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「サスティナブルに生きる!」をキーワードに、人生100年時代に向けた多様な働き方と家族のカタチを発信している「共働き未来大学」。代表で働き方コンサルタントの小山 佐知子さんによる声かけのもと、ビジョンに共感したプロボノやサポーターが集まり2017年秋に立ち上がったプロジェクトです。

30歳でぶつかった「妊活の壁」が、仕事と家庭の両立における最初のターニングポイント

共働き未来大学代表 小山 佐知子さん

20代後半に広告会社で管理職につくも、ハードワークと不妊治療で心身のバランスを崩し、分断しないキャリア形成や女性の働き方といったテーマに興味を持ちフリーランスに。4年間の妊活期を経て出産し、“チーム育児”で「仕事も家庭も諦めない」ライフスタイルを実践中。仕事では企業や大学、自治体等でワークライフバランスや女性活躍等の研修・講演・コンサルティングを行っている。

-小山さんは、妊活がきっかけで勤務していた会社を退職、フリーランスになられたんですか? それはいつ頃でしたか?


小山 佐知子さん(以下、小山):30歳の時です。新卒で入った会社だったので、会社の外で自分を試したい!という想いもあり、それが妊活のタイミングと見事に重なった感じです。



-すぐフリーライターとしてご活躍されたようですが、妊活との両立はどうでしたか?


小山:仕事と妊活を両立させていくのは、想像以上に大変でした。会社員の時からゆるやかに通院はしていましたが、治療が本格的になってからは思うように働けないことも多く強烈な焦りと不安を感じました。スケジュール管理が難しく受けたい仕事が受けられなかったり、フリーランスの厳しい側面も実感しましたね。ただ、両立については個人差が大きいです。不妊原因やクリニックによって治療内容や頻度も違いますし、働き方やバックアップ体制などにも左右されますから。



-本格的に妊活しようと思われた時は、ご夫婦で意思を共有して「一緒に頑張ろう」という感じだったんですか?


小山:妊娠するまで4年近くかかったのですが、その間、夫婦の絆を試されることが何度もありました。治療を始めた2010年当時は今ほど情報もなく、治療そのものが「夫婦で」というより「まず女性が…」みたいな雰囲気でしたが、治療の難易度が上がるにつれて協力体制が問われました。腹を括ってからは、お互いの心身のケアや経済面など、本当に力を合わせてという感じでしたね。



-ご自身が妊活する中で立ち上げられた、働く女性のためのコミュニティ「妊きゃりプロジェクト」とは、どういうものだったのですか?


小山:私自身の仕事と治療の両立についてブログで発信しながら、いつか産みたい働く女性向けのイベントを立ち上げ活動していました。“不妊離職” はキャリア志向の女性にとって大きな危機ですが、ワーキングマザーの両立問題に比べると社会的関心も薄く、当事者だけが苦しんでいる状況があり、それが嫌だったんです。また、不妊治療をしている人はたくさんいるはずなのにネット上では匿名のブログがほとんどで当事者がキャリアも含めて話し合える場がないと感じていました。「ないなら私が作ろう」ということで立ち上げたのが「妊きゃりプロジェクト」でした。


ちなみに「妊きゃり」という名前は、「妊娠もキャリアも(両方諦めない!)」という強い想いを表現したくてつけました(夫が名付け親なのですが笑)。直接的なテーマは妊活ではありましたが、妊活する上で切っても切れない夫婦のパートナーシップであったり、自分自身の仕事の仕方だったりというところを広く共有できるコミュニティーとして運営していました。それが今の「共働き未来大学」のベースにもなっています。

母になってさらにモヤモヤした「仕事か家庭か」という社会の固定観念

-ご出産された後すぐに独立されたのですか?


小山:いえ、会社員として短期的に働き、その後2016 年にライフキャリア・シナジーLabを立ち上げました。



-独立された頃はお子さんもまだ1歳ぐらいで手がかかる時期ですよね、大変だったのでは?


小山:うーん……。これ、よく言われるんですがいつも回答に困ってるんです。皆さんきっと何げなく「大変ですよね(それなのにすごい!というニュアンスで)」と仰っていると思うのですが、それって社会的に「小さな子どもがいて働くのは大変なこと」という思い込みがあるせいなのかな? 私に関しては特別大変とは感じませんでしたね(笑)


こう豪語しちゃうとなんだか “スーパーウーマン” みたいに聞こえちゃうかもしれませんが、決してそうではなく。我が家では家事労働も外の仕事も、育児も、すべて夫と協力しながら行っているだけですから。家庭の中を「チーム化」すれば仕事も家庭もうまくいく!と心から思っています。働く大変さという意味では、私はむしろ専業主婦のほうがよっぽど大変だと思います。家事労働だって立派な「仕事」ですからね。



-とはいえ、起業はそれなりにパワーもかかりますよね。なにかきっかけがあったのですか?


小山:「ワークもライフも諦めない社会づくりに貢献したい!」という想いですね。母になり今まで以上に両立について考えるようになったとき、 “ワーク・ライフシナジー” という考え方に腹落ちしたんです。ワークとライフって二項対立の関係じゃなく「共鳴(シナジー)させながら良くしていく」ものじゃないのかな、って。


妊活中に統計心理カウンセラーの資格を取って主に働く女性のキャリアの相談に乗ったりもしていたのですが、彼女たちを見ているとみんな無理やり「仕事か家庭か」どちらかを選ぼうとしている(選ばざるを得ないと思い込んでいる)んです。私も妊活で仕事を続ける大変さを痛感したので分かるのですが、今の社会はそうやってワークとライフどちらかを選ぶことが前提になっているんですよね。ワーク・ライフバランスという言葉も、実はワークとライフをシナジーで高めていこうという考え方なんですが、現実的にはまだまだ両者を天秤にかけて選択していることが多いですから。

「共働き未来大学」が生まれたきっかけと、共感し集まってくれたプロボノたち

-メディアでは、なぜ「共働き」にフォーカスしたのですか?


