「裏方力」は在宅フリーランスでも武器になる──進行管理で支えるアドミンの仕事

秘書や営業アシスタントなど「誰かを支える」仕事は、サポートする相手と同じ空間を共有し、現場の空気を読みながら動くことで成り立つ──そんな印象を持たれがちです。そのため、在宅ワークには向いていないと思われることも少なくありません。

でも実は、その「裏方力」がオンラインワークで生きる場面もあります。

今回は、オンラインアウトソーシング(※1)「HELP YOU」でアドミンとして活躍するTomomiさんに話を聞きました。アドミンとは、案件の責任者であるディレクターの補佐役として、実務レベルでの進行管理を担うポジション。「裏方」の経験がどう生かされているのかを探ります。

▶︎ 縁の下の力持ちも大歓迎、在宅フリーランス集団HELP YOU

※1 オンラインアウトソーシングとは在宅でインターネットを活用し、業務サポートを行うサービス。

インタビュイー

Tomomiさん
小学生の頃から洋服のリメイクにハマり、高校在学中、有名ファッション誌の編集長アシスタントとしてキャリアをスタート。編集長の周辺業務全般を担い、膨大なファッションアイテムの候補選定・管理およびブランドからの問い合わせ対応を通じて「裏方力」を磨く。現在は、 HELP YOUでクリエイティブの進行管理を担当するほか、ライティングやインドネシア語の翻訳などを担う。バリ島在住で、3人の男の子の母。

ライター

三代知香
飛騨在住のフリー編集者。会社員時代はIT企業でマーケティングやPM、自社ブログの編集長を経験。メディアの立ち上げ経験を生かし、「くらしと仕事」のアクセス解析や新人育成を通して成果向上に取り組むほか、インタビューライターとして働き方や地方活性化をテーマとした記事を手がける。1児の母。→執筆記事一覧

推薦をきっかけに見えた、自分の新しい可能性

──もともと、アドミンになりたいという思いでHELP YOUにジョインしたのですか?

いえ、実は他社での経験もあり、最初はライターとしてHELP YOUに入りました。当時は採用試験がいくつかあって、まずはビジネスメールの試験を受けたのですが、不合格になってしまって。その時、採用担当の方が「Tomomiさんのご経歴であれば、ライターで再チャレンジされてみては?」と新たな選択肢を提示してくださったんです。

「再チャレンジってあるんだ!」という驚きもありましたが、私自身、17歳の時に大好きなファッション誌の編集部に何度もしつこくアプローチして、採用を勝ち取った経験があり、迷わず再チャレンジして無事に合格できました。

──ライターからアドミンへ活動の幅が広がった経緯は何だったのですか?

実は、現在アドミンとして関わっている案件も、もともとはSNSのアイデア出しを担当する役割でアサインされたものでした。ところが、案件のボリュームが拡大するタイミングで、ディレクターから「納品時のクライアント対応もお願いできますか?」と声をかけられ、結果的にアドミンというポジションを任されることになったんです。

最初は不安もありましたが、「何かあったらいつでも言ってください」というディレクターの言葉に背中を押され、思いきって挑戦してみました。

編集アシ時代に培った、感覚的な指示を読み解く力

最初の上司であった編集長の言葉は、今もなお、自分のあり方を見つめ直す指針になっている。

 

──17歳で入った編集部では、編集長の専属アシスタントをされていたとか。

はい。いわゆる“編集”そのものではなく、編集長の周辺業務を幅広く担当していました。その編集部では、どのファッションアイテムを掲載するかの判断は編集長に一任されており、編集長に直接コンタクトを取りたいというブランドからの問い合わせが絶えませんでした。そうした問い合わせの一次対応も、私が担っていました。

──Tomomiさんがまずは判断を入れるのでしょうか?

各社のおすすめアイテム情報は、全て所定の場所に掲示して整理していましたが、編集長の考え方を踏まえて優先度を付けることはありました。

編集長は情に厚く、アイテムそのものの魅力に加えて、作り手の熱量を重視する方でした。反対に「他誌でも取り上げられた人気アイテムです」といった訴求の仕方は好まず、「それなら他でやってもらえばいい」というスタンスでした。

そのため、担当者の熱意が編集長の価値観と合いそうだと感じた場合は、優先度を上げて編集長に紹介するようにしていました。

編集長は仕事に厳しい方でしたが、同時に誰よりも謙虚で、誠実でした。どんな立場に置かれても謙虚であり続けることの大切さや、表面的な言葉だけでなく態度で示すことの重要性を、10代の私に教えてくれた恩師のような存在です。

──信頼を寄せる編集長のもと、その人柄を踏まえたサポートをしていたのですね。

感覚的な指示も、編集長ならではのスタイルでした。

「見て、Tomomi。こんな感じの企画をやりたいから、合うアイテムを集めて」——参考資料を広げながら、編集長がそう話しかけてくるんです。私はそれを受けて、各ブランドに問い合わせ、雑誌に掲載するアイテムのリース(※2)手配をしていました。

