働く女性は知っておきたい 育児や介護と仕事の両立を支援する制度
「育児・介護休業法」の内容を解説(平成29年1月および3月施行対応)
近年、女性の活躍やキャリアアップを成長戦略に掲げる会社も多くなってきました。政府も女性の活躍促進を主な政策の一つとして掲げています。しかしそういった理想とは裏腹に、女性のライフステージの中では育児や介護をすることになり、仕事と家庭の両立が難しくなるケースも出てきます。そういった状況でも仕事を続けやすいよう、休暇や労働時間の面で会社がサポートすべき内容を定めた法律が「育児・介護休業法」。ここではその内容を理解しておきましょう。
※平成29年1月および3月に施行された「改正育児・介護休業法」の内容に合わせ、修正しました。(2017年8月)
目次
ライター
育児のための制度
小さな子どもを育てる時期は、保育園の送迎など働く上で時間的な制限がどうしても出てきます。仕事と育児を両立できるよう様々な支援制度が用意されていますので、対象者やその内容を確認しておきましょう。なお、以下の制度の対象となる「子ども」とは、「法律上の親子関係のある実子・養子」のほか、「特別養子縁組の看護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等」も含みます。
育児休業制度
育児のために仕事を休める制度。1歳に満たない子どもを養育する労働者は、会社に申し出ることにより育児のために休業できます。期間は原則として子どもの1歳の誕生日の前日までの連続する期間、原則1回。
両親がともに育児休業を取得する場合には、子どもが1歳2ヶ月に達する日まで休業可能期間が延長されます(パパ・ママ育休プラス)。この場合、父母ひとりずつが取得できる期間の上限はそれぞれ1年間(母親は出産日・産後休業期間を含む)。妻の出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合は、原則1回のところ特例として育児休業の再度の取得が認められます。取得率の低い男性の育児休業取得を促そうとする制度ということになりますね。
また、子どもが1歳に達する日において父母いずれかが育児休業中であり、保育所等に入所出来ない等の事情がある場合には1歳6ヶ月に達する日までの取得が可能です。さらに2017年10月からは、1歳6か月に達した時点で保育所に入れない等の場合、再度申出することにより、育児休業期間を「最長2年まで」延長できることとなりました。
【対象となる方】
育児休業制度の利用には、条件があります。正社員はもちろん、パート社員・派遣社員・契約社員として働く方でも、以下の条件を満たしていれば育児休業制度が取得できます。
- 有期契約で働いている場合は、育児休業希望の申出時点で、同じ会社で1年以上働いており、子どもの1歳6ヶ月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないことの必要があります(雇用契約があるかないか分からない、という場合は対象になります)。
- 有期契約でない場合も、労使協定(会社と労働者の間で書面で取り交わされる協定)により、以下の場合は育児休業取得の対象外になる場合があります。
・雇用期間が1年未満
・1年以内に雇用関係が終了する
・週の所定労働日数が2日以下 - 1日単位で雇用される方は育児休業を取得できません。
短時間勤務制度
3歳未満の子どもを育てている従業員が希望すれば「短時間勤務」を利用できる制度。短時間勤務の場合の1日の所定労働時間を6時間(5時間45分から6時間まで)にできる必要がありますが、5時間や7時間などそれ以外の選択肢を用意することも可能です。期間は子どもが3歳になるまでです。
【対象となる方】
短時間勤務制度の対象となるのは、3歳未満の子を育てていて短時間勤務をする期間に育児休業をしていない、1日の所定労働時間が6時間以上の男女労働者です。1日単位で雇用される従業員は対象にはなりません。
ただし、勤続年数1年未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定(会社と労働者の間で書面で取り交わされる協定)がある場合には対象とならない場合があります。また業務の性質や内容によって短時間勤務制度を取ることが困難な仕事に就く労働者も対象とならないことがあります。
尚、短時間勤務制度を取ることが困難な労働者については、代わりに次のいずれかの制度が利用できます。
- 育児休業に関する制度に準ずる措置
- フレックスタイム制度
- 始業・就業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
- 事業所内保育施設等の利用
所定外労働の制限
簡単に言うと、残業が免除される制度です。3歳未満の子を育てる従業員は、申し出により、所定労働時間を超える労働が免除されます。
【対象となる方】
原則として3歳未満の子を育てている全ての男女労働者が対象となります。ただし、勤続年数1年未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定がある場合には対象となりません。
1日単位で雇用される労働者も対象外です。
時間外労働の制限・深夜業の制限
残業時間に一定の制限を設けたり、深夜の就労を制限する制度です。小学校就学前までの子を育てる従業員は、申し出により、1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働、深夜(午後10時から午前5時まで)労働が免除されます。
【対象となる方】
原則として、小学校に入学するまでの子を育てる全ての男女労働者が対象となります。ただし、勤続年数1年未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については対象となりません。
1日単位で雇用される労働者も対象外です。
子の看護休暇制度
子どもの病気の看護などのために仕事を休める制度です。未就学児が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、半日単位で休暇を取得することができます。子の看護休暇は、病気や怪我をした子の看護を行うためや、予防接種または健康診断を受けさせるために利用することができます。
【対象となる方】
原則として3歳未満の子を養育する全ての男女労働者が対象となります。ただし、勤続年数6ヶ月未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定がある場合には対象となりません。1日単位で雇用される労働者も対象外です。
転勤に対する配慮
育児期の従業員の転勤に一定の配慮を求める制度です。会社は、従業員に就業場所の変更を伴う異動をさせようとする場合に、その従業員の子育ての状況に配慮しなければなりません。配慮することの内容としては、例えば子どもの養育の状況を把握すること、本人の意向に配慮すること、子の養育手段の代替手段の有無を確認することなどが挙げられます。なお、転勤の配慮の対象となる子どもには、小学生や中学生も含まれます。
