仕事第一からライフスタイル第一の生き方にシフトしたキャリアメンターが直面するチャレンジとキャリア将来図

ご自身の経験を元にキャリアメンターとして、数多くの働く女性たちへアドバイスをしている藤原じゅんさん。派遣社員としてスタートして、正社員、マネージャー、海外勤務と着実に金融業界でステップを上がっていったキャリアの持ち主です。ご家族の死をきっかけに、ライフスタイルを見つめ直して起業された、これまでと将来の展望をお聞きします。

インタビュアー(ライター)

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

金融業界で派遣から正社員、マネージャー、海外勤務と夢中で駆け抜けたこれまで

現在のお仕事である「キャリアメンター」として独立されたのは、2017年ですか?

 

藤原じゅんさん(以下、藤原):はい、2017年12月から本格的にスタートしました。

 

そこに至るまでのキャリアをお聞きします。まず、22歳でアメリカへ留学された?

 

藤原:日本の大学を卒業後に、アメリカに留学しまして。3年で大学を卒業したんですね。向こうで就職活動したのですが仕事が見つからず、日本に帰国しました。帰国後は派遣社員として金融機関に就職したのですが、そこでの仕事が合わなくて、1年ほどで別の金融機関に転職しました。2社目では派遣として1年働いた後、正社員に登用されたんです。そこで5年半勤めた後、外資系金融機関からヘッドハンティングされマネージャー職に。勤続4年目で、念願の海外勤務になりました。シンガポールに赴任したのですが、その半年ほど前から準備期間をいただいて、東京にいながらにして東京・シンガポール・香港の3チームをマネージメントしていました。

 

シンガポールには、何年ぐらいいらっしゃったんですか?

 

藤原:1年ですね。その間は、本当に職場と家の往復になって。とにかく仕事が忙しくて体調も頻繁に崩していたので、誰に相談することもなく辞めてしまったんです。すぐに転職活動を始めて、運良く決まったので日本に帰国しました。帰国後は日系金融機関に入社したのですが、自分の中で「何か違うな」と感じて8カ月で辞めてしまいました。「ちょっと仕事から離れようかな」と思って、上海に語学留学に行きました。

 

上海では中国語の勉強をしながら、人との交友を広げていった感じでしょうか?

 

藤原:そうです。平日の午前中は語学学校に通って、午後は現地で知り合った方と会ったり、ビジネスセミナーに参加したり。元弁護士でファッションデザイナーの女性と知り合ったのですが、彼女が日本で商品を売りたいというのでそのサポートもしました。小さなブランドですから、デザイナーの自宅で中国人とヨーロッパ人のインターンと一緒に仕事をしたりして。楽しかったです。他には、上海へ行く前に「イメージコンサルティング」を勉強したのですが、たまたま上海でミスユニバースのナショナルディレクターとお会いする機会があって、イメージコンサルティングについてプレゼンをしたら興味を持っていただいて。そのご縁で、ミスユニバースのファイナリスト向けに研修を行う講師をご紹介しました。報酬をいただいての仕事ではありませんが、自分がただやりたい、興味があると思うことをやり続けた充実した半年間でした。

 

その後、また日本に戻られて就職されたのですか?

 

藤原:はい、帰国する少し前から転職活動をして、希望していた企業に逆指名して内定をいただきました。

 

母の死をきっかけに、自分のライフスタイルを転換。今しかできないことに時間を使う

 

藤原:再就職先で働き出したのは外資系金融機関で、会社員として勤める最後の会社になるのですけれど。2015年に息子を出産しましたが、切迫流産で入院したこともあり、早い時期から産休に入りました。2015年7月から2016年12月まで、1年半ほどの期間でした。

 

復職したのが、昨年1月です。その時は小さいチームのマネージャーとして復職したのですが、半年後にもう少し大きなチームのマネージャーにならないかと言われて。育児との両立を考え迷って最初はお断りしたのですけど、周囲の方々から励ましをいただき、最終的にそのポジションを引き受けたんです。

 

ところが、その矢先に母が病気で入院してしまいました。看病のため時短勤務にしてもらい、病院に通っていたんですが。それからわずか3、4週間のうちに、母が亡くなってしまうんです。私はかなりショックを受けて、1カ月半ほどお休みをもらいました。その間、いろんなことを考えて。こんなに早く母が亡くなってしまうなら、仕事を休んでもっと一緒にいる時間を作れば良かったと後悔しました。仕事を優先した自分を後悔して辛かったですね。