小山:理由は2つあります。
1つ目は、ダイバーシティの必要性をリアルに発信したかったこと。不妊治療の経験で、子どもがいないというだけで心ない言葉をかけられることもありましたが、DINKSだって立派な共働き家庭だと考えていました。これはまたLGBTなどにもいえることですが、いま、あらゆる面で多様性が叫ばれているのに、社会生活の中では当事者が言うほど認められない気がしていて。

「共働き」という言葉は一般的には「夫婦」を連想する言葉ですが、これからの共生社会では、例えば「企業と個人」なんかもある種の “共働き” なのかな?とか。個人と企業の関係も、主従関係ではなくパートナーシップ関係へと変化していますから。

サスティナブルな生き方が問われる時代だからこそ、あえてこの “共働き” という言葉をチョイスしました。立ち上げ前に300人にアンケートを取ってみると共働きという言葉にはみなさんあまりいい印象を持っていないことが分かりまして。これからの時代は共働きがスタンダードになるので、ダイバーシティと絡めてイメージアップにつなげたかったんです。


2つ目の理由は、「ライフシフト」という本との出会いです。私が経験的に仮説立てしていたことがこの本では学術的な観点で具体的に書かれていて、最初に読了したときは鳥肌モノでした。人生100年時代が到来し、過去の学ぶ時期・働く時期・引退後という3つのモデルが成り立たなくなると今までの人生の成功パターンやルールが通用しなくなる。100歳まで生きるにあたって、人脈や経験、スキルなどの無形資産が重要になってくるから、私たちはそれを常にストックするべく努力しなくてはならないんですよね。

個人の働き方や生き方が変わるということは、そのベースにある「家族」ももっと変化・多様化するということ。「家族を含めた個人と企業」を考えるプラットフォームを作りたいと思い立ち上げたのがこのプロジェクトです。



-メディアはどういう運営体制になってるんですか?


小山:まだまだメディアとしての基盤は整えきれていないのですが、私が編集長で、他にコラムや記事を書いてくれる人、イベントのサポートをしてくれる人、というように「プロボノ」を中心に構成されています。



-女性に限らず、メンバーには男性の方もいらっしゃいますよね?


小山:はい。立ち上げ当初から、ママや女性だけのコミュニティにはしたくないと考えていました。マだけでもパパだけでもなく、自分の生き方、働き方を考えるすべての人に有効な場にしたいですから。



-プロボノで参加してくれてる方たちは、皆さん「共働き」なんですか?


小山:あくまで「共働き」というのはビジョンを指し示すキーワードで、発信者の属性ではありません。何か面白そうなことをしているから関わりたい、ビジョンに共感できるという人が集まっています。近々参画してくれる方の中には学生もいます。属性や価値観を縛ることなく、いろいろな人が集まって盛り上げてくれたら嬉しいな、と。


「共働き未来大学」の中に、サスティナピープルという特集がああります。100家族100通りのカタチを発信していくコンテンツで共働き未来大学の目玉でもあります。働く女性のロールモデルはかなり表に出てきていますが、「家族」についてはまだまだ多様性が見えてこない。日本社会は、働き方だけでなく、家族のあり方についても「こうあるべき」という固定観念がまだ根強くあると思うので、私たちの世代から “家族2.0” を発信したいなと思います。

「共働き未来大学」が目指すこれからの「くらしと仕事」

-メディアの特集には、家づくりにクローズアップした「子育てと在宅ワークが楽しい家を作ろう」というコラムもありますよね。これは「共働き」とどう関わってくるのですか?


小山:個人的に中古マンションを購入してリノベーションしたことがきっかけだったのですが、これは同じ共働き世代の方たちに響くテーマじゃないかなと思い特集化しちゃいました(笑)。


我が家では家づくりを通して、夫婦はもちろん子どもも一緒になって家族のありたい姿を考えることができました。夫婦そろって仕事にも良い影響がありましたし、育児もより楽しめるようになりました。特に働き方の面では「在宅ワーク」を戦略的に取り入れ成果につながったので「事例」として個人の読者はもちろん、企業へ提案に活かせるかも、と思いまして。実際に私の仕事では、在宅ワークについてや、介護や育児などで制約を抱えながら働く人の支援方法について企業から意見を問われることも増えました。



-今後「共働き未来大学」を通して、こういう方向に進みたいという目標はありますか?


小山:企業と協働していきたいですね。例えば採用であったり、マーケティングであったり、「共働き未来大学」というハコを使って面白いことをどんどん仕掛けていきたいと思っています!

取材後記

女性や子育てにフォーカスしたメディアはありますが、「共働き」をキーワードに掲げたところが斬新だな、とお話を伺いながら感じました。
「共働き未来大学」が提案しているのは、お題目ではない働き方改革と、一人ひとりが自由に人生をデザインできる多様性。今後どんな風に広がっていくのか、楽しみです。

共働き未来大学の記事一覧