フリーランスで食べていくには? 月収70万のパラレルワーカーに聞いた、実績と報酬の増やし方

株式会社ニットでHELP YOUメンバーとして活躍する、フリーランスディレクター兼ライター/記者の伊藤尚さん。文字単価1円以下の量産ライティング案件からフリーランス生活をスタートし、HELP YOUへの加入後は、月の収入が100万円、HELP YOUからの報酬のみで70万円を超えたこともあるそうです。未経験からどのようにスキルを身につけ、実績を増やし、報酬を上げていったのでしょうか。その道のりについて詳しく聞きました。
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ライター

三代知香
飛騨在住のフリー編集者。会社員時代はIT企業でマーケティングやPM、自社ブログの編集長を経験。メディアの立ち上げ経験を生かし、「くらしと仕事」のアクセス解析や新人育成を通して成果向上に取り組むほか、インタビューライターとして働き方や地方活性化をテーマとした記事を手がける。1児の母。→執筆記事一覧

身近な人からロールモデルを見つける

伊藤尚さん 函館市出身のパラレルワーカー。平日は主にHELP YOUでディレクター兼ライターを務め、休日は函館新聞社のスタッフ記者として活動。自称「書けて撮れて喋れるライター」。函館市公式観光インスタグラマーや、江差観光ふるさと大使など、地域に根ざした活動も行っている。1児の母。写真コンテストで複数の受賞歴あり。▶︎ InstagramTwitternote

伊藤さんは何をきっかけにフリーランスへ転向したのですか?

会社勤めの頃に、今は函館経済新聞の運営などをされているフリーランスの先輩、佐々木康弘さんと再会したのがきっかけでした。もともと新卒で公共施設の運営団体に入社して、結婚を機に退社した後は、コワーキングカフェの店長として働いていました。学生時代にお世話になった佐々木さんが、偶然そのコワーキングカフェを利用していたんです。

佐々木さんとはどういったご関係で?

学生時代に函館市青年センターでアルバイトをしていて、佐々木さんは当時そこのセンター長でした。一学生の意見もよく聞いてくださる方で、私が「広報誌をつくりたい」と手を挙げた時も、快く背中を押してくれました。一から雑誌をつくるのは苦労しましたが楽しかったですね。

そのご縁もあり、コワーキングカフェで再会してからは、自身のキャリアについて相談に乗ってもらっていました。次第に、佐々木さんの仕事を少しずつお手伝いさせてもらうようになり、その活躍ぶりを垣間見て「自分もフリーランスになってみたい」と思うようになったんです。

佐々木さんは私のロールモデルであり、ライティングの師匠だと今でも思っています。佐々木さんが記事作成のためにカメラを始めたのを見て、私もまねしたくらいです(笑)。これからフリーランスを目指す人にとって、身近にお手本を見つけるのは一つ大事なポイントですね。

実績を増やすために小さい仕事からスタート

渡島総合振興局が主催する「素敵なおしまInstagramフォトコンテスト」で受賞した際の作品。写っているのは娘さんです。

身近にお手本がいたとはいえ、生活に十分な仕事をもらえるようになるまでに苦労もあったのではないでしょうか。

そうですね。今でこそ収入が70万円を超える月もありますが、最初は実績を増やすために、文字単価1円以下の仕事でも積極的に引き受けていました。フリーランスになってすぐの頃は、あるライティング講座に参加し、その講座経由で仕事を頂いていたのですが、初めは非常に安価なものばかりでした。

でも、当時の私にはライターとしての実績がなかったので「やるしかない」と腹をくくって、他の受講者が避けるような仕事にも積極的に手を挙げました。そのかいあってか、徐々に高単価の案件もご紹介いただけるようになり、最終的には受講料の元をとれるくらいの報酬を得られるようになったんです。

ただ、私の場合は夫が会社勤めだったので、そこまで金銭面を気にせず挑戦できたという背景もあります。夫には当初「最低限自分のお小遣い分稼げ」と言われていましたし……。

ライティング講座を選ぶ際のポイントは何ですか?

3つあります。1つは、その後の仕事につながるか。2つ目は、講師がどんな方か。事前に名前がわかっている場合は、どんな実績を持つ方なのかを調べておくと良いでしょう。最後に、運営体制が整っているか。例えば、受講生の人数に対して講師の数があまりにも少ない場合は、細やかな指導はあまり期待できませんよね。

ただ、どんな講座を選んだとしても、重要なのはそこで何かを学びとろうという姿勢です。「受講者の中でトップを狙う」くらいの気持ちが大事ですね。

「やっていること」「やりたいこと」を発信する

伊藤さんが生まれ育った函館の朝日(函館山山頂より)。伊藤さんのInstagramにはこのほかにもさまざまな空の写真が並んでいます。

その後は、どのように仕事を増やしていったのでしょう?

「今やっている仕事」と「今後やりたい仕事」を積極的に発信するようにしました。例えば、フリーランスになったことや、直近の仕事についてFacebookに書きました。株式会社函館新聞社から仕事を頂けるようになったのも、その投稿がきっかけだったと思います。

今の編集局統括部長が、もともと前職時代の私をご存知だったそうで。前職のコワーキングカフェでは、よくイベントを開催していて、その取材記者として通われていました。その時に私の顔と名前を覚えていてくださったようです。

ご縁ですね!

