楽しく働くヒントを見つけに「IDOBATA LIVE 2016 summer」に行ってきました!

出産を経て自分らしいやり方で仕事を続けている3人のママ、大手企業を辞めて本当に好きなことに情熱を傾ける起業家――、赤坂の「Hatch Cowork+KIDs」で開催されたイベントでそんな方々の話を聞いてきました。

2016年7月1日、赤坂にあるキッズスペース付きのコワーキングスペース「Hatch Cowork+KIDs」にて、「IDOBATA LIVE」というトークイベントが開催されました。「Hatch Cowork+KIDs」は、子育て世代が子どもの近くにいながら仕事をし、働く時間・環境を自分で選択する、新たな働き方を模索できる環境を提供しています。イベントの前半では、この「Hatch」を利用して仕事をしているワーキングマザー3人のお話を、後半では島根を拠点に酒造りをし、日本酒の魅力を世界に広める活動をしている日本酒応援団の古原忠直さんのお話を伺いました。

ライター

宮本ナガタ
20年以上エンターテインメントに関わる仕事をしてきました。読むのも書くのも大好きな、重度の活字中毒です。読みやすくて楽しい記事を目指します。

トークセッションpart1:Hatchのお仕事図鑑『働くママ編』

フリーライター 伊藤紘子さん

広告代理店の制作部でディレクターをされていた伊藤さん。26歳からフリーになり、教育や医療関係の業界紙、広告専門誌、企業の社内報などで、主に著名人のインタビュー記事を書かれているそうです。29歳で結婚、32歳で出産。出産後も第一線で仕事を続けていらっしゃいます。

育児には夫もどんどん巻き込んで、産後もすぐに仕事再開

「妊娠中あまりお腹が大きくならなかったので気づかれず、ギリギリまで仕事に出かけていました」という伊藤さん。出産後の病院にもパソコンを持参してメール返信、退院後も自宅で毎日パソコンを開き、3週間後には取材にも出掛けたりできたので、出産されていると知らないクライアントさんもいるほど。「すごい・・」と参加者から、驚きの声が上がっていました。ご主人も多忙な伊藤さん。それでも「産後からどんどん夫を巻き込んでいますので、子どもも私じゃないとダメみたいなことは全くなく、早く帰宅したときはお風呂も寝かしつけもしてくれます」仕事ができる人は「周囲を巻き込む力」があるといいます。伊藤さんが活躍されているのも納得です。

出産を経て、「仕事」を選択できるようになった

出産の仕事への影響は、「常に120%という仕事のスタイルを変えたいと思っていたので、そのチャンスだと思った」という伊藤さん。納期が厳しい仕事や急な案件はお断りするようになったことで、逆にいい意味で希望する仕事だけを選択できるようになったそう。

「量より質を優先にできるようになったことで、収入もほとんどかわらずに仕事ができています」仕事を断りにくい、ということがデメリットになる「フリーランス」の仕事。伊藤さんは「子どもがいること」で「仕事を受ける基準」がしっかりと確立されたように思いました。

保育の場所、仕事の場所として「Hatch Cowork+KIDs」を選んだ理由

最初は地元の認可保育園への入園を目指して保活をされていたものの「子どものかたわらで、子どもの存在を感じながら働けるという贅沢は、今しかできない」と「Hatch Cowork+KIDs」へ週5メンバープランで通い、仕事をされている伊藤さん。

家事も育児も仕事もという環境ではなく、仕事のときは仕事をしたい。メリハリがつくように、ここを利用しています。」そして、ガラス越しにキッズルーム覗いて、子どもが私のことを意識せずに遊んでいる姿を見ると「とても可愛くて、新鮮で楽しいです。また、キッズスペースでは子どものお昼寝中にアロマを焚いたりするので、自分も一緒に癒されます。そして、よし、また仕事頑張ろう!って思うんですよ。」

