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一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、株式会社Waris、ランサーズ株式会社、日本政策金融公庫の4社がそれぞれ行った実態調査をもとに、広義のフリーランスの現状や今後の課題などを紐解く「フリーランスの多様な実態~4社調査比較~」を開催しました。

フリーランスの醍醐味は「自力で生きていく楽しさや辛さを学べること」

フリーランス協会は「プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018」として、広義のフリーランスを分類化し、会社員とフリーランスの比較調査を行いました。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
河合優香理さん
マーケティングプランナー。2004年に株式会社日立製作所へ入社し、薄型テレビやビデオカメラの北米向け商品企画および海外営業に従事後、日本マイクロソフト株式会社へ転職し、Windows/Xboxのマーケティングを担当する。2017年にフリーランスとして独立すると、株式会社Enbirthを設立。現在は複数の企業のマーケティング業務や新規事業推進を手がけている。

広義なフリーランスを分類化すると、大きく分けて「独立系」と「副業系」の2つがあり、さらにそこから働き方で細分化することができます。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018」資料より抜粋

「独立系」と「副業系」の2つの大きな違いは社会保障の有無。そして、昨今のフリーランスの特長としては、職種の多様化が見られるそうです。

「以前はWebデザイナー、コピーライターなどのクリエイティブ系や美容師、スポーツトレーナーなどの職人系のフリーランスが大半でしたが、最近では会社に属していないと働けない分野とされていた広報や人事、財務などの業種であるビジネス系にも広がっています」と河合さん。

さらに、会社員からフリーランスへ転向した動機については、スキルアップや自己実現など「無形資産の形成」を目的とする人が多いという結果も。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018」資料より抜粋

実際に、会社員時代との変化を比べると、「人脈」「スキルや経験」「満足度」「生産性」が増えたと回答する人がほとんどで、減ったものについては「労働時間」があげられました。気になる収入については、増減は半々のようです。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018」資料より抜粋

こうした独立後の変化は、仕事へ対する意識にも表れています。それが、「仕事を成功させるために必要なこと」というテーマで会社員とフリーランスに実施したアンケートの結果です。

フリーランスは「スキル」や「セルフブランディング」など、いかに成果をあげられるかを重要視しているのに対して、会社員は「自分の意見を相手に上手に伝える能力」「前向きな姿勢」「状況の判断力」「忍耐力」といった組織で円滑に仕事を進めるために必要なスキルを重要視していることがうかがえます。

会社員が必要だと思うスキルは、チームワークで仕事をする時には欠かせない能力であり、フリーランスへ転向しても活きる能力でもあります。しかし、「個性」「自己実現」からは遠のいたもの。「人生100年時代」の今、パラレルキャリアとしてフリーランス(副業、兼業)を手段のひとつと考えておくことが、定年後の充実した人生を送るきっかけになるかもしれません。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018」資料より抜粋

また、現在は会社員として働きながらもフリーランスに興味がある人たちへ、「フリーランス(副業、パラレルキャリア、起業も含む)の障壁は?」というアンケートも行われましたが、「漠然とした不安」、「収入」、「安定性」、そして「何から始めてよいか分からない」という回答が目立ちました。

こうした結果から、フリーランスという働き方は具体的な方法や独立後の曖昧さが際立ってしまい、なかなか一歩を踏み出すことが難しいという印象があることがうかがえます。

もっと気軽に働き方を行き来できるよう、「フリーランスと会社員の壁」をもっと低くするために、そして、日本社会でフリーランスという働き方を広めるためにはどうすればいいのでしょうか。

この問題について、河合さんは「政府・行政、社会、そしてフリーランス自身にそれぞれ課題がある」と言います。

「フリーランスとして働く人たちからは、『政府や行政による社会保障の整備』を求める声や、『保育園の優先順位の見直し』などの声が多く寄せられています。また、社会に対しては『フリーランスに対する正しい理解』です。フリーランスはフリーターでもアマチュアでもなく、専門性を持ったプロ。しかし、現実は、会社というバックアップがないために信用度が低く、ローンや賃貸契約を結ぶことが簡単ではありません。そして、それらを改善するためには政府や社会の意識だけではなく、フリーランス自身もスキルを高め、使命感を持って仕事に取り組むという姿勢が必要です」

さまざまな課題が残るフリーランスという働き方ですが、一方で実際に働き始めた人たちは高い満足度を得ています。そして、ライフイベントが多い女性にとって、働く場所や時間を問わないフリーランスという働き方は、柔軟にキャリアを継続させられる働き方のひとつでもあります。
ひと昔前に比べて、フリーランスと言ってもその働き方や職種などが広範囲になり、ひとくくりにはできないものになってきています。しかし、社会の認識はまだ追いついていないのが現状です。

河合さんは、最後にアンケートから印象深い意見を紹介しました。それは、「フリーランスの醍醐味は自力で生きていく楽しさや辛さを学べること」という言葉です。

会社員では得ることが難しいスキルやネットワーク、会社員では感じられなかったフリーランスならではの辛さ。フリーランスという働き方には新しく学べることがたくさんあります。それがより多くの人へ、当たり前の機会として提供されるようになれば、個人だけではなく、多様化を叫ぶ現在の日本社会にもプラスの結果が生まれるのではないでしょうか。

