【ライター必見】ChatGPTを使って、インタビュー記事執筆の工数を減らせるか実験してみました。
「えっ、ここまで文章が出てくるの?!」初めてChatGPTを使った時、そのアウトプットは私の想像以上でした。しかも、かかった時間はたった数秒。ライティングというクリエイティブな分野でさえ、人間よりもAIの方が優秀なのでしょうか。
ChatGPTは、2022年11月に公開された人工知能チャットボットです。高度なAI技術によって自然な会話や原稿作成ができると、公開当初から大きな話題となりました。
なにやらChatGPTはすごいらしい。興味を持ちながらも、実際どこまで原稿作成ができるのだろうと疑っていました。その反面、もしうまく使えるのなら、今後のライティングをより効率的に進められるかもしれないとも思っていたのです。
そこで、ChatGPTを始めとする無料AIツールを使って、インタビュー記事を執筆をする実験を行いました。書いたのは「【男性育児×フルリモート】パパ1年生が『仕事と育児のバランスなんてとりようがない』と思った理由」という記事です。
AIツールは、どこまでライティングに使えるのか。果たして、インタビュー記事執筆の工数は削減できるのか。今回は、ライティングの各工程で使用したAIツールや入力したプロンプト(AIへの指示文)の紹介、そして実際に使ってみた成果や感想をお届けします。
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目次
ライター
サムネイル制作者:Rion(制作アイキャッチ一覧)
AIツールを使ったインタビュー記事執筆の流れを大公開
インタビュー記事が完成するまでの流れは以下の通りです。
②インタビュー実施
★③インタビュー文字起こし
★④文字起こしのケバ取り
★⑤記事化
★⑥校正
⑦最終チェック
もし、AIツールが有効ならば、工数を大幅に削減できるはず。ということは、毎月もっと記事が書けて、ライターとしての実績数も一気に増やせるかもしれない……! ニヤニヤ、わくわくしながら、ライティング実験がスタートしました。
①インタビュイーへの質問項目作成
今回の記事のテーマは「男性育児×フルリモート」でした。そこで、キーワードは「男性」「育児」「仕事」「フルリモート」「生後」「父親」と設定しました。
そして、インタビュイーへの質問を作ろうと、早速使ったAIツールは「ChatGPT」と「Bard(Google)」です。以下のプロンプトを入力しました。
「男性」、「育児」、「仕事」、「フルリモート」、「生後」、「父親」
ChatGPTは「質問文を作ってください」という指示だけで、なんと記事の構成まで作ってくれたではないですか。なんと優秀! と思いきや、質問の表現が少々堅苦しい印象です。一方、Bardの質問は自然で良いのですが、これだけでは物足りません。
そこで、これら2つのAIが作成した質問を並べ、重複している質問を採用したり、単語を変更したり、新たに聞きたい内容を追加したりして、質問項目を完成させました。
②インタビュー実施
インタビューはZoomで行いました。質問項目に沿って進めながらも、その場で内容を深堀りしたり、別の内容に話を展開したりして、比較的自由に進めました。
臨機応変に進めるインタビューは、今後どれだけAI技術が進歩しても、人間であるライターの介在価値が表れると信じたいところです。
③インタビュー文字起こし
インタビュー音源の文字起こしに使用したのは「CLOVA Note」です。文字起こしの質が大変高いことに驚きました。再度インタビュー録画を確認しなくても、文字起こしを読むだけで、インタビュイーの発言内容が問題なくわかります。(インタビュイーの滑舌の良さや、周りの音などによって文字起こしの質が変わる可能性はあります)
④文字起こしのケバ取り
先ほどのインタビュー文字起こしは、発言がそのまま文字になっているので「えー」や「あの」といった意味をなさない言葉や、重複表現などが混じっています。
そこで、再びChatGPTでケバ取りをし、読みやすい文章に整えることにしました。プロンプトは以下の通りです。
しかし、ここで問題が発生しました。文字起こしが長文すぎて、ChatGPTで一度に処理ができなかったのです。
ChatGPTの無料版で一度に入力できる文字数の制限は、2048トークン。英語の場合、1単語=1トークンですが、日本語では漢字1文字が2~3トークンでカウントされることもあり、文字の制限はさらに厳しくなります。
そこで、自力で文字起こし全体を話の内容ごとに分けてから、先ほどのプロンプトを使ってケバ取りを実施しました。
⑤記事化
ケバ取り後、自分で分けた内容ごとに、再びChatGPTに見出しの作成と記事化を依頼しました。プロンプトは以下の通りです。
#制約条件:
・各ブロックの文字数は500文字程度
・#インタビュー内容をもとに
⑥校正
誤字脱字などのチェックの意味で、最終チェック前にChatGPTで校正をかけるつもりでした。しかし、ここまでで文章を何度もChatGPTに通していて、文章自体は整っていると感じたため、校正は不要と判断しました。
⑦最終チェック
ChatGPTが記事化したアウトプットを、自分の手を加え、整えました。具体的には以下のことを行いました。
- タイトル付け
- 各見出しの再考
- リード文を書く
- インタビュイーの言葉を削ったり組み替えたりし、変更内容に応じて質問を調整する
- 単調な文章にならないように、同じ語尾が3回以上続いている場合は語尾を変更する
AIツールを使ったライティングの結果は?!
