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子育て世代がまちの担い手に

●森田由紀さん(NPO法人代官山ひまわり 代表理事)
旅行会社、イベント会社、シンクタンクにて企画営業・広告 PR・プロモーション業務に携わる。「子育て世代がまちの担い手に」をテーマとして、「暮らす」と「働く」をつなげるコミュニティづくり「Loco-working事業」に取り組む。その他、渋谷男女平等・ダイバーシティセンター「アイリス」運営委員(2019年3月まで)、グリーンバード代官山チームサブリーダー、「渋谷のラジオ」恵比寿地区ナビゲーターを務める。2児の母。

NPO法人代官山ひまわり(以下、ひまわり)は、

    ■ 子育て世代の女性が、地域や社会とつながりをもち、自分の居場所をみつけて楽しく働く

    ■ 地域情報・コミュニティを見える化させて、住む人・働く人・訪れる人が、開かれたまちづくりに参画する

    ■ 多様なステークホルダーと共創を図り、地域の可能性を広げ、「まち」への愛着と誇りを育てる

をビジョンに掲げて活動しています。

では、ひまわりはどんなきっかけで設立されたのでしょうか。
代表理事の森田由紀さんに、ひまわり設立の経緯などについて伺いました。

子育てママの社会的な評価を高めたい

—ひまわりのホームページを拝見し、森田さんの代官山や渋谷区への愛着の深さを感じました。代官山で生まれ育ったのでしょうか。


森田由紀さん(以下、森田):実は、生まれ育ったのは横浜市です。結婚を機に渋谷区に住むことになり、第二子の出産をきっかけに代官山に転居しました。マンションで町会の役員になったことから地域活動に関わるようになり、地域の人たちと親しくなるに連れて、代官山が愛着のある場所になっていきました。



-では、ひまわりを設立した動機について教えてください。


森田:代官山で“新住民”という立場でまちのことに関わるようになったとき、昔からそこに住む住民たちと分断されているような違和感がありました。町会では「地域コミュニティの担い手がいない」とよく言っていましたが、その割には、私たちのような子育て世代が受け入れられてないと感じたのです。そんな話をまわりのママ友に話したら、「それじゃ、森田さんが新しいコミュニティをつくっちゃったら?」と言われて、2010年にひまわりの前身となるサークルを立ち上げました。



-2012年にNPO法人化していますが、それはどういった理由からでしょうか。


森田:サークルだと持続的に活動することが難しいと感じました。でも、私は本気で取り組みたいと思ったので、内閣府主催の「社会的企業支援事業」のビジネスプランコンペに参加し、「代官山で新しいコミュニティをつくる」というテーマでチャレンジしました。それが採択され、NPO法人の設立に至ったという流れです。

私が考える「新しいコミュニティ」とは、住む人・働く人・遊びに来る人がフラットな関係でいられる、開かれた場所です。



—地域の課題解決をするためにLoco-workingという働き方を広めているのですね。


森田: 「暮らす」と「働く」が愛着のある地域でつながるLoco-workingという働き方によって、子育てママの暮らしと仕事を充実させることができます。子どもが幼稚園に行っている間だけ働きたい、在宅で育児をしながら働きたいなど、一人ひとりに合った働き方が可能となるのです。



—子育てママたちが置かれている状況について、どのように感じていますか。


森田:いろんな仕事を経験してきた人生の中に「結婚」「出産」「育児」があって、すべてが一つのストーリーの中でつながっていると考えています。ですが、多くの女性は、出産や育児によって、途中でキャリアが分断されているのではないでしょうか。
子育てを経験したことを次のステップにつなげてほしいですし、もっと子育てママたちは社会的に評価されるべきだと思います。

様々な人にふれることが、自分を磨き上げてくれる

—Loco-working事業では、どんな業務をどんな仕組みで行なっているのでしょうか。


森田:渋谷区にある企業などを中心に、商業施設の店舗・商品を紹介するブログやSNS記事作成、翻訳、イベントの企画運営、マーケティング調査、商品のモニタリングなど、多種多様な業務を請け負っています。

仕事の依頼を受けたらLoco-workerさんたちに募集をかけて、手を挙げてくれた人たちでチームをつくります。そうすることで、子どもの体調不良など不測の事態が起こって動きが取れない人がいても、チームでフォローし合いながら業務を進めることができます。



