超絶パラレルキャリアを自ら実践する!子育て世代の「働く」をもっと柔軟にする新しい地域コミュニティ・スペース

三鷹・吉祥寺エリアで唯一「赤ちゃんみまもりサービス」のあるコワーキング・イベントスペース。施設のいたるところでお母さんと赤ちゃんのための「ちょっとした工夫」を感じ、入口からすぐ見える「縁側」には居心地の良さが漂います。今回は、ご自身も1児の母(現在第二子妊娠中)として第一線で活躍する代表の本多夏帆さんに、「ワーキングマザーを取り巻く新しい”コミュニティ”のあり方について」お話を伺いました。

ライター

しゃゆーん
「HELP YOU」「くらしと仕事」の立ち上げに携わる。2019年5月より編集長。「HELP YOU」では、年間100人以上の採用面談を対応し、400人強のリモートワークチームの組成・組織開発・人材育成を一手に担っていた。

働きたいのに働けない!働くママの「働きづらさ」を実感してコワーキングスペースを考案

本多さんの本業は「行政書士」とお伺いしたのですが、なぜ、コワーキングスペースの運営をスタートしたのでしょうか?

29歳で第一子を出産したのですが、実際に乳児を抱えながら働く母親の「働きづらさ」に直面したのがきっかけです。

社労士である母と行政書士である私のお仕事はいわば「自営業」なので、お客さんを逃すと次のお仕事がなくなってしまいます。産休で仕事をストップさせることは、今まで築き上げたものをすべて手放すようなものです。せっかく頑張ってきたものがまた「ゼロ」に戻るのか……そう考えると、仕事は絶対に続けたい!と思っていました。

当時、保育園は待機児童が100人を超えている状況。預けるに預けられず「自営業だからなんとかなるのでは」というくらいの気持ちで、理解のある客先へ赤ちゃんを連れて行きました。ですが、ベビーカーをひいて移動するには都内はあまりにも不便でした。駅にはエレベーターが常設されているわけでもなく、地上に上がれずウロウロすることも(笑)

子どもが1歳ともなると、落ち着きがなくなり、打ち合わせの1時間でじっとしてられなくなりました。商談時は義母や妹に子どもを預けてやり過ごしてきたのですが、今度は作業の時間が取れなくなってしまったんです。集中して作業すれば5分で終わる書類作成が、赤ちゃんの相手をしながらだと1時間かかる。

「これは全く仕事ができない……」と実感したのと同時に「一時間だけでも」時間を作れるようなスペースがあれば、私のようなワーキングマザーが働きやすくなるかもしれないと思ったんです。

地元にちょうどよい物件を見つけ、とんとん拍子にお話が進んだそうですね。

去年(2018年)の8月から物件探しをスタートさせすぐに物件が見つかりコの字型の奥まったスペースが非常に使い勝手が良さそうで即決しました。そこから11月のオープンに向けて本当にとんとん拍子に進んでいきましたね。

また、支援者の方々に後押しされ、翌年4月には武蔵野市議会議員選挙に当選し、行政の立場からも「子育て世代の働き方を支援する」機会をいただいています。すべてのことが自分自身のやり遂げたいことにつながっていく感覚に、「これは自分に課せられた使命だ!やるしかない!」と決心をしました。

オフィスに出勤するだけが仕事じゃない!スペース運営に自ら参加することで広がる「働く」の輪

このスペースはたくさんのスタッフさんがいらっしゃいますね。

このコミュニティスペースにはいま雇用と委託合わせて10名から15名ほどのスタッフが働いています。ワーキングマザーの雇用を積極的に進めようと思ったきっかけは、上の子が保育園に繰り上がったが第二子妊娠中で雇ってもらえず、途方に暮れているママが助けを求めに来たことでした。「働きたいけど働けない!」と感じている子育てママの切実な声の多さに、「これはなんとかしなくては!」と思うように。

ママさんの就業条件ってやっぱり難しいですね。特にお子さんが小さいと、急な体調不良によって、保育園に預けられなかったり、呼び出しがあったり……。保育園や幼稚園の子ども会の行事参加も。働く時間が変動的になりますし、長時間労働ができないかたがほとんどです。企業側としても、短時間でしか働けないかたよりかは、帯で働ける層を雇用したいと思うのは致し方ない。結果的に「働くことを諦めた」かたが多かったのです。

なので、「Breath」では、働きたいかたを全員受け入れました(笑)自分の入りたいシフトに働ける、そんな場所にしたかったのです。もちろん経営には優しくない制度ですが、私はスタッフさんへの「先行投資」だと捉えています。

また、ひとりひとり責任を持ってスペース運営に関わってほしいという思いから、スペースの鍵管理もお任せしています。スタッフのかたからは「パートなのに鍵を預けてくれるのが嬉しい。今までは責任ある仕事を任せてもらえなかった」という声をいただいたこともありました。

スペース運営以外にもいろんなお仕事があるのだとか?