本当にそうですね。私に声がかかったのは函館新聞社で「スタッフ記者」という新しいポジションをつくるためでした。自由な働き方を前提に、育児中の人も活躍できるよう新設したそうです。私がそのポジションで働く人物像に近かったことと、編集局統括部長のほかにも私をご存知の方が社内にいて、採用を後押ししてくださったことが背景にあったようです。

ご縁と偶然が重なったケースではありますが、やはりフリーランスは自分自身について積極的に発信していくことが求められると思います。例えば、FacebookやTwitterの投稿でまずは自分に興味を持ってもらい、noteで文章力をアピールするのも一つの手です。

京極町のふきだし公園にて撮影。

自分をアピールする姿勢が大事なんですね。

そうですね。これはSNS上に限ったことではなく、HELP YOU(※)でも同様です。

※ HELP YOUはニットが提供するオンラインアウトソーシングサービスで、約400名のフリーランスがその運営を支えるメンバーとして所属しています。詳しくはこちらのページをご参照ください。

伊藤さんがHELP YOUにジョインしたのは2015年でしたね。入ってわずか1年でチームリーダーに抜擢されたとか?

はい、ありがたいことに。前任者が産休に入ったタイミングで、引き継ぎという形でリーダーに就任しました。

仕事をするうえで、どんなことを心がけていましたか?

未経験の仕事でも「やりたい」と思ったら「たぶんできます!」と手を挙げるようにしていました。「できるかどうかわからないから」と尻込みして「やりたい」という意思表示すらしなかったら、誰にも気付いてもらえないと思ったからです。

同時に、一度手を挙げたからには、最後までやり抜くことを強く意識していました。たいていのことは、やれば何とかなるはずなんですよ。例えば、その仕事について60%程度の知識があるなら、あとの40%は調べて補えばいいんです。

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「これならできそう」から始めてスキルを習得

江差観光コンベンション協会が主催する「江差の夕陽で総額100万円グランプリ」で優勝した時の作品。

前のめりな姿勢と実行力が、選ばれる秘訣なのかもしれませんね。スキル面では、どんなことを意識してきましたか?

HELP YOUではディレクター兼ライターとして活動していますが、それ以外の領域にも挑戦するようにしてきました。例えば、過去には写真コンテストに応募したり、ラジオパーソナリティを務めたりしたこともあります。

写真コンテストでは優勝経験もあるんですよね。どのようにスキルを身につけたのでしょう?

函館新聞社で仕事を頂くようになってから人を撮る機会が増え「少しでも相手に喜んでほしい」「魅力的に撮りたい」という思いで自分なりに研究しました。例えば、ピアニストを取材する時には、少しでも演奏の雰囲気が伝わるよう躍動感を大事にしています。

プライベートで本格的にカメラを持ち歩くようになったのはコロナ禍以降です。人と接触しなくてもできる趣味を考えた結果カメラにたどり着きました。

ある時、何気なくTwitterに投稿した写真が思いのほか「いいね」やリツイートされて……。まさか自分の撮った写真がそこまで人から評価してもらえると思っていなかったので驚きましたね。

もし撮影スキルを裏付ける実績があったら、ライターとしてプラスになると考え写真コンテストに応募し、ありがたいことに優勝できました。それまでは独学で撮っていましたが、確かな知識を身につけるために今は写真の勉強コミュニティに参加しています。

上の写真コンテスト優勝作品と同日に撮影。

スキルを身につけるにあたってのポイントは何でしょう?

「興味がある」「これならできそう」と思ったら、まずは始めてみることです。そのうえで周囲の反応を見つつ、続けていくかどうかを決めたら良いと思います。例えば、これからライターを目指すなら、とりあえず何か書いてみて人に見てもらうのも一つの手です。今はSNSでそれが簡単にできますよね。

3つの軸を中心にバランスよく仕事を選ぶ

プライベートでは風景を撮ることが多い伊藤さんですが、なかにはこんな写真も。

自分のお小遣いを稼ぐところから始まった伊藤さんのフリーランス生活ですが、現在の報酬面はいかがでしょう?

案件状況によってばらつきはありますが、2021年8月には初めてHELP YOUの報酬だけで月の入金額が70万円を超えました。これは、HELP YOU内では最高記録だったと聞いています。写真コンテストの賞金を頂いた月に関していうと100万円を超えました。最初はお小遣い稼ぎのつもりだったのが、このままいくと今年は年収が夫の2倍になりそうです……。地道に続けてきたかいがありました。

最後に、これからフリーランスを目指す方に向けてアドバイスをお願いします。

2つあります。まず、繰り返しになりますが「今やっている仕事」と「今後やりたい仕事」は積極的に発信していってください。最初は、自分をどうブランディングしていくか悩むと思います。でも、その2つを発信していけば自然と答えは見つかるはずです。

HELP YOUでディレクターになってからは、その重要性をさらに実感しています。案件にスタッフさんをアサインする立場としては、その仕事が得意な人・好きな人に担当してほしい。その方が本人にとっても幸せですし、短時間で仕事を仕上げられるのでクライアントさんにも喜んでいただけるからです。だからこそ、自分から発信してくれるスタッフさんはありがたい存在だと思っています。

2つ目は、単価感を意識することです。いわゆる”割に合わない仕事”は世の中にたくさん存在します。それでも、スキルや実績になるのであれば続ける意味はありますが、ある程度経験を積んだら取捨選択していく必要があるでしょう。その時のポイントは「やりたいか」「実績になるか」「お金になるか」の3点です。そこさえ意識したら、時間はかかってもきっと報酬は増えていくはずです。

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まとめ

未経験でも「これならできそう」と思ったら挑戦してみる。一度やると決めたら最後までやり抜く。そうした地道な積み重ねにより、伊藤さんはスキルを身につけてきたのだと感じました。同時に、SNSでの発信や一緒に働く仲間への働きかけを通じて「やりたいこと」を常に共有しておくことが仕事を呼び寄せ、結果的に報酬アップにつながったのでしょう。「フリーランスで生計を立てていきたい」と考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

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