 

もちろん、子どもに対しても。仕事をしていると息子との時間がなかなか取れない、いつも走って保育園にお迎えに行っていて。毎日毎日、気がつくと走っているんですよ。本当に疲れてしまって。私の働き方、生き方はこれでいいのかなって疑問を感じてきたんです。初めて家族を亡くして、「人って死んじゃうんだな」ということを実感したせいもあり、働き方も生き方を変えようって強く思いました。

 

20代から会社員としてキャリアを積み重ねてきましたが、起業したい思いもあったんです。じゃあここで起業をして、今までやりたかったことをやってみよう。いつか人生が終わってしまうのであれば、後悔のないように。それで昨年の冬に退職しました。先に会社を辞めることを決めて、何をやろうか考えた時に出てきた答えがキャリアメンターです。実は将来やってみたいとあたためてきた、ビジネスアイディアのひとつです。

 

クライアントからの依頼は、どういう風に来るのですか?

 

藤原:最初は100%私のブログからでした。当時の読者数は現在の半分ぐらいだったと思いますが。それでも、お客様が来てくださって。現在ではご紹介のお客様も増えています。クライアントとは、東京近郊の方であれば、カフェなど待ち合わせ場所を指定して、そこでお話をします。東京以外、海外の方もいらっしゃいますので、そういう方とはオンラインでセッションをします。

 

緑の中で過ごすデュアルライフ。家族3人で新しい体験

起業されてご多忙だと思いますが、仕事の時間は決めていらっしゃる?

 

藤原:今は息子が月~木曜日の朝9時から15時まで、保育園に通っているんですね。仕事をするのはその時間がメインです。あとは、夜間にクライアントからの緊急なメッセージに返信したり、週末のどちらかにセッションがあります。

 

その仕事の時間は、今後広げていく可能性も?

 

藤原:息子の学校やその時々の状況によって、増減する可能性はあります。保育園は、元々月曜~金曜だったのを、試験的にこの10月から月曜?木曜に変えたんです。できるだけ息子との時間を増やそうと思ったことと、平日は東京、週末はセカンドハウスを行き来するデュアルライフを叶えるために、少しタイトですが稼働日を週4にして週末をゆっくりする生活にシフトするためです。今はこのライスタイルを叶えるために仕事の時間を少なくしていますが、また別のライフスタイルを叶えたいと思ったら仕事の時間を増やすこともあると思います。

 

ご夫婦で「週末は郊外でのんびりしたい」というビジョンがあったのですか?

 

藤原:はい、ですがなかなか実現していなかったんですね。母が亡くなって私が落ち込んでいた時に、私が行きたがっていた住宅展示場に夫が連れて行ってくれたんです。ある日お散歩中に、「行ってみる?」と。見るだけのつもりが、自然の中でのライフスタイルのイメージが膨らんで、土地を探し、家を建てるプラン作りへと進みました。東京の家には庭がないので、息子が自然の中で走り回って遊べるような環境を叶えたいと思ったんです。

 

これまでアジアの大都会を舞台に、金融の第一線でご活躍していらして、今こうしてスローライフを過ごされているのはどうですか?

 

藤原:スローライフは想像以上に良いです。季節を身近で感じることができて、完全にオフモードになることができますから。BBQをしたり庭で食事をしたり、屋外で過ごす時間が増えました。確かに都会での生活は好きですが、以前から自然のある場所へ旅行などで訪れることは多かったんです。結婚後は特にそういう機会が増えましたね。息子と3人でこれからどういう生活をしたいか考えた時に、自然のある場所で子育てを、というイメージは夫婦で持っていました。

 

現在、ライフスタイルの中で抱えていらっしゃる課題はありますか?

 

藤原:私が今、課題として感じていることがあって。今の仕事は携帯電話ひとつあれば大体のことが終わるようになっているんですね。セッションはオンラインや対面でしますが、それ以外のワークやサポートは、クライアントからすべてLINEなどで受けています。そうすると、セカンドハウスでオフの時間を過ごしている時でも、ご連絡があるとすぐに返信したくなって……オンオフの線引きができていないことに気づいて、それを今後どういう風にしていくか、自分なりのルールを考えているところです。

 

輝かしいキャリアの中でご自分が主役としてやっていらして、メンターという人材育成に役割が変わったことに関して、どう感じていますか?