 

技術革新が著しい昨今、「自分のお給料は自分で稼ぐ」という思想が社会を生き抜くためにとても重要です。とはいえ、大半のかたは「自分のキャリアやスキルはそんなに大それたものではない」と考えるでしょう。確かにひとつひとつのスキルは点と点にしかならないかもしれません。しかし、「Breath」というコミュニティスペースで「スキル」と「スキル」の点がつながり、「線」となることがあります。「Breath」が、みなさんのスキルを活かすことができる、自分にしか生み出せない価値発揮の場であれば良いなと思っています。

具体的な、スペース運営の事務作業以外に、下記のようなお仕事が発生しています。

①ポスティング

地域の企業にクライアント会員になっていただき、コミュニティ周辺にポスティングをする。業務時間と量を調整しやすく、難しい知識や技術も必要ないお仕事なので、仕事復帰に不安なかたにはぴったりです。

②企業訪問してお掃除

幼児教室やジムに訪問し、お掃除をします。二人一組で行動するので初めての企業でも安心です。いろいろな組み合わせで動くので、スタッフ間のコミュニケーションを活発化させる目的も。

③ワークショップを企画

スタッフの一人一人が自分自身が取り組みたい「ワークショップ」を企画します。保育士だったかたは折り紙教室、靴職人だったかたは草履づくり体験、といった自分の経験に根ざしたワークショップを開催しています。

④寺小屋教室を企画

塾講師の経験や英語が得意なスタッフさんの経験を活かした「小論文・プレゼンテーションの表現教室」、「夏休みの自由研究講座」といった様々な講座を企画することも。

スタッフさん一人一人の個性と特技を活かしたお仕事がたくさんありますね。

アルバイト・パートだから、といって業務内容や情報を狭めたりはしていません。スペースの経営状況もみなさんに共有をしており、そこから「自分には何ができるのか?」を真剣に考えてもらっています。「この場所を存続させて守るのは自分」といった気持ちを持ってもらうことが大切です。まさに「全員経営者」ですね(笑)

スペースの運営だけを考えれば、正社員を2名採用した方が確かにコストは抑えられます。しかし、それだけでは「子育て世代の働き方を支援する」取り組みとしては不十分です。いまの体制であれば、働きたいワーキングマザーに雇用の場を提供するだけでなく、お互いにスキルシェアをして、様々な付加価値を生み出せます今までにない柔軟な働き方を提案し、実践していただくことに意義があるのではないでしょうか。

ライフワークミックスを掲げ、行政と民間企業をつなげる

本多さんは5月より市議会議員としても活躍されていますが、そちらのお仕事はいかがですか。

会議に参加して思うこと「当事者」として課題を語れるかたがあまりにも少ない、ということです。私は、行政書士として多くの企業と関わってきましたし、自分自身でも会社経営をしています。加えて、子育て真っ最中のワーキングマザーでもあります。行政と、企業、住民と、この3者の視点をもって提案できることが私自身の強みであり、為さなければならないことだと自覚しています。

「働き方改革」が推進されているなかで、働き手が大きなギャップを感じているのはなぜか。それは、働き方改革そのものが、「週5日勤務」「8時間労働」といった既存の働き方の枠組みのなかで構築されているからではないでしょうか。事実、保育園もフルタイム勤務のかたを対象とした預け方になっています。働く時間、働く場所、子どもの預け場所、預け方が柔軟になり、シームレス化が進めば、働き方をもっと変化させることができるのかもしれません

「Breath」というコワーキングスペースはひとつの「実証実験」の場です。子どもを出産したら子どもを保育園に預けてフルタイムで復帰、だけではない働き方を実践できる場として、行政、企業、住民を巻き込みながら、自分たちの手で「進化」する地域コミュニティ・スペースをつくりあげていきたいです。

 

 

スペース情報

住所 〒180-0006 東京都武蔵野市中町1丁目24番8号1階
電話番号 0422-90-5847 (受付時間:10:00~18:00、日・祝は17:00まで)
営業時間 月~土 9:00~21:00 / 日・祝 10:00~17:00

※なお19:00以降お客様お帰り次第早じまいとなります。ご了承ください
※休館日:不定期(月に1~2回程度)

URL コワーキングスペース Breath

※ 確認した時点での情報です。最新情報は、HPをご確認ください

運営者情報

代表者 本多夏帆

プロフィール

1988年東京都三鷹市生まれ

中央大学法学部法律学科卒業

進学予備校で講師経験を積む

ベンチャー企業でマーケティング事業を経験

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