産後の再就職で責任ある仕事に挑戦 チーム田中で共働きと育児を両立!

結婚のタイミングで退職し、出産を経て株式会社ビーボに再就職を果たした田中香保里さん。環境変化の激しいベンチャー企業の経理部門を整備する重要な役目を担って、チームづくりを決心したと言います。家庭でも、共働きで仕事との両立が課題に。そこで、夫を巻き込んで「チーム田中」を結成されたというストーリーをお聞きしました。

インタビュアー(ライター)

鈴木 せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

結婚・出産のライフステージ変化で無職に。キャリア再構築の難しさ

お子さんを出産後に再就職されたそうですが、なぜ働こうと思ったのですか?

もともと出産後も働きたい気持ちがあったんです。

結婚前は派遣会社の正社員として管理部門で経理をしていました。仕事が結構ハードワークで、結婚したら子どもが欲しい気持ちもありましたがそのまま働きながら両立はできそうにないと思い結婚と同時に退職しました。その後コンサルティングの会社で手伝ってほしいとお声がけがあって「負荷のない働き方なら」と思い、アルバイトとして経理の仕事をしました。その後妊娠がわかり、出産の2カ月前まで働きました。

 

 

再就職のための就活は、大変でしたか?

分かっていたことではあるのですけど。いったん仕事を辞めているので、無職ですよね。やはり無職で保育園は受かりづらい、一方で再就職活動も保育園が決まっていないとどうにもならないという負のスパイラルがありました。

子どもがいて時短でできる仕事という条件だと、確かに会社選びの範囲は狭くなります。でも受けることの出来る会社がないわけではありませんでした。逆に、子どもがいる人でも採用しようという意思のある会社しか見ていないので、「私の状況でも受け入れてくれる会社はあるんだ」とポジティブな気持ちになりましたね。

私の場合は、自分の経験値・環境でどういう会社が視野に入ってくるのか求人の様子を見ながら同時進行で保育園探しに注力して、めどがついた段階でどんどん採用面接を受けていきました。そして最終的にビーボから内定をもらって、時短で働き始めて2年になります。

 

責任のある職務に挑戦「ワーキングマザーだから」は言い訳にしたくない

入社された当初、経理担当は田中さんおひとりだったそうですね。大変だったのでは?

「時短社員だから」という考えではなく、責任を持って働きたいと思っていたので、任せていただいたことはありがたかったです。経理の前任者が退社してから数カ月の空白期間があったらしく、やるべきことはたくさんありました。経理の体制をつくるところからやっていきましたが、会社がステージアップするにつれて自分ひとりでやることへの限界を感じ始めたんです。分からないことが出てきたりして、自分の経験値が足りていないと。それで、前職でお世話になった方たちに相談するようになりました。

それまでの私は、会社が人を増やしてくれない、という「してくれない」マインドだったと思うんです。でも「このままでは『強い管理部門を作ってほしい』という会社の要望には応えられないとわかり、自分が目標を達成する為にチームを作るために、仕事の相談に乗ってもらっていた前職の上司を、リファラル採用で経理に迎え入れてもらいました。それをきっかけにもうひとりメンバーが増え、現在は4人体制のチームでやっています。おかげで、私はひとりの時から会計システムの変更に着手していたのですが、その業務に専念できるようになりました。

 

責任の重い業務を乗り切れた理由は、何だったと思いますか?

周囲の人が私に対して、時短社員だからという隔たりなく接してくれたからだと思います。子どもが急に発熱して休む時でも「しっかり休んで」というマインドでいてくれるので、「時短ですみません」という肩身の狭い思いをしないでいれます。改めて、家族との時間の大切さを感じ、その時間をより充実させようと思うようになりました。仕事が大変だな、と思う時も上司や同僚に打ち明け、他部署の先輩ママ社員の人にも見守ってもらって乗り越えることができました。

こうした周りの支えもあり、ありがたいことに会社で年に2回選ばれるMVPを受賞させていただきました。表彰の際の代表メッセージにて、ママであることや時短勤務で働いていることには一切触れられず、いち従業員として評価していただけたのがとても嬉しかったです。

 

 

時間の長短によらない働き方 効率化と自分から業務を切り離す工夫

前職の時と比べて、ご自身の働き方は変わったと思いますか?

