フリーランス ビギナー講座~確定申告と経費のキホン~ くらしと仕事

フリーランス ビギナー講座【確定申告と経費のキホン】

コロナ禍でリモートワークを経験し、フリーランスとして在宅で仕事をしたいと考え始めた人も多いのでは。
ただ、フリーランスになった後のお金の管理に自信がなく、会社員ではなくなることに不安を感じる人もいらっしゃると思います。
簿記の知識がなくても、会計ソフトを使えば毎日の取引を帳簿の形にしてくれますが、全く知識がないままでは、間違って申告してしまうリスクも。
確定申告の簡単な流れと経費の基本について、このコラムで一緒に学んでいきましょう!

※本コラムは、2023年8月時点の情報をもとに作成しています。

ライター

fumico
会計事務所を退職後HELP YOUにジョイン。経理とライティングのエキスパートになりたいと日々勉強中。一人娘はすでに独立しており、夫婦二人暮らし。社会にもまれながら頑張る娘の姿に刺激を受け、「お母さんも負けてられへん!」と意気込むアラフィフ。→執筆記事一覧

フリーランスと個人事業主はどう違うの?

そもそも「フリーランス」とは何でしょう。似たような言葉に「個人事業主」がありますが、どう違うのでしょう。

「フリーランス」とは、特定の会社や団体に属さず業務を行う「個人で仕事を請け負う働き方」を表す言葉です。
それに対して「個人事業主」とは、税務上の区分を表していて、税務署に個人事業の「開業届」を出し、継続・反復的に事業を行う個人のことを指します。

つまり、フリーランスという働き方をしている人のうち、開業届を出している人が個人事業主と呼ばれるのです。

では、開業届を出している個人事業主だけが確定申告をしなければならないかといえば、もちろん違いますよね。
開業届を出していなくても、確定申告は必要です。

会社員なら、会社が年末調整をしてくれます。扶養家族の増減や支払った生命保険料などから、1年間で天引きされた源泉所得税に過不足がないかを会社が計算してくれ、徴収したり還付したりして、正しい所得税の額に精算してくれるのです。会社におまかせ状態で、その内容まではっきり把握できていない人も多いでしょう。

フリーランスならば、開業届を出していようがいまいが、1年間の所得から自分で税額を計算して納税しなければなりません。それが確定申告です。

開業届は出さないといけない?
開業届は出さなくても罰則はないのですが、義務として届を出すことが定められています。「継続・反復的に事業を行う」ことができるのか、しばらく開業届を出さずに様子を見てもかまいませんが、開業届を出せば青色申告をする(届出必要)ことができるといったメリットも多く、継続していくのであれば、開業届は出すようにしましょう。
[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続 国税庁(参照 2023-08-01)
■開業届を出す場合、次の2点には注意が必要なので事前に確認してください。
①配偶者の加入する健康保険の被扶養者の場合、健康組合によっては被扶養者から外れる場合があります。
②失業保険を受給中の場合は、給付が受けられなくなります。
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確定申告ってどうやるの?

1年間の所得から税額を計算すると説明しましたが、所得といわれても漠然としていてピンときませんよね。それでは、所得の計算のしかたから税額の計算まで、確定申告の流れについて、簡単にご説明しましょう。

この図からわかるように、売上金額から「事業にかかった経費」や「個人の控除額」を差し引いて、課税所得を計算し、そこに所得に応じた税率を掛けて税額を計算するという流れです。

毎年2月16日から3月15日までの間に、前年の1月1日から12月31日までの所得について確定申告します(曜日で申告期限の変動あり)。

かかった出費を「経費」に計上することで税金の額が変わってくるため、経費に計上し忘れることがないように、自分で管理することがとても大事なのです。

確定申告は必須なの?
フリーランスは全員が確定申告をしなければならないわけではありません。
確定申告をしなければいけないのは、1年間(1/1~12/31)の所得に税金が発生する人です。
つまり、赤字になるから税金が発生しない人は申告しなくてもよいというわけです。ただ、①市区町村に対しての所得の申告は必要であること②還付がある場合、申告せずにほったらかしでは還付金は受け取れないこと③青色申告をしている人は、申告することで赤字を翌年に繰り越すことができること、を踏まえ、税金が発生しない人も確定申告はするようにしましょう。
参考:確定申告が必要な方 国税庁(参照 2023-08-01)
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なにが経費になるの?

