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「好き」を仕事にするために、伊佐さんが歩んできたキャリアとは

トークイベントの前半では、伊佐知美さんの現在に至るまでのキャリアや「好き」を仕事にするために実践したことなどを、ルイス前田さんとともに振り返るトークディスカッションが行われました。

伊佐知美さん 「灯台もと暮らし」創刊編集長。「旅をしながら働く」を実践するため、2016年4月より世界一周x仕事の旅へ。現在は「旅」「文章」「写真」を軸に、エッセイストやライター、フォトグラファーとして活躍中。「伊佐知美の世界一周さんぽ」(ことりっぷ)の執筆や、オンラインSlackコミュニティ「#旅と写真と文章と」のオーナーなどを務めている。また、書籍では「移住女子」(新潮社)を刊行。これまでに国内は47都道府県、国外は40カ国100都市を訪れた。

ルイス前田さん 世界一周をしている時に出会った友人と「株式会社TABIPPO」を創業。現在は5期目を迎える。 「TABIPPO.NET」の編集長を務めるかたわら、Webメディアの運用、開発もこなしている。最近ではラジオ番組「FUTURES」がスタートした。

―自由気ままに世界中を旅しながらライターとして働いていた伊佐さんですが、そのキャリアを始めるまでの道のりは意外と「泥臭い」ものだったようです。

「私は、幼い頃から『文章を書く仕事がしたい』『世界中を旅したい』という夢を持っていました。そこで、大学時の就活には雑誌編集部がある出版社を受けたのですが、結果はすべて不合格。新卒で入社したのは、まったく関係のない金融機関だったんです」

―しかし、旅と文章への憧れは募る一方。「これからもずっと、毎日同じ時間、同じ場所で働くのかなって想像したら、ちょっぴり悲しくなった。世の中にはきっと他の生き方があるはずだと思って」と、伊佐さんは3年後に退職を決意します。

「その後、契約社員という扱いで出版社へ潜り込んだものの、配属先はメディア事業局。とにかく出版社へ入ってしまえば、編集部へ転属できるのではないかと考えていたのですが、それはかなり難しいことでした。そこで、出版社で働くかたわら、個人でライティング仕事を請け負うことにしました。始めた頃の執筆料は1本500円ほどで、修行みたいな感じで毎月100本書いていた時期もありましたね。けど、気づいたら半年後くらいには、1本1〜2万円の報酬がいただけるようになっていたんです」

―半年で報酬が40倍以上になった伊佐さんですが、そもそもどうやって仕事を作ってきたのでしょうか。

「出版社に勤めていた頃は、仕事柄あらゆる雑誌に目を通していたので、そこからたくさんの情報を得ていました。そこで、海外や日本のトレンドなどジャンルを問わずに、自分が好きだと思ったものをリストアップしてSNSで発信をしていたんです。すると、2カ月くらいでフォロワーが3000人ほど増えました。ライターとしての実績はありませんでしたが、そのリストを「ネタ帳」として提出して、仕事をいただくことができたんです。そこから少しずつ実績を作り、それにともない執筆料も上がっていきました。自分が好きなものを集めて、それをさらに世間へ発信すること。それが仕事を得るきっかけにつながったんじゃないかなって思っています

―ここで前田さんからは、「仕事が欲しいライターと仕事を依頼したい編集者との乖離問題」について語られました。

「私は編集長としてライターへ仕事を依頼する側の人間ですが、ライターを探すのがとても大変だと感じています。仕事はたくさんあるのに、ライターが見つけられない。結果、SNSか人脈を使って探すことがほとんどです。この『ライターと編集者の乖離問題』を解消するためにも、ライター志望の人は自分をSNSでどんどん発信していくことが仕事へのチャンスになるのではないでしょうか」

―SNSでの発信は、「とにかく続けることが大切」と伊佐さんは言います。

「私も最初の頃は、まったく誰にも読まれない日々が続きましたが、とにかく毎日書こうと1日1ブログ(note)と、Twitterの発信を心がけていました。最初はほんとに全然読まれないから(笑)。時折心が折れてしまいそうになるけれど、今振り返るとその頃の蓄積に助けられているから、とにかく継続するって大切だなって」

―また、前田さんには「SNSで多くの人へアクションをもらうコツ」があるそうです。

「一般的には『フォロワーを増やしたいならたくさん投稿するべき』って言われていますけど、私はそうじゃないと思うんです。多くても1日3回までにする。すると、今日は何を書こうかなと考えるようになるから、1回1回の投稿内容が濃厚になる。ひとつひとつが意味のある内容になるので、ユーザーも興味を持つようになるんです」

―その後、ライターとして生活を始めた伊佐さんは、もうひとつの「世界中を旅したい」という夢を叶えるために、少しずつ準備を始めていったそうです。

「私にとって、『世界中を旅しながら、場所を問わずに働くこと』は理想的ではあるけれど不安もありました。だからワークスタイルは、徐々にスライドさせていった感じです。仕事では取材で出張へ行くのですが、ホテルで原稿を書いている時に『これは自宅でもできるし海外でもできる作業だな』と考えたり、海外でも日本と変わらずに仕事ができることに気づいたり。少しずつできることとできないことを経験で学んで、世界一周をしながらできる仕事やスタイルを模索していました」