—クライアントはどのように開拓しているのでしょうか。


森田:まちの課題に取り組み始めたら、東急電鉄(東京急行電鉄株式会社)さんに出会い、それが起点になり、今の活動につながっています。

それから、私は2016年に「渋谷をつなげる30人」というまちづくりプロジェクトに参加し、そこでも企業とつながることができ、仕事を依頼されるようになりました。

クライアントとは、「共創パートナー」でありたいと思っています。アイデアを持ち寄って、一緒にまちの課題を解決していきたいですね。



—Loco-working事業を運営するうえで、森田さんが大切にしていることを教えてください。


森田:様々な人にふれることによって新しい価値に気づいたり、これまでの経験が違う人と共創していくことで、より磨き上がっていくと感じています。100人いたら100通りのはたらき方や考え方もある。何か否定するのではなく、それぞれの考えを「持ち寄ること」で、より最適な運営が実現できると思っています。


そして、私たちの団体では上司や部下などの上下関係を作らず、みんなが対等な関係だということを意識して運営しています。ひまわりのミッションに共感し、暮らし方やはたらき方を自由に選択しながら地域社会の可能性を広げる。それがLoco-workingです。自らが手を動かすことで誰かを幸せにし、幸せの連鎖から地域経済も循環してくると思います。

Loco-workingで「職住近接」。すべてをワンストップで

-子育てママたちが充実した毎日を送るためには、時間を上手に使うことがカギとなりますよね。


森田:そうですね。Loco-workerさんの中には、子どもが幼稚園や学校に行っている間に、仕事や習い事、買い物などをすべてタイムスケジュールの中に詰め込んでいる人もいます。みんな、ある時間をいかに有効に使うかを常に考えているのです。

Loco-workingは職住近接で行えるので、子どもの学校のこと、自分の仕事、家事など、すべてをワンストップでできるという大きな利点があります。私は、1日に何件もアポイントが入っている日もありますが、自転車で移動できる距離にすべてのことがあるからできるのだと、つくづく思います。



—その他にも、職住近接でよかったと感じていることはありますか。


森田:私が地域でどんな人たちとつながり、どんな活動をしているのかを、子どもに見せることができるのも利点ですね。というのは私自身、母親の背中を見て育ち、そこから大事なことをたくさん学んできたからです。また、困ったら相談に乗ってくれる人が近所にいるということが、子どもたちによい影響を与えると思います。



—ひまわりが行なっている活動を、渋谷以外にも広げていく予定はありますか。


森田:渋谷には、つながっていきたい人や企業、団体などがまだたくさんあります。やはりこの「渋谷」で、愛着と誇りを持ってこれからも活動していきたいです。


一方で、Loco-workingの登録メンバーは全員が渋谷在住というわけではありません。渋谷に住んでいたけれど、パートナーの転勤で海外に住みながらLoco-workingで仕事をしている人もいますし、神奈川・埼玉・千葉県からも興味を持って登録に来てくれる方もいます。

そういう意味では、「渋谷」で活動することにはこだわりつつも、同じ悩みや課題を持ち、私たちの活動に共感してくれる人であれば、どこに住んでいても私たちは歓迎します。


これからはさらに地域と連携して、Loco-workingを広めていきたいです。公共と民間の連携が、社会を豊かにするのだと思います。

ひまわりに登録しているLoco-workerは現在のところ約170人ですが、1,000人を目指して、もっと多くの子育て世代を巻き込んでいきたいです。そして渋谷から全国に向けて、この新しい働き方を発信していきたいです。

【取材後記】ビジョンに共感する者同士がつながることが大事

代官山ひまわりは、掲げているビジョンからブレることなく、自分たちのペースで着実に成長してきた団体だということが分かりました。Loco-workingのコンセプトに共感する子育てママと企業・行政がつながって得られるシナジー効果で新しいアイデアが生まれ、そのまちでの暮らしも仕事も楽しいものになっていくのではないでしょうか。

ひまわりが展開するLoco-working事業が、子育てママだけでなく誰でも実践できる働き方として、全国的に広まることを期待したいです。