フルリモートOKな企業があえてオフィスを構える理由とは?【イベントレポート】

5月23日、オンラインアシスタントサービス「HELP YOU」を運営する株式会社ニットで「組織づくりとオフィスづくりを考える」トークイベントが開催されました。会場となったニットのオフィスは、4月に移転したばかり。白を基調に、ニットのテーマカラーである青と黄色がアクセントに使われたオシャレ感のあるスペースです。参加者は床に敷かれたマットやクッションの上に思い思いに座り、リラックスしながらトークを聞いていました。

モデレーター

やつづか えり(働き方専門ライター/フリーランス/1児の母)

コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018.3)。Yahoo!ニュース(個人)オーサー。各種ウェブメディアで働き方、組織、ICT、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)がある。

登壇者

株式会社ニット 代表取締役 秋沢 崇夫

大学卒業後にネットベンチャーにて営業、事業開発に携わり、24歳で事業部長に就任。32歳で退職し、東南アジア~アメリカと海外を放浪し、ライフスタイルにおけるビジネスを考え、「HELP YOU」を立ち上げる。( 関連記事:オフィスはチーム熱量を高める空間であり、会社の個性を創る場所

登壇者

株式会社ヒトカラメディア 松原大蔵

TVCM美術制作兼大道具、商空間演出、を経て、2019年1月より現職にてオフィスを軸に空間デザイン、企画。テレビなどの広告美術制作を経て、デザインファームにてミュージアム、ショールームを中心に、空間演出・デザインを手がける。空間デザインにおいてはインテリアデザインから映像、インフォグラフィックなどデジタル・アナログ使ったコミュニケーションを前提とした体験型の演出を得意とする。

 

ライター

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

フルリモートワークが当たり前!自由と信頼があるニットの特徴

最初に登場したのは、ニット代表の秋沢崇夫さんとスペシャルゲストのやつづかえりさん。やつづかさんは、働き方専門ライターとして各種Webメディアで働き方や組織のあり方などをテーマに執筆。「くらしと仕事」の初代編集長でもあります。

 

トークは、ニットならではの特徴的なワークスタイルの説明から始まりました。社員もオンラインアシスタントも、フルリモートワークが当たり前というニット。参加者からは「ニットで働くメンバーの規模感は?」「勤怠管理はどうしているんですか?」と具体的な質問が飛び出し、興味津々の様子でした。

 

ニットの働き方の大きな特徴に挙げられるのは、

  • リモートワークが前提
  • 完全フレックスタイム制

ということ。

 

ニットでは海外・地方在住のメンバーが多く、社内ではそれが自然に受け入れられています。オンラインで繋がっていれば、どこにいようと仕事はできるからです。

 

また、場所を選ばないことは完全フレックスタイム制へと結びついていきます。海外に滞在していれば時差が生じるので、無理をして日本時間に合わせなくても仕事ができるよう、それぞれのスタッフが工夫をしています(社内で、「○○さんは□□にいるから、時差は-7時間だよね」と時差に詳しくなったという話も)。そして時差がデメリットかというと、実はメリットになっている場合もあるのだとか。スタッフのいる国では昼間・日本は夜という時差が、「昼間は営業で外出しているから、ミーティングは夜にやりたい」というクライアントからは歓迎されているケースもあるのです。

 

 

勤怠管理に関しては、タイムカード制と評価査定を組み合わせて、熟練したスキルを持つがゆえに業務を早く完了できる人が不利にならない仕組みになっています。この仕組みも「HELP YOU」で働く一人ひとりの仕事ぶりを見つめる中から、生まれてきたもののようです。

 

そして、採用に関しても応募・面談のほとんどがオンラインで行われているそう。齟齬や孤立感が生まれないように、困ったことが起こった時には先輩社員がフォローに回ったり、1日15分程度の雑談ができる「オンライン雑談部屋」を設置したりという配慮をしているそう。オフラインでも、社員全員での合宿やオンラインアシスタント・クライアントも参加してのミートアップイベントなど、交流の機会が設けられています。

 

場所にしばられない会社が、なぜオフィスを作ろうと思ったのか?

