
ライフステージに合わせて「働き方」も選ぶ——現場と管理職を行き来する子育てママの選択
2015年4月にオンラインアウトソーシング(※1)「HELP YOU」に在宅フリーランスとしてジョインした生田目史子さんは、今年で11年目を迎えます。複数社を掛け持ちするメンバーも少なくないなかで、あえて1社に絞って活動してきました。HELP YOUの立ち上げ期から成長期にかけて多様なポジションを経験。マネジメント職を経て、現在は家庭を優先するため時間の融通が利きやすいスタッフの働き方を選び、公私を充実させています。
小さい子どもがいるうちは家庭を優先しつつも、いつかは管理職になってキャリアアップを目指したい、そんな方にぜひ読んでほしい内容です。
▶︎「くらしと仕事」を両立させながら、キャリアアップを目指したい方はコチラ
目次
インタビュイー
ライター
多様な働き方を求め、国内外から集まった初期メンバー
──HELP YOUで迎えた11年目。ジョインした当時は、どのような組織だったのでしょうか。
ジョインした当時は、秋沢崇夫社長と数名のメンバーだけ、という状況でした。HELP YOU事業が立ち上がったのが2015年4月で、私がジョインしたのはそのすぐ後です。
秋沢社長は前職を退職後、海外を旅しながら日本企業の仕事をフルリモートで請け負っていました。パソコン一台でどこにいても仕事ができることに可能性を感じ、もっと多様な働き方を広めたいという思いからHELP YOU事業を立ち上げた経緯があります。
そうした思いのもとに集まったメンバーは、住む場所や家庭環境により思いっきり働きたくても働けない──そうした事情を抱えた方が多かったように思います。
それを象徴しているのが、メンバーの居住地です。北海道から九州、アメリカと居住地は多岐にわたり、東京在住だったのは私を含めて数人程度。社長の秋沢さんを除き、全員が女性でした。

サービス立ち上げ間もない頃はリアルイベントにも参加した
子育ては待ってくれない、けれど「今」働きたい!
──2015年当時、生田目さんは小さなお子さんを育てている真っ最中だったのですよね。
そうです。2013年に出産した長男が、間もなく2歳になる頃でした。育児のペースがつかめるようになってきたため「そろそろ仕事を再開したい」と考えるようになりました。とはいえ、当時は保育園に入ることがまず難しく、入所のためにはフルタイムの働き方が前提になるため、その点に少し引っかかりを感じていたのが正直なところです。
一方で、育児が思いのほか楽しく「もっと子どもに関わっていたい」という気持ちも強くなっていきました。2人目のことも考え始めていた時期で「仕事もしたい、でも子育てにもコミットしたい」という相反する思いの狭間で揺れていました。どちらかを犠牲にするのではなく、自分が納得できるバランスを見つけたい——次第にそう考えるようになったのです。
事務系職種に在宅ワークは無理?当時の求職事情
そこで、子どもを保育園に預けるフルタイムを前提とした就職は早々に断念し「在宅でできる仕事はないか」と模索を始めました。いくつかの在宅ワークの会社に登録してみたものの、依頼されるのは単発の仕事が中心で、継続的に働ける環境とはいえません。「家庭と両立しながら長く働き続けたい」という思いが強かった私は、改めて継続的に働ける在宅ワークの求人を本腰を入れて探し始めたのです。
しかし、当時は今のように事務系の在宅求人が豊富ではなく、プログラマーやデザイナーといった専門スキルを持つ人でなければ、選択肢は限られていました。文系総合職出身の私にとっては「在宅で働き続けることは難しいのかもしれない」と感じ、働くことに対して挫けそうになることもありました。
それでも「同じ悩みを抱えている人が、必ずどこかにいるはず」と信じ、自分に合う在宅求人を諦めずに探し続けたのです。
そして、縁あって見つけたのが、HELP YOUです。
HELP YOUにジョインしてからは、おかげさまで仕事が途切れず続いていることもあり、現在では他社の登録は解除して、1社に絞って働いています。