 

藤原:皆さん、メンターの仕事は以前の仕事と全然違いますよねと仰るんですけど、私の中では全く変わっていないんです。私は11年間管理職をしてきて、当時も自分が主役という意識はなく、部下がいかにパフォーマンスを上げて良い評価をもらえるかにフォーカスしていました。それがチームの評価になり、最終的には自分の評価になって返ってきますから。キャリアメンターはクライアントのキャリアの成功をサポートするお仕事ですから、管理職として部下の成長をサポートしていた時と何も変わっていません。役割が変わったのではなく、会社員時代のキャリアの延長線上にいる感覚があります。

 

現在の仕事で一番喜びを感じる瞬間は?

 

藤原:それはもう、お客様が4カ月のプログラムを終えて卒業の時に、本当に喜んでいらっしゃる時ですね。「今後は自分がやりたいことに向かって走っていける確信があります」とか、「じゅんさんがいたお陰で転職を叶えることができました」とメッセージをいただくと、やって良かったなと思いますね。仕事だけではなく、クライアントがキャリアを見直すことによって、旦那さまやお子さんとの関係が良くなりましたという話も。仕事に限らずいろんなことをご相談していただけるのもメンターならでは。ここが私を選んで良かったと言っていただく理由なのかなと思います。

 

人生100年時代なら、あと30年は働きたい。これからの楽しい展望とは?

藤原さんはあと30年ぐらいは仕事をしていきたいと考えていらっしゃるそうですが、今の仕事をずっと続けていきたいのか、あるいはその時々で違うことをやってみたいのか、どうでしょう?

 

藤原:今考えているのは、キャリアメンターの仕事は1本の軸として持ち続けて、もう1本別の軸を持ちたいと思っているんですね。この仕事は安定してきているので、もうひとつの何かに来年以降は時間を費やしていきたいなと思います。そして、残りの年月が30年あるとすれば、どこかのタイミングで夫と一緒に仕事をしたいと思っていて。何をするかはまだ分からないですけど、時々、二人で何をしよう?と話しています。

 

そういうお話が出るということは、旦那さまも藤原さんのお仕事を応援してくださっている?

 

藤原:もちろんです。夫の理解、協力なしに起業は難しいですよね。前々から私が「起業したい」と言っていたので、夫が背中を押してくれて、いつも応援してくれています。私のクライアントに、旦那さまと自分のキャリアの目標を話したことがないという方が結構いらっしゃるんですね。でも、今の仕事に不満があるとか、実は転職したいということを一番身近な存在の旦那さまに話さないでどうやってキャリアの目標を叶えていくのか?ということですよね。

 

夫婦はチームなので、役割分担をしながらお互いが目標を達成できるようにチームプレイでやっていかないと。こんなに身近に話ができる人がいるのに、話さないのはもったいないと思います。女性は子育てなどで時間的制約があると考えがちですが、家族に応援・協力してもらうことで、キャリアの目標を達成しやすい環境をご自分で整えてくださいとお伝えしています。

 

現在の、ライフスタイルを優先するワークライフバランスは、また変化すると思いますか?

 

藤原:変化する可能性はありますが、ライフスタイル第一の考え方は持ち続けて行くと思います。息子と過ごす時間を増やしてデュアルライフを叶えるライフスタイルが良いなと思って、それを叶える手段として今の働き方があるので。将来、別のライフスタイルがいいなと思ったら、今度はそれを叶えるために稼働日を増やしたり、もっと少なくしたり、その時々で良いと思うバランスを決めていきたいですね。
今のこの生活は息子が幼い今だけの期間限定だと思っているので。それができる今は、このライフスタイルを存分に味わおうと思っています。

取材後記

素晴らしいキャリアを持ちながら笑顔で朗らかな藤原さんは、お話を伺う側をリラックスさせる人間的魅力のある方でした。会社員時代に築いてきたキャリアの延長に今のメンタリングがあるという言葉も、新鮮に感じました。起業は方向転換ではなく、これまでの経験を活かした上にあるもの。そう考えると、自分が携わるすべての仕事が大きな意味を持ってくるのではないでしょうか。