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目次

新年最初の寄稿は、前回に続き複業ママ対談の第二弾をお伝えします。私自身、2018年は日々のタイムマネジメントに唸りながら走り続けた中で「他の複業(副業)ママたちは、日々をどんな風に過ごしているんだろうか?」と戦友の意見を聞いてみたい、と思ったところからスタートした本企画。


今回も私とは全く異なるスタイルで働くパワフルなママと出会うことが出来ました。読者の方には、複業(副業)と一言でいっても、ライフスタイルに合わせて様々な働き方、挑戦があることを知ってもらうきっかけとなったら嬉しいです。

会社で参加した地域インターンから複業(プロボノ)に

酒井可奈子さん | ハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部チームマネージャー。新卒でIT企業へ入社し、法人営業を担う。結婚・出産を経て育児の経験を元に、地域や生活環境を良くしたいと「食」を軸にした志へと変化。ハウス食品㈱の企業理念「食を通じて家庭の幸せに役立つ」に共感し、2010年入社。お客様生活研究センター、食品事業部を経て現職。地域創生の事業開発に取り組む。

今回の対談は、ハウス食品グループ本社株式会社の新規事業開発部でチームマネージャーとして働きながら、石川県七尾市の地域創生に取り組む株式会社御祓川のスタッフとして複業(プロボノ)で関わっている酒井可奈子さん(以下、酒井)にお話を伺いました。酒井さんは、小学校6年生の娘さんの子育てママでもあります。



―ハウス食品の仕事に加え、石川県七尾市の活動を始めたきっかけは、何だったのでしょうか?


酒井: きっかけは社内の人材育成開発の研修に参加したことです。2016年12月に
「社会課題解決を通したリーダー育成プログラム」で私を含め社員3人が七尾市に6週間程度移住し、民間のまちづくり会社(株式会社御祓川)で次世代ネットワーク作りや、地域資源を使った新商品開発・新規事業立ち上げの支援を行いました。

プログラムが終わる頃、七尾市へのサポートをまだまだ継続する必要があると感じ、株式会社御祓川の社長にその旨を伝えたところ快諾いただきました。ハウス食品では兼業・副業を認めていないのですが、プロボノとして活動したい旨を上司に伝えたところ、その2週間後に当時所属していた食品開発部から地域課題を解決する新規事業部への異動辞令が出て、まさに運命のような異動で。本業でも複業(プロボノ)でも七尾市と関わりが持てるようになりました。

会社の研修で石川県七尾市のインターンプログラムに参加した時の様子
2018年7月(写真提供:酒井さん)

―七尾市では、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?


酒井:現地では事業者向けの講座をやったり、市の職員や事業者の方から聞いたお話をフィードバックして、地域の経済振興に向けた提案をさせていただいたりしています。あるいは、具体的なモノ作り・パッケージ作りのアドバイスを求められたら、ハウス食品でやってきたことを参考にお話させて頂くこともあります。

他には東京でも、能登や七尾の取り組みを発信するイベントがあれば、東京版コーディネーターとして登壇しています。また、東京の大学生など地域に関わってみたいと言っている石川県外の人たちを七尾にお連れして、スタディツアーのようなものも企画しています。地元の事業者さんの課題をヒヤリングし、ビジネスプランを作る合宿のような形式です。

仕事・複業(プロボノ)・家庭のバランスが大変な時ほど生活基盤を整える

東京で石川県七尾市のプロボノ活動について登壇する機会も
(写真提供:酒井さん・ローカルベンチャー推進協議会にて)

―プロボノの活動も多岐に渡りますが、本業との両立をどうされていますか?


酒井:活動は全て土日や有給を使ってプロボノとしてやっていて、2、3ヶ月に一度は七尾市に足を運んでいます。あとは、フェイスブックのメッセンジャーグループで七尾市の役場の方や関係者15人以上と毎日情報交換をしているので、地域でいま何が起きているかはリアルタイムで把握できています。



―本業とプロボノ、家庭とのバランスで難しさを感じたことはありませんか?


