育休2年、ワーママと企業は、どう考える?育休中の過ごし方に変化も

ワーキングマザー、そして企業の女性活躍を支援するコンサルタントとして「育休2年」に思うこと。

10月から11月にかけては、育休中のママ達にとっては大きな勝負の時です。来年4月の認可保育園入園希望者は、この時期に一斉に各自治体に申込み書類を提出します。自治体による審査結果が出るのは来年2月頃。私自身もこの時期を経験していますが、書類の記載に不備が無いかを何度も確認し、書類を区役所にわざわざ郵送せずに持参し、提出後には神社に立ち寄ったことを覚えています。「果たして、我が子は希望する保育園に入れるのでしょうか?!この結果が、想定しているライフプランを諸々左右します。神様お願いします!」と。もちろん、認可外の保育園への申し込みなど、バックアッププランも用意しつつ……。

10月から、育休が2年まで延長可能に

待機児童問題が大きな社会問題となり、国や自治体の努力で保育園は随分増えましたが、それでもまだまだ不足状況が続きます。そんな中、この10月からは育休が最長2年まで延長可能(※)になりました。(※原則的な期間は「子が1歳になるまで」。ただし、保育所などに入所できないなどの事情がある場合は、既に「1歳6ヶ月まで」の延長が可能だったところを、更に「2歳まで」の再延長が可能に。この期間の育児休業給付金も支給。

 

参考:働く女性は必読!「育児・介護休業法」の改正内容(平成29年10月1日施行内容反映)

 

この変更、育休中のワーキングマザーたちに、そして企業に、どんな影響があり、それぞれはどう捉えているのでしょうか?

 

ワーキングマザーにとって根本解決になっていない!?

まずは、ワーキングマザーの視点から。

 

「朗報のようでいて、待機児童問題に対する本質的な解決策としてはどうなの???」が、私の見方です。というのも、待機児童の多い地域では、そもそも保育園に入園できるチャンスは0歳児の4月のみと断言しても良い現状があるからです。

 

基本的には、保育園も学校と同様、年齢ごと(0歳児?5歳児まで)に定員があり、5歳児たちが3月末に卒園して小学校に上がっていくことで、4月の0歳児に空きが出る、という流れがあります。よって、途中の年齢での入園については、退園・転園による空きを待つしかありません。あとは、年齢が上がるにつれて少しだけ定員が増えて行く保育園も多いので、その若干名の追加募集枠にかけて祈る……という感じでしょうか。

 

2年育休があったところで、「0歳児4月」のタイミングを逃した後に入園するチャンスが増えない限り、待機児童問題は解決し得ないのですよね。なので、 「2年休んで良いと言われても、保育園がもっともっと増えてくれないことには、どうしようもないんだけどな……。そっちの対策も引き続きよろしくお願いします!」という感じです。

 

とはいえ、「待機児童問題」から少し離れて、より大きな視界で捉えるならば、育休2年は否定しません。

 

個々の価値観、生き方はそれぞれ。個々の選択肢が拡がる方向には賛成です。

 

二度と戻って来ない小さな我が子と濃密な時間の貴重さ、私自身も経験しています。そして、人生100年時代をどう生きていくのか?が問われる今、 自己選択で2年の育休を取るという意思決定もありでしょう。(でも、だからこそ、「早く仕事に戻りたい。」に対しての選択肢の拡がりも引き続きよろしくお願いしますよ!と、願うのですが)

 

なるべく早く戻ってきてほしい企業。育休中社員の扱いに変化も

一方、企業側の視点では「育休2年」はどう映っているのでしょう?

 

各社の最近のテーマは、“両立支援“から”戦力化“へシフトしています。過去、育休復帰する女性が少なかったこともあり、復職しやすいようにと仕事と育児の両立を支援するための仕組みの充実――育休期間を国の基準より長く取れるようにしたり、時短勤務のオプションを増やしたり長く取れるようにする、など――に注力してきました。

 

そんな企業の努力(と時代の要請)もあり、育休復帰するワーキングマザーは増えました。

 

すると今度は、「時短勤務者ばかり増えても、もはや戻す職場がない」「時短が増えると、職場の負荷が増える」「そんなに長く休まれると、戻って来られても与える仕事がない」という嘆きの声が……。

 

我々には、 「早く育休や時短勤務を切り上げて、また、一戦力としてバリバリ活躍してほしいのに、どうしたら良いのか」といった相談が寄せられます。 戻ってきてからどうにかしようとしても遅いと、復職後の戦力化を見据えて、

 

妊娠の報告を受けてから産休に入るまで、産育休中、復職前、復職後の各フェーズでのコミュニケーションプランを見直し、新たなプログラムやツールを導入する企業も増えています。そんな中での「育休2年」ですから、前向きに捉えている企業は少ないのではないかと思われますが、だからこそ傍観するのではなく、新しい動きも生まれている印象です。

 

例えば、 「育休中に仕事をする」という選択肢の提供もそのひとつです。育休中でも可能な範囲で仕事はしていたい、会社の動きにはキャッチアップしていたい、と考える方もいます。「この変化の激しい時代、年単位で仕事から離れれば、浦島太郎」と。キャリア志向の高い人ほどにそうかもしれません。

 

であれば、例えば週1回の短時間の出社や一日数時間の在宅の仕事で、細く仕事を続ける選択肢を用意しようという企業の動きがあります。育児休業給付金(※)が受け取れる範囲で、薄く、部分的に仕事を受け続けるようなイメージです。

 

(※育児休業給付金:雇用保険加入者が対象。育児休業に入る前に一定期間働いていることも条件。完全休業でなければ支払われないわけではなく、休業中の給与に応じて受け取れる金額が変わる(育児休業中の給与が休業前の30%以下の場合、育児休業給付金は全額支給されるが、30%?80%の場合は休業前給与の80%の金額と休業中の給与の差額が支払われ、80%以上になると育児休業給付金は支給されない))

 

例えば、ウエディング系企業のA社さんでは、育休に入るメンバーの希望を踏まえて、各種日程調整の仕事は育休中も引き続きできることとしました。飲食チェーンのB社さんは、定期的な部門会議への出席と、そこで出たタスクについては引き受けられる範囲で続けたいという本人の要望をきっかけに、育休ママへのアウトソースの流れができました。

 

2社とも、無理のない範囲で、給付金も受け取れるようなボリューム・金額を目安に、うまく調整しています。

 

昨今、人手不足解消、生産性向上の文脈から、アウトソースやフリーランス人材の活用を積極的に進める企業も増えていますから、そういった「ひとり分としてカウントできない人材」の戦力化については、発想の柔軟性も、取り組みの柔軟性も高まっているのではないかと感じています。

 

育休2年の善し悪しはあれど、これをきっかけに、それぞれの視点から、それぞれの新しい工夫や選択が生まれていったら良いですよね。

 

みなさんは、どう活かしますか?

Link

おすすめリンク