必要以上に税金を払いすぎないためには、正しい経費を計上することが大切であることがわかりましたよね。
では、どういうものが経費になるのか、具体的に見ていきましょう

大きく分けて、

  • 事業のみに関わる費用
  • 私用の支払いに含まれる費用

の2つがあります。

事業のみに関わる費用

モノを購入したとき

一番わかりやすい経費です。
事業のためにモノを購入した費用は、もちろん経費です。パソコンを使って仕事をするなら、パソコンの購入費も経費ですし、仕事のために使う文房具などの備品を購入した費用も経費です。
ちゃんと領収書をもらって、帳簿につけましょう。

ただし、10万円未満と10万円以上とでは処理の仕方が異なるのでご注意ください。パソコンの場合はマウスなどの付属品や送料などもあわせた総額をひとまとまりの購入費と考えるので、10万円以上になることも多いですよね。

10万円未満のモノしか買わないよ!という人は、難しく考えなくても大丈夫です。

10万円以上のモノを買う場合
購入費用が10万円以上であり、耐用年数(※1)が1年以上であれば、以下の通り3つの処理方法があり、金額や青色申告者であるかどうかで選べる方法が違います
※1 対象の資産を使用できる「期間」のこと。国が法的に定めている。

  1. 通常の方法:固定資産に登録して、耐用年数に応じて減価償却(費用化)する
  2. 一括償却資産の特例:10万円以上20万円未満であれば、一括償却資産として、3年で減価償却(費用化)できる
  3. 少額減価償却資産の特例:青色申告しているのであれば、特例で10万円以上30万円未満の資産はその年1年で経費にできる

参考:No.2100 減価償却のあらまし 国税庁(参照 2023-08-01)

青色申告をしていれば、30万円未満のものはその年の経費にできるということです。30万円以上のものは耐用年数に応じて減価償却(費用化)することになるので、毎年少しずつ経費にしていきます。

この10万円を税込、税抜きのどちらで考えるのかは、税込経理方式か税抜き経理方式のどちらで帳簿をつけているのかで変わってきます。消費税を納付していない免税事業者であれば税込経理方式になります。

資格取得にかかった費用

事業に直接必要な資格を取得した場合は、勉強のために購入した参考書代や受験料も経費です。

英会話の学習や簿記の取得など、事業内容によってなにが「事業に直接必要な資格」にあたるのかが違うので、経費にしていいのかどうか迷う場面もあるかもしれません。そんなときは、その資格を取得したことが売上のアップにつながるのかを判断基準にするといいですよ。

また、医師免許、税理士資格など、独占業務を行える国家資格(=個人に帰属する資格)は経費にはできません。

タクシー代や電車代、ガソリン代など

これも、わかりやすいですね。事業のために使った交通機関の費用は経費です。

ただ、近距離の電車やバスなど、領収書がでない交通機関もあると思います。その場合、出金伝票を自分で書くか、明細を自分でエクセルなどに記録しておきましょう。内容を詳しく残しておくことが大事です。

また、交通系ICにチャージして使用されている人も多いと思いますが、その場合2パターンの考え方があります。

  1. チャージしたときに帳簿に「交通費5,000円」などと記録する
    交通系ICを使って交通機関を利用したときは帳簿には記録せず、内容をエクセルなどの明細に残しておく。
  2. チャージしたときには帳簿に記録しない
    交通系ICを使って交通機関を利用したときに、帳簿に現金で払ったとして記録する。この場合も領収書がなければエクセルなどの明細記録や、出金伝票の作成は必要です。

