日本は女性が働きにくい国第3位!? M字カーブに見る女性の働き方の課題
「働く女性にとってベストな国ランキング」で日本はワースト3位。他の国々と比べてどういう点に問題があるのか、考えてみたいと思います。
イギリスの新聞『エコノミスト』が先日行った調査によると、「働く女性にとってベストな国ランキング」で、日本は先進29カ国の中で下から3番目という悲しい結果でした。日本は女性が働きにくい国――、こう言われて、あなたは実感がわきますか? 他の国々と比べてどういう点に問題があるのか、考えてみたいと思います。
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ライター
問題点は働いている女性の少なさ、男性とのお給料の差にあり
この調査では、日本や韓国は特に管理職の割合や賃金について、男女の差が異常に大きいという結果が出ています。つまり、ランキング上位の国々は、日本よりたくさんの女性が責任ある立場についているし、男性とのお給料の差が少ないということなんですね。
出産を機に辞める女性が多い「M字カーブ型」の日本
女性管理職の割合が少ないことの理由は、まず第一に出産をきっかけに辞めてしまう女性が多く、働く女性の数が少ないことにあります。
欧米と比べ、30代の働く女性が少ない
以下のグラフは、女性の年齢層別の労働力率(その年齢層に占める、働いている人+求職中の人の割合)をグラフにしたものです。日本は20〜24歳、25〜29歳においては他の国々と同程度ですが、特に30〜34歳、35〜39歳においてかなり下回っていますね。この、真ん中(少し左寄りですが)がへこんでいるグラフの形がアルファベットの「M」の字に似ていることから、「日本の女性労働力率はM字カーブを描くのが特徴」だと言われています。
昭和の時代と比べて働く女性はかなり増えた
次のグラフを見ると、この女性の年齢層別の労働力率が、日本でどのように変化してきたのかが分かります。
時代を追うごとにグラフが描かれる位置が高くなっていますが、これは働く女性の割合が昔よりは増えてきていることを意味します。
また、M字のへこみの部分が右寄りにずれ、へこみの度合いが穏やかになっていますね。これは、昭和50年では多くの女性が25〜29歳で「寿退社」をしていた状況から、最近は結婚や出産の時期が遅くなっていること、結婚しても働き続ける人が増えていることが理由だと考えられます。
出産で辞める人の割合は減っていない
結婚で辞める人は減ったけれど、出産で辞める人の割合は減っていない。それが分かるのが、以下のグラフです。
1985〜89年と2005〜09年を比較すると、結婚後も働き続ける人は60.3%から70.5%に増加しています。でも、第一子出産後にも働き続ける人は、ずっと4割弱のまま変わらないのです。
出産で仕事を辞めるのはなぜ?
少し古いデータですが、総務省の調査によると3歳未満の子どもを持つ女性のうち、今は働いていないけれど就職を希望している人は、4割弱でした。でも、実際に求職活動をしていたのはそのうちの2割ほど。ほとんどの人は、できれば仕事をしたいと思いながらも、家事や育児と仕事の両立ができそうにないと、あきらめてしまっているのです。
「両立は無理」とあきらめざるを得ない背景には、社員に長時間労働を求める企業の問題、保育所不足など社会的なサポート体制の不足、家事・育児は妻が主に担うという伝統的な価値感など、いろいろな原因が考えられます。
一度辞めてしまうと復職が難しいという問題
もちろん、「子どもが小さいうちは母親業に専念したい」というのもひとつの考え方です。ただ、日本の抱える問題は、一度辞めてしまうと正社員として復職するのがとても難しいという点にあります。子どもが幼稚園や小学校に行き始めたタイミングで、「また働きたいな」と思ったとき、多くの人がパートやアルバイトという働き方を選んでいるのです。その理由のひとつは、やはり家事・育児都の両立問題。正社員として時間をかけて通勤し、残業もするのは無理と考え、近所で短時間働けるパートやアルバイトを選ぶ人が多いということがあります。企業側も、まだまだ長時間働いてくれる人を歓迎する、という考え方のところが多いので、「時短で働きたい」「子どもの発熱などで、お休みすることが多いかもしれない」といった制約のある子育て中ママを採用したがらないという実情があります。もうひとつ、働いていない期間が長いと仕事のスキルが低下し(古くて使えないスキルになってしまい)、企業はそのような人の中途採用を避けがちであるということがあります。必ずしも正社員として働くのが幸せとは限りませんが、近所でできるパートやアルバイトとなると、仕事の内容も限られてしまいます。やりがい、キャリアアップ、収入アップの可能性を求めるなら、「両立が大変でも、会社を辞めずに働き続けた方がよい」というのが現状なのです。
まとめ
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