とはいえ、編集長のイメージとズレることも少なくありません。「このブランドやあのブランドの雰囲気ですか?」と聞いてみても、「違う。もっと海外っぽい『サーフスタイル』って感じ。でも海じゃなくて、街のサーフ。わかる?」といった具合に、感覚的な表現が多くて。

だから、もし編集長の意図と私の認識が違っていても、すぐ対応できるように早めに撮影に使う衣装を用意して、やりとりを重ねながらすり合わせていきました。「このブランドは近い」「これは違う」といったフィードバックをヒントに、少しずつイメージをつかんでいく。その繰り返しでした。

※2 商品の貸し出し。

クライアントワークでも役立つ、叩き上げの調整力

──指示をする人の意図を汲み取るスキルは、現在のアドミン業務にも生きていそうですね。

はい。現在はアドミンとして、クリエイティブ制作の進行管理を担当していますが、クライアント側でイメージがまだ固まりきっていないこともあります。そうしたなかで、やりとりを重ねながら意図を汲み取り、早めに候補を提案し、そこから得たフィードバックを反映していく──この一連の流れは、編集アシスタント時代に培ったスキルであり、今の業務にも大いに生かされています。

──そのほか、編集アシスタントの経験が生きていることはありますか?

混沌とした現場を整理する力も、編集アシスタント時代に培ったものです。

例えば、撮影に使用するアイテムのリース業務では、大きなクローゼットのような場所で、企画ごとに膨大な衣装を一括管理していました。関わるブランドは一つの企画につき約30社、衣装ラックで15台分ほど。編集長がその中から実物を手に取り選定し、それをもとに私が「どのブランドの、いくらのアイテムで、どのコーディネートに使うか、返却日はいつか」といった情報を記録し、リスト化していきました。その後、アイテムを借りてきた時の状態に戻し、各ブランドに返却する作業も行います。

撮影当日には、モデルの体型や現場の判断によって急きょアイテムが差し替えられることもあり、その変更内容も正確に把握・管理する必要がありました。

しかも当時は、全て手書きでの作業。だからこそ、効率よく、かつ正確にタスクをこなす力が求められました。この経験は、現在の業務にも確実に生きています。

本業に集中できる環境を整える、裏方の立ち回り

休日は海で在宅ワークの疲れを癒す。

 

──HELP YOUでアドミンとして「整えた」事例があれば教えてください。

効率化の観点では、チーム内のやりとりを減らし、ライターやデザイナーが制作に集中できる体制づくりを意識しています。

現在担当している案件では、SNSに投稿するテキストや画像の制作を行っていますが、納品前に画像に「alt(代替テキスト)※3」を付ける工程があります。

従来は、ライターがデザイナーに指示書を送り、デザイナーが画像を制作。完成後、ライターが画像を確認しながら代替テキストを作成し、その後の修正対応も含めて何度もやりとりが発生していました。

しかし在宅ワークでは、オフィス勤務と違って即時に返答をもらえるとは限らず、こうしたラリーがスケジュールの遅れにつながるリスクもあります。

そこで、代替テキストの作成を私が担うことで、ライターやデザイナーがそれぞれの制作業務に集中できるよう調整しました。また、納品前に軽微な修正が発生した場合にも私が対応することで、全体の効率化を図っています。

さらに、もともとライターが担当していたデザイン指示書の作成も引き受け、ライターがよりライティング業務に集中できる環境を整えました。画像のどこに何を配置するかといった、レイアウトを組み立てるような作業です。

とはいえ、私はチームに後から加わった立場だったため、これまでのやり方や雰囲気を大切にしながら、ディレクターや進行管理に詳しいデザイナーと相談しつつ、段階的に業務改善を進めていきました

※3 画像の内容を説明するテキスト。視覚に障がいのある方や、画像が表示されない環境でも内容が伝わるようにするためのもの。

──チームメンバーが動きやすいように、という思いが中心にあるのですね。

そうですね。例えばスケジュール管理においても、タスクが複数ある場合、一度に全てを伝えてしまうとプレッシャーを感じるクリエイターもいれば、反対に作業内容を事前に把握しておきたいクリエイターもいます。

そこで私は、各タスクの納期とメンバーのスケジュールを照らし合わせたうえで、各クリエイターが作業しやすいと思われるタイミングで依頼するようにしています。それぞれのメンバーが無理なく業務を進められるよう配慮することで、チーム全体のパフォーマンスが落ちないよう心がけてきました。

クリエイター一人ひとりのスケジュールや状況を把握し、負担を最小限に抑える調整力が、裏方として進行管理を担うアドミンには欠かせません。

進行に向き合えるのは、俯瞰する存在がいるから

ヨガ講師の顔も持つTomomiさん。在宅ワークでこわばりがちな体を、日々しなやかに整えている。

 

──進行管理の多くを担っている印象ですが、ディレクターとの役割の違いは何でしょう?