お子さんの話をされる伊藤さんは、とても優しいママの顔でした。

リモートワーク(秘書) 城夏織さん


城さんは、監査法人で税務関係の仕事を経て、インターネット関係の会社で新卒採用をしていた時、ご主人の転勤で関西へ行くこととなり退職。転勤先の関西で、インターネット関係の会社の社長秘書を在宅で始めました。東京へ戻った現在は、もう一社契約を増やし、二社の仕事を引き受けていらっしゃいます。

役割を柔軟に調整し、出産後もリモート秘書を継続

「リモートワークで秘書って、十分にお休みは取れるんでしょうか?」という質問に、「リモート秘書なので、基本はチャットで仕事をし、必要な時はビデオ通話で打ち合わせ、と時間的にはかなりフレキシブルに調整できる体制になっています」という城さん。ただしタイムリーに反応しなくてはいけない急な用件もあるので、出産2ヶ月前には他のリモート秘書スタッフに基本的な業務は引き継ぎされたそう。その結果、産前産後は1日1回チャットを見て全体を把握し、必要に応じて引き継ぎしたスタッフのフォローや質問などに対応することが、城さんに役割になりました。

「お子さんの様子や体調をみて、大丈夫そうだったらまた声かけてね」と会社が柔軟に対応してくれたこともあり、出産後も様子を見ながら徐々に業務量を増やしていったため、問題なくお仕事を続けられているそうです。

「生まれてすぐの時期はよく寝る子なので、仕事もしやすかった」という城さんですが、子どもが10ヶ月になる頃からハイハイもスピードアップ、自由に動き回れる範囲が広がって、これまでと同じように自宅で仕事をするのも「大変だ」と実感されたそうです。

仕事の効率を上げるコツは、優先順位付けと子どもの状態に合わせた作業内容

「仕事の効率を上げるコツは、優先順位を決めることです。」子どもが起きている間に「やらなくてはいけないこと」をまとめる作業をし、寝たらそれらを片付けていくのだとか。

「子どもとの向き合い方も、仕事の効率に影響しますので考えています。仕事しながら遊びながら・・だと、仕事も中途半端になってしまうし、子どもも満足しないので、遊ぶときはガッチリ遊んで、子どもが自分の世界に入ったら仕事を始めます

「Hatch Cowork+KIDs」には週2回来て、他の日に貯めた仕事を一気に片付けているそうです。「子どもが近くにいる状態での仕事は大変では?」という質問には、「一時保育などで、姿が見えない状況で気になっているより、ずっと安心して仕事に集中できます。気になったらガラス越しに様子を伺えることは、子どもの行動も邪魔することなく、自分も安心できるから、とてもいいです」というお答えでした。

ママの視点を仕事に活かす

4月から契約した会社は、まだ創業したて。現在採用に力を入れていて、さらに「ママも働きやすい会社にしたい」という代表者の意向があり、城さんもそのための制度や環境づくりに参加しているのだとか。「働くママとして、経験者ならではの視点で考えています」とのことで、働くママにとって、本当に必要な環境づくりができそうですね。

多忙な夫でも、子育てから置いてきぼりにしない

城さんのご主人は自身で起業しており、かなり多忙とのこと。「平日は基本的に戦力外です。休日もスマホで仕事をしていたりするので、もうその辺は割り切っています」と城さん。

「仕事が忙しいのは仕方のないこと。なので『最近、娘の遊びのルールは、こうなっているのよ。』などと、子どもの情報共有はしっかりとするように心がけています。また当たり前のことではありますが、『私がやってほしいことを、何も言わずに気づいてほしい』というのは難しいことなので、きちんと言葉にして伝えるようにしています。」

時間がないからといって、ご主人を子育てから置いてきぼりにしない。そして「分かってくれて当たり前でしょ!」ではなく、きちんと言葉にしてコミュニケーションを取る。とても大切なことをしっかりと実践され、お仕事に子育てに大活躍中ですね。

やわらかん’s cafe 鈴木公子さん


大学卒業後、おもちゃ会社で主にぬいぐるみの企画開発をされていた鈴木さん。退職後開業を目指して、ウェブショップのスタッフをしながら勉強をされました。現在は自宅にて「やわらかん’s cafe」というぬいぐるみ専門のカフェをオープンし、まもなく1年になります。

