実は無償じゃない「保育料無償化(幼児教育無償化)」、制度の内容を正しく知り賢く活用を

2019年10月からスタートする予定の「保育料無償化」。本当に無償になるのか、誰が対象になるのかなど、気になっている方も少なくないはず。そこで、保育料無償化の概要や無償化の条件、心配されるデメリットなどについてご紹介します。

ライター

佐々木康弘
札幌市出身、函館市在住。大手旅行情報誌やニュースサイト、就活サイトなど多数の媒体と契約するフリーランスライター。店舗・商品・人物の取材記事やニュース・芸能記事作成、広告ライティングや企業紹介など幅広いジャンルで年間100万字以上を執筆するほか、校閲も行う。「HELP YOU」ではプロフェッショナルライターとして活動。→執筆記事一覧

保育料無償化とは

ひと言で説明すると、幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳までのすべての子どもたちの利用料を無償化する国の制度です。0歳から2歳までの子どもも、条件付きで無償化されます。少子化対策の一環として子育て世代の負担を軽減し、少しでも子どもを育てやすい社会を実現するための政策として今年10月からスタートします。

この制度は、「保育料無償化」のほか、「幼稚園無償化」「保育無償化」など、様々な呼ばれ方をしていますが、政府は「幼児教育無償化」と呼称しています。この記事では、便宜的に保育料無償化と呼びます。

 

無償化の具体的な条件は

保育料無償化はそれほどややこしい制度ではありませんが、それでも状況に応じて幾つかの条件があります。

それを解説する前に、大前提として「保育料無償化といっても完全無料化ではない」ことを覚えておきましょう。なんだか変な感じがするかもしれませんが、完全無償になる場合と、決められた上限まで無償(それ以上は自己負担)になる場合2つのケースがあり、その両方を総称して「無償化」と呼びます。

3歳~5歳はすべての子どもが制度の対象

3歳から5歳の子どもは、世帯所得にかかわらず全員が保育料無償化制度の対象となります。

ただし、

  • 利用する施設
  • 保護者の状況

によって具体的な内容が異なります。

保護者が共働き、またはシングルで働く家庭など(※注1)

  • 認可保育所・認定こども園・障害児通園施設などの認可施設は完全無償
  • 幼稚園は月額2万5700円まで無償
  • 幼稚園の預かり保育(延長保育)は月額1万1300円まで無償 
  • 自治体の認証保育施設を含む認可外保育施設などは月額3万7000円まで無償 (※注2)

(※注1)正確には、「保育の必要性の認定事由に該当する子ども」を抱える家庭を指します。具体的には、(1)保護者が就労している(2)母親が第2子以降を妊娠・出産した(3)保護者の病気、同居の親族の介護が必要などその他の理由 のいずれかに該当する場合をいいます。これに基づいて「保育の必要性がある」と認められた場合に、上記の無償化が適用されます。

(※注2)認可外保育施設とベビーシッターなど、複数の施設やサービスを利用した場合も合計で月額3万7000円まで無償になります。

専業主婦(主夫)家庭 (※注3)

  • 認定こども園・障害児通園施設などの認可施設は完全無償
  • 幼稚園は月額2万5700円まで無償

(※注3)正確には、子どもが保育の必要性の認定事由に該当しない場合を指します。専業主婦(主夫)家庭では保育の必要性が認められないため、認可保育所・認可外保育施設のどちらも無償化の対象になりません。また、幼稚園の預かり保育も無償化の対象となりません。

0歳~2歳は住民税非課税世帯の子どもが対象

  • 認可保育所・認定こども園・障害児通園施設などの認可施設は完全無償
  • 自治体の認証保育施設を含む認可外保育施設などは月額4万2000円まで無償

 

対象にならない施設

保育料無償化の対象にならない施設もあります。

未就学児のインターナショナルスクールなどの「各種学校」

政府はこの制度の対象となる施設について「幼児教育の質が制度的に担保された施設」でなければならないと定めています。前述した幼稚園・認可保育園などはこれに該当しますが、各種学校には幼児教育に関する基準がなく、この条件を満たしていないため、無償化の対象とはなりません。

国の監督基準を満たさない認可外保育施設

無償化の対象となる認可外保育施設について国は「認可外保育施設の届出をし、指導監督の基準を満たすものに限る」と定めています。このため、保育の質が低く、指導監督基準を満たしていない認可外保育施設に子どもを預けても、無償化の対象にはなりません。

ただし、制度導入時の経過措置として、基準を満たしていない施設であっても自治体の判断で無償化の対象とする5年間の猶予期間が設けられます。この期間は国が定めたものですが、自治体によっては猶予期間をこれよりもっと短くする可能性もあるので注意が必要です。

 

無償化の対象にならない費用

保育料無償化が実現しても、自己負担しなければならない費用も存在します。おもに、現在保護者から実費として徴収している費用は無償化の対象に含まれません。

  • 入園料
  • 給食費
  • 送迎費(スクールバスなど)
  • 行事費
  • 教材費
  • 制服・体操着・バッグなどの学用品代

これらの費用は、無償化の対象になりません。

 

保育料無償化で懸念されるデメリット

一見すると特に悪い点はないように思える「保育料無償化」ですが、実際に制度が始まってみるとデメリットが顕在化してくる可能性もあります。想定されるデメリットは、おもに2つです。

待機児童の増加

「保育料が無償化されるなら、子どもを預けて働きたい」と考える人が増えるかもしれませんが、無償化で利用者が増えても保育園の数が増えるわけではありません。その結果、待機児童が現在よりも増加してしまい、気付いてみたら「働きたいのに預ける先がない」という現在の状況がさらに悪化していた――というシナリオもあり得ます。

保育の質の低下

これまで経済的な理由で幼稚園に通っていなかった子どもが通えるようになり、幼稚園の児童数が増えることで、職員の手が回らなくなったり子どもたちに目が行き届かなくなったりする事態が起こり得ます。

 

まとめ

保育料無償化は、子育てをする世帯にとってうれしい制度であることは間違いありません。3歳から5歳の子どもが複数いる世帯では、特に無償化の恩恵を受けられそうです。完全無料になるわけではなかったり、自己負担しなければならない費用があったりもしますが、それでも月々かなりの額の金銭的負担が減ることは間違いありません。制度を十分活用するために、自分がどの条件に該当するのか、自分の場合は幾らまで無償になるのか、今のうちにしっかりと確認しておくとよいでしょう。

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