2016年10月13日 更新

子どもとの時間のためにとった思い切った選択【ボッティング大田朋子さんのくらし方・働き方・後編】

ボッティング 大田 朋子さんへのインタビュー後編では、今の仕事を始めたきっかけとこれからやりたいこと、親子ですごす時間を作るためにとったある行動について伺います。

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前編では、子どもができたことで、生活の場に対する価値感が変わり、アルゼンチンからスペイン、イギリスへと移住した経緯が語られました。後編では、大田さんがライターという仕事をすることになったきっかけや今後の展望、スペインを経つ前の3ヶ月で作った息子さんとのかけがえのない思い出、ライフステージによって変化する生き方について聞きました。

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イギリスに引っ越してから日課となった、家族でのサイクリング

仕事と家庭のバランスを取るうちにたどり着いた「やるべき仕事」

- 今は、ライターのお仕事が中心ですか?

ブエノスアイレスでは、大好きだった「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」を世界中に広めたいと日本の漫画の国際著作権を扱うプロジェクトを立ち上げました。でも10年程前にトラブルをきっかけに自分の会社を閉めたとき、アルゼンチンにいながら自分ができることを探し、ライターや日本の企業向けの現地調査といった仕事を始めました。いずれまた自分でプロジェクトを立ち上げて何かしようと思っていたので、最初は「腰掛け」みたいなつもりだったんです。でも、そうこうしているうちに子どもが生まれ、「子どもといたい」という気持ちを優先しつつ、細くても仕事を続けていくのに、フリーランスのライターという仕事はマッチしていたんですよね。気がつけば10年経っていました。その間に他の書き手さんに出会ったり、読んでくださる方の反応を受け取ったりして、だんだんと「これを真剣にやっていきたい。願わくば社会にいい影響を与えるようなものを書きたい」と思うようになって……、今はライターという仕事を肝を据えてやる気になっています。

こんな感じなので、「何をしているのか?」と聞かれると説明が難しいんです。でも、私の中では「仕事と人生をつなげたい」という思いで、そのときどきでやるべきと感じられることをやってきました。

 

- イギリスに移ったことで、新しく始めようとしていることは?

今までひとりでやっていたので、もう少し人のつながりを活かした仕事をしていきたいな、という思いがあります。スペインにいた時はSkypeでミーティングしていた取引先の何件かとは、今はロンドンで直接会って打ち合わせをするようになりました。他の人とも、ロンドンでなら「ちょっと会いましょう」と声をかけ合いやすいので、仕事の幅を広げる可能性や人との出会いも増えるな、と思っていて。これからはチームの作り方や働き方を模索していきたいと考えています。

スペインでの最後の3ヶ月「小学校を休ませる」という選択で得たこと

- イギリスに移る前の3ヶ月、1年生の息子さんは小学校を休んで親子で過ごしたそうですね?

スペインでは3月から6月末が3学期ですが、3学期は学校に行かせず、今まで息子と一緒にしたかったけどできなかったことをしようと決めたんです。

それには理由があって、スペインでは、幼稚園も小学校もすごく時間が長いんです。小学校は朝9時から夕方5時までで、宿題も多い。宿題は幼稚園でも出るんですよ。3歳から始まって、5歳になると毎日宿題があるような状態で、小学校に入ると週末も「どうやって宿題を片付けるか」を考えなければいけないくらい。息子は土曜日は日本語の補習校にも行っていて、友達とも遊びたいですし、日々普通のことをやるだけでいっぱいいっぱいで、親子で一緒に何かをする時間が全然とれなかったんですね。

また、スペインでは国際バカロレアの小学校に通っていたのでカリキュラムはかなり進みが速いんです。イギリスの先生にスペインの小学校でやっていることを見せたら、「この内容は、こちらでは来年、再来年にやる」と。それなら3学期に抜けても勉強で困ることはないと、それを確認できたので、休ませることにしました。

 

- 息子さんも賛成だったんですか?

子どもは学校の友達や先生が好きだったので、その点では悩んだんです。でも、うちが学校の近くだったので、3学期の間も放課後遊びに行くことができて、交流は維持できました。

どこまで理解したかわかりませんが、前もって「私はあなたと、こういうことをしたいと思っていたんだけどできなかった。だから残り3ヶ月でやりたいと思ってるんだよ」と説明して、「一緒にやりたいことある?」とか、「学校がなかったらその時間をどう使いたい?」ということを聞いて、一緒に考えました。

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- 時間があったらやりたかったことというのは、どんなことですか?

