最近よく聞く「ティール組織」とは?近年話題の「組織論」の概念とメリットを解説

2018年1月に邦訳版『ティール組織』が出版されてから、組織マネジメントの分野で大いに注目を集めている「ティール組織」。これまでとはまったく違う組織のあり方であることから、戸惑いを持って受け止められているのも事実です。そこで、『ティール組織』の著者であるフレデリック・ラルーの分類に基づいて、従来型の組織とティール組織との違いを簡単にまとめてみました。

ライター

佐々木康弘
札幌市出身、函館市在住。大手旅行情報誌やニュースサイト、就活サイトなど多数の媒体と契約するフリーランスライター。店舗・商品・人物の取材記事やニュース・芸能記事作成、広告ライティングや企業紹介など幅広いジャンルで年間100万字以上を執筆するほか、校閲も行う。「HELP YOU」ではプロフェッショナルライターとして活動。→執筆記事一覧

フレデリック・ラルーが提唱する組織の発展形態

 

フレデリック・ラルーは、組織の進化形態を5段階に分けて分類しました。単純な組織形態からスタートし、最終的に理想とする「ティール組織」に行きつくというわけです。

組織の各段階には色の名前が付けられていますが、色自体には深い意味はありません(一応由来はありますが割愛します)。進化の各段階を、単純なものから順にご紹介します。

 

参考)最も一般的にイメージされる組織図

 

レッド組織(衝動型組織)

比喩は「オオカミの群れ」。1人のボスが圧倒的な力(暴力)によってすべてを支配する、最も原始的な形態の組織です。構成員は、逆らえば何をされるかわからない恐怖ゆえにボスに従属していますが、その反面、組織内にいれば他者から守られるという安心感を得ることができます。ギャングやマフィアに多い組織形態とされます。

ボスや構成員の欲求を満たすことが組織の目的であるため、長期的な視点を持っておらず、今現在どのように利益を得てどう生き残っていくかに主眼を置いた短絡的な思考を持っています。

 

コハク組織(順応型組織)

階級・役割・規則が厳格に定められたピラミッド型組織で、比喩は「軍隊」。トップの意向や指示は上位下達方式で構成員に伝達され、構成員にはそれを忠実に果たすことが求められます。階層による役割分担によってトップがすべてを掌握して支配する必要性が薄れるため、レッド組織より規模を大きくすることができます。つまり、構成員の人数を増やすことができます

この形態の組織は定型的な業務を効率よく遂行するのに向いており、レッド組織よりも長期的な展望を持つことができます。その反面、ヒエラルキーに基づいて役割を全うすることが優先されるため、変化に対応しにくいという弱点があります。

 

オレンジ組織(達成型組織)

多国籍企業をはじめ現代の大企業の多くが採用する組織です。コハク組織同様にピラミッド構造を持ちますが厳格な階級社会ではなく、部門を横断したチームが作られるなど、柔軟性を兼ね備えます。また、徹底的な実力主義を採っており、構成員は成果次第で上の階級に行くこと(=出世)ができます。

変化や競争を歓迎していることから、イノベーションが生まれやすいのもこの組織の特徴です。その一方で、数値管理による経営管理が徹底されていることから、組織としても個人としても生き残るために常に競争に勝ち続けることを追い求め、機械のように働き続けます。このため、オレンジ組織の比喩は「機械」とされます。

 

グリーン組織(多元型組織)

比喩は「家族」。この組織もやはり「社長と従業員」「上司と部下」のような階級を持つピラミッド構造を残していますが、「家族」に例えられる通り、これまでの組織よりも個々の構成員の主体性や多様な考えを尊重する特徴があります。このため、現場に一定の権限が与えられており、現場からのボトムアップによる意思決定プロセスが採用されています。

その一方で、組織内での合意形成に時間を要してしまう弱点があります。構成員同士での意思統一が難しい場合は、最終的にトップに決断を仰ぐ必要があります。

 

ティール組織(進化型組織)

