【weekly 働き方改革ニュース】10億円損しても得がある?スシロー全店一斉休業のワケ

1週間のうちに起こった出来事やニュースの中から、仕事や働き方に関する話題をピックアップして紹介する「weekly 働き方改革ニュース」。回転寿司のスシローが国内全534店舗を2日間一斉休業すると発表したことが話題を呼んでいます。外食産業として異例の決断に踏み切った理由はどこにあるのでしょうか。

ライター

佐々木康弘
札幌市出身、函館市在住。大手旅行情報誌やニュースサイト、就活サイトなど多数の媒体と契約するフリーランスライター。店舗・商品・人物の取材記事やニュース・芸能記事作成、広告ライティングや企業紹介など幅広いジャンルで年間100万字以上を執筆するほか、校閲も行う。「HELP YOU」ではプロフェッショナルライターとして活動。

スシローが一斉休業で10億円損しても良いわけとは

回転すしチェーン「スシロー」を展開するあきんどスシローは1月9日、2月4日と5日の2日間、国内全534店舗を一斉に休業すると発表しました。

スシローの一斉休業は2019年2月に続いて2度目。前回はショッピングモールなどに出店している店は対象外としましたが、今年は「スシローコノミ」3店舗を除く全店舗を休業とします。一斉休業の理由について同社は「従業員の声をもとに、より働きやすい環境づくりの一環として」実施すると説明しています。

年中無休が当たり前の大手外食チェーンにとって、全店舗一斉に2日間も休業するという決断は異例中の異例。東洋経済オンラインが昨年2月に掲載した記事によれば、これによってスシローが被る機会損失は10億円と推測されるそうです。

そのためこの記事は一斉休業を「スシローだからできた」と解説しています。というのも、スシローは回転寿司業界売り上げ第1位の座を9年連続キープするほど絶好調。これは裏を返せば、それだけ従業員は忙しく、人手も不足しがちであることを意味します。従業員が疲弊し、「あの職場はブラックだ」とのうわさが定着してしまえば、新たな人材を採用するのが難しくなるとともに今いる人材も流出していきます。そこでスシローは、10億円の機会損失をしてでも従業員満足度の向上を図っているというわけです。

あえて10億円の機会損失を良しとする判断は並みの企業にはできないかもしれませんが、業界トップが率先して「働きやすい環境づくり」に取り組む様子は、他社も無視はできないはず。スシローのホワイトさばかりが目立てば、他者から人材がどんどんスシローに流出していく事態になりかねないからです。外食産業の一斉休業が今後広がりを見せるのかどうかが注目されます。

 

残業代が減った分は社員に還元するのが筋?

働き方改革で残業時間の上限規制が導入されたことにともない、「残業代が減って収入が減った」という話をよく耳にするようになりました。ほとんどの人は「残業が減ったのだから残業代が減るのは仕方がない」と受け止めていたのではないでしょうか。

ところが昨年12月31日付の日本経済新聞は、「働き方改革で減った残業代『社員に還元せず』5割」と題する記事を掲載。残業を減らして生産性を高めたはずなのに、その努力を社員に還元していない企業が5割にも上る現状を指摘しました。

とはいえ、では残りの5割は減った残業代を社員に還元しているのでしょうか。「そんな話は聞いたことがない」「そもそもそんな発想はなかった」というほうが実感に近いように思えます。

このギャップを読み解く記事が1月12日にEconomic Newsで公開されました。記事では産業医サービス「パラゴン」が発表したレポートをもとに、日本経済新聞の記事の元となったデータを解説。実際に従業員に還元を行った企業の割合は4.8%に過ぎず、統計解釈としてはゼロに等しいことを説明しています。

考えてみれば、社員が懸命に生産性向上に取り組んで残業を減らし、結果的に会社は今までと同じだけ儲かっているのに、社員は残業時間が減ったから収入も自動的に減るというのは理不尽といえば理不尽。減った残業代が社員にきちんと還元される日は来るのでしょうか。