大阪市内のデザイン会社に勤務し、化粧品などのデザインをされていました。
3年前に地方創生に興味を持ち、地域おこし協力隊員として三重県尾鷲市梶賀町へ移りました。梶賀町に行く決め手となったのは、「梶賀のあぶりをデザインし、全国的に売れる商品にしてほしい」という非常に具体的なミッションがあったため。
実際に、伝統的な地産品である「梶賀のあぶり」の売上アップのため、少量で手に取りやすいようにするなど、地元のかたの理解を得ながらプロデュースしたそうです。結果として、全国的に売れる商品となりました。
提案当初は「少量では見栄えが悪い」という反対意見もあったそう。しかし、それまでに築いてきた信頼関係のおかげで、自分のデザインを信じてもらえた。「地域になじむ」ことは、地方で働くうえで重要な要素のようです。
地域おこし協力隊になって・・・「梶賀のあぶり」をデザインし、全国区に!
ー地域おこし協力隊になる方・移住を考えている方へのアドバイスはありますか。
「気をつけたことは、最初から自分のやりたいことを出し過ぎないことです。住民の方々は、外から来た人間に好奇心をもって接してくれますが、不安も感じています。そのような中で、「自分はこれがしたい!こうすれば良くなるから!」と一方的に熱意を押しつけてしまえば、軋轢が生まれかねません。まずは、「郷に入っては郷に従え」というように、住民の方との挨拶からはじめて、少しずつ仲良くなれば、やりたいことがある時に分かってもらえたり、信じてもらえます。」
浅田さんはもともとコミュニケーションが得意というわけではなかったそう。
「いまでは、一緒に旅行へ行くことも(笑)食事の面でも、沢山にお母さんが居る感じで、おいしい食事をくださったり、魚も浜価格で頂いています。」と笑顔でお話されていました。
いきなり移住を決めてしまうのではなく、「まずは一度行ってみる」ことをオススメされていました。そうすれば、行政の方と顔見知りになれたり、あとからギャップを感じる事態を避けることができるからです。
地域おこし協力隊→法人化→フリーランスになって定住中
現在は、地域おこし協力隊の任期(3年)を終え、引き続き梶賀町で暮らしているそう。地域おこし協力隊になるまでは、尾鷲市を全く知らなかった浅田さんは、まさか定住するとは思ってもみなかったのだとか。
「商品のデザイン後、法人化に携わり、自らも「akfocus」として起業しました。現在は梶賀町のさまざまなデザインに取り組んでいます。」
尾鷲市の魅力が詰まった写真展の開催のほか、尾鷲市長の名刺も浅田さんのデザイン。
「大阪で働いているときは、一商品のデザインだったのが、梶賀町では「まち」全体をデザインできる、というスケールの大きさに、とてもやりがいを感じています。それに、大工のようなこともしたり…「こんなことも出来たのか!」と、ここに来てからの自分の仕事幅にも驚いています(笑)」
定住がはじまった、梶賀町で働く魅力とは?
浅田さんいわく、梶賀町へ地域おこし協力隊として来た方のほとんどが、定住や長期移住、または再訪をしているそうです。
ー梶賀町での働き方と、大阪に居た頃の働き方は違いますか?