自然の中で、子どもと一緒に散歩したり、何気ない会話をしたりしたいと、ずっと思っていました。

 

- その希望は叶えられましたか?

息子と色々話し合って、残りの3ヶ月間を自分たちが好きなように作っていこうと決めました。例えば、週3回、私が近所の友達としていた朝のジョギングに息子も自転車でついてくるようになりました。ジョギングコースは自然に囲まれたところなので、子どもと自然に触れたり一緒に身体を動かしたりといった、私がしたかったことが叶ったわけです。他の曜日もふたりでサイクリングや料理をしたり、息子は行きたかったプログラミングのクラスに行ったり、週1しか行けなかった水泳ももっとたくさん通ったりしました。

この期間ですごく良かったのが、私のジョギング仲間と息子がすごく仲良くなったことです。息子は手を動かしていろいろなものを作るのが好きなのですが、その友人も手先が器用で、息子に色々教えてくれたんです。好きなことを気持の面でも技術的にもサポートしてくれる大人の友達ができたことは息子の大きな喜びと自信になったようで、そのうちに私がいなくても彼女の家を訪ねるようになりました。事前にそんなことは想像もしていなかったのですが、息子が親を介してではない大人とのつながりを見つけてくれたことに、すごく胸が熱くなりました。そういう人の縁というのはなかなか生まれるものではないので、息子がその人にすごくなついて、親戚のおばさんと甥っ子みたいな関係を作ってくれたのがすごく嬉しくて。

 

- 時間の余裕が、とても良い経験を生み出したんですね。イギリスに行く前に日本の小学校も体験されたとか。

6月から7月にかけて日本に帰っていたのですが、その間息子は私の地元の小学校に通わせてもらいました。

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- そういうことができるんですね!

子どもが日本の国籍を持っていると、教科書も送ってもらえるし、日本に行ったときには、滞在先に住民票を出せば小学校に通える制度が整っているんですよ。

 

- 日本の小学校はいかがでしたか?

今回のようにスポット的に通ってみると、日本の学校のいいところがすごく分かりますね。もちろん、日本の学校にもそれなりの課題はあると思いますが、他の国にはない素晴らしい点に、すごく感謝できます。

例えば、集団登校をしたり、給食の準備や掃除も自分たちでやるというのは、スペインやイギリスではできない経験です。息子も毎日「今日は窓拭きやったよ」とか「給食当番だった!」とか、そういう経験を喜んでいました。

人生は組み合わせ。家族と自分の状況に合わせて生き方を選んでいく

- お話を伺っていると、家族のため、自分のために、国境や常識の枠にとらわれず、その時々で思い切った選択をされていますね。その元となる行動指針のようなものがあるのでしょうか?

昨日も夫婦で話していたんですけど、今は家族単位でどうするかを考えるときだと思っています。今はふたりで話し合っていますが、もう少し子どもが大きくなれば、子どもの意見も聞きながら決めていくことになるでしょうね。

子どもの成長を考えると、今は腰を落ち着ける時期。おそらく、子どもの教育過程が終わるまではここ、イギリスにいると思います。

子育てを始める前は、自分の成長や夢を軸に考えていたので、そのためにいいものを選ぶということに迷いがありませんでした。今は、あえてそれをしないことを選んでいるんですね。人生って「組み合わせ」で、興味の赴くままに色々なところに行くのもありだし、逆にひとつのところにいて、ひとつのことをしているから生まれてくることもたくさんあるはずだから、それも大事にしたいんです。今後も、家族の成長によって、暮らし方も働き方も変わっていくと思います。

ボッティング大田 朋子

ボッティング大田 朋子

ライター。同志社大学(商学部)卒業。アメリカ、ドイツ、インド、メキシコ、アルゼンチン、スペインを経て2016年夏より英国在住。「複数の国で働くノマドママ」として各メディアから注目される。『Japan Class(東邦出版)』で「情熱の国スペインに住んでみたら」コラム連載中。執筆参加書に「値段から世界が見える! 日本よりこんなに安い国、高い国 (朝日新書)」「「大好きに会いに行こう。世界のお祭り&イベントガイド(サンクチュアリ出版)」、「しらたきヌードルダイエット(学研)」がある。英国人のパートナーと多国語を話す息子娘の4人暮らし。
世界が拠点な生き方&子育てサイト:http://tomokoota.wordpress.com/
大田朋子ツイッター:https://twitter.com/TomokoOta

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