時間に対する意識は変わりました。責任感も違いますし、視点が変わったと思います。以前は自分の抱えている業務だけを見て、この仕事をどうやって期日に間に合わせようかそれだけを考えていればいいという状況でした。ですが、今は「これは次にどうなって、全社的に見たらどうなって、誰が必要で……」と俯瞰して考えています。

そして、いかに自分の持っているものを少なくしていくかが大事だと思っていて。効率性を高めていくことですよね。それも単純に自分ひとりが効率的になればいいという話ではなく、会計システムを変えようと思ったこともそうですが、「会社としてこの運用で良いのか?」と考えるようになりました。

そういった意味では、前の会社で学んだことにも感謝しています。そこで培った経験があって今がある感じですね。以前は上司から言われて深く理解していなかったことでも、自分がその立場になってみると「すごく大切だったんだな」と分かりました。

 

業務の中での難しい課題に対して、時短の枠で取り組んでいくことの困難はありませんでしたか?

大変は大変でしたけど、それは時間の長さの問題ではありません。たとえ私がフルタイムで働いていたとしても、チャレンジする難しさ、大変さは同じだったと思います。

 

お子さんができると、それまでと同じやり方では働けないという話をよく聞きます。やり方を変えざるを得ない、ということはありましたか?

そうですね。自分だけの時間じゃないんだと思いました。でも、私も仕事がしたいんだ(笑)と。そうであれば、旦那さんを巻き込んでいくしかないですよね。「今自分がいる環境の中で、どうやったらうまくコトが運べるのかな?」と考えました。それで、田中家という家庭をひとつのチームにとらえるようにしたんです。

 

「家族はチーム」共働き育児の上で、パートナーの協力は必要不可欠

出産後に再就職することへの「夫ブロック」はありませんでしたか?

働きたいという意思は伝えていたので、それ自体は応援してくれていました。ですが、いざ現実となって生活を見てみると「え?」と思うところがあったようです。例えば、子どもの朝ごはんに同じ食事が続いたことがあって、「それってどうなの?」と言われたり。あとは直接的なブロックというよりも、どうしても昔とは違う時間の流れの中で、自分ばっかり子供の事で犠牲になっている、という感覚になってしまった時期がありました。

そこでいったん夫と話し合いをしました。「うちとしてうまくやっていくためには、どうしたらいいか?」を一緒に考えようと。やはり、家族みんながしあわせじゃなきゃ意味がないと思って。

ちょうどその時、先輩ママに教えてもらった「育児は仕事のためになる」という本を読んでいて、その中で出てきた「チーム育児」という言葉を思い出しました。チームで上手にやる為に、言わなくてもわかっているだろう、ではなくきちんとコミュニケーションをとる、少し相手を思いやって行動する事をお互いが意識する事で自分ばっかりという思いも薄れて言ったと思います。夫婦そろって田中家を一つのチームとして捉え、育児に取り組むようになりました。そこから夫婦間のコミュニケーションが増えましたね。

 

 

話し合いの際に、ご夫婦でそれぞれ「これだけは」という譲れない点はありましたか?

夫が譲れないポイントとして、「子どもが病気の時は、絶対ママがそばにいてあげてほしい。その方が、子どもは安心するはず」と言われました。それは、夫の強い希望であり、しっかりと応えたいと思いました。

 

私の方は漠然とした話なんですけど。誰かひとりがいいじゃなく、家族みんなが笑顔じゃないと意味がないと思うんです。そのために自分はどうしたらいいんだろうな、と考えます。夫の要望ばかりを聞くのではなく、自分のやりたいことばかりを追求するでもなく。みんながいいよね、っていう落としどころを決めていこうと常に思っています。

 

自分にとっては子どもがいちばん大切なので、もしも本当に子どもが笑わなくなって幸せそうじゃないとなったら、仕事をスパッと辞める覚悟があります。そのためにも、会社的に自分がいなくなっても困らないように、逆に復帰したいと思ったらいつでも復帰できるように、今一生懸命仕事をしなくては、というマインドで向き合っています。

 

取材後記

仕事でも家庭でも壁にぶつかった時に、「無理だ」「どうにもならない」とあきらめてしまうことなく、「じゃあどうしたらうまくいくようになるだろう?」と考え方を切り替えてきた田中さん。その前向きな姿勢は、いろいろな場面で参考にできそうです。今後何か新たな課題が出てきたとしても、チーム田中家で一丸となって、明るく乗り越えることができるのだろうなと思いました。