学歴や夫の年収で格差?子育て中女性の働き方や収入の傾向
子育て世帯の実態調査から見えた働く母親像とは?
労働政策研究・研修機構が、第4回「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」を行いました。これは、さまざまな子育て中世帯の働き方や生活の仕方について実態調査を行い、今後の支援策などを考えるために行われたものです。その調査結果から、現代の働くお母さんの姿を探ってみます。
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ライター
夫が高収入でも働く妻が増えている
調査対象となった夫の収入を4段階に分類した場合、妻が無職である率は、夫の収入が低い順に、24.6%、24.2%、35.7%と 31.1%となっています。上位 25%の収入層の夫を持つ女性が無職である率は、前回調査時より8ポイント下がり、調査開始以降はじめて順位が1位ではなくなりました。従来は高収入男性の妻ほど働いていない率が高いといわれてきましたが、高学歴・高収入同士の男女が結婚する率が高まってきたことが原因で、この経験則が弱まってきていると考えられます。
子どもが6歳未満では、お母さんが働いていない率が6割弱
全体では、働いていないお母さんの割合は28.2%。つまり7割は仕事をしているということになりますが、末子の年齢が6歳未満のお母さんの働いていない率は 42.2%と、未就学児を抱えながら仕事することがまだ難しい状況が伺えます。学歴別に見ると、短大以上の高学歴であるお母さんの方が正社員である率が 28.8%と、高卒以下のお母さんに比べて 11 ポイント高いという結果です。
300万円以上の高収入層も増えているが、パートや派遣社員のお母さんは8割が103万円や130万円以内
年間就業収入が 300 万円を超えている高収入層のお母さんは、全体の2割未満(18.9%) にとどまりますが、調査開始以降でもっとも高い割合となっています。パートや派遣など、非正規雇用として働くお母さんの約7割(68.2%) は、配偶者控除の収入限度額である 103 万円以内で働いています。社会保険料負担が免除される「第3号被保険者」の収入限度額である 130 万円以内で働く者と合わせると、非正規雇用の約8割は、いずれかの限度額内に収まる収入額で働いていることがわかります。
正社員として継続的に働くワーキングマザーの年収が高い傾向
ワーキングマザーのキャリアを出産後も同じ場所で働き続ける「継続型」と一度仕事を辞め、出産後また新たに働き始める「中断型」という 2つのカテゴリーに分けて調査すると、「継続型」就業者の割合は 41.8%、前回調査時より2ポイント下落しています。「継続型」で働くお母さんは、正社員である比率が高く、また大企業に勤務する人が多く平均年収が高いのが特徴です。 「継続型」の正社員のお母さんの平均年収は 396.7 万円となっており、「中断型」正社員の平均年収の 1.5 倍にあたります。出産後の働き方の違いによって、収入格差が拡大されていることがわかります。
正社員かどうかで育休経験に差
子育て中の女性全体では、これまでに育児休業制度を利用したことがある人の割合 (育休経験率)は 25.3%。2010 年以降に第1子を出産した女性の「育休経験率」は 37.4%であることから、直近の時期に出産した女性ほど育休経験率が高く、年々利用者が増加している傾向がうかがえます。ただし、育休経験率は、現在の雇用形態によって大きく異なります。正社員の育休経験率(64.6%) と非正規雇用の育休経験率(14.9%)との間に、大きな開きがあることがわかります。
時短勤務経験者も年々増える傾向
ワーキングマザー全体では、これまでに短時間勤務制度を利用したことがある人の割合 (時短経験率)は、10.8%。正社員女性の「時短」利用が特に進んでいます。時短経験率は、第1子を出産した時期が「1999 年以前」では 6.6%、「2010 年以降」 では 17.9%で、直近の時期に出産したワーキングマザーほど、時短経験率が高くなることがわかります。
お父さんの家事参加も増加傾向
炊事、洗濯と掃除といった家事の時間がゼロであるお父さんの割合は、32.2%。家事を全く行っていないお父さんは引き続き減少しています。家事を全く行っていないお父さんの割合は、 妻が「働いていない」の世帯でもっとも多く、妻が正社員の世帯でもっとも少なくなっています。夫婦が行っている家事・育児の総量を 10 割として、お父さんがその5割以上を分担していると回答した世帯の割合は、前回調査時の 8.2%から 9.7%までに上昇しています。ゆるやかではありますが、お父さんが少しずつ家事に参加している様子がわかります。
調査結果から見えてきたこと
ワーキングマザーの働き方は、正社員として働き、育休や時短制度を利用しながら出産後復職するケースと、出産後にパートなどの非正規雇用で、配偶者控除の収入限度額内で働くケース、大きく2種類のパターンに分かれているように感じました。働くお母さん達は、家庭の事情や、自分または家族のライフスタイルによって、働き方を考え、選択しているようです。今後、「同一労働同一賃金」に向けての制度改善が進み、働く期間にブランクがあっても適正な収入が得られるようになると、さらに女性の働く意欲が増すかもしれません。
育児休暇や時短制度の利用も年々増えている傾向にはありますが、非正規雇用では利用しづらいという問題も見受けられます。労働人口が減る今後の社会で、ワーキングマザーが働きやすい環境がさらに整備され、いきいきと働くお母さんが増えることを望みます。
(出典:労働政策研究・研修機構 第4回「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」)
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