交際費

これも、事業に必要であれば経費として認められます。

ただ、交際費は「事業に必要か」どうかの判断があいまいになりがちです。なんでもかんでも領収書をもらえば経費にできるわけではありません。

所得税法第37条(参考1)にあるように、「事業活動に直接性がある」ことが必要経費の大原則です。

事業に直接関係のある相手に対して接待や贈りものをしたときに必要経費として認められるので、「これは交際費になるのかな」と迷ったら、相手が誰で、どんな内容の出費だったのかきちんと説明できるかどうか、自分でよく考えてみましょう。
参考1:所得税法第37条に規定する直接性に関する一考察 国税庁(参照 2023-08-01)

私用の支払いに含まれる費用

事業に関わる支払いは、事業用としてはっきり分かれているものだけではなく、家計からの支払いの中に含まれている場合もありますよね。

これは「家事関連費」と呼ばれ(参考2)、一定の割合で事業分だけを計算して、経費にすることができます。こうした方法を「家事按分」と言います。
参考2:No.2210 やさしい必要経費の知識 国税庁(参照 2023-08-01)

家賃や固定資産税

自宅を仕事場にしているなら、家賃も経費です。

もちろん、全額を費用にすることはできません。一般的なのは、仕事場として使用している部屋の面積を総面積で按分して、その分だけを費用とする計算の仕方です。

60m²のマンションに住んでいて、15m²の部屋を仕事部屋に使っているなら、15÷60=0.25なので、家賃の25%分を経費にします。

持ち家の場合は固定資産税を同様の形で経費にすることができます。住宅ローンは経費にならないので注意しましょう。利息部分は同じように按分すれば経費として認められます。

住宅ローン控除を受けているかた
住宅ローン控除を受けている場合、事業の使用割合を50%以上に設定してしまうと、住宅ローン控除を受けることができなくなるのでご注意ください。また、50%未満の設定でも、使用割合によっては全額が控除されない場合があります。

電気料金

これも按分することができるのですが、作業時間で按分するのが一般的です。

1週間の総時間数が24時間×7日=168時間なので、そのうち部屋で仕事をした時間が42時間だとすると、42÷168=0.25。事業に使用したのは25%となりますね。1か月の電気代が1万円なら10,000×0.25=2,500となり、2,500円を経費にします。

その他気をつけたい経費

開業費

「開業するぞ!」と、開業届を出してから、あれこれ準備する人もいるかもしれませんが、開業しようかなあと考え始めたころから、仕事で使う道具を購入したり、仕事に関連したセミナーに参加したり、関係者と打ち合わせをするなど、届を出す前から支払いをしている人も多いと思います。

そういった、開業準備にかかったお金も「開業費」として経費になるため、今年開業した人は、忘れずに経費にしましょう。

さて、仕事のための準備と言われても、何年前のものまで開業費として認められるのでしょう?

法律で明確な期限が決められているわけではないのですが、「開業するための出費である」ことが重要です。そのため、何年も前の出費を開業費とするのは説得力がないですよね。自信を持って開業のための出費だと主張できる費用を開業費にしましょう。

また、経費といっても、開業費の場合、通常の経費とは性格が違います。5年間で償却(費用化)するか、もしくは好きなタイミングで償却することができるという便利な経費なのです(参考3)。初年度に利益がたくさん出たらその年に全額を経費にしてもいいですし、何年も利益が出なければそのままキープしておいてもよいのです。
参考3:償却期間経過後における開業費の任意償却 国税庁(参照 2023-08-01)

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まとめ

一度に理解しようとすると、複雑で難しく感じるかもしれませんが、スムーズに確定申告するためには、経費についてきちんと理解していることが大切です。
大原則は「事業に関係しているかどうか」ということです。これを守れていれば、自然と正しい経費を計上できているはずです。今は優秀な会計ソフトがたくさん出回っているので、ぜひそれも活用してみましょう。
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