それぞれの項目でかかった時間を発表します。
通常のライティングで掛かる時間の目安 | 今回の実験時 | ||
---|---|---|---|
①インタビュイーへの質問項目作成 | 45分 | 45分 | ※事前にインタビュイー調査なしの場合 |
②インタビュー実施 | 60分 | 60分 | |
③文字起こし | 60~90分 | 5分 | |
④ケバ取り | 通常は構成を考えた後、記事化しながらケバ取りする=6~8時間 | 45分 | |
⑤記事化 | 10分 | ||
⑥校正 | 通常は最終チェック後に、他者に校正依頼をする =20分 |
なし | |
⑦最終チェック | 6時間30分 | ||
合計工数 | 約9~11.5時間 | 9時間15分 |
【良かった点】
- インタビュイーへの質問項目作成では、AIで質問のたたき台を作ることで、そこから新たなアイディアが生まれることもあり有効でした。
- CLOVA Noteでの文字起こしは、圧倒的な工数削減につながりました。今後も積極的に使っていきたいですし、他のライターにもおすすめしたいです!
【困った点】
- 今回の一番の難点は、ChatGPTの文字数制限でした。文字起こし全文を入力できず、ケバ取りのために、自分で内容を分ける必要がありました。
- ケバ取り後は、内容が簡素化・抽象化されてしまう部分がありました。インタビュー記事の場合、エピソードやインタビュイーが使う表現にも価値があるため、AIに削られてしまった箇所を戻す作業が発生しました。
- 文字数制限のために複数回に分けてケバ取りをしていると、同じプロンプトにも関わらず、一部分だけ違う形式で表示されたり、「うん。」などが残ったままだったり、アウトプットの質にばらつきがみられました。
- 各見出しの作成をChatGPTに依頼すると、堅めな表現になる傾向があり、結局採用しませんでした。記事の掲載媒体や意図するテイストによっては良いですが、今回の「くらしと仕事」にはあまり合わなかったため、自分で考え直さなければなりませんでした。
次回、AIツールを使うなら、文字起こし後の段階で内容を削り、できるだけ文字数を減らすことで、ケバ取りを分けて行う回数を減らせそうです。また、記事化の際はChatGPTへのプロンプトの制約条件に「#小学生でもわかる言葉で」と加えると、堅い表現にならずにすむかもしれません。
結論、AIツールとインタビュー記事の相性は……
今回の実験では、ChatGPTの文字数制限がネックとなり、自分の手で内容整理をしなければなりませんでした。また、ChatGPTのアウトプットが簡潔すぎたり、堅すぎたりしたため、最終調整も大幅に行いました。
というわけで、AIツールによる工数削減が目的の実験でしたが、通常のライティングと比較して工数はあまり変わらない結果に。ChatGPTは文章をまとめるには、大変優秀なツールですが「インタビュー記事」には、あまり向いていないという感想です。2000文字程度の一定テーマのまとめ記事であれば、AIツールでライティングは楽になるのかもしれません。
インタビュー記事では、内容に強弱をつけることによってストーリーを魅せたりしたいものです。読者に興味を持ってもらえるように、面白い記事にしたいと思えば、人の手を加えることは欠かせません。
正直、AIツールを使って「大正解」とは言えなかった今回の実験。せっかく工数削減できると思ったのに……という残念さと、執筆におけるライターという「人間」の価値を感じられた嬉しさと、半々な気持ちです。そして、まだまだ私の仕事はなくならないなと、ちょっとホッともしたのでした。
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