「くるみんマーク」は働く女性の味方?認定基準や信頼度は
「子育てをサポートする働きやすい企業」と国から認定された証である「くるみんマーク」。ワーキングマザーがもはや当たり前になった現代日本において、「子どもを持つ女性が働きやすい職場かどうか」は、多くの女性にとって就職先を選ぶ際の重要な要素になっています。しかしながら、近年は「くるみんマーク」の信頼度に疑問符が付くような事例も複数発生しています。そこで、「くるみんマーク」の制度や認定基準、そして「本当に信用できるのか」について、あらためて知っておきましょう。
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「くるみんマーク」とは
「くるみんマーク」は、厚生労働大臣から「子育てサポート企業」の認定(くるみん認定)を受けた企業がその証として使うことができるマークです。詳細は後述しますが、子育て支援に関する一定の基準を満たした企業が申請を行うことによって与えられます。2019年8月末時点で3175社が認定されています。
2017年からは、「くるみんマーク」の上級認定である「プラチナくるみん」がスタートしました。くるみん認定を既に受けた企業がより高い基準をクリアした場合に「優良な子育てサポート企業」として認定を受けられる制度で、認定を受けた企業は「プラチナくるみんマーク」を使用することができます。2019年8月末時点で、326社が公表されています(非公表の認定企業もあります)。
「くるみんマーク」「プラチナくるみんマーク」の認定基準は?
厚生労働省は、「くるみんマーク」については10項目、「プラチナくるみんマーク」については12項目の認定基準を公表しています。1項目ずつ細かく見ていくとそれだけで膨大な文字数になってしまうため省略しますが、大まかに言えば「くるみん認定」では社内で子育て支援に関する計画や目標を明確に立て、それを労働者に周知して2~5年以内に目標を達成することが企業に求められています。
さらに、男女とも育休取得者が一定の割合以上いることや、残業時間が一定の枠内に収まっていることなども求められています。つまり、子育てする母親を直接的に支援する施策だけでなく、誰もが働きやすい職場環境の実現を企業に課していることがわかります。
「プラチナくるみん認定」は、これよりも厳しい基準が定められています。そのひとつが「男性の育児休業取得率13%以上」という項目。日本の現状から見ればかなり高い数字に思えますが、あくまでも「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」は子育てしながら働く人を男女の別なく手厚く支援する企業を認定する制度。男性の育休取得率に高い基準を設けるのも当然です。
出産した女性社員に関連して、「子どもが1歳を迎えたときの在職率が90%以上」との認定基準もあります。出産を機に退職する女性社員が1割以下でなければ達成できず、これも企業にとっては相当に高いハードルといえそうです。
このほか、フルタイムの労働者の時間外労働・休日労働の合計時間の公表や、時間外労働が月60時間以上になっている労働者の数の公表なども求められており、「プラチナくるみん認定」は「くるみん認定」に比べて基準達成の難易度が格段に高いといえます。
「くるみんマーク」の認定メリット
基準を満たして厚生労働大臣から「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」を受けた企業は、「くるみんマーク」「プラチナくるみんマーク」を自社の商品や広告、求人広告などに使用することができます。子育てサポート企業であることを社会に広くアピールすることで企業イメージの向上が期待できるほか、優秀な人材獲得に結び付く可能性も高まると考えられます。
また、認定を受けた企業は、各省庁が公共調達を実施する際に「ワークライフバランスなどを推進する企業を積極的に評価する」との指針に基づき、加点評価を受けることができます。
「くるみんマーク」は企業見分けの指標になるか
「子育てサポート企業」に国がお墨付きを与える制度である「くるみんマーク」。ここまで見てきた通り、これをそのまま受け取れば、「くるみんマークのある企業は子育てする母親(と父親)が働きやすい企業である」ということになります。
全国でまだ3000社あまりしか認定を受けていないことを考えても、「くるみんマーク」を取得している企業は大多数の企業に比べて子育て支援の意識が高いといえるでしょう。前述のとおり、「くるみん認定」を受けるためにはしっかりとした子育て支援の計画を立てて達成することや、育休取得率に関する数値基準をクリアすることなどが求められています。ですから、現在進行形で子育てする社員をサポートしている企業といってほぼ間違いないはずです。
「くるみん認定」には、「フルタイムの労働者の時間外・休日労働時間の平均が月45時間未満である」「月平均の時間外労働60時間以上の労働者がいないこと」といった基準もあります。子育ての有無にかかわりなく、すべての社員にとって働きやすい環境を整えるよう努力している企業であるともいえるでしょう。
その一方で、「くるみんマーク」の信頼性が揺らぐような事例もたびたび発生しています。たとえば今年6月、化学メーカーのカネカが育休復帰直後の男性社員に転勤を内示したことが「懲罰人事では」「パタハラでは」と世間の非難を浴びた騒動を覚えている人も多いはず。この件は、カネカ側の火に油を注ぐような対応もあってネット上でも大いに炎上しましたが、実はカネカは「くるみんマーク」取得企業。2009年と2013年に認定を受けており、炎上騒動後の現在も厚生労働省の認定企業リストにしっかりと掲載されています。
また、2015年に電通の新入社員が過労自殺した際には、過去にも社員の過労自殺があった同社が3度にわたって「くるみん認定」を受けていたことが明らかになり、「認定が甘いのではないか」との批判が沸き起こりました。電通の過労自殺事件後、「くるみん認定」の認定基準は見直されましたが、こうした例を考慮すると、「くるみんマークを100%信頼できる」とは断言できないのも事実です。ですから、就活の際は「くるみんマーク」の有無を参考にしつつも、自身でしっかりと企業研究を行う姿勢が必要といえそうです。
一方で、認定基準が格段に高い「プラチナくるみんマーク」については、企業見分けの際に相当程度信頼できる指標になるといえるでしょう。全国で300社あまりしかない「プラチナくるみんマーク」取得企業に自分が勤める可能性はかなり少ないと思われますが、それらの企業を研究することで、働きやすい企業のあり方について学ぶことができ、企業見分けの目が養われる効果はあるかもしれません。
まとめ
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