ジョインして2年目、仕事机の下でよく寝ていた長男
チームに支えられ、叶えた第二子の妊娠・出産
そして、HELP YOUで働いていたから安心して第二子を授かることができました。
──HELP YOUで働くことと、第二子の誕生はどうつながるのでしょうか。
第二子を出産したのが2016年なのですが、その頃すでにHELP YOUはチーム制を確立していました。一般的にフリーランスというと自己責任のもと孤独に働くイメージがあるかもしれませんが、HELP YOUでは一つの案件に対しチームを組み、個人に依存しない仕組みを築いていたのです。
出産するとどうしても2~3か月は仕事を休まなくてはなりませんが、事前に同じチームの人に不在時の対応をお願いすることで、安心して出産に挑むことができました。
とはいえ、当時の私はチームリーダー(※2)の立場だったので、チャット等は欠かさず確認するようにしていました。そのおかげで、数ヶ月休んだ後もスムーズに復帰できたのかもしれません。

私が仕事をする横で黙々と折り紙をする次男
現場から管理職、そしてまた現場へ。キャリアは自由自在
──その後、生田目さんはクライアント対応を担うディレクターとしても仕事をするようになったのですよね。実務を担うスタッフに対し、ディレクターはチームをまとめる管理職的な立ち位置ですが、ポジションチェンジの経緯は何だったのでしょうか?
2018年の夏頃、大きな案件のディレクターが退職する際、後任にと声をかけてもらいました。この案件には、私自身はまったく関わっていなかったのですが、せっかくの機会なのでお受けしました。
受けてみて感じたことは、ディレクターになると直接クライアントとやり取りをする分やりがいもありますが、責任も一気に重くなることです。具体的な仕事内容としては、案件の取りまとめやスタッフのアサインなどの体制構築、クライアントとの契約調整や手続き、スタッフが働きやすい環境づくり、そしてディレクター会議への参加などがありました。
──今では廃止されたマネージャー職の業務も任されていたと聞きました。どのような職種で、どういった経緯で任されるようになったのでしょうか?
マネージャーは、ディレクターのまとめ役です。現在は、運営スタッフ → ディレクター → スタッフの順に、階層的な体制が組まれていますが、以前は運営スタッフとディレクターの間にマネージャーという職種がありました。
この職種も、運営スタッフから「マネージャーをやってみませんか?」と声をかけてもらい、2019年の終わり頃に前任者の方から引き継ぎました。
私は、7名のディレクターの進捗管理および個別面談を担当していました。各ディレクターとの1on1やマネージャー会議への参加に加え、ディレクター同士のコミュニケーションを円滑にすることも業務の一環です。
また、クライアントに対しては、HELP YOUのサービス活用状況について定期的にヒアリングを実施し、契約更新や活用方法に関しても、数値データをもとに提案を行うなど、対外的な業務も担っていました。
結局、2020年6月にこのマネージャー制度が終了し、私のマネージャー業務は半年ほどで終わってしまいました。短い間でしたが、私にとってかけがえのない経験となりました。
再度スタッフへ。ライフステージに合わせて選択したキャリア
──マネージャーの後は、運営スタッフに、とはならなかったのですか?
ありがたいことに声をかけてもらいました。しかし、ディレクターやマネージャーの経験を通じて感じたのは、管理業務の多くは働く仲間やクライアントなど「相手ありき」で成り立つ仕事であり、子育てとの両立は簡単ではないということです。
特に私の場合、相手の希望を優先するあまり、自分や子どもを後回しにしてしまう場面も少なくありませんでした。そこに課題を感じていたため、2020年にマネージャー業務がなくなったタイミングで、スタッフに戻ることを決意しました。

気が付いたらこの10年で子どもが増えていた
マネジメント経験が、現場仕事にも役に立つ!
一方で、このタイミングでスタッフとして「アドミン」の業務に挑戦し始めました。アドミンとは、ディレクターの補佐役として、業務を円滑に進めるためにマニュアルを整備したり、スケジュールや進捗などの管理表を作成したりする役割です。
アドミン業務の具体的な内容は案件によって異なりますが、私は「スタッフと管理職どちらも経験したからこその目線を活かしたアドミン」であることを意識しています。例えば、チーム内で誰が何に困りそうかを先回りして考えたり、進捗管理や情報共有の仕組みを整備したりと、単に「作業の補佐」ではなく「チームがスムーズに動くための環境を整える」ことを大切にしています。
ディレクターにはクライアントとのコミュニケーションや戦略面にしっかりと向き合ってもらい、私はアドミンとしてチームメンバーと向き合う。そんな「バディ」のような関係で、それぞれの得意分野を活かしながら、プロジェクト全体を前に進めていけるような在り方を目指しています。
このアドミン業務を始めたきっかけは、マネージャー時代にご一緒したディレクターから声をかけてもらったことでした。以来「スタッフ目線と管理者目線、どちらも持ったアドミン」として、現在も複数のプロジェクトで業務を担っています。
現場と管理職、両方経験したからこそ気付いた違い
──さまざまな職種を経験された生田目さんですが、現場スタッフと管理職で、一日のスケジュールはどのように変化しましたか?
私の場合、スケジュールに大きな変化はありませんでした。というより、子どもを中心に予定を組んでいるため、働く時間帯を大きく動かせなかった、といった方が正確かもしれません。