その他の企業に課せられている努力義務
会社は、従業員やその配偶者の妊娠・出産を知った場合に、その従業員に対して個別に、育児休業等の制度について知らせることが努力義務となっています(2017年10月より)。
また、小学校就学前までの子を養育する従業員について、
- 育児目的休暇(子の看護休暇や通常の有給休暇とは別に、育児を目的として休める制度。2017年10月より)
- フレックスタイム制度
- 時差出勤の制度
- 事業所内保育制度の設置・運営
その他これに準ずる便宜の供与などの努力義務が定められています。
仕事と育児の両立のため、企業ごとに独自の制度が用意されている場合があります。「保育園の送迎に間に合うように勤務時間の変更したい」「時差出勤をしたい」などそれぞれの事情により、個別の対応をしてもらえることもあるので、何かあれば人事担当者や上司等に相談してみましょう。
介護のための両立支援制度
次に介護のための両立支援制度についてみていきましょう。家族の介護を抱えている労働者が仕事と介護を両立できる社会の実現を目指して、育児休業と同様の支援制度が用意されています。
介護休業
介護のために仕事を休める制度です。従業員は、事業主に申し出ることにより、対象家族1人につき、通算して93日まで、3回を上限として介護休業をすることができます。「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。「対象家族」とは、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含む。)、父母及び子(これらに準ずるものとして、従業員が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む。)、配偶者の父母です。
【対象となる方】
- 原則として要介護状態の家族を介護する全ての男女労働者(期間雇用者及び1日単位で雇用される労働者を除く)が対象となります。ただし、勤続年数1年未満の従業員など、一定の従業員については、労使協定(会社と労働者の間で書面で取り交わされる協定)がある場合には、対象となりません。
- 有期契約で働いている場合は、介護休業希望の申出時点で、同じ会社で1年以上働いており、休業開始日から93日を経過する日以降9ヶ月経過する日までの間に雇用契約がなくなることが明らかでないという必要があります。
介護休暇制度
介護の必要がある日について仕事を休める制度です。要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う従業員は、事業主に申し出ることにより、対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、半日単位で休暇を取得することができます。
【対象となる方】
原則として、対象家族を介護する全ての男女労働者が対象となります。ただし勤続年数6ヶ月未満の従業員と週の所定労働日数は2日以下の従業員については、労使協定がある場合には対象となりません。1日単位で雇用される労働者も対象外です。
所定外労働の制限
簡単に言うと、残業が免除される制度です。要介護状態にある対象家族の介護を行う従業員は、申し出により、所定労働時間を超える労働が免除されます。
【対象となる方】
原則として対象家族の介護を行う全ての男女労働者が対象となります。ただし、勤続年数1年未満の従業員と、週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定がある場合には対象となりません。1日単位で雇用される労働者も対象外です。
時間外労働の制限・深夜業の制限
残業時間に一定の制限を設けたり、深夜の就労を制限する制度です。要介護状態にある対象家族の介護を行う従業員は、申し出により深夜(午後10から午前5時まで)労働と、1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を免除されます。
【対象となる方】
原則として、対象家族の介護を行う全ての男女労働者が対象となります。ただし、勤続年数1年未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については対象となりません。1日単位で雇用される労働者も対象外です。
深夜労働に関しては、深夜においてその対象家族を常態として介護することができる同居の家族がいる場合、所定労働時間の全部が深夜にある場合も対象外となります。
介護のための短時間勤務制度等の措置
介護のため、短時間勤務などができる制度です。要介護状態にある対象家族を介護する従業員は、希望により「短時間勤務制度」等の措置を利用できます。会社は、短時間勤務制度等の措置として、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
- 介護サービスを利用する場合、従業員が負担する費用を助成する制度
- その他これに準ずる制度
これらの制度は、要介護状態にある対象家族1人につき、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上利用することができるようにする必要があります。
【対象となる方】
1日単位で雇用される従業員以外の全ての男女労働者が短時間勤務制度を利用することができます。ただし、勤続年数1年未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定がある場合には対象となりません。
転勤に対する配慮
家族の介護をする従業員の転勤に一定の配慮を求める制度です。会社は、従業員に就業場所の変更を伴う異動をさせようとする場合に、従業員の介護の状況に配慮しなければなりません。
その他の企業に課せられている努力義務
介護は要介護状態にある家族の病状や家庭環境など考慮すべき様々な状況があります。上記の制度は法律で定めた必要最低限の内容であり、企業にはできるだけ社員のニーズに応じた措置を講じる努力義務があります。
働き続けるために、疑問や課題あれば相談を
育児、介護どちらに関しても、上記に定められた休暇や時短の申し出や取得をしたことを理由に不利益な扱いをすることは禁じられています。育児関連だとマタハラ、パタハラとして問題になっているのは、ニュース等で目にされている方も多いと思います。女性の活躍が叫ばれる一方、マタハラは深刻な社会問題となっています。
仕事で職場に貢献する、チームワークを大事にするという意識はもちろん忘れずに、「おかしい」とか、あるいは「もっとこういう働き方ができたら仕事をしやすい」と感じることがあれば、ぜひ職場で相談してみましょう。社内で相談が難しい場合は、外部の相談先もあります。
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