従業員と企業をつなぐカギ。「エンプロイー・サティスファクション」「エンプロイー・エクスペリエンス」「エンプロイー・サクセス」とは
近年、ビジネスの世界における比較的新しい概念として「エンプロイー・サティスファクション」「エンプロイー・エクスペリエンス」「エンプロイー・サクセス」といった用語を時々耳にするようになりました。これらの用語は互いに似通った概念を指しますが、厳密にはそれぞれ異なります。そこで、これらの3つの用語がそれぞれ何を指すのか、そしてそれらの概念が注目されるようになった背景について簡単にご紹介します。
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エンプロイー・サティスファクションとは?
エンプロイー・サティスファクション(Employee Satisfaction)は、直訳すれば「従業員の満足」。「従業員満足度」の和訳が当てられることが多いようです。顧客の要望に応え、顧客の満足度を高めることを指す「カスタマー・サティスファクション」(CS、顧客満足度)はビジネスを成長させるのに必要な要素として広く知られていますが、「エンプロイー・サティスファクション」(ES)は「経営者は自社の従業員の満足度を高める必要がある」という概念を指します。
エンプロイー・サティスファクションが注目されている背景
カスタマー・サティスファクションが行き過ぎて顧客至上主義になると、従業員は常に顧客に振り回されることになります。顧客がどんなにわがままな要求をしようと、どんなに理不尽なクレームを付けようと、「お客様の言うことはすべて正しい」と頭を下げてその要求に従うからです。
当然のことながら従業員は常にストレスを抱えるようになり、仕事へのモチベーションも低下します。社員の味方になってくれない会社に対しての不信感も募ります。やがて従業員からは笑顔が消え、淡々と機械的に目の前の業務をこなすようになります。結果的に顧客満足度も低下してしまいます。そこで、「顧客満足度を上げるためには、まず従業員が仕事に満足している必要がある」との考えから生み出された概念がESです。
人間関係や人事評価、仕事量などあらゆる面で職場環境が良好で、会社から自分の働きを正当に評価され、必要とされている実感や達成感を感じながら仕事をすることができれば、従業員の働きは自然とカスタマー・サティスファクションを達成する方向に向かうと考えられるからです。
エンプロイー・エクスペリエンスとは?
エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience、EX)は、直訳すれば「従業員の経験」。従業員が採用から退職までの期間において会社や組織の中で獲得する経験価値を指します。従業員はその期間の中で、入社後の研修、配属、日々の業務の実践と改善、コミュニケーション、人事評価、異動、昇進など様々な経験をします。
ユーザー・エクスペリエンス(ユーザー体験、UX)やカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験、CX)から派生した概念で、EXを向上させることが従業員の定着率向上や生産性アップなどの良い影響を企業に与えるとの考えに基づいています。
エンプロイー・エクスペリエンスが注目されている背景
現代において多くの企業が、商品やサービスそのものの満足度だけではなく、商品やサービスを提供した際の心理的・感覚的な価値(=エクスペリエンス、経験価値)を重視するようになっています。
良質なエクスペリエンスをユーザーやカスタマーに提供し、彼らのエンゲージメントを高めることが企業の発展に不可欠だとする考え方です。ここから発展し、「質の高いUXやCXを提供するためには、従業員自身が仕事の中から良質なエクスペリエンスを獲得し、それを組織の中で共有し、会社全体として成長していく必要がある」という考え方が生まれてきたとされます。
エンプロイー・サクセスとは?
エンプロイー・サクセス(Employee Success)は、直訳すれば「従業員の成功」。仕事で成果を収めて会社に利益をもたらすことだけを意味するのではなく、会社から正当に評価され、自身が望む働き方で誇りを持って仕事に取り組める状況にあることを指します。
エンプロイー・サクセスが注目されている背景
エンプロイー・サクセスも、カスタマー・サクセス(顧客の成功)と一体となった考え方として生まれました。カスタマー・サクセスとは、企業が商品やサービスを通して顧客に成功体験を提供しようと努める取り組みのこと。
そのためには、まず個々の従業員が社内で成功体験をしている必要がある、とするのがエンプロイー・サクセスの考え方です。従業員が会社や仕事に対して不満を感じ、自社が販売する商品やサービスにも愛着を持っていなければ、情熱をもって顧客に成功体験を届けることはできないはずです。
労働人口の減少による人手不足に加え、採用した人材がすぐに辞めてしまう人材の流動化が進む中において、エンプロイー・サクセスこそが企業存続のカギであると近年注目を集めるようになっています。
まとめ
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