自身の存在意義を失いかけた産後、救ってくれたのは仕事だった

出産後、体調不良とともに両手が腱鞘炎になってしまった鈴木さん。家事も育児も思うようにできず、「何のために自分はいるんだろう」と自身の存在意義を失いかけていました。そんな時、おばあちゃん(鈴木さんのお母さま)が子どもに「ほらおっぱいが来たよ」と話しかけたのを聞いて、「自分にはもう”おっぱい”としてしか価値がないんだ」とショックを受けたそう。

しかしそんな自宅療養中に、前職のウェブショップから「戻っておいで」と声が掛かります。デスク横にベビーベッドを置いてくれて、駐車場も確保してくれたそうで、「私を待っていてくれる人がいる!」という思いが、鈴木さんを励まし、元気づけたのです。「仕事がたいへんだったのではなく、仕事に救われました」と辛かった時期を語ってくれました。

子育てからのインプットが仕事に活かされるように

出産後の変化として、「まず無理をしなくなりました。できないことは、やらない」ということを挙げる鈴木さん。また、児童館に行くようになって、仕事につながる様々なヒントを得られるようになったそう。「児童館の手作りイベントが面白くって。たくさんの感動を自分のカフェに、ヒントとして取り入れています。楽しいインプットが増えました

ママになったから、見えるもの。子どもがいることで、鈴木さんの世界も広がっていることが伺えます。

子どもが起きている時と寝ている時で、やる仕事を振り分ける

「子どもが起きていてもできる」ことと「寝ていないとできないこと」に仕事を振り分け、寝ていないとできないことは、寝ている間に集中してやります。基本的にご自宅で仕事をされている鈴木さん。「Hatch Cowork+KIDs」には月2から3回来て、web作業や経理などの事務作業を一気に片付けるんだそうです。「ここまで1時間以上かかるので、仕事するぞ!と気合を入れて来るんです」

仕事の時間を確保してくれる協力的な夫の存在も

「主人は全面的に、仕事に協力的です。」と語る鈴木さん。毎日18時くらいには帰宅して、子どもの面倒を見てくれたりと、鈴木さんの仕事の時間をちゃんと確保してくれるのだそう。「忙しいときは晩ごはんを買ってきてくれたりします」という鈴木さんに、「羨ましいー!」と参加者からため息が漏れました。

<トークセッションpart2 :ハッチのお仕事図鑑『面白いことしちゃおう編』>

トークセッションpart2は、ガラッとかわっていきなり「日本酒」が登場。お話ししてくれたのは、日本酒応援団株式会社 代表の古原忠直さんです。「飲んでみなきゃ分からないですよね」と、振る舞われたお酒は島根県産「KAKEYA」という銘柄の「清酒」と「にごり酒」。そして日本酒に合う「羊羹」。「え?お酒に羊羹?」と意外な組み合わせに、参加者もびっくり。羊羹は島根県の「黒田千年堂 清水羊羹」で、これが意外に日本酒に合うのです。

まずは「この清酒とにごり酒って、同じ樽から採れることご存知ですか?」や「純米酒ってどんなものか分かりますか?」など、日本酒についてのごくごく初歩的なお話しから。しかし改めていろいろ聞いてみると「日本人なのに、実は日本酒について何も知らなかった」ということが分かってきます。

 

「酔った勢い」で始まったライフワーク


大学卒業後、三菱商事などでベンチャー投資・事業開発をしてきた古原さん。ベンチャー投資の仕事は好きだし向いている、とは思ってきたものの「じゃあこれが自分のライフワークなのか?」と考えた時、「そうだ」と心からうなづけない自分がいました。そして、気がつけば毎日のように日本酒を飲んでいる。「自分の本当に好きなものって、日本酒なんじゃないか?」と薄々分かってはいたといいます。

そしてたまたま、島根の蔵元を実家に持つ友人と飲んでいた時、その場の勢いで「自分たちでやってみよう」と盛り上がります。友人はその場でお父さんに連絡をし、酒造りの許可を得ます。翌日になって、そのことをすっかり忘れていた古原さんでしたが、「もう親父に連絡しちゃったよ。」友人に言われ、半ば強制的に責任を取ることに。「酔った勢いで」始まった日本酒造りでしたが、これが古原さんの本当のライフワークとなっていくのです。

人口2千人の小さな町に、5百人も人がやってきた!