「働き方は変わりました。大阪では9時17時で働いていましたが、今は自由な時間に働いています。天気が良い日には、朝から泳いだり釣りをして、日が暮れてから自宅で仕事をしています。」
浅田さんの自宅にある、海が見える仕事場の写真はとても素敵でした。
(尾鷲市や南伊勢町では、住まいを借りる=1万5,000円とのこと!駐車場代も破格でした。)
ースキルがなくても、地方移住して働けるでしょうか。
「都会と田舎では大幅に暮らしは変わります。ですが、田舎にも仕事はあります。スキルがあるかないかではなく、「やってみる!」というチャレンジ精神があるかどうかが重要です。また、移住当初は不便さも感じましたが、すぐに慣れました。今では梶賀町の人間になってきたなと感じています。」
|尾鷲市について
尾鷲市では、仕事体験・現地見学会を開催しています。また、梶賀町のほか、九鬼町(くぎちょう)・早田町(はいだちょう)にて「地域おこし協力隊」を募集しています。
定住移住の前に訪れることで、ローカルワークと向き合うことが可能です。
詳細はこちら。
トーク2.「念願の一次産業!漁師をしながらライターをする人が続けられる環境を作る」伊澤峻希さん(関東人×南伊勢町)
はじまりは、学生時代の就活への違和感と「旅」
次に、漁師とライターを兼業している伊澤峻希さんが登壇しました。伊澤さんが新卒で漁師になったのは、大学時代の就職活動がきっかけ。
「就活が始まると、これまで研究してきた内容と全く違う企業の面接を受ける学生がほとんどでした。そこに違和感を感じていて、趣味でもあった国内外への旅を続ける中で、「一次産業に関わりたい」と気づきました。それから、全国各地の一次産業を行う場所を訪れました。」
そして、行く先々でこの気持ちを話していたところ、南伊勢町を訪れた際に「友栄水産に面白い人が居るから会いに行ってみたら?」と教えてもらい、すぐさま南伊勢町を再訪したそう。
「南伊勢町は「住む場所から海が見える」というのが決め手でした。意外と海はあるけど、見えない場所も多かったので。」
新卒漁師でライター、二足のわらじを続ける理由
友栄水産では、真鯛漁のほか、2018年にはゲストハウス「まるきんまる」を開業し、そこでの漁師体験アクティビティが人気を博しています。
非常に珍しい「漁師とライター」という二足のわらじを履いている伊澤さん。現在ライターとしては、町内の広報誌や新聞、WEBメディア「OTONAMIE」で情報発信しています。新卒漁師として働いていたところ、地域おこし協力隊にライターとして声がかかったことで、ライター業をスタート。
「ライターとしてのミッションは2つあって、1つは外への発信。これは、南伊勢町を知ってもらうためです。もう1つは、町内への発信で、こちらを非常に大切にしています。
自然豊かで「奥志摩」と親しまれる南伊勢町内には、38もの集落があり、それぞれに農村と漁村の文化が混在し、伝統的なお祭りなどの独自の文化が根付いています。
「町の良さ」を改めて発信することで、住民の方々が地元の良さを再認識できますし、地方の活性化にも繋がります。喜んで読んでもらえたり、生き生きとしてもらえることに、やりがいを感じています。」
南伊勢町には、映画館やカフェ、電車・高速道路などはなく、不便さは確かにありますが、製炭・農業・漁業が盛んで、その道のプロや、面白い事業を行うかたなど「すごい人」がたくさんいらっしゃいます。
南伊勢町でのコワーキングスペース運営と、これからへの想い
ーこれからの目標はありますか?
「いまはまだ、「漁師でライター」という方は他にあまりいません。そのため、後に続く方が継続できるよう、仕事として成立する環境を作っていければと思います。」
現在南伊勢町内は、65歳以上の人口が50%を超え、超高齢化社会。今後の「まち」をつくり考えるため、地域おこし協力隊員を募集しています。
ー南伊勢町への移住者はどの年代が多いのでしょうか。
「参加者の年齢は、20代から50代まで幅広く、30代前半の方が多いです。一緒に運営しているメンバーには、地域おこし協力隊への参加後、南伊勢町での生活に魅力を感じて、夫婦で移住した方も居ます。」
ただ、いきなり転職して移住するのは大変とのこと。地方では何かあったときに助け合える人間関係がありますが、都会の暮らしとは違う部分として、負担に感じる方も少なくないそうです。
「そんなとき、気軽に相談できる相手が居れば心強いはず。そういった思いもあって、コワーキングスペースの運営を開始しました。今後さまざまな方の移住をサポートできるよう、試行錯誤しているところです。
気になる場所がある方は、まずは一回行ってみる。それから、旅・地域おこし協力隊・長期移住など、自分が好きな関わり方を選んでもらえれば。」と伊澤さんから提案がありました。
イベントを終えて~ママライターから見た地方移住~
現在、私は(どちらかといえば)都会で幼児2人の子育て中です。スーパーが近い、小学校が近い、という便利さがある反面、交通量が多く、歩道や公園が狭いなど、「ダメ!と言わずに歩かせてあげられたら・・・」「もっと広い場所でのびのびと走りたいだろうな・・・」と悩みもあります。買い物の大半はオンラインで完結できるので、「地方での働き方・暮らし方」は非常に魅力的でした。
長期の育休取得率が低く、ワンオペ育児をする方も多い中、田舎ならではの「町ぐるみでの子育て」は、子どもにとって安心感があり、想像力の世界も広がるのではないでしょうか。また、在宅でリモートワーク中のため、緑に囲まれ、海が見える場所で働くことにも心惹かれました。作業がはかどりそう!
まずは、伊澤さんオススメの「まずは体験・旅から始める」から、実行したいと思います。一度今いる場所から離れてみることで、リフレッシュになったり、自分に合った働き方・暮らし方・生き方について振り返る時間になるはずです。
まとめ
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