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スローガンは「Smart & Fun! 〜ITを駆使してスマートに楽しく働こう〜」

ソフトバンク株式会社の流通事業を担うコマース&サービス部門が分社化し、2014年に設立されたソフトバンク コマース&サービス株式会社(以下、ソフトバンクC&S)は、設立当初から自社の「ワークスタイル変革」に取り組んできました。2017年には「Smart & Fun!〜ITを駆使してスマートに楽しく働こう〜」というスローガンを掲げ、より一層、社員がいきいきと働ける職場環境づくりを推進しています。

そこで今回は、当社のコーポレート管理統括室 室長である市川隆博さんに、「ワークスタイル変革」の狙いと取り組みの内容についてうかがいました。

市川隆博さんプロフィール

立教大学法学部卒業後、Sierでアジアの通信関連システムの設計・開発を担当。
1993年にソフトバンク株式会社へ入社。株主総会運営などを総務で担当後、人事として新卒・キャリア採用、給与・社保業務、純粋持ち株会社への移行(分社)、新規事業の立上げ支援、事業会社の総務人事責任者、組織人事、出資に関わる人事デューデリ、SBグループ通信4社統合などを経験。
2016年4月より、ソフトバンク コマース&サービス株式会社で人事、総務及び広報を統括。現在は勝ち続ける組織と魅力ある会社の実現に向け、日々奮闘中。

自社の強みであるITを活用した「ワークスタイル変革」

—「Smart & Fun!〜ITを駆使してスマートに楽しく働こう〜」というスローガンを掲げていますね。


市川隆博さん(以下、市川):IT企業である当社らしく、もっとITやICTを活用して業務を効率化し、生産性を向上させていこうという考えから、このスローガンにしました。それだけでなく、我々が社内で実践した結果をクライアントや世の中に還元していけば、このような働き方が日本全体に広まっていくのではないかという期待と願いも込めています。このスローガンは、ソフトバンクグループの経営理念である「情報革命で人々を幸せに」とも共通しています。



-ではITを活用して、どのように業務の効率化をはかっているのでしょうか。


市川:DaaS(Desktop as a Service)環境やマルチデバイス環境を整備してITインフラを整備するとともに、定型業務を見直して業務フロー改革も行いました。これにより、社員がいつでもどこでも働けるようになり、営業の訪問件数が倍以上に増加しただけでなく、日報作成のために会社に戻る必要がなくなったことから、残業時間が減りました。

また、単純作業をアウトソーシング(BPO; Business Process Outsourcing)し、社員がコア業務に集中できるようにしたのですが、そのために業務を可視化したり業務分担を見直したりしたことが、業務効率化につながりました。



-働きやすい職場環境づくりのために行っている取り組みについて教えてください。


市川:「在宅勤務制度」「フレックスタイム制」「NO残業Day」「プレミアムフライデー」を実施しています。

中でも最初に導入したのは在宅勤務制度で、2015年7月から実施しています。その背景には、社員約1,600人のうち半数である約800人が女性であるということがあります。産休・育休を経て職場復帰する人が多いため、育児と仕事を両立しやすい環境を早急に整備する必要がありました。

たとえば、育児中の女性社員10人が1日2時間、勤務時間を短縮すると全体の稼働率が2割落ち、新たに2人採用しなくてはなりません。ですが、育児中の女性たちもやがてフルタイム勤務に戻りますから、増員するのはよい策ではありません。また、短時間勤務で6時間働くために往復2〜4時間かけて通勤している社員にとっては、非効率的ですよね。社員からも、負担感が大きいので自宅で仕事をさせてほしいという要望がありました。これらの課題を解決するために、在宅勤務制度を導入しました。

「フレックスタイム制」については、出退社の時間を自分の業務の状況によって決められる、コアタイムのない「スーパーフレックスタイム制」を導入しているのが当社の特徴です。「NO残業Day」は毎週水曜日に設けており、「プレミアムフライデー」については、政府が推奨する月末の金曜日に15時に退社できなければ他の週の金曜日に、それが難しければ何曜日でもいいから月に1回は15時に帰ろうよと、おおらかに実施しています。



—かなり自由度が高いですね。


市川:そうですね。これらの制度を導入することで、総労働時間のコントロールがしやすくなります。

「在宅勤務制度」や「スーパーフレックスタイム制」は、とてもよい制度だと思っています。たとえば、午後に子どもを病院に連れていかなくてはならないとき、以前は半休を使うしかありませんでした。
でも現在は、午前中は会社で働き、午後は半休を使わずに病院に連れていくことができます。しかも、「在宅勤務制度」と「スーパーフレックスタイム制」を組み合わせると、出社することも休みを申請することもなく、子どもを病院に連れていくことができますから。もちろん、これらの制度は男女ともに利用できます。



—それらの取り組みは、労働時間短縮につながっているのでしょうか。


市川:2016年度と2017年度とで比較すると、残業の時間が14.5%減っています。2018年度は、2017年度の2割減を目標にしています。また、「プレミアムフライデー」と「NO残業Day」については、7割ほどの社員が利用しています。



—「仕事における喜びと楽しみを享受できる職場づくり」を目指しているということですが、そのために実施していることはありますか。


市川:様々な切り口でいくつかの取り組みを行っていますが、特に挙げるとしたら、約10年前から行っている「ESサーベイ(従業員満足度調査)」があります。毎年8月に全社員対象に行い、その結果からそれぞれの部門にどんな問題があるのかを分析し、部門ごとにアクションを考えて実行してもらいます。過去の調査結果が数値化され、そこにフリーコメントが紐づけされているので、どの部門にどのような変化が見られるかなども分かります。