比喩は「生命体」。組織をひとつの生命体になぞらえ、構成員はその生命体を構成する細胞であると考えます。コハク組織以降のこれまでの組織との大きな違いは、ピラミッド構造を有していないこと。社長や管理職による命令系統は存在せず、そもそも「社長と従業員」「上司と部下」といった概念もなく、構成員全員が独自にルールや仕組みを工夫しながら、組織を運営していきます。生命体として生き残るため、構成員全員が組織の目的そのものを常に模索し、それに向かって進化し続けていきます。

オレンジ組織では上司の決裁がなければ、グリーン組織では組織内での合意形成がなければ個々の優れたアイディアを実行に移すことができませんでしたが、ティール組織は誰もが意思決定権を持つので素早く行動することができます

とはいえ、提唱者のフレデリック・ラルー自身、自著において「ティール組織を実現している真に先進的な企業はほとんどいない」と述べています。ティール組織はあくまでも組織形態が進化した先にあると想定される概念であり、「ティール組織を目指すにはどうすればよいか」という方法論は確立されていないのが現実です。

 

 

ほかにもまだある組織の分類

 

フレデリック・ラルーが提唱した5段階の組織分類は、数ある組織の分類方法のひとつにすぎません。組織には様々な形があり、その呼び方や分類もさまざまです。ここではそのうち代表的な3つをご紹介します。

 

アジャイル型組織

「アジャイル型」は、もともとソフトウェア開発の分野で用いられていた手法。「途中で仕様変更があるのは当たり前」と考え、おおまかな仕様に基づいて実装・テスト・修正のサイクルを短い期間で繰り返していきます。これによって仕様変更などに臨機応変に対応することができ、リスクを最小化できるメリットがあります。

この手法を組織運営に取り入れたアジャイル型組織は、精度を高めた完成品を世に出すことよりも「機動性」を重視します。不十分な状態であってもまずはリリースし、消費者の反応などを見ながら軌道修正や改良を行い、さらに良いものを開発するという手法を採ります。

これを実現するためには、失敗を前提とした企業風土と素早い意思決定プロセスが欠かせません。このためアジャイル型組織には、フラットなチームの集合体であることと、現場である各チームに決定権を付与することが必須となります。

 

ギルド型組織

ギルド型組織は比較的近年登場した概念で、一般的には「専門的なスキルを持つプロフェッショナルがゆるくつながった集団」を指します。デザイナーやITエンジニア、フォトグラファー、ライターなど様々な業種のフリーランスがひとつの看板を掲げ、案件ごとに必要なメンバーがそれに対応するという仕組みを採っている場合が多いようです。

構成員にとっては、個人で仕事を請ける場合よりもクライアントに与える信頼感が増し、仕事の幅や量が増えるかもしれないメリットがあります。また、会社組織ではないので仕事を請けるか否かの選択も自由で、ギルド外での仕事を制限されることもありません

クライアントにとっても、企業と取引する際と同様に窓口がひとつで済む一方、価格は企業よりも安く上がるという「いいとこ取り」のメリットがあります。

 

アメーバ型組織

便宜上「アメーバ型組織」と表記しましたが、一般的には「アメーバ経営」の名で知られています。京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が編み出した経営手法で、会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小グループに分け、各アメーバのリーダーが経営者のように小グループを経営します。

アメーバのリーダーと構成員は、アメーバの利益を最大化させることを目標に創意工夫を行い、結果的に全社員が経営に参加するようになるという仕組みです。経営破綻したJALがこれを採用して見事に再生したことでも知られます。

まとめ

組織の分類にはさまざまな方法があり、最近提唱されるようになった新しい概念もあります。企業の規模や業種などの要素によって最適な組織形態は異なるため、どの組織形態がほかよりも優れているかは一概に言えません。しかしながら、自分が働く会社はどの形態に近いのか、そして自分はどんな組織形態の会社で働きたいのかをこの機会に客観的に考えてみてはいかがでしょうか。

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