今年の春イヤイヤ全盛の末っ子との一枚
一方で、朝の支度が終わってから送迎までの1時間ほどの時間や、夕方に子どもがテレビを観たり遊びに集中したりしている隙間時間なども活用しています。そうした短い時間には、例えばマニュアルの更新作業や、納期に向けて少しずつ進められる業務など、細切れでも対応できるタスクを行うようにしています。
ポジションが変化しても、子ども中心の生活の中で、業務の性格によってまとまった時間とスキマ時間を使い分ける仕事のスタイルは変わりません。
現場と管理職で大きく違ったことといえば、管理的なポジションになればなるほど、関わる人数が増えるため、仕事時間が会議などで埋め尽くされていくことでしょうか。また、自分が動かないと仕事が止まってしまう、というのも大きな違いだと感じています。
──管理職を経験したからこそ得られた視点や気付きはありますか?
管理職の立場を経験したことで、スタッフとしては見えにくかったクライアントの思いや、数字に対する責任、そして運営側の工夫や努力、苦労を知ることができたのはとても大きかったです。今まで「なぜこういう指示が来るのだろう?」と思っていたことにも、裏側にある事情や意図が見えるようになり、明らかに視野が広がりました。
──今、再びスタッフとして働くことについて、どう感じていますか?
今は、一番下の子が3歳で、まだまだ手がかかる時期です。そんな今の私にとっては、目の前の業務に集中できるこのスタイルが合っていると感じています。管理職時代に比べて、責任の範囲が明確で、自分のタスクに集中しやすいこともあり、短い隙間時間でも効率よく仕事を進められる実感があります。
あえて「くらしと仕事」を分けない働き方
──最後に、10年間在宅ワークを続けてきた生田目さんが行っている工夫を教えてください。
あえていうなら「くらしと仕事」を分けないこと、でしょうか。
最初は、私も仕事の時間と家庭の時間を分けて考えていました。そのため、仕事と家庭、どちらの時間もまとめて取ろうとやりくりしてきたのですが、分けようとすればするほど、どちらも気になるのです。
そこであるとき「くらしと仕事」を混ぜて、どちらも同じくらい大切な仕事として管理することにしました。「銀行に行く」「洗剤を買う」などと「A案件の〆切」「E案件の管理表作成」などを並列にTo Doリストでまとめるのです。そして、隙間時間にTo Doを消していくことで、仕事の時間と家庭の時間は「混ぜてもいいのだ!」と知り、気持ちが楽になりました。
今はスタッフとしての働き方が心地よいですが、将来的に子育てがもう少し落ち着いたら、またディレクターとしての役割に挑戦したいと考えています。クライアントの喜びを直接感じられる瞬間、そしてチームで一つの目標に向かって進む緊張感──それらは、私にとって何よりもやりがいを感じる時間だからです。
まとめ
特に印象的だったのは「くらしと仕事」を分けない、という考え方です。私自身、「仕事は仕事」「家庭は家庭」ときっちり分けなければならないと思い込んでいたので、まさに目からうろこが落ちる思いでした。ぜひ参考にしたい仕事術です。
生田目さんのように、子どもの成長や家庭の状況に合わせてポジションを「選ぶ」ことができるのは、在宅ワークでもチーム制を採用しているHELP YOUだからこそ可能なのだと感じました。これから出産を控えている方にとっても、長い目で見て安心感のある働き方の一つではないでしょうか。
▶︎ライフステージの変化に合わせてキャリアアップを目指せるHELP YOU
Link