それだけでなく、管理職を部下や上司同僚が評価する「管理職サーベイ」も約10年前から実施しています。部下や同僚からの評価が悪いときは、改善点を自分で考えてもらい、上司の監修のもとで1年間実行してもらいます。よい人間関係の中で働くことは最も大切なことですし、特に上司との関係ではパワーハラスメントなどの問題も関わってくるので、「管理職サーベイ」は重要だと考えています。



—早い段階からこれらの調査を行うようになったのは、どのような理由からでしょうか。


市川:ソフトバンクは急成長してきた会社なので、新卒採用だけでは人手が足りず、中途採用も積極的に行ってきました。中途採用の社員は受けてきた教育やトレーニングなどがバラバラであるため、スキルなどを揃えていく必要があります。それは管理職についても同様で、元所属していた企業が様々であるため、マインドや価値観などを揃えていく必要があります。こうした状況を、「ESサーベイ」や「管理職サーベイ」を通じて、改善していこうという考えがあります。

業務効率化で空いた時間を「副業」に使い、人生を豊かに

—副業を認めるようになったきっかけや、経緯について教えてください。


市川:もともと禁止はしていませんでしたが、2017年10月に、ワークスタイル変革のスローガン「Smart & Fun!〜ITを駆使してスマートに楽しく働こう〜」に合わせた形で副業を打ち出しました。社員に大々的に周知したところ、すぐに20人ほどから申請がありました。

このスローガンには、業務を効率化した結果、空いた時間でスキルアップをしたり、自分のスキルや経験を社外に提供したり、社外で獲得したものを社内に還元したりしていこうという意味もあります。

もう一方で、当社の定年は60歳ですが、人生100年時代と言われていますから、定年退職後も自律的・自発的に、楽しみながら続けられる仕事や活動を、今のうちに見つけてほしいという希望もあります。スキルや経験を若いうちに報酬という形に置き換えることができたら、後の備えになるのではないでしょうか。副業によって収入を得ることを認めていますし、その上限は設けてはいません。



—副業を認めるに当たり、情報漏えいなどを懸念する企業は多いと思いますが、御社ではその点についてはどのように考えているのでしょうか。


市川:もちろん、そういった心配はありましたが、世の中の大きな流れからすると副業は当たり前になっていくでしょうし、それなら他の企業の先頭を切って副業を推奨していくべきだと考えました。そのほうが、多様な働き方を認めている自由度の高い会社として社会からも認知され、採用面でも効果を得られると思います。



—副業に対する、社員の反応はいかがでしょうか。


市川:まだアンケートをとっていないので感覚的なことしか言えませんが、ポジティブな反応が多いですね。
趣味や特技を副業にしている人も多くいます。たとえば趣味で作曲をしている人がそれを副業にしたら、すぐに作曲を依頼されるようになり、収入も増えつつあるようです。副業の申請書を見ていると、「この人にはこんな趣味や特技があったんだ」など、社員の意外な側面が見えて興味深いです。

領域を広げながらチャレンジし続ける人材を

—御社の業務はスピードが求められ、知識や情報を常にアップデートしていく必要があると思います。そういった点において、社員の「学び」どのようにサポートしているのでしょうか。


市川:それについては、3つの階層レイヤーに分けて取り組んでいます。
まず最も現場に近いレイヤーでは、製品の知識を得たり、業務で使用するシステムの使い方を覚えたりするための研修があります。

その上のレイヤーでは、人材開発のプログラムを用意しています。これは特に力を入れているプログラムで、2017年から3年間かけて実施するプランを組んでおり、かなり予算を投じています。2020年に経営予算を達成するという目標を掲げているので、その達成に向けて、座学ではなく実践的な人材開発を行っています。ティーチング、プロジェクトマネジメント、ファシリテーション、コーチングなどが学べ、「そのスキルがあったら、どの会社に行ってもいい仕事ができる」というスキルを身につけられるプログラムになっています。

一番上のレイヤーでは、経営幹部を育成するための“社長塾”のようなプログラムを用意しており、これからスタートするところです。社長がこれまで経験してきた成功事例や失敗事例、経営ノウハウなどを、社長が直接伝授します。



—働き方に対する社員の意識を変えるために、行っていることはありますか。


市川:キックオフや全体朝礼など様々な場面で、社長が社員にメッセージを送る際に、チャレンジすることの大切さ、業務や組織の枠を越えて自発的・自律的に動き、領域を広げていくことこそが当社の生命線であるということを、発信し続けるようにしています。



-どのような人材を増やしていきたいですか。


市川:会社が成長し続けるためには個々が成長し続ける必要があり、一人ひとりの成長が会社の成長につながることは間違いありません。つまり、「人こそすべて」だと考えています。当社の販管費のうち、約7割が「人」に関わるコストです。

IT業界では製品のライフサイクルが早く、どんなによい製品でもすぐに陳腐化していき、新しいサービスや製品に取って代わっていきます。ですから、次の市場を独占できるような新しいものを、どこよりも早く抑えなくてはなりません。
そのために、「経験がないから」「自分の担当ではないから」などと言わずに、様々な枠や領域を越えてチャレンジし続ける人を増やしていきたいですね。

【取材後記】活躍の場を社内だけに限定しない考え方

市川さんのお話をうかがっていて印象に残ったのは、ソフトバンクC&Sでは、社員が自社だけで能力を発揮することを想定しているのではなく、もっと広い視野で社員の成長やスキルアップを考えているということでした。

「ワークスタイル変革」や人材育成の取り組みのベースには、「定年退職後に豊かな人生を送ってほしい」「転職先でも通用するスキルを身につけてほしい」という想いがあります。このように、社員に対しておおらかな会社であるためか、転職しても戻ってくる人が結構いるそうです。

また、働くうえでも学ぶうえでも、「楽しむ」ことが大事であることを、改めて感じさせられました。