後半では、今回の新オフィスの内装プロデュースをした株式会社ヒトカラメディア・松原大蔵さんも登場しました。

 

時間にも場所にもしばられない働き方を実現している会社なのに、どうして自社オフィスを作ろうと思ったのでしょうか。

「みんながリモートワークをしているなら、オフィスなんて必要ないのでは……?」そんな疑問がわいてきます。

 

「それまではシェアオフィスを契約して、ニットの事務所に利用していました」と秋沢さん。そうすると、社外のいろんな人が出入りをしていて、ニットのメンバーが同じ場所にいてもフリーアドレスのためあちこちに点々と散らばって仕事をしている状態。「オフィスが区切られた環境の中にいた方が、メンバー間で熱量のあるコミュニケーションができるのでは?」と思ったことが、自社オフィス開設の最大の理由だったそう。「昨年秋ぐらいから、人員計画を立てて積極的に社員を増やしてきました。そうすると、ウェットなコミュニケーションが減ってきたな……と。チームビルディングの上で、社のミッション、ビジョンを共有することは大事。空間の中で表現して目に見えるようにしないと難しいし、言い続けていかないと浸透しないですよね。普段の会話の中で、なかなかそういう話はしない」

 

組織の規模が拡大するタイミングで、対面でのコミュニケーションやミッション・ビジョンを共有する重要性を実感したことが、背景にあったようです。

 

人と人とのつながりを生み出すために。こだわった新オフィスのポイント

内装プロデュースは2社でコンペを行い、ヒトカラメディアに決定したそう。秋沢さんいわく、「ニットが叶えたい要望を細かいところまで提案に盛り込んでくれていました。導線が分かりやすいとか、コンセプトを理解してくれているな、と思ったんです」。

 

自社オフィスを新設するにあたっての「オフィスに求める条件」とは、どんなものだったのでしょうか?

 

「ニット・編む・つながり・あなたがいてよかった……(ニット社員の)唐さんが書いてくれたメモから、試行錯誤してイメージをすり合わせていきました」と松原さん。「イメージ的には、つながりや優しさがニットさんらしいのでは、と思いました。最初に3案提案して、どういう考え方を目指していくか検討していきました。」

 

メンバーから『コミュニティーをつくりたい』という意見が挙がったんです。『HELP YOU』はクライアントとオンラインアシスタント、人と人をつなぐサービスを提供しています。そのコンセプトを体現できる場として、イベントやみんなで集まって何かできるスペースが作れたらいいなと思いました」と、唐さん。

 

ヒートマップ的に間取りを見ていくと、真ん中に集中スペース、奥はちょっと休憩したりクローズ環境で邪魔されることなく作業できるスペース、会議スペース、エントランスは集中力が切れた時やスタッフが遊びに来た時のためのスペースになっています。

 

秋沢さんからは、「映える場所が欲しい」というリクエストがあったそうです。取材対応や自社での広報の際に、やはりビジュアルは重要。会社の顔になるような写真が撮れる場所を、という視点があったようです。

 

自社オフィスを構えてみて、メリットが多く「作って良かった」というのがニットメンバーの感想。フルリモートの働き方だからこそ「会う時間が大事な時間」であり、これまでは例えばイベントを開催するにもどこか会場を予約しなくてはいけませんでした。自社オフィスができたことで、開催・準備も手軽になり、自分の仕事にすぐ戻ることもできます。

 

また、クライアントとの商談や採用応募者の来社、オンラインアシスタントが遊びに来る時など、「自社オフィスがあって良かった」と思う場面は多々あるようです

 

毎日職場としてしばられる場所ではなく、人が集まり迎え入れるコミュニケーションの拠点。新しい働き方が芽生えてきたことで、従来とはオフィスの存在意義や役割も大きく変化してきたのではないでしょうか。

まとめ

フルリモートワークに、完全フレックスタイム制と「新しい働き方」を自然体で実行している株式会社ニット。自社オフィスを構えることは、場所や時間にしばられない働き方に矛盾するものではなく、むしろオフサイトでのコミュニケーションの拠点となることが分かりました。face to faceで過ごした時間がまたオンライン上での仕事をなめらかにするのであれば、それはすばらしい取り組みのひとつではないかと思いました。