―そして、準備が整った伊佐さんは世界一周へ旅立ち、実に2年間も家を持たずにさまざまな場所で仕事をしながら暮らしました。幼い頃からの夢だった「文章を書くこと」「世界中を旅すること」を叶えた伊佐さんからは、最後に、これからの展望について語られました。

「念願の夢を叶えた現在は、何をしようか、何を目指すのかを考えています。新しい旅に関するメディア運営もやりたいですし、2冊目の書籍も刊行したい。あとは、旅先でよくワンピースを着るので、『旅に出たくなるワンピースブランド』を作ろうと思っています。2018年も頑張りたいな」

2月にオープンした5人の旅人が暮らすシェアハウス「えいとびたー」とは

―トークイベントの後半からは古性のちさんが加わり、2月から運営している旅人シェアハウス「えいとびたー」を始めたきっかけについて語られました。

古性のちさん 美容師からIT業界へ転職し、その後独立。現在はWebライター、トラベルグラファー、バイヤーとして活躍中。「旅を仕事に」プロジェクト「旅、ときどき仕事」を運営している。現在も国内外を問わずに飛び回り、居場所にとらわれない働き方を実践中。

―えいとびたーの始まりは、「そろそろ拠点がほしいな」と伊佐さんが感じたことがきっかけだったそうです。

「家があればそこが自分の定点となるけれど、家がなければ自分自身が定点になるんです。それってすごく自由だしすごく楽しいことなのですが、2年ほど旅を続けているうちに少し疲れてきてしまって、そろそろ家に帰りたいなって思うようになったんです。でも、『そういえば私、そもそも帰る家がないじゃん!(笑)』って。そこで、定点としての家が欲しくなって、探すことにしました」

―そこからなぜシェアハウスを運営することになったのか。それは、伊佐さんがバンコクで古性さんと過ごした日までさかのぼります。

「以前、同じイベントにゲストで呼ばれたことがあったのですが、ちょうどその頃はそれぞれが世界中を旅していたんです。そこで、前日にバンコクで合流してAirbnb(宿泊先を検索できるサイト)で一緒の部屋に泊まって帰国しました。それがとにかく楽しくて楽しくて、『今度日本に長期滞在する時には、また一緒に泊まろうね』って約束したんです。その後、本当に2人で部屋を借りて10日間ほど一緒に住んだのですが、やっぱりとても楽しく過ごせました。そこで、のちちゃんと一緒に住むのっていいなと思って」

―その後、シェアハウスの構想を練るうち、2人ではなくもっと人数が居た方が楽しいのでは?と考えた古性さんと伊佐さん。最初に声をかけたのが、同じく旅を仕事にしている前田さんでした。

「2人から『ルイスくん、一緒に住まない?』という衝撃的なメールが来た後、呼び出されたのが物件の内覧会でした(笑)」と前田さん。

―そこで、伊佐さんとのちさん、前田さんの3人は物件を巡り、三軒茶屋に手頃な一軒家を見つけたそうです。しかし、物件が広かったため、「もう数人いたほうが、楽しいのでは……」と考え、結果「移動する同棲生活」を実践していた稲沼竣さんと前田麻衣さんの2人も一緒に住めることになり、総勢5人の旅人たちによる共同生活が始まりました。

―えいとびたーのコンセプトは、「旅人が集まる場所。そこから生まれる新しい家族のカタチ」。ただのシェアハウスではなく、旅にまつわるさまざまなことを企画しているのだとか。前田さんは「えいとびたーは、さまざまな実験ができる場所」だと言います。

「私が働く株式会社TABIPPOは、新しいことをやるのに反対はされませんが、やはり会社なので筋は通さないといけません。しかし、えいとびたーはプライベート空間。やってみたいなと思ったことをどんどん試していきたいと思います」

―今後は「旅をする人みんなに開かれた場所」としてイベントを開催したり、伊佐さんと古性さんが世界中から買い付けた雑貨販売をしたり、ゆくゆくは2号店を展開したりしたいと構想は山のようにあるそうです。

旅行を日常に落とし込み、「旅をしながら好きな仕事をして働く」という夢を叶えた伊佐さん。世界一周の一人旅をしていくなかで、同じ旅人であるルイスさんや古性さんというかけがえのない仲間たちと出会い、世界一周を終えた現在は彼らと新しい働き方を模索しています。 今後も「えいとびたー」の住人たちがどんな仕事を展開していくのか、旅人でなくても気になるところです。
また、伊佐さんはトーク中に何度か「私は決して特別な人間ではない」と言っていたのが印象的でした。伊佐さんのように「好き」へ対して忠実に情熱を注ぐことで、私たちが「絶対に無理」と思って諦めていることも、意外に叶えることができるのかもしれません。