私が担当しているのは、いくつかの案件から構成される一大プロジェクトの中の、制作チームの進行管理です。一方、ディレクターのIさんは、プロジェクト全体を見渡しながら、複数のチームを統括しています。

Iさんはクライアントとのオンライン打ち合わせを通じて、案件ごとに適切なスキルを持つメンバーをアサインし、私はその一チームの実務的な進行を担う立場です。ディレクターは、何かあったときに最終的な判断を仰げる心強い存在だと感じています。

──ディレクターがいてくれて良かった、と特に感じるのはどんなシーンですか?

私がチーム内の対応に追われて視野が狭くなっているときに、プロジェクト全体を俯瞰して、適切な判断を下してくれる場面です。

以前、納品前の連携に課題が生じ、困り果ててディレクターに相談したことがありました。当時の私は、目の前の課題を何とか解決することに必死で、全体を見渡す余裕がありませんでした。

そんな状況下でも、ディレクターのIさんは私の話だけをもとにすぐに動くのではなく、状況を見極めながらアドバイスをしてくれて、結果的に良い方向へ導いてくれました。アドバイスの仕方も簡潔かつ的確で、その軽やかなコミュニケーションは、状況を重く捉えていた私の心を軽くしてくれました。

正直なところ、当時は状況がすぐに動かないことをもどかしく感じていましたが、今振り返ると、その判断がプロジェクトを中長期的に安定して運営するためには適切だったと感じています。

──私もIさんと仕事をご一緒したことがありますが、常に全体を見渡し、どんなときも落ち着いた判断と言葉で支えてくれる、まさにチームの土台のような存在です。Tomomiさんご自身は、ディレクターに準ずる立場を担っている印象ですが、今後ディレクターを目指すビジョンはありますか?

実は、つい最近までディレクターという働き方は考えたこともありませんでした。「会社員」としてのキャリアがなく、テキスト上のやりとりはできても、オンラインでクライアントと直接やりとりすることにはハードルを感じていたんです。

3児の母ということもあり、ディレクターという重責を担いながら家庭と両立するのは難しい──そう思い込み、選択肢から外していました。加えて、私自身アパレルブランドの経営やヨガ講師としての活動もしており、これらとの両立も難しいと感じていたことも、踏み出せなかった理由の一つです。

でも、先日Sディレクターのインタビュー記事を読み、本業を持ちながら副業でフリーランスディレクターとして13もの案件を動かしていると知り、勇気が湧いてきました。もちろん、Sさんと私のスキルは比べようもありませんが、「もっと知りたい」という思いが自分の中に出てきたんです。

副業収入が本業の2倍に!10案件超を動かす、分野横断ディレクターの総合力

──実務を担うスタッフからディレクターへのキャリアチェンジという選択肢があり、フリーランスでもキャリアパスが描けるのは、HELP YOUで働く魅力の一つですよね。これからアドミンを目指す方や、裏方系の仕事を得意とするフリーランス志望者に向けて、メッセージをお願いします。

私自身は「アドミンになりたい!」という明確な目標があったわけではなく、ご縁が重なった結果、今の仕事にたどり着きました。そうした意味では、目の前にあるチャンスやご縁を逃さず、一つひとつ丁寧につかんでいくことが、アドミンとしてのキャリアを築く第一歩になるのではないでしょうか。

進行管理の経験がなくても、例えば家族の予定やタスクを細かく管理している主婦の方や、グループでの食事会の幹事をしたことがある方など、人や物事を整理して動かす経験があれば、アドミンもきっと目指せる仕事だと思います。

まとめ

「裏方力」ともいえる気配りや段取り力は、表には出にくいスキルかもしれません。けれど、それらは在宅ワークやフリーランスの現場でも確かに求められ、生かせる力です。

Tomomiさんは、編集長アシスタントとしての現場経験を土台に、現在はHELP YOUでアドミンとして進行管理を担い、チームが本業に集中できる環境を整えています。その背景には、相手の意図を汲み取る力や、混乱を整理する力、そして信頼できるディレクターと連携する姿勢がありました。

「これがやりたい」と強く願って始めたわけではない。でも、目の前の機会を逃さず丁寧に拾い続けることで、自然とキャリアは形づくられていく──そんなTomomiさんの言葉に、フリーランスとしての新たな可能性を感じた方も多いのではないでしょうか。

サポート業務に携わる方、在宅で働く道を模索している方にとって、アドミンという役割は、自分の力を生かせるフィールドの一つになるはずです。

▶︎ あなたの気配りが、チームを支える力に。HELP YOUにエントリー

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