2019年10月東京の最低賃金が1,013円引き上げ 在宅ワーカーの賃金基準は会社と自宅 どちらの県になる?

最低賃金は都道府県によって異なりますが、企業の社員が在宅勤務を行う場合、会社と自宅とで県が異なるケースも想定されます。この場合、会社と就労場所(自宅)のどちらの県の最低賃金が適用されるのでしょうか。

ライター

佐々木康弘
札幌市出身、函館市在住。大手旅行情報誌やニュースサイト、就活サイトなど多数の媒体と契約するフリーランスライター。店舗・商品・人物の取材記事やニュース・芸能記事作成、広告ライティングや企業紹介など幅広いジャンルで年間100万字以上を執筆するほか、校閲も行う。「HELP YOU」ではプロフェッショナルライターとして活動。→執筆記事一覧

最低時給「初の1,000円超え」と言っても……

10月から最低賃金が引き上げられ、全国平均の最低賃金は901円となりました。昨年度の全国平均より27円引き上げられたことになります。消費税増税が家計にじんわりと負担を増し加えているなかで、せめてもの朗報といったところでしょうか。

 

さて、最低賃金の全国平均が901円になったと書いたばかりですが、これはあくまでも平均額。実際の最低賃金は、青森県や鹿児島県など15県の790円から、初の1,000円超えとなった東京都の1,013円まで、県によって実に最大223円もの開きがあります。

 

テレワークにも最低賃金は適用される?

働き方改革にともなって国が推進している「テレワーク」。パソコンなどITを活用した時間や場所にとらわれない働き方を指しますが、この「テレワーク」で働く労働者にも最低賃金は適用されるのでしょうか。

 

結論から言えば、テレワークにも最低賃金は適用されます。企業に所属する従業員として自宅やサテライトオフィスで業務に従事したり、外勤中にモバイルワークをしたりする場合はいずれも労働基準法の対象となり、最低賃金が適用されます。

 

最低賃金だけでなく、1日8時間・週40時間の通常の労働時間制も適用され、企業はテレワーカーに対して残業など時間外労働や深夜・休日労働への割増賃金の支払いも行う必要があります

 

ただし、これは事業主と雇用関係にある場合。事業主と雇用関係になく、個人事業主などとして請負契約を結んで在宅ワークなどを行う場合は労働基準法が適用されず、最低賃金も保障されません

 

会社と自宅で県が異なる場合は?

前述のとおり、企業の従業員がテレワークを行う場合は最低賃金が適用されますが、たとえば東京都の会社に勤める社員が千葉県にある自宅でテレワークを行う場合、果たして東京都と千葉県どちらの最低賃金が適用になるのでしょうか。言い換えれば、会社のある場所とワークを行う場所で県が異なる場合はどちらの最低賃金が適用されるのでしょうか

 

答えは、「会社がある都道府県の最低賃金が適用される」となります。これは、在宅勤務を行う社員の自宅は労働基準法でいうところの「事業場」に当たらないからです。

 

「事業場」は法律用語なので概念が少しわかりにくいのですが、ごく簡単に言うと「ある程度の独立性をもって事業を行う拠点」のこと。工場や支店などがこれに当たります。ですから、東京都に本社を置く企業が千葉県に工場を開いた際は、その工場に適用される最低賃金は東京都の1,013円ではなく、千葉県の923円となります。

 

一方、企業に所属する従業員が在宅勤務を行うことは、事業としての独立性を持っているとは言えません。会社にあるデスクを自宅に持って来たのと実質的に同じであり、独立した支店や営業拠点がそこに開かれたわけではないからです。

 

ですから、たとえば東京都のオフィスに勤めていた社員が千葉県の自宅で在宅勤務をした場合でも、千葉県ではなく東京都の最低賃金が適用されることになります。

まとめ

最低賃金は都道府県によって異なりますが、企業に勤める従業員が県をまたいでテレワークを行った場合は、もともとの勤務場所の最低賃金が適用されます。その他の労働条件についても労働基準法が適用されます。労働基準法に規定されている労働時間制度のうち、在宅勤務だからといって適用されないものはありません。

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