酒井:もちろん、あります(笑)。これだと思ったら一気にガっとやりたくなる性格なので、生き方と働き方を合わせようと思っていても、どうしても働き方比重が高くなりがちなので、そういう時は生活基盤をしっかり整えるように意識的に心がけています。例えば2018年からは、家から出ない日を敢えて1日作って自宅を整えてみたり、40代半ばも超えてきたので、工夫するようになりました。


あとは、仕事でいっぱいいっぱいになった時はインプット量とアウトプット量をざっくり考えて見直すようにしています。私がいっぱいいっぱいだと感じる時は、大抵アウトプット量が減っている時なんです。世の中の皆さんに仕事を通して価値を提供するということは、アウトプット数を増やさなければならないと思うので、そういう時は、誰かと会う時間やセミナーに行ってインプットする回数をガッと減らして、要求されていることにアウトプットで応えていくようにしています。

働くこと=生きることが近しい環境で体幹を鍛える

大学生に向けた「能登の発酵食文化を通じて、時間をかける価値を体感してもらうスタディツアー」のコーディネートした時の写真 
2017年12月(写真提供:酒井さん)

―プロボノの醍醐味ってどんなところだと思いますか?


酒井:組織にいると当たり前なことってたくさんあると思うんです。例えば、部内の川上から降りてきた仕事を引き受けて、自分が出来なかったら先輩や同じチームでフォローしてくれる環境が当たり前にあるので、誰がどのような仕事をしたかという点は、結果においてはあまり関係ないですよね。

そうやってカバーしあえることが組織の良さだとは思うんですが、中にいる個人としては自分の能力が微妙に足りなくても、微妙にオーバースペックでも、本人が望めば同じ所に居続けることが出来るじゃないですか。


ところが地域事業の場合は、そうじゃないんです。至らぬ点があると、すぐに経済的ダメージに直結する。働くことと生きることが近しい場所に入り込んで体幹を鍛えさせてもらうことが、企業人である私にとっては自分の立ち位置を考える上でも、誰かとお仕事をする上でも、より丁寧な仕事ぶりになれると感じています。地域でのプロボノの活動と会社員の両輪が私にとって大事だと思っています。

2016年8月の留職プログラムで初めて石川県を訪れた酒井さん(左)。
今では「七尾市の活動はライフワーク。七尾愛が強すぎるって現地の方にも言われています(笑)」

―最後に、これから複業(プロボノ)を通して挑戦していきたいことを教えてください。


酒井:ハウス食品には出産後に中途採用で入社したので、勤続年数では絶対に先輩方を抜くことはできないけれども、ハウス食品で実行してきた商品開発の力を地域の方に還元していくことや、地域の生き方・働き方を取り込んで、ハウス食品の事業活動に価値を出していくことは、もはや私しか出来ないと思っています。入社してから初めて、オンリーワンになれるチャンスが来たと思いました。だからこそ、自分が得たものを今いる場所に還元しなきゃ、という想いがあります。


2025年には75歳以上の高齢者が3600万人以上になる中、独居老人の増加や、孤独死、病院のベッド数の不足、食事のケアが十分に出来ないなど様々な社会課題が予想されていますが、今のハウス食品の新規事業が必ず解決出来るはずだと思っています。だからこそ、しっかり事業化して、事業部のオーナーになりたいです。それがハウス食品の社員としてだけでなく、七尾の地域の中での活動と両立する人として、私が働いている意味だと思っています。

編集後記

会社の研修をきっかけに出会った石川県七尾市の活動が本業とも密接に関わり、循環していくことでプロボノと本業の垣根がなくなりつつあることが、とても印象的でした。子育てをしながら会社員をしながら、複業(プロボノ)までしている女性たちの共通点は、自分が好きなこと、人生をかけてやりたいことを仕事に還元しながら挑戦していることなんだと、酒井さんから教えてもらいました。もちろん私自身も、その1人です。今年も、時に迷い悩みながら複業を私らしく挑戦していく過程を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。


井上千絵 プロフィール(PRコンサルタント)
大学卒業後、テレビ局に入社。報道記者を9年間、宣伝・広報を2年担当し、出産を機に退職。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)で2年間学ぶ。在学中にPRプランナーとして独立し、現在はPR会社「ベンチャー広報」の社員としての顔ももち、「複業フリーランス」というスタイルで活躍している。


井上千絵さんのtwitter @sakai_chie

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