これからの企業に求められる人材「変革型フリーランス」とは

株式会社Warisからは、「変革型フリーランスの実態」についての調査発表が行われました。

Waris Innovation Hubプロデューサー 小崎亜依子さん
慶應義塾大学総合政策学部卒業、ピッツバーグ大学公共政策国際関係大学院修了(公共政策マネジメント修士)。野村アセットマネジメント株式会社を経て、留学・出産育児で5年のキャリアブランク後、NPOのアルバイトで復職。2007年より株式会社日本総合研究所で、企業のESG側面の評価分析を行い、社会的課題解決を投融資の側面から支援(日本証券アナリスト協会、企業価値分析における ESG 要因研究会委員)。「なでしこ銘柄」における企業分析などを担当した後、2015年株式会社Warisに参画。自身の経験を活かし、キャリアブランクのある女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」を手掛けるとともに、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。著書に『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当)、『スチュワードシップとコーポレートガバナンス―2つのコードが変える日本の企業・経済・社会』(共著)、『子どもの放課後を考える』(共著)などがある。
㈳日本証券アナリスト協会 企業価値分析における ESG 要因研究会委員(2009年~2015年)、環境省環境報告ワーキンググループ委員(2010年)、明治大学「女性のためのスマートキャリアプログラム」講師、日本テレワーク学会会員。北九州市未就業女性の活躍戦略策定事業アドバイザー(2017年)なども務めている。

変革型フリーランスとは、高い専門性を備えた企業と対等な関係を築けるフリーランスのこと。主に、会社員として10年以上のキャリアを持ち、企画やマネジメント業務に従事している人が多く、リモートワークなどを活用して働いています。

ひと昔前は、「フリーランス」というとクリエイティブ系がほとんどでしたが、昨今徐々に増えてきているビジネス系フリーランスの枠組みに該当する人たちでもあります。
そのキャリアから高単価を獲得していることも特長で、広義なフリーランスの中でも高収入を得ている割合が多いそうです。

株式会社Warisでは、変革型フリーランスの9名にインタビューを行い、どんなキャリアパスをたどってきたのかを調査したところ、「変革型フリーランスには、『成長のトライアングル・モデル』が備わっていることがうかがえます」とのことでした。

Waris「変革型フリーランス実態調査」資料より抜粋

「変革型フリーランスは、社会の中での自身の使命感に明確なビジョンを持っており、常に新しいスキルを学び続ける力と、目先の損得を越えた長期的な人間関係作りを行っていることが分かりました。この『ビジョン・モチベーション』『ヒューマン・キャピタル』『ソーシャル・キャピタル』の3つのトライアングルがうまく循環することで、さらなる成長を続けることが可能になっているのです」

こうした人材は自身の成長だけではなく、パートナーとして付き合う企業にも大きなメリットを生み出すのだと言います。

「高い専門性を持つ変革型フリーランスは、クライアントへその専門性を提供するばかりではなく、さまざまな企業や同業のフリーランスとの接点があることから、一般的な会社員よりも広いネットワークを構築しています。昨今ではダイバーシティの重要性が叫ばれており、取り組みを始めている企業も少なくありません。変革型フリーランスの持つ多様なバックグラウンドや環境は、企業の求める生産的で革新的な組織を作る上でも非常に有効な人材といえます」

しかし、いくら変革型フリーランスが有効な人材だったとしても、「企業に受け入れる体制がまだまだ整っていないのが現実」だそうです。

「外部の人材を受け入れる選択肢を持っていない企業はいまだに多く、変革型フリーランスのようなプロフェッショナル集団がいることも広く認知されていないのが現状です。
また、受け入れたとしても正確な仕事の切り出しができないという問題もあります。企業は、発注する仕事について、どんな能力が必要か、どんな課題解決を望んでいるのかを明確にする必要性が出てきます。
さらに、変革型フリーランスに対しての正しい認識も大切。企業側は仕事を『あげる』のではなく、独立したプロフェッショナルと一緒にプロジェクトをこなしていくという対等なパートナーとして接することが重要です」

「副業解禁」の波が広がっているとはいえ、それは企業側の人材を開放するものであって、開放された人材の受け入れ体制が整っている企業はごくわずかです。いくら副業が容認されても、働く場がなければフリーランスという働き方は発展することができません。
企業がなかなか受け入れ体制を整えられない理由として、「社内情報の漏洩やセキュリティの不安」「外部との業務委託を結ぶことができない」「費用対効果の不明」などがあげられます。
現在進められている「副業解禁」では、フリーランスとして働く個人ばかりが注目されてしまいがちですが、今後は、働く場を提供する企業側の組織整備が重要になってくるのではないでしょうか。

「フリーランス」をもっと敷居の低い選択肢にするために

今回の調査結果では、「フリーランス」という働き方は「会社員」という言葉と同じくらい広範囲を指すものになっていること、そのため画一的な判断が難しいことがうかがえました。
また、その多様性に社会的認識が追いついていないため、当たり前のように選択できる働き方となるにはもう少し時間がかかるのかもしれません。

私たちが気を付けておきたいのは、「フリーランス=自由」という間違った認識をしないことです。自由であるのはあくまで時間や働く場所であって、個人で働く限りそこには会社員にはない責任がともなうもの。会社から会社へ移る「転職」と同様に、自分が求めることや置かれている状況を客観的に判断して選ぶことが大切です。

しかし、フリーランスで味わうことができる新しい経験は、仕事を越えた「何か」を得られることも事実。長い人生の中でプラスになることも多いのではないでしょうか。
フリーランスという働き方をもっと気軽に自由に選べる社会になるためには、政府や企業はもちろん、私たち一人ひとりの認識や行動が重要になってくるのだと思います。

後半では、ゲストを迎えてのパネルディスカッションの模様をご紹介いたします。