古原さんが「日本酒を造る」と言うのを聞いて、お米や麹(こうじ)を蒸したり広げたり混ぜたり……? その程度をイメージしたのですが、なんと「原料のお米の田植えから全て自分たちで行う」とのこと!

「島根へ行って春は田植え、秋に収穫して、冬は雪に囲まれて酒造り。その他の時間は、デザインをしたり、広報活動をしたり、販売活動などをしています。」

なんというバイタリティ。さらに古原さんは「日本酒が好きな人なら、興味があると思って」と、「日本酒造り体験」を企画し、人口が2千人ちょっとしかいない掛合町(かけやちょう)という小さな町に、なんと5百人もの人を集めたのです。

人口の25パーセントもの人が来るわけですから、たいへんな経済効果です。コンビニもレストランもない町で、もちろん宿泊施設もありませんでしたから、空家を2件借りて改装し、泊まれるようにしたそうです。

今回いただいたお酒は、そうやって古原さんの呼びかけに賛同した人々が代わる代わる掛合町を訪れ、田植えから酒造りまでみんなで汗を流し、ようやくできたお酒なのでした。

世界中に日本酒の素晴らしさを伝えたい


海外生活の長かった古原さんは「外から日本を見る機会も多かった」そうです。そんな中で「日本のいいモノを海外に紹介して、日本と海外を繋げたいなぁと思っていました」と語ります。そして今は、「日本特有の、この文化の結晶のような”日本酒”を伝えることで、世界の架け橋になりたい」という熱い思いを持っています。

日本酒業界全体として、全国に1万以上もあった酒蔵が、現在は1500蔵にまで減少しています。その99パーセントは、地方の田舎町で、人手不足のなか、数名の家族で少量を丁寧に手造りしてきた「小さい酒蔵」なのだそう。100年以上前から手造りを継続している伝統ある文化「日本酒」は、今や空前のともしびなのです。

「知名度もなく大手でもないけど、丁寧につくったおいしい日本酒を知ってもらう『機会」さえあれば、海外でもちゃんと評価されるはず』古原さんたちは、信念を持って地道に取り組みました。そしてほぼ2年がかりで、世界最大の輸出市場であるアメリカへの輸出認可を手にすることができました。

「これでやっと、世界中で日本酒を広めるための、念願のスタートラインに立てた」という古原さん。今後もパートナーの酒蔵を継続的に増やし、世界中への販売をどんどん進めたいとのこと。今年は2蔵で日本酒を造り、来年度は4蔵になるそうです。先日、世界の人たちに「日本酒をおごる」クラウドファンディングを開催し、見事達成されました。古原さんの快進撃は、まだまだ続きそうです。

踏み出せ!はじめの一歩

このイベントを通して「好きなことをしているときやの好きなことの話をしているとき、人は何と輝くものだろう」と何度も思いました。ゲストスピーカーの皆さんだけでなく、自己紹介をしていた参加者の皆さんも、「Hatch Cowork+KIDs」代表の片山さんも、スタッフの皆さんも。写真に写った顔は、どれも本当に素敵な表情でした。

そして「好きなこと、やりたいことをするために、どんどん行動することが全て」なのだと思いました。たとえ、状況が良くなくても。先が見えなくても。

「踏み出せはじめの一歩!」というのが今回のイベントのサブタイトルです。子育てや働き方に正解はありません。だから戸惑ったり、心配したり、悩んだりするのはあたりまえです。だからこそ、勇気を出して!人は「失敗したこと」より「挑戦しなかったこと」の方を後悔するといいます。あなたの好きなことは何ですか。やりたいことは何ですか。諦めてしまう前に、「踏み出せはじめの一歩!」です。そんなことを感じたイベントでした。

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